IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

70 / 126
第64話

一夏は教室に戻り接客を続けてしばらくたったころ、教室に再び楯無が現れる

すると彼女は彼に

 

「さて、一夏君、ちょっと手伝ってもらうわよ」

 

「決定事項ですか…俺の意志は一体…」

 

すでに決定したように彼女は告げた為一夏はため息を吐く。ちなみに一夏はあの後休憩に入らずずっと接客をしていたため若干だが疲れの表情が見える。休憩に入らなかった理由としてはお客さんの多く休憩に入れなかったのが理由だ。

そして彼はさらに

 

「はぁ…それで、何を手伝えばいいんですか?」

 

「生徒会の出し物に出て貰うだけよ」

 

「出し物…何やるんですか?」

 

「演劇よ…観客参加型演劇」

 

彼女の言う言葉に一夏は目が点になる。さすがに言っている意味が理解できないため絶句したと言った方が正しいだろう。そして彼女は一夏を連れてこうとするとシャルロットが抗議する。さすがに一夏を連れて行かれるのは困るのだろう。。しかし彼女は

 

「シャルロットちゃん以外にも箒ちゃん、セシリアちゃん、ラウラちゃんにも来てもらうわよ」

 

その言葉に全員が目を丸くするが楯無は彼女たち全員に耳打ちをする。するとなぜか全員が納得してしまった。ここで一夏は気になっていた事を彼女に尋ねる

 

「それで、演劇って…何をやるんですか?」

 

そう言うと彼女は扇子を開くそこには”追撃”の文字が書かれている。すると

 

「やる演劇は…シンデレラよ」

 

その後一夏は着替える前に飲み物を買いに行く許可を楯無にもらい一端外に出る。そして飲み物を買い、更衣室に向かっていると

 

「おっと…危ない」

 

「きゃっ…」

 

少女はよそ見をしていたのか一夏に正面からぶつかってしまい、尻餅をついてしまう。すると一夏はあわてて少女に

 

「大丈夫!?怪我とかないか?」

 

「うん…大丈夫…私もよそ見してたのが悪いから…」

 

その少女は長い青色の髪が特徴の女の子であった。年齢は一夏よりも下であろう

そして一夏は彼女に手を伸ばすと

 

「大丈夫?よかったら捕まりなよ」

 

「ありがとう…」

 

すると少女は一夏の手をつかみ立ち上がる。すると少女はしばらく一夏を見つめていると

 

「私の…運命の相手…見つけた…」

 

「はい?」

 

一夏は意味が解らなかった。ぶつかって助けた相手がいきなり自分を運命の相手と言うのだから一夏は混乱するに決まっている。さらに少女は

 

「でも…私は”用事”があるから今は貴方とお別れ…また…あえるといいなぁ…」

 

「そっ、そうかい?それじゃぁ俺も急いでるから」

 

そう言うと彼は走りながら更衣室に向かう。その時少女は顔に笑みを浮かべていた。その表情はまさに欲しかったものを見つけたときのような表情であった

一方彼は更衣室に入ると中に用意された衣装を着用する。

 

「(なんだ…コレ?王様か何かか?おっポケットが有るなそれじゃぁご厚意に甘えて霊装を入れさせてもらいますか)」

 

そう言いながら彼は霊装を仕込むと、ちょうどいいタイミングで外から楯無の声がする

 

「一夏君、着替え終わったー?」

 

「終わりましたよー」

 

彼がそう言うと彼女は室内に入ってくる。すると彼女は王冠を一夏にかぶせる。そしてそれを見た彼女は

 

「うん、一夏君似合ってるじゃない。王子様って感じよ」

 

「そりゃどうも、そう言えば俺台本なんて見てないんですけど大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ、基本はこっちで進めるから一夏君はそれに従ってくれればいいわ」

 

そう言うと彼女は一夏をつれ第4アリーナへと向かう。そこはすでに特設ステージとなっておりセットなどもかなり本格的に作られている。ちなみに観客席は満員であり、中には一組のクラスメイトもいた。どうやら話を聞きつけ一組に限らずかなりのクラスが出し物を中断しこの演劇を見に来たらしい。

 

そしてブザーが鳴りいよいよ幕開けとなる。

 

「むかしむかし、あるところにシンデレラと言う少女が居ました」

 

そうなレーションするのはクラス対抗戦での実況経験もある放送委員の天野だ、その声はまさにベテランともいえる風格がある

 

