ティナの母親であるレイシーが自己紹介を終えると教室は唖然とした。理由としてはやはり外見が母親に見えないと言うのが大きな理由であろう。
そうしていると彼女は用があると言い残し教室から出ていく。そして
「どうもー。新聞部でーす。噂の織斑執事の写真を取りに来ましたー」
そう言いながら現れたのは新聞部のエースの異名をとる黛薫子であった。こういった学校行事の取材などは彼女たちの得意分野なのだ。
そして彼女は
「さて、せっかくだからクラス全員で集合写真と行きましょうか。忙しいと思うけど集まって貰っていいかな?」
彼女がそう言うといったん仕事を止め全員が一か所に固まる。この時誰が一夏の両脇を占めるかでひと波乱あったが、くじ引きの結果右隣が相川、左隣が谷本と言う形になった。
「やったー、織斑君の横ゲット!!」
「私のくじ運の良さが発揮されてよかったー」
そう言いながら相川と谷本が喜んでいる。ちなみにラウラ意外の専用機持ちは嫉妬を込めた視線を一夏に向け、当の本人は
「(頼むからその嫉妬プラス殺気を込めた視線を止めてくれ…)」
そんな事を心の中で思っていた。そして黛は
「はいはーい。それじゃあみんなこっち向いてー。行くよー」
そう言いながら彼女はカメラのシャッターを押す。そこにはいろいろな表情をした一組のメンツが映っていた。
そうしていると鷹月が一夏に
「織斑君、少し休憩してきたら?さすがにずっと接客は大変でしょ?」
「あぁ、それじゃぁお言葉に甘えさせてもらうよ。」
そう言うと彼はクラスを出て行き、友人との待ち合わせの場所に向かう。彼はこの学園祭に友人である弾を呼んでいたのだ。
そして彼が待ち合わせの場所に到着すると
「おう一夏、久しぶりだな」
「あぁ、元気だったか?」
「もちろんだ。」
彼らは久しぶりに会ったと言う事もあり自然と口数が多くなる。そうしていると彼は不意に一夏に
「なぁ、さっき校門にいた女の人って知らない?めっちゃ美人だったんだけど」
「特徴は?」
「眼鏡をかけてたなぁ後は…なんというかすごいしっかりとした雰囲気の人だったぞ」
彼のその言葉に一夏は一人だけ心当たりがある。それはこの学園の生徒会役員であり本音の姉である彼女だ
「虚さん?それぐらいしか心当たりがないなぁ…どうした一目ぼれでもしたのか?」
「一目ぼれって…言われればそうかもなぁ…」
彼らはそんなやり取りをしながら学園の敷地内を歩いていく。途中一夏が注目の的になっていたため弾は嫉妬していたが一夏は彼にIS学園の事情を説明すると彼は
「やっぱ俺は普通の日常でいいや…死にたくないし」
そう言っていたのだ。そうしていると彼らはたまたま近くにあった美術部のクラスに入る。ここでの出し物は爆弾解体ゲームだ。とはいえこの爆弾は作り物である。するとそれを見た弾は
「IS学園ってこんなこともやるの?」
「希望者を集めての特別授業だな。ちなみに専用機持ちは強制受講だ。」
「へぇ、大変なんだなぁ」
「そう言う事、おっ、次でラストか」
彼は話している間にも器用に解体を進めていくといよいよ最後の段階までたどり着く。内容はよくある”青を切るか赤を切るか”と言うものだ。すると一夏は
「うーん…どっちにしようかなぁ…弾、どっちがいいと思う?気楽に考えていいぞ」
「そこで俺に振るのかよ!?青か赤か…」
弾は必死に考えているようだが一夏はふとこんな事を考えていた
「(青は水を司る大天使の”神の力”{ガブリエル}赤は火を司る大天使の”神の如き者”{ミカエル}か。こう考えると青はなぁ…良い思い出が…)」
そう彼は夏休みの時に大天使の”神の力”と戦ったという経験上、青は若干だがトラウマだったりする。そして赤は彼のもっとも得意な属性である火を連想させる色である。なので彼は弾に対し
「なぁ弾、炎と水。ゲームだとどっちの属性をよく使う?」
「俺はよくゲームで水属性使うなぁ。こんな髪の色だから炎使えよって言われるけど…そう言われると俺なら水の流れで、青選ぶなぁ」
「そうか、じゃぁ青にするか」
