IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第71話

一夏が逃走し、それを探す楯無を除く専用機持ち組と千冬を含めた教員部隊。そして千冬は武装を持ち校内を捜索していると不意に通信用端末に通信が入る

 

「(ん、何だ?…これは!?)」

 

差出人は不明だが、そこに入ってきた映像は衝撃的な物だった。そこに映っていたのは楯無が見回りの教員を気絶させ鍵を奪い取り一夏を開放していると言う決定的瞬間の映像であったのだ

 

「(この映像…一体誰がどうやって…いやそれよりも)全教員および専用機持ちに次ぐ、織斑と同じく更識もこの騒ぎにかかわっている可能性もある。手の空いている物は更識の確保に迎え!!相手は国会代表だ油断するなよ」

 

彼女はそう言い残し捜索を開始する

 

 

一方、一夏を解放した張本人である楯無はと言うと身を隠しながらも教員たちの警備網が厳しくなっていることを肌で感じ取っていた。

 

「(教員たちの動きから察するに、こりゃ私が手引きしたって事がばれたわね。私の計算だとあのクラック解除するのに後40分くらいかかると思ってたんだけどなぁ…まぁ良いわ。)」

 

そう彼女は自分が一夏の脱走を手引きしていた事がばれた際の行動も事前に立てていたのだ。とはいえここまで早くにばれるとは彼女も想定していなかったようだが。

 

そして彼女の周りはISを装備した教員と専用機持ちのシャルロットとラウラが包囲していた

するとシャルロットが

 

「チェックメイトです、会長。おとなしく降参して下さい」

 

すると楯無は笑みを浮かべたまま

 

「自分で考えずただ与えられた情報をうのみにするだけ。たった一人のクラスメイトすら信じることが出来ないような貴方たちに、この私が負けると思っているの?」

 

彼女はそう言い放つと自分も機体を展開し周囲に水のナノマシンを展開する。そして包囲していた教員および専用機持ちの生徒たちはいっせいに武器を構える

そして彼女は敵意を向けつつ

 

「来なさい。ロシアの国家代表と更識家当主の二段構えをしている私の実力を見せてあげる!!」

 

そして戦闘が開始された

 

そしてその戦闘音は逃走している一夏にも聞こえて来ていた

彼は今物陰に姿を隠しながら付近の様子をうかがっている

 

「(楯無さん大丈夫かな?この音から察するに俺の手引きをしたことが教員たちに気づかれたな)」

 

そうして考えていると二人の教員が一夏の居る方向に向かってくる。そこで一夏は風の球体を呼び出すと彼女たちの死角を責め物音ひとつ立てずに気絶させる。そして彼はその教員の持ち物である通信機を手に取る。この通信機はカメラの映像も受け取る事が出来るためなぜ戦闘が発生したのかの理由が分かるのだ。そして過去の映像を見ていくと

 

「(そんな…楯無さんが映ってる!?あの人は忍びの当主だぞ、カメラのハッキング位はお手の物のはず、それがどうしてこうも簡単に…まさか!?)」

 

ここで彼は一つの可能性が浮かぶ、と言うより浮かんでしまう。”自分の関係ある人物以外は人間とみなさないような科学者”がこの学園にいる身内や友人の動きを常時見るためにカメラにハッキングし常時監視していると言う可能性を。そしてその科学者ならばこの位のハッキングを解除し親友の教員にデータを送りつける事など簡単だと言う事に

 

「(どうしてそんな簡単な可能性に今まで気づかなかったんだ!!もしこの可能性が当たるならカメラが無いのは寮の部屋と風呂場位だ…って事は…)」

 

そして一夏はいそいで楯無の援護に向かおうとするが上空に気配を感じる。そこには

 

「一夏さん見つけましたわ!!」

 

「一夏、裏切るとはどういう事だ!!」

 

そう言いながら現れたのはセシリアと箒だ

 

そして一夏は

 

「ISが2機…か。こりゃマズイね(でもこんなの”魔術”の敵じゃない!!)」

 

そう言いながらも懐から短剣を取り出すと高速召喚爆撃をセシリアと箒の機体めがけて放つ

そして彼女たちの武装が突然爆発する。するとそれを受けた彼女たちは

 

「なっ、私のブルー・ティアーズが!?」

 

「どうなっているのだ!?」

 

そして二人が混乱している内に一夏は素早くその場を走り去る

しかし、機体の武装を失いながらも彼女たちは一夏を追いかける。

 

その頃楯無は6対1と言う状況であっても戦況を有利に進めていた

 

「ほらほらそんな事じゃダメージすら入らないわよ!!」

 

「クッ…ラウラ君は左から!!先生方は右から攻撃をお願いします」

 