「(よくある出だしだな…そう言えばシンデレラ役って誰なんだ?)」

 

彼がそんな風に考えているとナレーターの彼女の声の雰囲気が変わる

 

「しかし、そのシンデレラと言うのは本当の名前ではない、舞踏会と言う名の戦場を潜り抜けし最強の戦士たち。彼女たちにふさわしい称号。それがシンデレラ!今宵もまた血に飢えた彼女たちが現れる。王の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い舞踏会と言う名の戦場が幕を開ける!!」

 

シンデレラとは言い難い演劇が幕を開けた。さすがの一夏も混乱していると目の前にはドレスを来た鈴が現れる。すると彼女は一夏に対し

 

「さて…と。その王冠をいただくわよ。アイツなんかに獲られるくらいなら私が貰うわ、覚悟しなさい!!」

 

そう言うと彼女は飛刀を構え一夏に突撃してくる

 

「(この王冠に何かあるな…!!全く正体くらいは明かしてくれてもいいだろうに!!)」

 

そして彼は鈴と交戦状態に入る。鈴の狙いは王冠らしく動きも一夏を傷つけないようにしているため一夏としても動きが読めやりやすい。そして彼は攻撃を回避する傍ら彼女に声をかけるがこれは演劇、それらしいセリフで言う

 

「この王冠の軍事機密がそんなに知りたいのか!!」

 

「当然、機密の価値を知らないからそんな事が言えるのよ」

 

「(今の言葉…鈴や…ほかの連中は答えを知らされているって事か。…)」

 

そう彼女は今”価値を知らないから”と言ったのだ。それは逆を言えば自分は価値を知っていると言う事にもなる。そして一夏もそれをすぐに理解した。と言うより彼は王冠の正体を知りたいと言う意味で彼女に問を投げたのだ、彼女は無意識で言ったのだろうが一夏にしてはそれは答えを言っているようなものである

と、ここで彼は不意に顔の近くを光線が泳いでいることに気づく

すると突然顔のすぐ近くを何かが通り過ぎ、彼の頬に血の線が現れる

 

「(銃弾!?って事はセシリアか!!。暗さ的にスコープと舞台の明かりで俺に狙いをつけているのか、当たった場所からしておそらく大体の予測で狙ってきてるな…これは…まずいな…上条君のあの言葉を叫びたい気分だ)」

 

彼はそんな事を考えながらも鈴を振りきり、物陰に隠れることにする

 

その頃それを観客席で見ていたティナは

 

「(一夏、本当に大丈夫かしら…凰さんは王冠だけを狙っているけれどさっきの狙撃なんか明らかに危ないし…これは援護の一つでもしたくなるわね…)」

 

彼女が思っている間にも一夏は追い詰められていく、すると途中からどういう訳か鈴と箒がバトルを始めてしまった。と言うより鈴が仕掛けて行ったと言えるが

さらにはフリーエントリー組の参加と言う事で大勢の女子生徒が一夏めがけて走り出す。こうなってしまうと収集不可能だ。そして一夏はステージから姿を消す。

 

「(ん、どこに行ったのかしら?…ッこれは魔力!?アリーナの外…ちょっと様子を見に行く必要があるわね…)」

 

彼女はあわてて席を立ち、アリーナを出る。

 

その頃一夏も一人の女性と相対していた。彼はあの時女性に連れられる形でアリーナを脱出させられ更衣室へと連れてこられたのだ

 

「えっと…誰ですか?」

 

「名乗るほどの者じゃありませんよ、それに名乗るまでもなく、貴方は死ぬんですから」

 

そう言いながら彼女は素早く一夏の懐に潜り込み殴ろうとするが一夏はすぐさまその攻撃を回避する

 

「…っと。何なんだいきなり!?」

 

彼がそう問うと女性は邪悪な笑みを浮かべ

 

「なに、テメェの機体を貰いに来ただけだよ。と言う訳でさっさと機体を寄越せガキ」

 

「寄越せと言われて寄越す人間は居ないと思うけどな」

 

彼は女性の言葉に対しそう言いかえす。すると女性は笑みを浮かべ

 

「お前に拒否権はねぇよ。待っコイツがどうなってもいいって言うなら拒否してもいいけどな」

 

そう言うと女性はいったん下がり一人の生徒を引きずってくる。その生徒は

 

「なっ、鷹月さん!?お前、何してんだよ!!」

 

