IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第65話

少年は両手から火球を呼び出すとそれを一夏めがけて放つ。大きさはおよそ車のタイヤと同じくらいの大きさだ。当たればひとたまりもない。しかし一夏はそれを回避しようとはせず。火球が彼に直撃し彼の居た辺りは火の海に包まれる

 

「織斑君!!」

 

その様子を見た鷹月は声を上げる。それはそうだろう目の前でクラスメイトが火球に飲み込まれたのだから。

すると、突然彼の居た周りで大きな竜巻が発生し、炎を吹き飛ばす。そして中心地点には一夏が立っていた。もちろん無傷はいかず、腕などにやけどはあったが戦闘続行に支障はない。そして一夏は目の前の少年を見つめると

 

「あぶねぇ…さすがにこの火力はちょっとびっくりしたぞ…」

 

「へぇ、やるじゃん。でも守ってばかりじゃ僕には勝てないよ」

 

そう言いながら少年は炎の塊を連続して射出するが、一夏はそれを風の障壁や岩の柱を呼び出すなどして攻撃をすべていなす。状況では一夏が一方的に攻撃されていたがこれには理由がある。それは…

 

「(柱の反対側には楯無さんが居る。しかも場所が場所だ、下手に大規模攻撃なんてすればここら一体が吹き飛ぶ…しかし、アイツの力の源は何だ?武器だとしたらやっぱり有名所だと北欧神話に出てくる武器の”レーヴァテイン”が最有力…でもあいつはそれらしい武器を持ってはいないし…ステイルみたいにルーンを配置しているわけではない…だとするとこの力の源は一体…?)」

 

そう彼の魔術は威力が高すぎて下手をすればここにいる全員が死亡すると言う事態さえ起こってしまうのだ。そう言う事もあり彼は全力を出すことが出来ていない。そしてそれと並行するように彼は目の前の少年の力の源を探ろうとしている。

彼はステイルのように大量のルーンを配置しているわけでもなければ、神話に出てくるような伝説の武器を持っている様子もない。そして彼の魔術は一夏のように大量の”天使の力”を用いていると言う訳でもない。この事実が彼の動きを鈍らせているのだ。

とはいえ一夏もただでは済まない。彼は杯を左手に持つと大量の水を呼び出し、近くにある壁を破壊し外につながる出口を作る。狭い所が嫌ならば広い所に出ればいい、彼の単純な思考である

 

そして彼は柱の反対側の様子を探るがよく見えず、なおかつそこからは剣劇の音が常に響いているためあの場に居る楯無も戦闘中でありこの場に残すことが危険だと判断すると一夏は鷹月の手を取り出口から脱出する。

 

すると彼女は走りながら一夏に

 

「織斑君…学園都市の超能力者なの?」

 

「違う。詳しいことは後で説明する。とりあえず今は広い所に出るのが先だ。」

 

こうして彼は彼女の手を取り走り続ける。

そして戦闘になっているのは彼だけではなかった

 

 

「あらら、私のところにも来たのね…」

 

呆れながらそう言い放ったのは、レイシー・ハミルトンである。彼女もまた谷本と学園祭を見て回っていると、突然周りから人が消え、彼女はそれを人払いだと判断すると谷本を自分の後ろに置き、目の前に現れた男性と少女を見つめる

 

すると男性は

 

「うちの無能幹部が迷惑をかけたな。私とてこんな真似はしたくもないんだが…だが敵である以上容赦はせんぞ」

 

「私達…強いよ?…いくらあなたが強くても…無理」

 

そう言いながら男性はロープを取り出し、少女は水を纏った剣を取り出す。

するとレイシーはため息を吐きながら

 

「はぁ…ごめんなさいね。谷本さんこんな事に巻き込んじゃって。」

 

「あの…この人たちは一体…それに…」

 

「もうじき娘も来るわ。詳しいことはあの子に聞くといいわ。」

 

そう言うと彼女は持っていたカバンから釣り糸ほどの細さのワイヤーが巻きついた束を4つほど取り出すとそのうちの一つを彼女の上空めがけて放つ。するとそのワイヤーは彼女の周りで様々な紋章を描きながら地面に向かい着地する。それは彼女を守るための複雑な結界であった

 

するとそれを見ていた谷本は

 

「コレって…私が前に見た紋章もある…となるとこれは…夢?」

 

「夢じゃないわよ。世界には神秘が満ち溢れているってこと…」

 

そう言いながらレイシーは目の前の二人を見据えると笑みを浮かべる。その笑みはあまりにも力強く、見ているものの不安を取り払うような笑みであった。

 

そして彼女は目の前の二人に

 

