IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第70話

この日の午後ティナは鷹月や谷本たちと一緒に昼食を食べていた。すると谷本が

 

「織斑君、どうしてるのかな…」

 

心配そうに声を上げる、鷹月も言葉には出さないが彼女と同じような事を考えているらしい

するとティナは

 

「一夏は意外と元気そうよ。まぁ平気を装っているだけかもしれないけど…」

 

その言葉を聞くと谷本が小声で彼女に

 

「…魔術って奴で様子を探れるの?」

 

「私たちの間にも携帯電話みたいな道具が有るのよ。電波で傍受もされないからそこそこ便利ね。中には携帯電話使う魔術師もいるし」

 

「成る程ね…」

 

彼女たちがそのようなやり取りをしていると彼女たちの席に

 

「癒子ちゃん、こんな所にいたんだ」

 

「私たちも混ざっていいかな?」

 

そう言いながら彼女たちの席に来たのは一夏と同じクラスの夜竹と相川であった

彼女は頷くとすぐに席に着く

すると相川が

 

「なんか、居づらくてね。ほら周りってほとんど織斑君の悪口ばっかじゃない?」

 

「聞いてる私たちまで気分悪くなっちゃったんだ。なんでそんな簡単にあんなことが言えるんだろうね。少しは織斑君を信じてあげようよ…」

 

彼女たちはそう言う。このような状態であっても一夏の身を案じている人がいる。その事実だけでティナや事情を知る者たちは安心できた。

 

そしてその日の夕方、再びティナから通信が入る

 

<おうティナ。どうした?>

 

<一応心配になったから通信を入れたのよ、そこ一人でいるのはつらいんじゃないの?>

 

そうこの微罰部屋の本来の目的は中に入れることで精神を摩耗させ反省させると言う目的で作られたのだ。無断外泊の生徒などもこの中に入れられるらしい。ちなみに彼が知る由もないがこの微罰部屋はIS学園で最も重大な違反をした生徒を入れる部屋である。

 

<まぁな普通の人間なら一日持たずに泣き出すな。>

 

<まるで犯罪者ね、脱走すればいいんじゃないの?>

 

<まぁ、それも考えたんだけどさ。さすがに無関係な先生とか生徒攻撃するのは気が引けるって言うか…>

 

<でもあなたもう猶予はないわよ。今さっき楯無会長が教えてくれたんだけど、あなたこのままなら理不尽な裁判にかけられて間違いなく殺されるわよ。逃げるなら逃げた方が身のためよ>

 

彼女がそう言い放つと楯無が扉の向こうから声をかけてきたため一夏はいったん通信を切り彼女の声に反応する

 

「楯無さん、どうかしたんですか?」

 

「一夏君、貴方逃げる準備しておきなさい」

 

「はい?」

 

彼は一瞬行っている意味が分からなかったが彼女はそのまま言葉を発する

 

「いい、貴方このままだと確実に殺されるわ。そうなる前にこの学園を逃げるの。今日の深夜。見張りの先生方が変わるタイミングを狙って私が襲撃してそのドアの鍵を開けるわ。後はこの紙の線の通りに動けば学園から脱走できるわ。」

 

そう言い終わると隙間から紙が差し込まれる。すると一夏は

 

「どうしてこんな事…下手をすれば楯無さんも俺と同じ目に合うのに…」

 

そう彼女の計画している事は間違いなく重罪に値するだろう。そしてもし犯人が彼女だとばれれば今の彼と同じ目にあうことなど目に見えている。すると彼女は

 

「しいて言うならこの学園の構造に嫌気がさしたから…かしらね。上層部の隠ぺいする体制にはもううんざりしたの。”クラス対抗戦の時”と言い”今回”といいね。まぁ捕まったらその時はその時で考えるわ。それじゃあね一夏君準備しておくのよ」

 

そう言い残すと彼女は去っていく。そして彼はティナに今伝えられた事実を教えると

彼女が失笑を含みながらも

 

<随分と派手な計画ね。まぁ良いわ一夏あなたはその通りに行動しなさい。>

 

<せっかくの好意だ甘えさせてもらうよ。脱走したら…そうだなぁ学園都市にでも逃げ込むよ。もう少ししたら大覇星祭が始まるんだ。出入りは普段よりも楽だろうしな>

 

そう言い残すと彼は通信を切る。そして今晩の脱走に向けて最低限の準備をすることにする。

一方楯無はと言うと、計画の最終調整を始めていた

とはいえ彼女も今回ばかりは余裕が無い。何せ自分が計画したとばれればただでは済まない。これは自分がよく理解していた。そして彼女は”万が一の場合”に備え生徒会役員とロシア国家代表の引継ぎの書類を書いていた。うまく使えば自分は生徒会長や国家代表では無く個人として行動したと言う言い訳にもなるからだ。

 

そして彼女は一息つくと

 