「何って人質交渉に決まってるだろ!!そのためにわざわざ引っ張ってきたんだしなぁ!!さてもう一度聞くぞガキ、さっさと機体を寄越せ。断ったらこの女の命は無いぞ。それにしてもこいつには同情するなぁ織斑なんかと仲良くしなきゃこんな目に合わずに済んだのになぁ」

 

そう言いながら女はISらしきものを展開するとアームの一つを彼女の首に当てる。それは断れば彼女を殺すと言っているのだ。そしてこれには一夏も

 

「(どうする…召喚爆撃で奇襲かけるか?いや今変な動きをすればそれだけでも危ない…とりあえずの第一目標は鷹月さんの救助だ。そのためにもアイツを油断させる。その方法は…)わかった。その提案に応じる。それで俺はどうすればいい?」

 

一夏のその言葉に女は笑みを浮かべると

 

「簡単だ、腕を前に出せ、そうだ。後はこっちでやるからな。」

 

そう言うと女は懐から奇妙な形の装置を取り出すと白式の待機携帯で有るガントレットに取り付ける

すると強い電流が走り、一夏は床に倒れ、白式はコアの状態になり女の手に渡る。

そして彼は

 

「約束だ…鷹月さんを解放しろ」

 

しかし女は彼女を開放するそぶりを見せない。それどころか笑いながら

 

「はははっ、そんな要求に答える訳ないだろ!!この女はお前の目の前で殺してやるよ!!」

 

そう言うと女はアームを使い彼女の首に刃を当てる。後はこのまま勢いよく動かせばそれだけで彼女の首は切断されるであろう。しかしこの時逆に一夏も笑みを浮かべていた

 

「(そうだ、お前は必ずそうする。そして”攻撃”するチャンスはここだ!!)」

 

「じゃぁな…って何だと!?」

 

すると不意に彼女のアームが根元から爆散する。そしてその衝撃で鷹月は吹き飛ばされるが一夏は彼女をお姫様抱っこの形で受け止め、拘束を外していくすると彼女は

 

「織斑君…ごめんなさい…私の…私のせいで…」

 

彼女は泣きながら彼に謝罪する。自分のせいで機体を渡す羽目になってしまった。それは彼女にとっても耐え難い苦痛でしかない。しかし彼は笑みを崩さず

 

「気にするな。奪われたものは取り返せばいい。それに”手段”ならまだあるんでね。さて、人質とった報いは受けて貰うぞ。」

 

「織斑君のその勇気見せて貰ったわ。それに私としても腹が立ってたのだから」

 

そう言いながら彼の後ろには生徒会長である楯無がISを展開して立っていた。表情は怒り。生徒を人質にしたやり方には彼女も怒っているのだろう

そして彼らが戦おうとした瞬間。更衣室に一人の少年の声が響く

 

「獲物みーつけた。おいオータムお前はそっちな。こっちは僕の獲物だ」

 

その声がした途端、突然火柱が連続して上がり彼らを分断する。楯無はオータムと一夏は体制上鷹月を抱えたままだ。そしてそんな彼らの前に一人の赤髪の少年が現れる。年齢は10代前半であった。

 

「さーて”準備”も終わったことだし僕と遊んでもらうよ。楽しいお祭りと行こうじゃないか。観客はそこの女の子かな?あぁ出口はそっちね退場するなら今の内だよ?」

 

そう言いながら少年は鷹月を見据える。しかし彼女は突然の事に驚き、言葉を発せずにいる。それもそうであろう、人質にされたと思ったら次は正体不明の火柱を上げる少年が現れたのだ。混乱しても仕方が無い

 

すると一夏は

 

「お前、アイツの仲間か?」

 

「仲間ねぇ…まぁそう言う事になるのかな?さて準備はいいかい?」

 

そう言うと少年は両手から小さい火の玉を呼び出す。そして一夏は短剣を懐から取り出す

 

「(ったく暗部の当主とクラスメイトが居る前で魔術戦かよ。こりゃ後で説明タイム確定だなぁ。…この騒ぎで人が来ないんだからかなり大規模な人払いを張っているな。場所が場所だ、あまり大規模な攻撃は出来ないな…)」

 

一夏は念入りに今の状況を分析する。すると少年は彼を倒すべき敵と見定めたのか

 

「さて、それじゃぁお手並み拝見と行きますかぁ!!」

 

そう言い両手の火の玉が大きくなりそれを一夏めがけて放つ

 

こうしてIS学園内部で魔術師同士の戦いが幕を開ける。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。