IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第59話

女性の悲鳴が聞こえたとき、意識のある天草式の男性二人は信じられないと言った表情をしている。

そして一夏とティナはその原因が分からないため、彼らに尋ねる

 

「なぁ、今の悲鳴って一体…」

 

「オルソラ=アクィナスだ、まさかローマ正教に捕まるなんて…」

 

「時間が無い。あなたたちは俺たちを見捨ててなんとしてでも彼女を救出してください」

 

彼らが一夏に頼み込んできたため一夏としては訳が分からなくなる。

 

「おい、どういう事だ?何で俺たちに頼むんだ普通なら…」

 

一夏がそう尋ねると男性は

 

「俺たちが彼女や法の書を持ち出す理由なんてありません。魔導書に関しては貴方もよく知っているでしょう。俺たちはただ彼女を救い出したにすぎません。そこには何の見返りも求めていない。俺たちはそうして生きてきたんです。助けるのに理由なんていりません」

 

その言葉に一夏だけでなくティナも言葉を失う。もしかして自分たちはローマ正教に騙されていたのではないかとさえ思えるほどだ。

 

そして最後に男性は

 

「お願いします。彼女はこのままローマ正教に身柄が渡れば間違いなく殺されます。俺たちや他の仲間、おそらく教皇代理も動けません。だから頼みます。出来る事なら俺たちにもローマ正教にも手の届かないところまで連れて行ってください」

 

これは彼にとってもかなり無謀な頼みであることなど承知していた。何せ自分たちは法の書とオルソラを誘拐した犯人として見られているのだ。そしてそんな敵の頼みなど彼らは本当に信じるのだろうか。そう思っていた現にティナは少し難しい顔をしている。すると一夏が

 

「なぁ、ここで俺たちが離れればお前らはどうなる。ローマ正教の連中に殺されるか?」

 

「直ぐには殺されないと思います…まぁ痛めつけられるのは覚悟していますが」

 

「そうか…そこの倒れている二人には気絶させて悪かったとだけ伝えてくれ。後…お前たちの願い。確かに受け取ったぞ」

 

「ちょっ、ちょっと一夏!?」

 

「時間がなさそうだ急ぐぞティナ」

 

一夏はいそいでその場から離れる。そしてティナも彼の後をあわてて追う。途中ローマ正教のシスターらしき人物を見かけたが彼らはそれを無視。とにかく走り続けるが

 

途中で笛のような音が響く。その音と同時にローマ正教のシスターたちが入口の方に戻っていく。中には天草式の人たちを連行しているようなシスターもいた。もちろんその中には先ほど一夏達が撃退した男性もいた。すると男性は一夏を見つけると声には出さず口だけを動かす。彼には何を言っているかは理解できないが、表情と合わせると感謝されていたのは確かであった

 

するとティナは

 

「とにかくまずはステイル達と合流しましょ。今回の件もしかしたらかなりややこしい話になってるのかもしれないわ…それにあなたが感じてた疑問の答えもあるかもしれないわ」

 

そうして彼らはいったんパラレルスウィーツパークを脱出する。そこにはステイル、インデックス、上条以外にもう一人男性がいたどうやらこの男が天草式の今のトップ、名は建宮斎字と言うらしい

 

そうしているとステイルが不意に

 

「成る程ね。道理でアニエーゼ=サンクティスを見た途端彼女は茫然自失としていたわけだ僕たちを切り離したのも初めから信用されていなかったと言う事か、イギリス清教が居ると命令系統が乱れるか…言ってくれるね」

 

そう言う彼も彼女の悲鳴を聞いてはいたがあいにく彼は一夏達とは違い、引き返して事情を問い詰めようとはしなかった。それはイギリス清教とローマ正教の外交問題になるかもしれないからだ。

ちなみに上条もアニエーゼの元へと走ったが彼が着いた時にはすでにもぬけの殻であった。どうやら天草式のメンバーの大半を確保したことで壊滅したと判断しているのかもしれない。

するとティナは

 

「手伝わせたのにもかかわらず挨拶も事後報告もないってのは本当に信頼してないし、彼女の言ってた十字教至上主義って言うよりもローマ正教至上主義ね、初めから私たちイギリス清教は下に見られたって事ね。」

 

その後に彼らはそれぞれ情報交換をしていく。そして一夏は建宮から事の真相を聞き出すことが出来た。そもそも天草式は法の書など盗んではいないこと。そしてオルソラは彼らに助けを求め彼らは助け出したが結局オルソラは最後の最後で彼らを信じきれずに逃走したと言う事を告げた。

 

するとステイルは、

 

「その男や天草式のメンバーが言っていることが事実だとしてもオルソラ=アクィナスはすぐには殺されないだろうね。奴らには奴らの事情がある。…だから上条当麻今この瞬間にどこかに駆け出すのはやめろ。余計にややこしくなる」

 

そう上条に釘をさす

しかし上条はその理由を理解できていないためインデックスが理由を説明していく

しかし彼は納得がいかない、彼は先ほど別のシスターに問答無用で攻撃されたのだ。そのおかげで彼の腕には包帯が巻かれている。

すると一夏が

 

「神の教えに従う人間を殺してはならない。だけどその教えに背く人間なら殺しても構わないって事だよ。前者だと彼女たちはオルソラを殺すことは出来ない。逆に後者だと上条君や俺たちなら殺そうが罪にはならないんだ。」

 

「だったら何で天草式はオルソラの暗殺を止めるために動いたんだ?その話が本当ならローマ正教はオルソラを殺す事なんてできないんだろ?」

 

「簡単だよ。例外が有るんだ」

 

「例外?」

 

「神の教えに従う人間を殺してはならないって事はその教会から追い出された人間は神の教えに反したって事になるんだ。なら別に殺したって構わないんだ」

 

