IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第60話

そのオルソラは教会の中で拷問にも等しい扱いを受けていた。彼女は殺してはならないが、逆に言えば殺さなければ何をしたって構わないのだ。現に彼女は教会の中にいるシスターに殴られ続けている

そして彼女はアニエーゼから上条や天草式は自分たちによって騙されていた事を告げられると。彼女はどこか満足したような顔をする。

彼女は幸福である。なぜならば…突然。教会の外に会った結界が破壊され、入口から一人の少年が現れたのだ。そしてそれはオルソラにとってもアニエーゼにとっても見慣れた少年であった

そしてアニエーゼが見慣れた少年である上条をみると

 

「いやぁおかしいとは思っていたんですがね、魔術師でもないただのド素人がどうしてゲスト扱いで戦場に出てきたのか。理屈は分かりやしませんが結界に対して絶対の力を持つ何かがあると、そう言う事ですか、それで何の用ですか?お駄賃が欲しいとか、あーあそこに転がってるのだったら別にかまいやしませんがね」

 

彼女は愉快そうに笑う。すると上条が

 

「一応聞くけどよ、誤魔化すつもりはないんだな」

 

「誤魔化す、何を!?この状況見て分からないんですか?いったいどっちが上でどっちが下か。まさか私とあなたが同じ舞台に立っているなんて思いもしませんよねぇ?」

 

彼女は挑発するように上条の前に立つ。確かに”一人”で200人以上を相手にすることなど上条にはできない。アニエーゼもそれを分かっているのだ。だからこそ挑発するように彼の前に立つ。彼が行動すればそれは戦いの合図になってしまうからだ

 

「ったく、本当に大馬鹿ですね。どうやらイギリス清教の連中は賢明な判断で逃げ出したようですし、貴方は一体なんなんですか?んーまぁ一人で何も出来る訳がないし逃げるんなら逃げても構いませんよ。ほらこれが最後のチャンスです。自分が何をすべきか分かっていますよね?」

 

「何をすべきか…そうだな分ってるよ。確かにこれが最後のチャンスだ。よく分ってるよ」

 

彼は安心したように声をだす

すると教会の中にさらに一人の少年の声がする

 

「とりあえず、誰でもいいけど、オルソラを抱えて一歩後ろに下がったほうが良いよ。死にたいなら…その場にいればいいけど…」

 

その声と共に上条は慌ててオルソラを抱え一歩後退する。すると彼らとアニエーゼの間に2本の石の大剣が柵のように突き刺さる。そして二本の石の大剣は並行に突き刺さっているが、ちょうど人一人分通れるほどのスペースがあったため、上条はその間を通り抜け、上条の右腕でアニエーゼの顔面を殴りつける。とっさに両腕で顔面を守る彼女の足が床から離れる

 

そしてアニエーゼは

 

「貴様、何の真似だこれはーッ!!」

 

「何の真似だと、舐めやがって、助けるに決まってんだろうが!!」

 

彼女はそう怒鳴りつけると上条もそれ以上の怒号で答える。そしてその後、もう一人教会の中に少年が入ってくる。すると上条は呼吸を整えると

 

「全く、織斑。やるなやらやるで合図の一つもしてくれよ。俺まで巻き込まれるところだったぞ!?」

 

「仕方ないだろ”たまたま”あの場所にいたんだ。刺さっても文句は言えないだろ」

 

「不幸だ…」

 

すると彼女は一夏達を睨みつけると

 

「貴方、イギリス清教の人間でしたね…これが内政干渉になるってわかっていやがるんですか!?。いや、ここで殺しちまえば関係ないか…。全く、おもしろい…面白いですよ貴方たち。あなたたち二人でどこまで出来るのか見せて貰いましょうか!!」

 

彼女がそう告げると周りの黒いシスターも各々の武器を構える。対し上条は拳を握りしめ、一夏は杯を取り出す。彼は今回も水と土の主体で行くつもりらしい

そして両者が激突する寸前で不意に声が上がる

 

「全く二人して勝手に始めないで欲しいね。せめてルーンを十分に配置する時間くらいは欲しかったんだけど…」

 

「ここの結界穴有り過ぎ…これじゃぁ侵入してくださいって言ってるような物よ?もう少しまともな物を張ればいいんじゃないの?」

 

「は…?」

 

アニエーゼが呆けたような顔で振り返った瞬間、オレンジ色の爆発によって教会を支配していた暗闇が薙ぎ払われる教会の奥、ちょうど一夏や上条とは正反対の位置、説教壇の背後にある窓枠に足を掛け炎を手にしたイギリス清教の神父と少女が立っている。

 

「す…ている?」

 

「それにティナもか、二人ともナイスタイミング、あまりにも遅いから先におっぱじめる所だったぞ」

 

煙草をくわえた神父を上条は茫然と、一夏はようやく来たか、と言うような表情で言葉を発する

 

