IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第66話

一夏が交戦している時、レイシーもまた戦闘状態に突入していた。

彼女はワイヤーで西洋剣を作り出し、目の前にいる男性と少女めがけて走り出す。ただしその速度は普通の人間の出せるような速度ではない。

 

「…ッ!!…この速度…あなた…聖人?」

 

そう言いながら彼女の剣を少女は水の剣で受け止めながらそう告げる。体格差もあってか若干彼女が押されている。するとレイシーは

 

「残念ながら私は聖人じゃないわ。…っと」

 

そう言いながら彼女は大きく後ろに下がる。そしてその後すぐに太いロープが彼女たちの間を裂くように通過する。そしてそのロープは徐々に細かく分裂し蜘蛛の巣のような物を作り出していく。

 

すると彼女はその巣の線の上に器用に立つ。そして正面には男性と少女が立っている

そして男性は

 

「よもや早い段階でこれを使う事になるとはな。しかも生身でその速度、相当な実力者と言った所か。気を付けろよオトゥー」

 

「…アトラクこそ…きをつけて…」

 

そしてアトラクと呼ばれた男性はその巣の上を高速で走り出す。その速度は先ほど彼女が出した速度と同等か或いはそれ以上の速さが出ていた。男性は懐からナイフを取り出し彼女を切り裂こうとするが、彼女は先ほどと同じようにワイヤーの剣でナイフを受け止める。しかしそれだけでは終わらない。

彼女は一瞬後ろに下がり彼を大きく踏み込ませると、そこから彼の重心を足で薙ぎ払い、体制を崩すと、すぐさま剣で横に薙ぎ払う。

 

「くっ…当たるか…」

 

しかし彼はそれをすぐさま素早く後ろに移動することで直撃を避けるが、それで終わったわけではない

 

「甘い!!」

 

彼女はすぐさま大きく一歩を踏み出し下がる彼を追撃、ワイヤーの剣を解体すると今度はそのワイヤーが彼女の右腕に巻きつく、そして男性に追いつくとその拳を叩きつけようとするのだが

 

「…私も居る」

 

そう言った少女は彼女と彼の間を割くように水の障壁を呼び出す。そして彼女はその障壁を殴りつけ、大きな水しぶきが上がる。彼はそのまま後ろに下がり間合いを取り直し、レイシーは衝撃で飛ばされるが空中で一回転すると器用に巣の上に着地する

 

すると男性は

 

「高速移動術式の使い手か…そして武器の正体は結界。と言う事は貴様は結界と高速移動術式を併用して使うと言う事か。速度に付いてこれたと言う事は似たような魔術師との戦闘経験もあるのだろうな。厄介な近衛だ」

 

「(久しぶりに高速移動術式使ったけど意外と速度は落ちてないわね、結界の制度はあの子の結界維持も含めても制度は落ちているわね。)まぁ正体がわかっても勝てなきゃ意味ないわよ。人数はそっちの方が多いんだし。まっ、むしろこの一手で勝負を決められないなら次の一手で私の勝ちは確定よ」

 

男性の解説に彼女は顔色一つ変えずにむしろ挑発するように言葉を発する。

すると男性は

 

「ならば少々本気を出してやろう。蜘蛛の神と言われる旧支配者の力を使う私の本気をな!!オトゥー、仕掛けるぞ」

 

「…わかった」

 

男性はそう言うと新しくロープを取り出し、それを高速で移動させ新たな巣を作り出していく

そして彼女は水の剣の剣先を下に構えると、その水が巣を伝うように移動し、レイシーに多角攻撃を仕掛ける。そして男性も二つの巣を高速で移動し彼女を追い詰める

 

すると彼女は新たなワイヤーを取り出し自分の背後に結界を作り出し、そこから攻めてくる水を防御する、そして素早く上に飛び正面や死角から攻めてくる水を回避、新たな巣に飛び乗るがmそこからは高速で男性が迫って来ていた。

 

「(さていくら腕に結界を纏ったワイヤーを巻きつけているとはいえナイフと接近戦は仕掛けない…)なっ、腕に巻いたワイヤーはどうした、素手でナイフとやるつもりか!?」

 