そう言い一夏は青い配線を切るするとブザーが鳴る。どうやら失敗したようだ
結果、彼らは参加賞である飴玉を貰う。すると弾は
「一夏、すまん…」
「いや良いよ別に。ゲームなんだし気にするなって(”神の力”もしかして”御使堕し”の事怒ってるのか?)そうだ、せっかくだし鈴のクラスにでも行くか」
「あぁ、そうだなアイツに会うのも久しぶりだな」
そう言い彼らは鈴の居る二組に向かい、中に入る。すると出迎えたのは鈴ではなくチャイナドレスを着用したティナであった
「あら一夏いらっしゃい。そっちは確か…五反田君で良かったかしら。」
「ハミルトンさん。怪我は治ったんですか?」
「えぇ、お陰様で。さぁさぁこっちにどうぞ」
彼女はそう言いながら一夏達を席に案内していく。そうして歩いているとティナが霊装を使い通信を入れてくる
<一夏、貴方今霊装って何処に有るの?>
<霊装か?今着てる執事服の中に常備してるが…どうかしたのか?>
<母さん曰く”祭りを荒らす不埒者”が侵入してきているらしいわ。下っ端クラスは母さんが学園に入る前に何人か準備運動がてらに撃退したらしいけど、多分それだけじゃなくて幹部クラスも近いうちに来るだろうって言ってたわ。魔術、IS、両方の意味でね>
<マジかよ…何で行事になるたびに厄介事が有るんだよ…>
<全くね。戦闘の場所は間違いなくIS学園になるのは確実でしょうし>
<戦闘は構わないけど…学園施設の何割か消失するな。主に俺のせいで>
<幹部クラスだと加減したら一夏の身が危ないし仕方が無いわね…まぁ一応警戒はしておきなさい。さて席に着いたわよ。待ってなさい凰さん呼んでくるから>
彼女はそう言うと通信を切り奥に向かう。そしてしばらくすると鈴がやってくる。すると弾は
「おっ、鈴久しぶりだな。会うのは二年ぶりくらいか?」
「そんなになるっけ?まぁ良いけど…こうして会うとなんというか中学時代に戻った気分になるわね」
彼らはそんな事を言いながら談笑していると、一夏の携帯が鳴る、相手はシャルロットであった
<もしもし一夏、一夏はどこだってクレームがすごいからすぐに戻って来て>
彼女の声にはかなり焦りの色が含まれていた為一夏はいそいで教室に戻る
すると教室の人はかなり増えていたため戻ってきた途端に、あちこちから引っ張りだこになる
そうしていると相川が一夏の所にやってくると
「ねぇ、織斑君。鷹月さん見なかった?」
「鷹月さん?いや見てないけどどうかしたの?」
「さっきから鷹月さん見当たらないんだよね。谷本さんはちょっと前に休憩に入ったから居ないのは当たり前なんだけど、鷹月さん休憩に入ったって聞いてないし…呼び込みに行ったのかな?」
「探してくる?」
「いやさっきほかのメンバーが探しに言ったから大丈夫だよ。ちょっと聞いただけ」
「そうか…ならいいんだけど…」
一夏としてはティナの話もあったため内心ではかなり心配していたため次の休憩時間の時に探しに行こうと決心していた。
その頃、休憩中の谷本はと言うとティナの母親であるレイシーを案内していた
「へぇ、レイシーさんはメイドだったんですね。」
「そうよ。とは言っても今は引退して普通の生活をしているけどね」
「それにさっきのワイヤー使った手品もすごかったですね。メイドの嗜みって奴ですか?」
「特技の一つって奴ね。メイドしてるといろんな事が経験できるから」
彼女たちはそんな事を言いながら学園中を歩いている。谷本としてもこうして外国の人と話すと言う事もありいつも以上に元気がいい
すると彼女は
「メイドさんかぁ…やっぱりみんな身分が高いんですか?」
「それは差別って奴よ。普通の人だってちゃんと修行すればメイドになれるわよ。それでも生まれが良い人が多いのも現実だけどね。メイドに興味が出たの?」
すると彼女は
「いや、私見た目ですごく育ちのいいお嬢様って判断しちゃったんで職業聞いて驚いただけです」
「そっ、それじゃぁもうちょっとだけ付き合ってもらってもいいかしら?」
