IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第72話

一夏は爆発音のした方向に向かうとそこはとんでもない状況になっていた

付近の木々は吹き飛び、近くにはISが解除され気絶した教員やシャルロット、ラウラがいる

さらには負傷した楯無もまた地面に横たわっていた

 

そしてそれを見た一夏は

 

「楯無さん、大丈夫ですかしっかりしてください!!」

 

そう言いながら彼女に駆け寄ると彼女はまだ意識が有ったのかやってきた一夏に対し

 

「一夏君…どうして…」

 

「爆発音がしたんで駆け付けたんですよ。さて俺の肩に捕まってください。逃げますよ」

 

「無理よ…逃げ切れるわけがない…」

 

彼女はそう言うが一夏は答えずに彼女の右腕を自分の右腕にかけるようにして抱え上げる

一夏にしてみればそのような無茶ををしてでも彼女を見捨てるわけには行かないのだ。

そう言いながらも一夏は前に進もうとするとそこに鈴がやってくる。

 

「やっぱりね、あんたなら確実にここに来るって思ってたから先回りして正解だったわね」

 

「鈴…」

 

彼女はISを展開しておりいつでも戦闘に入れる体制だ。さすがに一夏も堂々と魔術を使う訳にもいかないのでどうしようかと本気で悩んでいたが、彼女は気にしていない。

そして両肩にある衝撃砲を無言で放つ。

ただしそれは一夏めがけて放ったものではない。後ろにある外壁に向かって放ったのだ

すると彼女は

 

「あーっ、標的が小さくて上手く当てられなかったわねー。どうしましょう、このままだと後ろに有る海にダイブされて逃げられるわー」

 

一夏に聞こえるようにわざとらしく言う。つまり彼女は一夏達に対してそこから飛び降りろと露骨に言っているのだ、目線からしても早くいけと言っている

しかし一夏は

 

「(いや、あの…飛び込めって…負傷した楯無さん居るんですけど…)」

 

一夏にしてみればそっちの方が問題だった。別に彼一人ならば海に飛び込んだところで何の問題もないが今はそうはいかない、負傷した楯無も居るのだ。さすがに怪我人連れて飛び込むのはリスクがある、しかし今この状況で逃げるのはこれしか手が無い。そう考えていると不意にティナから通信が入る

 

<一夏、そのまま海に飛び込みなさい>

 

<飛び込めって…いやそれしか手が無いなら仕方が無いけどさぁ>

 

<大丈夫、あなたが飛び込めば後はその近くで待機してる漁船が貴方たちを拾ってくれるわ”私達と同じ”だから偽造工作も完璧よ>

 

<あ、あぁわかった。ところでティナ今どこにいるんだ?>

 

<すぐ近くよ。姿も見えてるわ。まぁ私は姿消してるけどね>

 

<そうか、最後に顔ぐらい見ておきたかったんだが…仕方が無いか>

 

<バッ…何言ってるのよ!?まぁいいわ死ぬわけじゃないんだしまた会えるでしょう。>

 

<そうだな。後鷹月さんとか谷本さんたちによろしく伝えてくれ。>

 

<…わかったわ。>

 

そう言い通信を切ると一夏は彼女の耳元で

 

「楯無さん、今から飛び込みますよ」

 

「えっ、ちょっ、本気!?私高い所苦手なんだけど!?マズイって色々と」

 

「衝撃の新事実!?まぁ、大丈夫です。少し海水でぬれるくらいですから」

 

しかし一夏はその言葉を無視し、学園の端に立つと

ためらいもなく一気に海に飛び込んだ。途中悲鳴が聞こえたが鈴は無視、ティナは苦笑いしていた

 

そして鈴は

 

「(まぁ…大丈夫でしょう。言い訳はそうねぇ…照準設定をミスった。で良いわね。私、精密射撃苦手だし。まぁ逃げたって事は行くあては有るんでしょうね。あーぁ疲れた疲れた、さっさと部屋に帰って寝ましょう)」

 

そう言い彼女は機体を解除し地面に降りると目の前には

 

「凰どういうつもりだ?貴様まで裏切ると言うのか」

 

そう言いながら現れたのは日本刀を構えた千冬であった。言い方から察するに途中から見ていたのだろう。すると鈴は

 

「まさか、ただのミスショットですよ。私射撃苦手なんで、織斑先生も私の射撃の成績はご存じでしょう?」

 

彼女はそう言うと千冬は一応納得したのか構えを解くと。彼女に対し

 

「まぁ良い今回はそう言う事にしておこう、ただ次疑わしい事をした時は…貴様の席は無いとおもえよ」

 

「…肝に銘じておきます」

 

そう言い終わると千冬の後を付いていくように鈴もその場を去っていく

ちなみにフォルテとダリルはと言うと学園の上空で

 

「ダリル先輩、あの船どうします?」

 

「放っておけ、もともと気の乗らない戦いに戦力喪失と少年を見失ったと言う放棄する名分が出来たんだ。私はこのまま帰らせてもらうぞ」

 

「そうッスね。明日から大変ですからね」

 

