学園祭の次の日、朝のニュースではこのような情報が大々的に取り上げられていた
「それでは次のニュースです。昨日IS学園にてテロリストが侵入、そして世界で初めてISを使える男性、織斑一夏が要求を飲み無断でISを引き渡したとの事です」
そう昨日の学園祭に報道関係の人物もやって来ていたらしく、騒ぎを聞きつけニュースにしたのだ。魔術戦に関しては魔術師たちが人払いを行ったため一切気づかれていないがISの戦闘に関しては見つかってしまったのだ。ISの無断使用に関しては正当手段として認められたが一夏がISを引き渡したことについては非難が殺到しているのだ
そしてIS学園では教員たちがマスコミへの対応に追われており、この日の授業は中止になった。
学園内部でも彼に対しての非難があちこちで飛んできていた
「ねぇねぇ聞いた織斑君の話、なんでも自分が助かりたいからIS引き渡したらしいよ」
「マジ、信じらんない!!」
「何であんなのにISを渡したわけ!?」
こんな話があちこちで飛び交っている。しかも悪いのは人質事件の真相を知らされずに世間や学園では自分の保身のためにISを渡したと言う風になっているのだ。
そして食堂でこの話を聞いていた鷹月や谷本は
「どうして…こんな事」
「報道関係の人が来てるって聞いてたけどまさかここまで捻じ曲げられるなんてね…まぁ真相を知らないから仕方が無いのかもしれないけど…」
そんなやり取りを彼女たちがしていると、付近では他の専用機持ちが集まって話をしている。するとセシリアとシャルロットが
「一夏さんなぜあんな事を…」
「保身のため…って言ってたけどそんな事で簡単にコアを引き渡すなんて。それよりもどうやって敵は機体を奪ったんだろう」
そんなやり取りをしていると鈴とラウラが
「一夏だって人間よ、そりゃ死にたくないからIS渡すのにも理解できるわ。私たちのような候補生ならともかくアイツは軍や国に所属して訓練受けてないんだもの」
「テロリストの脅しには屈しないこれは常識だ、その常識にのっとれば一夏は殺されてもおかしくない…がアイツは軍人ではない。その常識で裁けるかと言うと難しいだろうな。」
そう普通に国に所属している人間がISを引き渡しなどすれば間違いなく殺される。しかし彼は国には所属していないためその処罰の対象にはならない。それは理解できてはいるがそれでも彼女たちは難しい表情をしている
そしてそれを自室にて聞いていた箒はと言うと
「(一夏、貴様…保身のために機体を引き渡すなど…なぜそのような事をしたのだ。私には理解できない。)」
そのような考えを自室にて持っていた。
そして微罰部屋に入れられている彼はと言うと物思いにふけっていた。千冬も一応の配慮をしたのか荷物を持ち込んでもいいとの事だったので、彼は微罰部屋に霊装一色を持ち込んでおり、通信用の霊装を使いティナと連絡を取っていた
<ようティナ、そっちはどうなっている?>
<あなたへのバッシングが酷い事ことになっているわ。同じクラスの子よりも他クラスや上級生は特にその傾向が強いわね。奪われた理由は自分の保身のためって解釈されてるわよ。人質の事はもちろん伝わってないわ>
<それでいい。人質の事が分かったら間違いなく鷹月さんは間違いなく酷い扱いを受けるこういう役目は魔術師の俺の役目だ・とはいえ自分の保身のために機体を渡す…か。悪意を感じるね>
<まぁそれは同感ね。それでほかに聞きたいことはある?後、頼み位なら聞いてあげるわよ>
<頼み…か、鷹月さんと谷本さんの事気にかけてあげて欲しいな。鷹月さん、もしかしたら自分の事責めてるかもしれないから>
<分かったわ>
彼女はそう言い残し通信を切る。ちなみにこの微罰部屋ベッド、洗面所やトイレと言った最低限の物しかなく独房のような状態である。そして彼はベットに寝転がると