「はい、大丈夫ですよ、それでどこに行きます…?」
こうして彼女たちはひと時を過ごしていく。
その頃学園の別な場所では、一人の少女が手足を拘束され、口を布でふさがれていた
するとその様子を見ていたひとりの女は
「さーて、人質一人確保っと…これでターゲットは残り二人か」
「…ッ!!(なんで、どうしてこんなことに…)」
拘束されている少女は鷹月静寐本人であった。彼女は廊下で人の呼び込みをしている祭、突然後ろから殴られ気が付いたら拘束されていたのだ
そして拘束した張本人は平然とした表情で
「まっ、お前はすぐには殺さねえよ。お前には人質になって貰う、来なければまっその時はその時だな。恨むなら織斑一夏を恨むんだな。あのガキと関わらなきゃお前はこうならなかったんだ。」
「…」
「後はコイツで機体を奪えば任務は完了…っと。ちょろいな」
そう言いながら女性は嗜虐的な笑みを浮かべ、その時を待ちわびていた。
少女は救世主を待つが内心では来ないでほしい、そのような複雑な感情が渦巻いていた
そして学園の外部では4人が話し合いを始めていた
「オータムの奴、下賤な真似を…本当にあいつを幹部とは認めたくはないんだが」
「アトラクの言うとおりだよ、なぁイオの旦那オータム潰してトンズラしないか?下っ端の人間も大半が倒されてるって言うのに”一応”リーダーのあの女、部下に撤退命令も出さなかったんだぞ。気絶した人間あのまま放置してれば騒ぎもんだし、そんな判断も出来ない人間をこのまま現場に置いておくのかよ?」
アトラクと呼ばれた男性は舌打ちをしつつ同僚のしていることを批判しもう一人の少年は不満を述べていく。
すると少年がイオと呼んだ男性はため息を吐きつつも
「仕方あるまい。ターゲットの段階で作戦を止められなかった私のミスだ。こうなった以上魔術、ISともに戦闘は免れない。こうなれば我々も突入するしかあるまい。配置は…アトラクは単体で侵入、構成員を倒した人物をマーク、あれだけの人数を学園の内務で誰にも気づかれずに倒したんだ。実力は本物であろう。十分に注意しろ。オトゥーもすぐに向かわせる」
「了解」
そう言うとアトラクと呼ばれた男性はすぐさま学園内部に侵入していく。
「次に、クスグ…お前は侵入後、しばらくは来客者を装い待機だ。状況が状況ならオータムを援護、離脱させるんだ」
「えー、何で僕があんなの助けなきゃならないんだよー!?それに場所的にも狭い所じゃーん。全力出せないとか超萎えるんだけどー」
クスグと呼ばれた少年は明らかに不満をぶつける。すると男性は
「そう言うな、それにもしかしたらお前を楽しませる人間が来るかもしれないぞ?これが有れば正面から堂々と侵入できる。」
そう言いながら男性はチケットを少年に渡す。すると少年は渋々と言った表情で
「まぁ旦那が言うなら仕方ないか…はぁメンドクサ。せめて僕と拮抗するくらいの人間がいて欲しいものだねぇ」
そう言いながら少年はのんびりと校門へと向かっていく
そして彼は最後に残った少女に
「それからオトゥーお前は…アトラクを援護。さっきも言った通り相手は強敵が予想される。切りのいい所で引き上げても構わん」
「…私…来た意味…ある?ほかのメンバー呼んだ方が…いいんじゃぁ…?」
「まぁ久しぶりの実戦だからな、準備運動がてらに呼んだんだ。」
「まぁ…いい。行ってきます…久しぶりに…暴れられると…いいなぁ…」
そう言いながら少女もまた学園へと侵入していく。そして男性は最後に、通信機を取るとどこかに連絡を取っている
「あぁ、私だイオだ。お前は…待機地点にいるか…オータム潰していいかって…?なぜおまえまでクスグと同じ思考なのだ…まぁいい。分っていると思うがそこは合流地点だ。来たら回収するんだ。ん?追跡してきた専用機持ちはどうするか?それはお前に任せる”科学”は私たちの専門外なのでな」
そう言うと男性は通信を切り、改めて学園のある方向を見ると
「さて…お手並み拝見と行こうか」
波乱に満ちた学園祭はいよいよ後半へと突入する