「(ふぅ、これで失敗した時用の書類も書いたし、後はこれを机にしまって…っと。まぁ男子生徒を独房みたいな場所に入れたんですもの、この位の報いは受けて貰ってもいいわよね。織斑君が脱走した後は私は…どうしようかしら?私も彼女たち連れて一緒に逃げてるって言うのも一つの手ね。)」

 

彼女はそんな事を思いながらも書類を机にしまうと生徒会室を後にする。

ココからは忍びの当主の彼女が得意とする隠密と情報戦による反撃が始まる

 

 

 

 

 

そしてその日の夜。彼の部屋を監視するために送られて来た二人の教員はこんな話をしている

 

「しかしただの生徒をこんな所に入れるなんてね…」

 

「仕方が無いでしょう。それだけの事をしたんだもの。それに私たちが反抗したって理事長は受け入れないわよ。最高責任者の織斑先生もこの案に賛成しているんだし」

 

そんなやり取りを彼女たちがしていると不意に一人の教員が気絶したように床に倒れる

 

「ちょっと…どうした…ッ!!」

 

そして事態に気づいたもう一人の教員が非常連絡をしようとするが時すでに遅し、その教員も気絶させられてしまう。そして彼女は教員の懐から通信機と鍵を奪う

そして部屋の前に付くと向こうにいる一夏に

 

「織斑君。準備は出来た?」

 

「いつでもどうぞ」

 

そう言うと彼女は部屋の鍵を開ける。そして中からは着替えた一夏が出てくる。彼の持ち物は通信用霊装と戦闘で使う霊装一色のみだ

すると彼は彼女に

 

「楯無さん、俺は行きますよ、そのありがとうございました」

 

「お礼何ていいのよ、それよりも早く行きなさい。今から警報鳴らすんだから。」

 

「情報戦って事ですか。全く逃げるのにも一苦労ですよ」

 

そう言いながら彼は西側にある階段を使い逃走する。そしてそれを見届けた彼女は通信機についてある非常警報装置を作動させる。そしてすぐに彼女は連絡先にいる教員に連絡する

 

「大変です、今物音がしたので私が正体を探りに行ったら微罰部屋の鍵が開けられていたんです?方法?分かりませんよそんなの、扉が壊れていたんじゃないんですか!!方向?織斑君は”東側”にある階段を使って逃げました、私は…織斑君を追え、分かりました、失礼します」

 

そう言いながら彼女は通信機の電源を切ると

 

「さて、忍びの情報戦にちょっとばかし付き合ってもらいますよ」

 

そう言いながら彼女は大胆不敵な笑みを浮かべていた

そして当の一夏は大慌てで走っていた。何せ走り出してからすぐに学園全体に非常警報が発令され今はサイレンがあちこちで鳴り響いてるのだ。

 

「楯無さん派手にやり過ぎじゃ無いですかねぇ!?」

 

そう言いながら彼は走っていると不意に人の気配がしたので彼は物陰に隠れる。どうやら教員たちも騒ぎを聞きつけやって来ていたのだ。この調子では早い段階で包囲網は完成されるであろう。さらには

 

「(おそらく専用機持ちの連中もすぐに出てくるな。全く逃げるのにも一苦労だな)」

 

この学園に置いて専用機の価値を考えるのならばおそらく彼女たちも出てくるはずだ、最悪の場合威嚇射撃と言う名分でISの武装を彼に対し放ってくることも十分に考えられる

 

 

 

彼の予想は当たる事になる。学生寮でも非常事態が発令され専用機持ちの生徒たちは学年問わず会議室に集められていた。そして最高責任者である千冬が彼女たちに説明をしていく

 

「先ほど、織斑が逃走したと言う連絡が入った。よって諸君たちには織斑の捕獲作戦を行ってもらう事となった」

 

「(ダリル先輩、捕獲って…随分と物騒ッスね。)」

 

「(仕方ねーだろフォルテ。この学園じゃ少年は”犯罪者”扱いされてるんだ。事情も考慮しないでな。一年の専用機持ちの大半は疑いもしないで情報をうのみにしてるし。)」

 

彼女たちがそんなやり取りをしていると千冬は

 

「そこの二人、発言を許可した覚えはないぞ」

 

「おおっとこりゃ失礼」

 

「すいませんッス」

 

彼女たちはあわてて謝罪する。その後千冬は作戦を説明する。簡単に行ってしまえばいくら逃げたとはいえ空から探せばすぐに見つかる。だからグループ組んで一夏を探し出し見つけたら殺さない用に加減して一夏を捕えろ。そう言う事だ

ちなみに事態が事態なため千冬も地上から捜索すると言う事だ

 

そして彼女たちは機体を展開するとすぐさま上空に上がり一夏の捜索を開始し千冬も日本刀を二つ腰に構えると一夏を探し出すために学園の敷地へと向かう。

 

こうして一夏の逃走をめぐる作戦が幕を開ける


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