IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第68話

彼らが彼女たちに魔術についての話が終わると、楯無が不意に彼らに対し

 

「一つ聞いてもいいかしら?」

 

「なんですか?」

 

「魔術って言うのに対して使用条件って有るのかしら?そこがうまく理解できなくて…」

 

「条件ですか、確かに条件は有りますよ」

 

彼女の問いに対し一夏はすぐに答え、言葉を続ける

 

「魔術を使うにしても術式とかそう言う段階で脳が汚染されるんです。宗教に疎い人たちって言うのは特に汚染されやすいですね。後は魔術師は全員が普通の体である必要があります。体に何らかの薬品を投与して学園都市のように才能を開花させているしている人間が魔術を使ったりしたら血管が破裂したりして死に至りますね」

 

彼は大まかにだが魔術を使う際の条件を告げていく。すると楯無は

 

「成る程、つまり私たちのような普通の日本人は魔術に手を出すのはやめた方がよさそうね」

 

彼女の言うとおり日本と言う国は諸外国と比べると宗教に疎く、特に十字教の普及率と言うのはかなり低い。

だからこそローマ正教は学園都市の目の前に教会を建設しようとしたのだろう。そこには裏の目的もあったであろうが、表向きは十字教を日本に広めるためであろう

 

さらに谷本が一夏に対して

 

「あっ私からもいいかな」

 

「ん、どうした?」

 

「織斑君と織斑先生が本気で勝負したらどっちが強いのかな…って思ったの」

 

「うーん、状況にもよるなぁ。生身の勝負なら俺は確実に負けるけど…魔術使って良いなら多分勝てると思うぞ」

 

「私もそう思う、多分だけど織斑先生は織斑君の爆撃避けれないんじゃないかなぁって思う。アレすごく早かったし…って言うかほとんどラグが無いよねあの爆撃。って私は思うなぁ」

 

一夏の言葉に対して鷹月が続けて言葉を発する。魔術と言うものをよく知らない彼女であってもあの爆撃は避けることは出来ないと感じさせるほど彼の爆撃は凄まじかったのだ。

すると一夏は

 

「あぁ…あれか。名付けて高速召喚爆撃だ、とにかく作業を簡略化して速さと威力を特化しようと調整したらああなった。」

 

「あぁなったって…そもそもあの爆撃自体かなり危険行為なのにますます拍車掛けてどうするの」

 

「そっ、そんなに危険なのあの爆撃?」

 

「えぇ、並の魔術師が真似したらまず自滅するわね」

 

召喚爆撃と言うのはただ呼び出した力を形も与えずに叩き込む技なのだ作業の簡略化と高速化と言えば聞こえはいいが、実際はかなり危険なのだ。そして彼はその危険な技を使うのに必要な作業を今まで以上に簡略化したのだ。魔術師のティナでさえ危険であると判断するほどなのだ

 

「(そもそも聖人でもないただの人間の織斑君にそんな真似が出来るのかしら、彼は普通の人間では制御できないほどの天使の力を肉体に宿し扱っているって事になるわよね…まさか”あの傭兵”と同じような肉体だっていうの…そして彼は自分の力でその領域まで進んだって事になるわよね…)」

 

彼の話を聞きレイシーは冷静に分析する。人間では扱いきれない”天使の力”体内に宿す。そのような状態の人間に彼女は一人だけ心当たりがあったのだ。

これは後で彼に直接聞けばいい。彼女はそう判断する。そうしている内に日が沈みかけていたのだ

すると一夏は

 

「もう時間だし、お開きにしようか。それとこの話はくれぐれも…」

 

「他言無用でしょ。分ってるわよそんな事」

 

鷹月がと谷本もうなずく。そして彼女たちは部屋を出ていく。するとレイシーは一夏を見ると

 

「織斑君、少し話に付きあって貰っていいかしら?」

 

「良いですよ。それに俺も外の空気を吸いたいって思っていたので」

 

「私は部屋に戻るわあまり遅くなると同居人が心配するし」

 

そう言い残しティナも部屋から出ていく、そして楯無は一夏を見ると

 

「私は留守番してるわ」

 

「それじゃぁお願いします」

 

一夏はそう言い部屋を出、レイシーは見つかるとまずいので部屋の窓から下に飛び降りる

そして彼は彼女と合流し、しばらく外を歩いて居ると不意に彼女が

 

「ねぇ、織斑君。あなたよく鈍感って人に言われない?」

 

「えぇ、周りの人間によく言われます。それがどうかしたんですか」

 

「その原因、なんだけどね。あなた他人からの愛情を知らないんじゃないの?」

 

「愛情…ですか?」

 

「そう。実のお姉さんはかなり貴方を放っておいているじゃない。そしてあなたは何時も一人だった、確かに女の子とご飯を食べた時も有ったかもしれないけど、そうじゃない肉親たちからの愛情を知らないから貴方は他人からの愛情表現に気づけない…まぁ学園での扱いを聞くと誤解しても可笑しくは無いし、同情もするわ」

 

一夏は両親に捨てられ千冬と二人で過ごしてきたが、その千冬でさえ中学までは身内の一夏に出さえ殺気を飛ばすほど厳しい人物だったのだ。その後も世界大会やドイツへの出張、学園での生活のあまり一夏はすっかり放っておかれているのだ。その生活に愛情の有無を問われれば間違いなく無いと答えてしまうだろう。

そして学園でも先ほどの制裁や、専用機持ちからの過剰なアプローチを受ければ一夏はその裏にある好意や愛情に気づかないのにも無理はない。鈴は暴力は無いがよく遊び過ぎて気の合う友達との認識で止まってしまっているのだ

そしてそれを聞いた彼は

 

「言われてみればそうかもしれませんね…鈴とは中学時代の連中とよく食べていたからただの友達って言う認識ですし…」

 

「そう言うところだと今部屋にいた子たちは良い子そうじゃない?織斑君的には誰が本命?」

 

「本命…ですか?」

 

「そう本命…まさかあの部屋にいた子全員!?ハーレム作っちゃう!?」

 

「いやいや…」

 

「男の子ならそのくらいの夢は持たなきゃダメよね、分かるわよ。今どきの男の子は度胸が無いもの君みたいな志を持つ子は重宝されるわよ。娘もハーレム入り…ドレスどうしようかしら…」

 

シリアスな話から途中で脱線した、と言うか自分から脱線した。その状況に彼は今までの状況を忘れ唖然としてしまう

そして一夏は

 

「あの…レイシーさん、そろそろ学園の入口に付きますよ」

 

「へっ?…あら本当。話している内にもう着いちゃったのね。時間がたつのは早いわ。それじゃぁね織斑君。今度はぜひイギリスにいらっしゃい、案内するわ」

 

彼女はそう言い残すと学園を出る。その後ろ姿を彼は見送る。そしてその後はゆっくりと自室に戻る事にする。明日からの長い拘束生活のためにも外の空気を長く吸っておきたいと彼は考えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夜。とあるマンションの最上階。前まで彼らがいた所とは違い、とても豪華で広い部屋に彼女たちは居た。IS学園に襲撃した人物たちである。するとその中の一人オータムが

 

「へっ、だから言っただろう。私一人で十分だって。こうして白式のコアがここに有るんだ」

 

「私が行かなければお前は捕まっていたんだぞ?」

 

「オータム様って呼びやがれエム!っといつもなら怒鳴っているがあいにく今の私は機嫌が良いんだ。怒鳴るのは勘弁してやるよ」

 

彼女がエムと呼ばれた少女に対してそう言っているとその部屋に一人の少年が入ってくる。それは一夏と交戦したクスグと言う少年だ。彼は戦闘の傷なのか所々に包帯を巻いている

 

「ケッ、人質なんてせこい手使った人間が言うセリフかよ、そう言うのは正攻法で奪ったやつが言っていいセリフだぞ」

 

そう言う少年の表情は明らかに不機嫌である

するとオータムは

 

「あぁ!?私がどうやろうと勝手だろう!」

 

「ハッ、正論言われて逆切れかよ。年増は怖いねー」

 

彼らがそう言い争っていると一人の女性が部屋に入ってくる

 

「やめなさい二人とも。さあオータムいらっしゃい、疲れたでしょう」

 

「ス、スコール。これ…」

 

スコールと呼ばれた女性が部屋に入ってきた途端、オータムは急におとなしくなる

そして彼女はスコールに白式のコアを渡す。すると彼女は

 

「よくやったわ、オータム、さすが、私の恋人ね」

 

「うん…」

 

そしてスコールはエムとクスグに対し

 

「エム、機体を整備にに回しておいて頂戴。それとクスグ、貴方たちも今日はもう休みなさい」

 

「わかった」

 

「へーいへい」

 

そう言い残し彼らは部屋を出て別な部屋に移動する。そこにはイオ、アトラク、オトゥーのメンバーがいた。そしてその部屋に入るとクスグがすぐに

 

「ハーハッハッハ!!見たかよ最後のオータムかわいらしく”うん”だってさ笑えてくるぜ!あの年増、何歳だと思ってんだよ」

 

「…オータム…そんな年じゃないはず…」

 

「確か20代だったはずだぞ」

 

「マジで、見えねぇ30行ってるかと思ってたぞ」

 

オトゥーとアトラクの言葉に彼はますます否定する。するとそれを見ていたイオは

 

「まぁいい。今回は我々の目的も果たせた。多少想定外な出来事もあったがな」

 

そう彼らの目的はあくまでも”ランプ”のテストであって戦闘ではない。あの時戦闘になったのは彼らにとっても大きな痛手であった。さらにはクスグ、アトラクといった主力メンバー余力を残したとは言え彼らが相次いで敗北し負傷したのだ。さすがにこの事態をイオも予想は出来なかったのだ。するとアトラクは

 

「すまん、まさかあそこまでやるとは私も予測が出来なかったのだ。それにしてもクスグ、なぜおまえはアレを呼び出さなかったのだ?」

 

「あぁ、アレは単にアイツの爆撃の発生タイミングが早すぎて呼ぶ暇がなかったんだよ。だから呼び出さずに戦ったわけ。油断したわけじゃないんだけどなぁ、イオの旦那が来なければこの程度の怪我じゃすまなかったな。アイツもまだ余力あったと思うし」

 

そしてオトゥーが不意に

 

「疲れた…エム…一緒にお風呂入ろう」

 

「ん、あぁ。」

 

そう言いながら彼女たちは風呂場へと向かう。するとその様子を見ていたアトラクとイオは

 

「エムも随分と変わったな。復讐だけを考えていた時とは大違いだ、オトゥーが良い役割を果たしたのか?」

 

「それもあるだろうが、予想以上に自分の復讐相手が陳腐な存在だとわかって復讐する気が失せたのだろうな。あの戦闘の話を聞かせるとアイツは織斑千冬よりも織斑一夏の方に対象を変えたのかもしれんな」

 

「科学によって強化されたエムが魔術によって強化された織斑一夏に戦いを挑むか…」

 

「まぁその時がいつになるかは分からないがな。それよりも欧州やアメリカにいるほかのメンバーは日本に来れそうか?」

 

「それは…おいクスグお前は何をするつもりだ」

 

イオは話を区切り何やら女装をしているクスグに視線を向ける。それを見たアトラクもため息を吐いている。するとクスグは悪びれもせずに

 

「えっ、風呂に侵入しようと思って」

 

そう言い残し素早くその場を去る。するとそれを見ていたイオはため息を吐きながら、同じくため息を吐き呆れていたアトラクに対し

 

「…アトラク、ロープを用意して風呂場の前に巣を張っておけせっかくのアジト破壊されたらたまらん」

 

「了解…なぜ私の技術がこんな事に…」

 

そんな事を言いながら彼はロープを器用に操作し巣を作り上げ衝撃に備える

ちなみにその後

 

「おーい、エムー、一緒に風呂入ろうぜー」

 

「貴様…性懲りもなくまた…!!」

 

「クスグ…もしかしなくても…変態…?」

 

「俺はただ女の子と風呂に入りたいだけって…っておいエム!!IS展開するなよ!!、オトゥーも魔術使うなって…こんな狭い所は俺の戦場じゃないんだってば…!!」

 

そんな騒ぎが風呂場で発生したとかそうでなかったとか

そしてイオとアトラクは再び深いため息を吐いた。

 

波乱に満ちた一日は幕を閉じる

そして待っているのは新たな波乱の幕開け

 


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