「(さて、どうしたものかね。逃げようと思えば逃げられるけど、そうする気も起きないしなぁ…暇だ。)」
彼はそんな事を考えながら微罰部屋で過ごす
そして緊急に設けられた対策室では千冬と楯無が話し合いを開いていた
先ず口を開いたのは楯無である
「学園内部での織斑君の非難は上がる一方です。無期限での微罰部屋だそうですが、どうするつもりですか?まさか3年間ずっとあのような場所に入れておくおつもりで?」
「それについてはまだ決めていない。ほとぼりが冷めたころに出すつもりだ」
「人のうわさは何とやらって言いますがここまで大々的に報道されているのです”クラス対抗戦の件”と違い簡単には忘れられませんよ。それとも何か考えがあるのですか?」
「考え…と言うより国際IS委員会からこのような通達が来ているんだ」
そう言いながら千冬は楯無に紙を見せる。そして彼女はその内容に目を通すがその内容はあまりにも理不尽過ぎた
「どういう事ですか!?織斑君をIS委員会で裁くってその裁判員が全員女性だなんて、これじゃぁ織斑君は間違いなく重罰に処されますよ。裁判への反対国もアメリカとイギリスの二か国だけです。」
そう書類には一夏を国際IS委員会にて裁判にかけると言う事が記されており大半の国が賛成に回っているのだ。反対国はアメリカとイギリスのみ。これでは間違いなくこの案件は可決されることなど目に見えていた。
「IS学園は他国からの干渉を受けないがさすがに今回ばかりは厳しいのだ。抵抗はしてみるがそれでも厳しいだろうな」
「”今回”ですか。まぁいいです私はロシアに根回しをしてみようと思います」
そう言いながら彼女は会議室を後にする。
そして彼女は歩きながら
「(これはかなりマズイわね。あの裁判が実際に行われたらよくて懲役、悪ければ死刑ね。さすがにあの話を聞いてしまったら織斑君は最後の最後まで理不尽な理由で人生を終えてしまう…それだけは避けなきゃね。)」
そんな事を思っていた
そしてアメリカではいつものようにロベルト大統領が記者会見を開いていた
「いつも言っているが時間は貴重だ。だから挨拶も手短に済ませるしこのまま質問タイムに突入しよう」
彼がそう問うと一人の記者が手を挙げ質問する
「大統領、なぜあなたは織斑一夏の裁判の件に関しては反対の立場をとるのですか?」
「凡な質問だな。そんな事では読者の購買意欲を上げることは出来ないぞ。まぁいい答えはこうだ彼は以前、福音事件の際に我が国の貴重なパイロットを救出してくれたのだ。そのような勇敢な少年をこのまま理不尽な裁判に掛けると言う事態を避けるために私が発表させてもらった」
「それは彼に恩を売り合衆国に引き入れるための陰謀ですか?」
「おいおいそれは言いがかりだぜ新聞記者。そんな事を言われるのは心外だ。俺的には勧誘するなら少年よりも可愛い少女を勧誘するね。」
「大統領、それは何時ものごとく女性に対するセクハラですか?差別とも受け取りかねますよ」
「このやり取り前にもしなかったか?まぁいい何度でも言うがこんなことでセクハラになるなら俺はすでにここにはいない。路頭に迷っているだろうな。そうなっていないと言う事は国民は俺を支持していると言う事になるぞ。」
そう彼はこのような感じで公的な会見場で悪びれもなくセクハラ発言を繰り返しているのにもかかわらず支持率は下がるどころかむしろ上昇している。ここが”失言で支持率を上げる奇怪な政治家”と呼ばれる理由であろう。それ以外にも彼はいろいろな政策を行っているが時代の流れかどうしてもこのような事ばかり取り上げられてしまうのだ。本人はむしろ楽しんでいる説が有るので余計にたちが悪い
ちなみにイギリスが反対している”表向きの理由”は大体アメリカと同じような理由だったりする
波乱の一日は始まったばかりである