「さてさて…祭りを荒らす不埒者にはちょっとした罰が必要ね。引退したとはいえ近衛侍女を務めた私の実力。舐めていると大怪我するわよ」

 

そう言いながら彼女たちも激突する。

 

 

そしてティナもまた騒ぎを聞きつけ外を走っているとちょうど一夏と合流することが出来た

そして彼女は鷹月を見つけると一夏に対し

 

「一夏、いったい何があったの?」

 

「妙な連中が鷹月さん人質にして白式渡せとか言って来たから素直に渡して、そしたら今仲間と思わしき魔術師と交戦中」

 

彼は凄く分りやすく彼女に説明する。それを聞いた彼女もまた苦笑いしつつ状況を理解すると彼に対し

 

「それで私は何をすればいいのかしら?人払いならこのあたりに張ってきたけど…っと。敵さんのお出ましね」

 

「そう言う事、ティナ悪いんだけど…」

 

「はいはい、結界張って鷹月さん守ればいいのよね。あなたの言いそうな事位わかってるわ。その代り負けるんじゃないわよ。私たちの王子様」

 

「やっぱ…格好がまずかったか」

 

彼の格好は演劇の時に着用していた服のままである。とはいえ所々は先ほどの攻撃で焼けてしまってはいる

彼らがそんなやり取りをしているとすぐに一夏と戦っていた少年が追いついてくる。すると少年は笑いながら

 

「ははっ、まさか僕好みの戦場に案内してくれるなんて気が利くね。」

 

「言っとくけど…広い所が得意なのはお前だけじゃ無いぞ」

 

彼はそう言うと直ぐに少年の周りで爆発が発生する。

その威力は凄まじく、付近の地面は軽く抉れてしまっている。

しかし、それでは少年は倒れない。すると少年は笑いながら

 

「ハハッ、イオの旦那の言うとおりこいつは楽しめそうだ。良いぜ。もっと僕を楽しませてよ。旧支配者の力を使うこの僕をさ!!」

 

そう言うと少年の周りでは先ほどの火柱とは比べ物にならないほどの大量の火柱が上がる。

これを見ていたティナは

 

「ちょっと、何、あのふざけた火力!?相手は神話に出てくるような武器を使っているとでも言うの!?」

 

魔術師の彼女から見ても炎は異常な火力を示していた。そして結界を使う彼女から見てもあの炎は直撃などすれば、大きな被害をもたらすことなど目に見えていた。

そしてその火柱は学園を焼き払うために放つのではなく、少年の敵である一夏に目駆けて放たれる。

 

「これは…マズイな…今回ばかしは本気を出すか…」

 

「本気?出す前にのまれて灰になっちまえよ!!」

 

そう言いながら少年は火柱を一夏にぶつける。すると少年は笑いながら

 

「まっ、こんなもんだな。さて、それじゃ僕は帰ると…なんだ…?」

 

先ほど火柱が直撃した位置の様子がおかしい、本来ならば一夏の体を焼きつくし、自然と消滅するはずの炎がいまだに燃え続けているのだ。しかもその勢いは衰えることは無い

 

すると炎の中心点から声が聞こえてくる

 

「いくら裏ワザ使っているとはいえ俺だって十字教の人間だ。お前も知ってるよな、”天使長”が一体何の属性を司っているのかぐらい。そしてその”天使長の司る属性”を最も得意とする俺が、この程度の炎で灰になるわけがないだろ!!」

 

彼がそう言い終わると辺りに有る炎はすべて吹き飛ばされ、新たに生み出された炎の壁が少年めがけて襲い掛かる。

 

「コイツ…!!」

 

少年も炎の壁を呼び出すとそれを一夏の放った壁にぶつける。

しかしそれでは終わらない。もとより一夏は炎の壁で勝負を付けようなど思ってもいなかった

 

「さて、今まで散々押されたんだ。ここからは反撃の時間だ!!」

 

彼はそう言うと大量の水の刃を弧を描くような動きで少年めがけて放つ。

少年はあわてて回避するが、その回避した先には風の球体が高速で迫って来ている。ここで少年は火球を呼び出すと球体めがけて放ち、これを相殺。

 

そして少年は一夏めがけて今度こそ必殺の一撃を放とうとするのだが、

 

「そうだ、お前は必ずそこに移動する。俺がそう言う風に”誘導”したんだからな」

 

「何…?」

 

「今までのは誘導。本命はコイツだよ」

 

一夏はそう言うと右手に持った短剣を勢いよく下に振り下ろす。すると少年の四方に白い閃光が現れる。

 

「お前…!!」

 

「卑怯だ、なんていうなよ。先に人質なんて卑怯な方法を使ったのはお前達だろ」

 

 

 

そう言い終わるのと爆発が起こるのはほぼ同じタイミングだった

 


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