そして建宮も言葉を発する。ちなみに彼は堂々と大剣をぶら下げている。さすがに警察に見つかった時にどう言い訳するんだろうかと上条だけではなく一夏もそう思っている

 

「魔女や背信。これらのルールを犯した人間は教会の敵と同時に神の敵と言うレッテルを張られると言う訳なのよな」

 

「そしてその方法は簡単だ試せばいい。そうだね、たとえばオルソラを水に沈めるとする。もし彼女が無罪なら主が守ってくれるのだから溺れない。逆に溺れれば彼女は守るに値しない人間と言う事さ」

 

「まぁこの手の拷問には都市伝説みたいな感じで”ありとあらゆる方法すべてを耐えて生存した人間”が居るなんて伝説もあるけど…そんなのは所詮伝説だ」

 

建宮、ステイルの言葉に上条は絶句する

 

「そんなの溺れて当然だろ…逆に溺れない方が異常だろ!!それこそ織斑の話みたいな人間なら話は変わるけどそんな人間なんている訳がない」

 

「そうさ、だから溺れなくても難癖を付けられるんだ。悪魔の加護が有ると言ってね。それこそ一夏の話みたいにすべての方法を耐えてもう方法がなくなるまで耐え続ければ彼女は無罪になるけどそんな事はまずありえない」

 

そしてその後もステイルは言葉を発する。彼女を試すための神明裁判の準備には日数がかかると言う事。その間オルソラは殺されることは無いが、それ以外なら何をやっても多めにみられることを告げる

その後も彼らはやり取りを続ける。その内容に上条は腹を立てステイルに掴み掛るが彼は気にせずに言葉を出す。そして最後にステイルは上条に”世界中の人間を巻き込んでまでオルソラを助けに行けるのか?”との問いにはさすがの上条も黙ってしまう

ちなみに建宮はと言うとローマ正教の移動時を狙って奇襲をかけるつもりと言う。彼女たちは天草式とは違い移動に魔術を使うような事はしないのだと言う。

 

そして話の最後にステイルが

 

「まぁせめてイギリス清教にオルソラ=アクィナスを助けるための正当な理由があるなら話は変わったと思うが、今の僕たちにはこれが限界だよ」

 

そう言いながらつまらなそうに煙草の煙を吐く

そして彼に

 

「あぁ、そうだ上条当麻一つだけ聞いておきたい事が有るんだ?」

 

「なんだよ?」

 

「前に僕が君にやった十字架、今君は持っていないようだが何処にやったのかな?」

 

「…悪い。オルソラに預けちまったままだった俺が首にかけてやったら滅茶苦茶喜んでたな。あれそんなに高価なもんだったのか?」

 

「(えっ、十字架を首にかけた…ちょっと…コレって…)」

 

ティナが心でそう思っているが口には出さずステイルは何故か愉快そうに笑みを浮かべながら

 

「いや、何の変哲もないただの十字架だよ。きっと土産物として大量生産されている物だろうね。あんな十字架に価値は無いさ。君が持っていることに意味があったんだが…まぁ良いどうせ今の君には必要のないものだろうからね」

 

「それじゃぁ私たちはこの辺で帰らせてもらうわ。ほら一夏、そんなへこたれてないで帰るわよ」

 

「へこたれてないよ、ちょっと思うところがあるだけだ」

 

彼らはそう言いその場で解散となる

 

そしてティナは一夏に

 

 

「さて、一夏。良かったわね戦う理由が出来たわよ」

 

「なぁさっきの十字架のアレどういう意味だ。ステイルは笑うし、ティナも確信したように表情を変えるし…あれって実は特別な物だったのか?」

 

「別にあの十字架には魔術的な価値は無いわよ。アレは持つことに意味があるのよ。しかも誰かにかけて貰えるなら最高ね」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

「それはね…」

 

するとティナは一夏に小さく耳打ちをする。そして一夏はそれを聞いたとたん笑みを浮かべる。

 

「成る程、そう言う事か。」

 

「そう言う事、さて私たちも行きましょうか…素敵な教会に…ね」

 

そうして彼らは走り出す。ちなみに一夏のこの場で戦う理由それは簡単だ。天草式の願いをかなえると同時に自分たちをだました連中にちょっとした仕返しをする。それだけの理由だ。

恐らくは一夏以外にも彼らもすぐに現場に向かうだろう。そして一夏は彼も必ず来ると言う変な確信があった

 

するとティナが

 

「さて、私も正面から突撃…と言いたいところなんだけど。治癒魔法やら色々準備が有るからここでいったんお別れね。私は裏口に回るわ。まぁあなたの全力の攻撃なら戦力の2割は削れるでしょう、そうすれば流れは一気にこっちに来るわ。一夏、しくじるんじゃないわよ」

 

「分ってるよ。こっちも準備が有るからここでいったん解散だな」

 

そうして彼女はいったん裏口に回る。

暫くすると一夏の予想道理一人の少年がやってくる

 

「あれ、織斑。お前どうしてここに…」

 

「あいつらに仕返しの一つもしたくなってね。まぁ今回は君に手柄を譲るよ。と言うか君が彼女を救うべきだ。俺が言ってまた逃げられるのも嫌だからね。なに心配するな上条君は”たまたま”俺と遭遇して”たまたま”教会の中でボコられてるシスターを助け出したに過ぎないんだからさ。ほれさっさと行った行った。まぁ俺の攻撃が当たらないように注意はしてね」

 

「そうかお前は”たまたま”俺に出会ったんだもんな。別に協力して来たわけじゃないんだもんな」

 

そう言う二人はにやけながらそう言う。そして上条は教会に張ってあった結界を破壊し中に突入していく


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