シャルロットの指示の元彼女たちは的確に攻撃を加えていくが、彼女はそれをすべて水のベールやランスによって攻撃を切払いもしくは防御していく。途中ラウラがAICを使い彼女の動きを止めようとするものの彼女はうまく間合いを取り拘束を逃れ、教員たちの銃弾の嵐を突破していき、すぐさまナイフを展開してきたシャルロットに対しランスでカウンターを決め後ろに吹き飛ばす

 

しかし彼女は内心で冷や汗を浮かべていた、その理由は

 

「(実力以上に機体のエネルギーがまずいわね…このままだと私の機体はエネルギー切れが起こるのは確実だわ…そしてこの状況を打開するとなると残された手は…)」

 

そう彼女の実力ならば候補生や教員とこのまま戦闘を続行するのは可能だが、機体に関してはそうはいかない。シャルロットやラウラ、教員が使う機体と言うのは大まかに言ってしまえば実弾兵器が搭載されておりエネルギーの節約ができるが、彼女の機体の場合はそうはいかない。こうなってしまうと彼女は大きく不利であり、相手もこの事実に気づいているからこそ下手に勝負を決めようとしないのだ。自分たちはこのまま戦線を維持しておけば後は相手が自滅する、全員がそのように思っているのであろう

そして彼女もこの考えに気づいているからこそ、ある大技を使う事を決心する。

 

「(はぁ、コレあまり使いたくないんだけど…このままガス欠で拘束されるよりはマシよね。…一夏君絶対に逃げ切るのよ)」

 

そして彼女は防御しながらも機体のナノマシンを徐々に前面に展開する

流石にラウラ達もこの異変に気が付いたのか、今までとは違い一気に勝負に出ようとするが時すでに遅し

 

「さて、それじゃぁ見せてあげる、この機体の最大の一撃。神話だと神すらも刺殺した一撃を…ミストルティンの槍、発動!!」

 

彼女の放ったミストルティンの槍、それは北欧神話に置いてはとある神を刺殺したヤドリギの枝の事でもあり本来では槍ではなく、弓としての伝承である。別の解釈では亡霊の王と戦い手に入れた剣であり、のちに氷海に沈められた剣でもあるその名を込めた一撃を彼女は放った。

 

その直後、付近では大爆発が生じた

 

 

一方逃走していた一夏もその大爆発には気づいていた

 

「(今の音…もしかして楯無さんか!?どうしよう助けに行くか…でも…)」

 

彼は召喚爆撃を効率的に放ち、何とか学園の出口までたどり着いたが先の爆発音で足を止めてしまう

彼女の意志に答えるのであればこのまま学園を出るのが常識であろう。それは彼自身よく分っている。

しかしそうであっても先ほどの爆発音からただならない状況であることも容易に想像できてしまう

 

「(どうする…このまま逃げるか…それとも様子を見に行くか。でも俺がこのまま逃げると楯無さんが俺と同じ目に合う。)」

 

彼は悩む。そうしている間にも一夏の包囲網は着実に完成している。このチャンスを逃せば次にいつチャンスが来るのか分からない。そして一夏は逃げるのではなく、爆発音の正体を探りに行くと言う選択をする。

探しに行けば脱出は困難を極めると言う事など目に見えている。そうであっても彼には他人を見捨てると言う事など出来ないのだ

 

「(こうなるとやっぱ俺って魔術師なんだろうな…)」

 

彼はそんな事を考えながら爆発音のした方向に向かっていく

 

 

 

 

 

 

 

先の爆発音は学生寮にすら響いてきていた

流石に状況が状況であるため学生たちはかなり慌ただしくなってきている。

ティナは霊装で身を固めるとドサクサに紛れ部屋を出ると爆発音のした場所に向かう決心をする。理由は簡単。一夏ならばその様子を探りに行こうとすると言う事は容易に想像できたからだ。

そしてその場に向かう寸前、彼女は一夏とは違う人物から魔術記号で加工された通信をキャッチする。そしてその内容を聞くと彼女は

 

<それじゃ、あなたたちは今学園の目の前にいるって言うの!?>

 

<はい、正確には海上ですけどね。本当なら僕たちが侵入しようと思っていたんですけど…あの人法の書事件の時にも思いましたが随分と派手な事をするんですね。爆発と言い警報と言い…さすがです>

 

<隠密が得意なあなたたちは真似しちゃだめよ。一夏には私から伝えればいいのね。海に飛び込めって>

 

<はい、お願いします>

 

<あぁ、それともう一つ、もしかしたら怪我人を連れて飛び込むかもしれないから手当の準備もお願い、一般人なんだけど私たちの事情は知っているから…でもあなた達の事がばれるとまずいわよね…>

 

<それならご安心を、僕たちは今”漁師”としてこの海域に居るんですから船も魔術加工して追跡は出来ないようにしてありますが見かけはただの船ですのでご安心を>

 

 

 

そう言い終わると通信は途切れてしまう

彼女もまた聞き終わると一夏の場所に走って向かう事にする

 

 


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