そう先ほどまで彼女の腕に巻きついていたワイヤーが無くなり、彼女は素肌なのだ。

すると彼女は笑みを浮かべたまま

 

「言ったでしょ、次で勝負を決めるって」

 

そう言う彼女の腕からは一本のワイヤーが地面に向かって伸びていた。その先に有ったのは彼が作り出した巣と…先ほど少女が放った”水”

 

ワイヤーは器用に水を囲うと、水の部分をハンマー投げの要領で男性に向かって投げつける

そこにはかなりの勢いが有り、男性は回避することが出来ずに水に直撃する。そして直後に水しぶきが上がり男性は巣の上に落ちる

 

「グッ…まさかここまでやるとは。今回の勝利条件はあくまでも目をこちらに向けさせることと”ランプ”のテストだ。そう言う意味では達成かもしれんな」

 

「…どうする…退却する?」

 

少女がそう問いかけたときにその戦闘場所とは別の場所で大きな爆発音が聞こえる。

すると男性は

 

「この音はクスグの攻撃じゃないな…向こうも状況は思わしくないようだ、仕方が無い。オトゥー退却するぞ」

 

「クスグは…回収しなくていいの?…」

 

「あいつはイオに任せる」

 

男性はそう言い巣を素早く解体すると少女を連れて素早く脱出する。むろんレイシーは追撃をしない

そして地面に着地すると、谷本の周りに張った結界を解除する。すると今までの様子を見ていた彼女は

 

「あの、レイシーさん今の人たち追わなくても…それより先生方に連絡しなきゃダメなのかな…」

 

そう言い彼女は混乱しているが、レイシーは彼女の方を見ると

 

「落ち着いて、それに今から追撃しても追い付かないし、この学園の教員じゃ戦っても勝てないわ。むろんあの”織斑千冬”でもね。それよりも今は向こうの方に行きましょ、爆発音が心配だわ」

 

そう言いながら彼女は谷本をつれ、爆発音のした方向に向かう

 

 

そして先ほどの一夏の戦闘を見ていた鷹月とティナは

 

「織斑君…すごい、カッコいい」

 

「えぇ…(ただの人間の一夏があれだけ膨大な量の天使の力を制御できているってどういう事?法の書の時の戦闘は本当に加減していたって事よね。)」

 

そんな会話を一夏はよそに目の前の爆発地点を見ている

 

「(さっきの攻撃は手ごたえありだ。とはいえ油断は禁物だ。もしかしたら逆襲って事もあるかもしれないしな)」

 

彼はそう考えながら付近を見つめる。すると煙が晴れるが、その場所には少年がいなかった

 

「ん?逃げたか…ッ、そこか!」

 

一夏は少し離れた場所から人の気配を察知したためそこに火で作り出した短剣を放つ。するとそこには、先ほどの少年とは別な男性が立っていた

 

すると少年は男性に対し

 

「ありがとなイオの旦那、さすがにアレの直撃はまずかったぜ」

 

「まぁ、この”ランプ”のテストも兼ねていたのでな。風景とはいかないが人物位ならば作成は出来たようだな」

 

イオと呼ばれた男性の手にはランプが握られている。するとそれを見た一夏は

 

「戦闘の途中から入れ替わってたって事か、しっかりしてるな。(相手は二人か、片方は良いとしてあの男の実力が分からないな…ここで引いてくれればいいが…戦闘になるとちょっときついな)」

 

彼がそう考えていると不意に男性は

 

「さて、引くぞクスグ。もうここに用はない。オータムもすでに脱出したようだ」

 

「向こうの目的はどうなったんだ?」

 

「エムの話だと自分の機体は破棄したようだが目的の物は奪取に成功したようだ。今学園から脱出したらしくエムが回収に向かったそうだ」

 

「チッ、面白くねぇ。人質使ってまで僕は目的を果たしたくないね、悪いねうちの幹部が汚い手使っちまって」

 

少年はそう言う。そして一夏は白式が敵に奪われたことを察知する。と

 

「今回はそっちの勝ちって事にしといてやる。ただ次はこうはいかないぞ。機体は返してもらうし、お前たちも倒させてもらう」

 