「奇襲とかそう言う面では僕よりも君の方が分が有るから仕方が無いよ…それよりも後の始末は僕ら魔術師が片づけるつもりでいたから素人には引っ込んで貰うつもりだったんだ。全くあれだけの嘘説得が台無しだ」

 

「成る程、あの時安心していたのはそう言う事ね…全く…」

 

するとその様子を見ていたアニエーゼは

 

「なっ…そこの馬鹿はともかくとしてこれだけのイギリス清教が来るなんて…あなたたちこれはローマ正教だけの問題なんですよ。関わると言うならそれは内政干渉になると言うのが分からないんですか!?」

 

するとステイルはつまらなそうに煙を吐くと

 

「残念ながらそれは適用されない。オルソラ=アクィナスの胸を見ろ。そこにイギリス清教の十字架がかけられているのは分かるな。そう、そこの素人が不用意にかけてしまった十字架さ」

 

その後もステイルは言葉を続ける。上条がオルソラに行った行為と言うのはオルソラをイギリス清教の一員として認めると言う行為になってしまっていたのだ。そして上条には自覚が無くたまたま首にかけたにすぎなかった

そしてステイルはもう一つ戦うための理由があった

 

「それに何より、よくもあの子に刃を向けてくれたな、この僕がそれを見逃すほど甘く、優しい人格をしていると思ったのかい?」

 

「チイッ!たかが2人が4人に増えた所で何が…!?」

 

「4人で済むと思ってんじゃねぇのよ」

 

アニエーゼの言葉を野太い男の声が遮る。今度は横の壁が爆弾で吹き飛ばされたかのように吹き飛ぶ

 

「建宮…」

 

上条が現れた男の名を呟く

そして彼の後ろには50人ほどの天草式の面々がそろっているそこにはテーマパークで一夏に頼み事をした男性も勿論いる。おそらく監禁されていたメンバーであるがすべて助け出されている

 

「いやいや、そこの御嬢さんの結界を解く速さには驚かされたのよな…それに俺が戦う理由は、わざわざ問うまでもねえよな?」

 

「お前、だって奇襲は移動途中が最適だって…」

 

「そう言う風に言っておけば納得して帰ってくれると思ってたんだがよぉ。お前さん想像以上の馬鹿だよな。ま、見ていて楽しいバカは嫌いじゃねぇのよな」

 

建宮は呆れたように呟く、そして最後に上条の背後から聞きなれた声が響く

 

「まったく、だから決着は誰かがつけるからとうまは気にしなくていいよって言ったのに」

 

「いん、でっくす…」

 

そう名を呼ぶ上条の両肩に手が置かれる。片方は小さく力強い手。

 

「でもこうなったら仕方が無いよね、助けようとうま、オルソラ=アクィナスを私たちの手で」

 

「あぁ」

 

上条はそう言いながら頷く

そしてそんな彼らを見てアニエーゼは爆発する

 

「殺せ!オルソラ=アクィナスもろとも!!」

 

その一言で何百もの黒いシスターは飛びかかってくる

こうして最後の戦いが始まる

 

 

彼女たちは上条めがけて一目散にとびかかってくるが、そうはうまく事が進まない

彼女たちの大半は突然現れた水流に飲み込まれ後ろに吹き飛ばされる、それは一夏が放った水の術式だった。そして天草式の面々も一気にとびかかる

 

「上条君、とにかくオルソラを抱えてこの場を離れるんだ。さすがにこの乱戦だと巻き込まない自信が無い!!あと外には多分ティナも居るから治療に関しては心配しなくていいぞ。」

 

「分った…織斑、死ぬんじゃねぇぞ!!」

 

「おう。」

 

一夏がそう返事をすると短剣を取り出し、軽く振る。すると近くの壁が白い閃光と共に爆発すると大きな穴が開く、それは彼らを逃がすために作った穴であった。そして上条はそこめがけ走り、天草式の大半も彼の援護に回る

 

そして中にはシスターが30人ほどいる。そのほかのシスターはどうやら別の道を使い外に出たらしい。ステイルやティナ、建宮、インデックスなども例にもれず別道で脱出したらしい

目の前のシスターは杖、剣、槍と言った様々な武装を構えている一夏を見る目には殺意が込められていることなど明らかであったが一夏は動じない。すると彼は

 

「さてさて、俺はあんたらの隊長と戦いたかったんだけど…まぁメインは上条君に上げよう。それにお前達だとちょうどいい経験値になりそうだしな」

 

そう言うと彼は杯を振り上げ、その瞬間周りには水の柱が上がる

 

「さて、かかってこい。女尊男卑らしく先制攻撃は君たちに上げよう」

 

その言葉と同時にシスターたちは一斉にとびかかる

そして中では大きな振動が連続して発生した


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