彼女たちはこの戦いに一切かかわっていない。と言うよりもともとやる気がなかったのだ、だからこうして上空から探すと言う名分で放棄したのだ。それにもしもほかの専用機持ちが一夏を殺そうとしたものなら鈴と同じくミスショットと言う名分で彼を援護するつもりだったのだ

こうして騒ぎは幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

そしてこの騒ぎを遠くで観察している少年と少女がいた

少女はISを展開しハイパーセンサーで騒ぎを、少年は望遠鏡でお互い騒ぎを眺めていたのだ

 

「よかったなエム。ターゲットが殺されずに済んで」

 

「あぁ…だがどうしてお前までついてきてるんだクスグ?」

 

そう遠くから眺めていたのはクスグとエムの二人である。二人が居る理由は簡単。襲撃と言う名分で彼を脱走させるのが目的だったのだ。理由は簡単ターゲットを自分たち以外の奴に殺されるのを防ぐためである

するとクスグは

 

「まぁ狙いはエムと同じだよ。いやー良かった良かった、ターゲットが生きてくれて。死んだらどうしようかと思ってたよ」

 

「戦力はだいぶ削られたがな」

 

「どうせ外部襲撃みたいな形で表向きに発表するんだろうよ。それで誘拐されたって言う風にさ…ん?」

 

「どうした?」

 

「エム、先に帰っててくれ。急にアイスが食べたくなってきた。近くのコンビニで買ってくるよ」

 

「また貴様は突発的な…まぁいい。お前は見かけは少年だ、補導されるなよ。私は助けに行かんぞ」

 

そう言うとエムはアジトへと帰還していく。そしてその直後、彼の周りを多数の無人機が包囲する

恐らくエムが気づかなかったのはこのISがハイパーセンサー事態にハッキングしてISの認識を阻害していたのだろうと彼は推測する。そして色は黒。夜では見えなくて当然である

すると彼は

 

「なる程ね、お前らが学園に襲撃してそれを妹と世界最強に倒させることによってアイツを救出。そして裁判でもその力を利用して勝つ。それがシナリオだったと言う訳か。所が内部で離反者が出て計画に支障が生じたから教員使って騒ぎをある程度鎮静化させその後でこいつらを学園にけしかけようとしたって所か。数は…8か、うーん今日は気分が良いし、久しぶりにアレ使うかな。さすがにフルパワーはマズイから2割くらいの火力で溶かしてやるよ」

 

そう言うと少年は静かにその場で体制を整えると呪文を唱えていく

 

「Ph'nglui mglw'nafh Cthugha …」

 

そうすると少年の目の前から大量の炎が噴き出してくる。この時点での温度はかなり高くISの装甲が溶け始めているがそれでもISは構えを解かない、と言うよりむしろ解けない。高温でシステムの一部に異常が生じ始めているのだ、しかし少年は気にせずに詠唱を続ける

 

「Fomalhaut n'gha-ghaa naf'l」

 

さらにその炎は徐々に形になっていくがその姿は一言では表せないような姿になっていく

そして少年は最後の一つを唱える。炎を司る旧支配者を呼び出す最後の一節を

 

「thagn! Ia! Cthugha」

 

その直後、現れたものにより無人機は炎に包まれ跡形もなく消失する

そして最後に見たのは言葉では表せないような異形の怪物であった。

 

 

 

その頃一夏はと言うと

船の上にて少年たちと話をしていた

 

「あなたが連れてきたあの女の子は大丈夫です。傷は深くないのでしばらくしたら目を覚まします」

 

「ありがとな。確か君は天草式の…」

 

「そうです。名前は東郷と言います、あの時はありがとうございました」

 

一夏はしばらく少年と雑談をしていると、不意に彼が

 

「それでこの後はどうします?さすがにこの船じゃイギリスまではいけませんよ」

 

そういくら偽装された船とは言えベースは漁船、さすがにこの船ではイギリスまで行くのにはかなりの無理がある

すると一夏は

 

「一度学園都市に行こうと思う、あそこなら空港も警備は堅いけど、外程俺は認識されていない。飛行機には簡単に乗れるだろ」

 

「その飛行機でイギリスに向かう、と」

 

「そう言う事、それにもう少しでアレが始まるだろ」

 

彼が言うあれとは学園都市でもかなり大きな行事の部類に入る大覇星祭の事だ。この行事の時に関しては一般人でも気軽に出入りが出来るのだ。そして学園都市にはISこそが世界最強などと信じている人間は自然と来ないので、イギリスに行くにはもってこいの手段だ。さらには一夏としては前から学園都市に行って能力者を見てみたいと言う理由も有ったりする

 

すると少年は

 

「成る程、確かにそれなら大丈夫ですね。それでは近くまでお送りします。その間休んでてください。とはいえ船の上ですけど」

 

「ありがと、それじゃ休ませてもらうよ」

 

そう言うと彼は操舵室に入る。一見するとただの部屋だが、ある程度の細工はされており最大で5人ほどが寝泊まりできるようなスペースがあるため一夏はその一つで横になり休むことにする

ちなみに楯無は傷の手当てをされた状態で別のスペースで眠りについていたりする


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