「上等だ、僕の名前はクスグだ。覚えておきな、次は必ずお前を灰にしてやるよ」

 

「それでは失礼する」

 

そう言いながら彼らも引き上げていく。すると一夏はため息を一つ吐き

 

「はぁ、何とか引いてくれたか、いてて…あちこち火傷して痛いんだけど」

 

そう言いながら腕をさすっていると、一夏の近くにISを展開した楯無がやってくる。そこには悔しさが滲み出ていた。

 

「一夏君、ごめんなさい。白式、取り返すことが出来なかったわ。…」

 

彼女はそう言いながら機体を解除し一夏に頭を下げる。すると一夏は

 

「楯無さん、気にしないでください。確かに機体とられたのは悔しいですが、それでもこうして生きていれば必ずリベンジのチャンスは来ます、その時に取り返せばいいんですよ」

 

「一夏君、前向きなのね、ふふっ、おねーさん好きよ」

 

「「(またフラグを立てやがった)」」

 

そんな様子を彼女たちは呆れたように見つめる。するとそこの別の女性の声が響く

 

「その様子だとそっちも終わったみたいね。見た感じ戦いには勝ったけど敵の目的を達成させてしまったって所かしらね」

 

「そんな所です」

 

「静寐ちゃん、こんな所にいたんだ」

 

レイシーと一夏がそんなやり取りをし、谷本は鷹月を見つけ安心している

すると楯無は

 

「詳しい説明は後にするとして、一夏君、先にこっちの用事を終わらせるわよ。」

 

「分りました」

 

一夏はそう言いながら楯無の後に付いていく、ティナ達とはいったん分かれ後で合流すると言う事を伝えるのを忘れずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼らは会議室に行く。魔術による戦闘の騒ぎは気づかれては居ないが追撃したラウラ達からの報告により学園に侵入者が来ていたことは告げられていた、そして会議室には有事における最高責任者の千冬のほか、副担任の麻耶その他にも教員が数名居た

楯無は魔術の事を報告せずにあくまでもISの戦闘の部分を詳細に説明していく

 

そして千冬は報告を聞いた後に殺気を含んだまま一夏を殴りつける

一夏は床に倒れるが何も反論はしない。麻耶やほかの教員はその様子に驚き声を出せない

 

「織斑、なぜ殴られたかその理由は分かるな」

 

「…」

 

「貴様は自分一人の勝手な判断で希少なISのコアを敵に引き渡したのだ、それがどういう事かを分からないほど貴様は馬鹿なのか?」

 

そう千冬は言う。彼女の言う事も間違っては居ない。と言うよりココは科学と魔術に置いての考えが思いっきりずれて居ることを一夏は再認識される。魔術師は”全体よりも個を優先する”が、科学は逆”個よりも全体を優先する”のが常識だ、魔術師の立場からすれば一夏の行動も有りかもしれないが、科学からすれば一夏の行動はあまりにも愚かすぎるのだ。

一夏もそれを理解しているため彼女の言う事には反論しない、と言うより反論しても無駄と思っているのだ。

すると千冬は一呼吸置くと

 

「とりあえず今日は良いとして明日からは無期限で懲罰部屋に入って貰う。猶予は今日だ荷物を纏めておけ、それと最悪の事態も考えておけよ、それぐらいの事をお前はしたのだ」

 

「織斑君、更識さん傷の手当もありますのでここから出ましょう」

 

そう言い麻耶は一夏と楯無を連れて会議室を出る、そして一夏は最後に千冬に対し一つの疑問をぶつける

 

「織斑先生やほかの先生たちは専用機持ちと一般生徒、どっちか一方しか助けられないとしたらどっちの命を優先させますか?」

 

すると千冬は

 

「質問にすらならないな。そもそも専用機持ちは国家により訓練された人間だ、貴様のよう未熟ではないのだから、そもそも狙われることすらなくこんな事態にすらならないのだ」

 

「そうですか…」

 

彼はそう言い残すと部屋を出る

その後二人は応急手当を受けそのまま自室へと戻る。とはいえ楯無の荷物も一夏の部屋にあるのだから当然と言えば当然だが

 

そして中にはティナ、鷹月、谷本、レイシーがいた。


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