IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第58話

そうして時刻は午後十一時になる。

特殊移動法のポイントである”パラレルスィーツパーク”と言う名のテーマパークを上条たちは遠目に見ていた

昼間ならばここには多くの人たちがやって来ているがあいにく時間が時間なので人は誰も居ない。そのような場所にローマ正教の武装した大勢のシスターや上条たちが居るのだからその光景は異様であるとも言えるだろう。

 

そうしているとアニエーゼが彼らのもとにやってくる。

 

「例のパラレルスイーツパークで天草式本隊を発見しました。ですが法の書やオルソラは発見できやしませんでした。まさかとは思いますがこれがすべて陽動の可能性もあります。なので我々はこのまま戦闘に入っちまいます」

 

すでに決定したかのように彼女は上条たちに告げる

すると上条は今までの情報を整理するかのように言葉を出す

 

「法の書を天草式の誰が保管してるのかとか本当に園内にオルソラが居るのかがどうか分からないってのが痛いよな。そんな状態で助け出せるのか?オルソラ見つけるのに手間取れば最悪人質にされる可能性だってあるんじゃないのか?」

 

彼の考えは何もおかしい所など無い。誰でもそのように考えるであろう

しかしアニエーゼは悩む暇など無く、すぐさま彼に

 

「パラレルスウィーツパークから逃げられたらそれこそ包囲網が役立つでしょう。それに人質…と言うより楯として使われちまう事は無いと思うんですが」

 

「何でだ?」

 

「天草式の目的は、オルソラから法の書の解読法を教えてもらう事でしょ。そのオルソラを楯にして死なせちまったら奴らの計画は失敗になっちまいます」

 

「おそらく天草式の目的は神裂が居なくなったことでかけた戦力の穴埋めとして法の書を使おうとしているんだろうね。ここまで強硬に出るんだからそれだけ切羽詰った状況と言う事さ。オルソラの身も氷細工のように丁寧に扱っているだろうね」

 

彼女の言葉にステイルが補足をする

その後も詳細に作戦が伝えられていく。彼女の部隊はおとりとして正面から突入するからその間にステイルや一夏達が園内に突入してオルソラと法の書を確保してほしいとの事だ。

 

そうしてしばらくしているとアニエーゼは仲間のシスターから杖を貰い受けると憎々しげな声を闇に向かって放つのだが、その内容は一夏にとってはかなり不満げな内容だった

 

「(魔術師とかそう言う人間嫌いって…なら俺たちに仕事を頼むなよ。ましてや近代西洋魔術の批判とかコイツ俺とか近代西洋魔術使う連中に喧嘩売ってるのか?俺的には天草式よりもコイツと戦いたいわ…ましてやあの杖、俺の予想が正しければアレは恐らく…)」

 

一夏にしてみればアニエーゼの話は面白くない、何せ彼女は彼の使う近代西洋魔術を堂々とと批判しているのだから使う本人としては面白くは無い。そして一夏は彼女の持っている杖の正体に心当たりがあるためその辺なども彼の不満をためている要因になっていたりする。

そして彼女の話の後半は若干十字教至上主義のようにも聞こえてきたためここまで来ると上条も首を傾げてしまう

ちなみにその言葉を聞いていた一夏以外の魔術師、ステイル=マグヌスはにやにやと笑い軽く聞きながらインデックスは若干困った顔つき、ティナは苦笑いをしていたりする

 

「(まぁ魔術師だらけの必要悪の教会からすれば参った話だよな、そりゃ。織斑なんて露骨に不満そうな顔してるし。それにしてもアニエーゼの奴もここまで表情が変わるもんなんだな)しっかしまぁ本隊は全部こっちに回せないとか言いながら随分な人数を集められたものだな」

 

上条は周りを見渡すと、話題を変えるために冠したような口調でそんな事を言う

 

するとアニエーゼは笑いながら

 

「数が多いのがうちの特権なんです。世界110か国に仲間がいるんですから今もオルソラ教会って新しい神の家を建設中なもんですから。確かこの辺りだと思いますよ」

 

「(科学サイドの学園都市のすぐ近くにローマ正教直属の教会を建てるなんて…大丈夫なのかしら?)」

 

「オルソラ?」

 

上条は教会の名前に疑問が浮かんだのでそう問い、アニエーