IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第6.5章 戦いの終わりと、これからの選択
第67話


彼らが部屋に戻ると中にいた彼女たちは一夏の顔を見て驚く

それもそうだろう一夏の左ほおが真っ赤に脹れていたのだから。そしてティナが二人の疑問を口にする

 

「どうしたのその顔?」

 

「説明したら殴られた」

 

彼は簡単に答えるが、彼女たちはそれ以上食い込むことはしなかった。

すると一夏が一呼吸置くと

 

「まぁ俺の顔はどうでもいいや。それよりも説明しましょうか。”科学とは違うもう一つの力”について」

 

一夏がそう言うと中にいる楯無、鷹月、谷本は気を引き締める。それもそうだろうこれからの話は自分たちの常識を大きく覆すかもしれない話なのだから

すると魔術師の一夏やレイシー、ティナはその様子に苦笑いをする。そして彼は

 

「そんなに力まなくてもいいよ、俺たちが使っている力の正体は魔術だ、そしてそれを使う人間を魔術師と言う。この二つはゲームとかでも出てくるから聞き覚え位は有るだろ?」

 

そうこの話を聞く対象はあくまでも魔術については何も知らない彼女たちだ、だからこそ彼は分かりやすいように説明していく。すると鷹月が

 

「魔術師…ってあの怪しい服とか着て杖から炎出したりするあれでいいんだよね」

 

「そう、それ。魔術ってのは科学とは違う全く別の法則の力、つまりはオカルトだね。それが使えれば鷹月さんが見たように炎出したり岩出したりすることが出来るんだ。もちろん結界や治療なんかもこれに入るよ」

 

それを聞いた彼女たちは、全員が驚いたような表情をする。もしもそんな便利な物が有るのならば今頃は学園都市やISのように世界中に認知されてもおかしくは無いのだ

するとここでレイシーが話を引き継ぐ

 

「まぁ魔術だってそんなに便利な物じゃないわ、魔術って言うのは私やティナみたいな一部の例外を除けば基本的には”才能のない人間が才能のある人間”に追いつくために生み出した技術よ」

 

「つまり私たち魔術師は無能って事、だから無能じゃなくするために私たちは別の力で補ってるの」

 

そう言いティナが話を引き継ぐ。人間は空を飛ぶことなど出来ない、だからこそ学園都市のような能力開発やISみたいな科学的なアプローチが必要なのだ

するとティナは

 

「まぁ一夏が良い例じゃない。織斑先生みたいな才能ある人間を羨んだ結果、一夏が魔術に手を出した。ほかの魔術師なんて言うのもそう、アイツが特別なんだから俺たちも特別になりたい、それが魔術の始まりね」

 

彼女たちがそんな事を言うと一夏は一瞬目を逸らすがすぐに

 

「分かりやすい例をありがとう…とはいえ無能な人間が無能な人間なりにコンプレックスを利用して生み出した魔術と言うのは結構便利なんだ。そうだなぁISを例に出してみるならばワンオフ・アビリティーって言うのは知ってのとおり一つの機体に付き一つだけ、これは知ってのとおりだろ」

 

彼がそう言うと同じ専用機持ちの楯無が

 

「まぁそう言う事になるわよね、発現していない機体なんかは装備を一々取り替えなきゃならないし、それでも第3世代なら一つの機体に付き一つの特殊兵器しか搭載されていないし、それ以上搭載できないわ」

 

「AIC、ビット兵器、衝撃砲なんかがそのいい例だよね」

 

楯無、谷本がそう言う、すると一夏は

 

「そうそう、でも魔術にはそんな制限なんて無いんだ、だから俺たちは自由に火を出せるし」

 

彼がそう言うと手のひらの上に小さな火が現れる

 

「風を生み出すことも出来るし、鷹月さんが見たように爆発起せたり岩を生み出すことも出来る」

 

そう言い残すと彼は手のひらから新たに風を生み出し火を吹き飛ばす

 

するとその様子を見ていた谷本は

 

「そう聞くと魔術って随分と便利なんだね」

 

「実際に便利だよ、目的持さえあれば自由に異能のセッティングが出来る。俺みたいに戦闘に特化してもいいし、ティナみたいに結界特化も可能なんだ」

 

彼女の疑問に対し一夏が答える。するとここで鷹月が彼に対し

 

「織斑君たちはそんな力を普通に使ってるけど良いの?IS条約みたいな決まりとかあるんじゃ…」

 

「そんな決まりないよ。」

 

「えっ、無いの!?」

 

彼の疑問に彼女だけではなく話を聞いていたほかのメンバーも驚く。ISに関しても基本的な運用の仕方は全てIS条約によって決められているのだ、彼女たちからしてみればそのような条約もなしに自由に力を振るえること自体に驚いていた

するとレイシーが

 

「ここらで組織の話と行きましょうか、さっき彼も言ったように魔術師を管理するような組織って言うのは存在しないわ、と言うよりそんな自由を縛る組織ならば間違いなく切り捨てるわよ」

 

「切り捨てる…?それってどういう事」

 

楯無の疑問に対し一夏が

 

「そもそも考え方自体が間違っているんですよ。科学って言うのは”個人の考えよりも全体の考え”を優先させるのが常識ですよね」

 

「えぇ個人が我を通せば我がままとして処理されるわよ」

 

「だけど、魔術師はその逆なんです、”全体の考えよりも個人の考え”を優先させるんですよ。例えばですけど、俺がIS学園の考え方に納得できないならば裏切ったって良いし言う事を聞かなくてもいいって事になるんですよ。魔術組織でも同じです、自分の考えに合わなかったり利益に結びつかないなら平然と裏切ったり独断行動をするのが魔術師です。」

 

「それで大丈夫なの?貴方たちやあの連中みたいな人間が力使いたいだけ使って、思想や教育を施していない…そんな組織なら簡単に崩壊するんじゃないの?」

 

彼女の答えに対してティナが答える

 

「もちろん私達魔術サイドって言うのは相当の飴と鞭を用意しているわ、全体じゃなきゃ達成できないような儀式もあれば、裏切れば追撃部隊を編成するなんてことも珍しくないの。あの時現れた連中も組織にならなきゃ達成できないような目的があるから行動しているって所ね」

 

「成る程ね、それで貴方たちはどこかの組織に入っているの?」

 

楯無がそう問うとレイシーが彼女の疑問に答える

 

「私はフリー、でも織斑君やティナは組織に入っているわよ。正体は明かせないけど、そこは我慢して頂戴。彼らにも事情があるの」

 

「分かったわ」

 

その問いに彼女は納得する。彼女も暗部に所属しており、深入りしないのは暗黙の了解ととらえているのだ

するとひと段落ついたのか一夏が

 

「魔術に関しては大まかな説明としてはこの位かな…なんか言い忘れてた事あったっけ?」

 

「うーん。一応、魔力とか魔法名とか霊装の話はしておいた方が良いんじゃない?別に教えて損は無いと思うわよ」

 

「おっと、その話を忘れてたな。そうだそうだ、それ言わなきゃだめだよな」

 

一夏とティナはそんなやり取りを繰り広げると、彼は

 

「まずは霊装の話からだな、霊装って言うのは分かりやすく言えば魔術師が使う武器だ。それは槍でもいいし短剣でもいい、とにかく魔術師が儀式とかをやるときに必要な武器だ、たとえば…」

 

そう言いながら彼は自らの霊装を取り出し見せる、するとそれを見た谷本は

 

「わぁ、本当に色々な武器があるね。剣にトロフィー、紋章の書かれたものもあるんだ」

 

「これで織斑君は爆発だったり水の刃や風の球体を呼び出してたんだね」

 

「こんなもの持ち込んでたのね」

 

彼女たちは様々な反応を示す。すると一夏は

 

「見て貰った通り霊装はいろいろあるんだ、ここに有るのなんてほんの一例に過ぎない、大きさもそれぞれさ。そしてこれに魔力を通すことで初めて使用できるんだ。これにも例外はあるけどね」

 

そしてティナが魔力の説明を始める

 

「魔力って言うのはご存じのとおり魔術を使う時に必要なエネルギーよ、呼吸法とかいろいろな手段を用いて生成するの。もちろんこれもやり方によって質は大きく変わるわ。私や母さんは魔力使って魔術を使うけど、一夏は魔力作ってさらに別次元の力を引き出してるわね」

 

彼女の説明をかみ砕いて理解した鷹月は彼女に対しこんな疑問をぶつける

 

「つまり織斑君は魔力を作ってさらにその力で別な力を使っているって事?」

 

「そう言う事、一夏の使う力を天使の力(テレズマ)って言うわ。文字の通り天使が使う力よ、性質や属性が固定される代わりに莫大な力を振るえるけどその分制御はとても大変よ、ハイリスク・ハイリターンって所ね」

 

そして最後に一夏が魔法名の説明を始める

 

「そして魔術師って言うのは魔法を使う目的をラテン語で己に刻むんだ、いわゆる魔法名って奴。俺なら”iaceo231”って言う風にな後ろの数字3つはダブり防止用だ、自分の目的を決めてそのために行動する、そのための組織だ。さっきも言ったようにそれに合わなければ容赦なく切り捨てるんだよ」

 

そう言い一通りの説明を終えると、谷本が

 

「魔術なんて今まで架空のお話の中だけかと思っていたけど本当に会ったんだね…なんか羨ましいな、そう言うのに出会える織斑君達って」

 

「まぁ私たちずっとそう言うのと無縁な生活だからね…あれ、ちょっと待って、織斑君が魔術師なら織斑先生はそれを知ってるって事になるんじゃぁ…」

 

「言われてみればそうね…どうして織斑先生は魔術を知らない訳?」

 

谷本の言葉に鷹月が反応し、その疑問に楯無がさらに問をぶつける。すると一夏は

 

「千冬姉は知らないよ、そもそも俺が魔術師になったのだって理由があるんだ、第二回モンド・グロッソ、この時何があったか分かる?」

 

「勿論織斑先生が二連覇をして名実ともに世界最強になった大会だよね、それがどうかしたの」

 

一夏の問いに谷本が答える、そう彼女の答えは正解だ。あくまでも表向きの出来事だが、そしてここからはティナですら知らない真実を一夏が話していく

 

「そう、正解。でもさその時に誘拐事件が発生したことを知ってる?」

 

彼の疑問に誰も答えない、と言うより答えれないのだ、”あの事件”は新聞の片隅掲載されるか新聞社によっては掲載すらしなかったのだから彼女たちは知るはずもない。

すると一夏はひとりでに話していく

 

「犯人の目的は簡単だった、誘拐して優勝候補の対戦相手を棄権させること、そのために犯人は身内を誘拐し後はそこで待つだけだった。所が決勝は予定通りに行われ激怒した犯人はその身内を殺そうとした、その寸前で助けに現れたのが魔術師だったんだよ。」

 

「その身内って…まさか!?」

 

「そう俺だ、これは俺が組織に入った後で知らされた話だったんだが、どうやら日本政府は俺が誘拐されたことを知っててそれでも千冬姉に真相を教えなかったらしい、あの時にあの人たち来なければ俺は間違いなく死んでいたよ。千冬姉とかドイツ軍の人たちが来たときには俺はすでに助けられていたのさ、その後は知ってのとおり千冬姉は現役を引退、ドイツに一年間滞在したんだ、その間に俺は魔術を身に着けたのさ」

 

谷本の疑問に一夏は答える、その言葉にレイシー以外の全員が驚く、無理もない世界大会の裏でそのような事件が発生していたのだから

すると谷本は

 

「それで織斑先生から何か言われた、真相とか」

 

「いや何も、答えてすらくれなかった、そりゃそうだ千冬姉はドイツから帰って来てからすぐにここの教員になって寮長になったんだから話す時間なんて有るわけがない」

 

「そんな…」

 

「(成る程ね、それゆえに魔術師になったと。そして今までの話で分かったわ、織斑君が鈍感な理由が。こんな簡単な理由だったのね)」

 

谷本が言葉を失い、その話を聞いていたレイシーはティナが言っていた一夏が鈍感だと言うその理由に気づく

彼らの話は続いていく

 

 

 




谷本さんと鷹月さんの魔術師フラグどうしましょう?
後前回の千冬の話は賛否両論でしたね、ご意見ありがとうございます

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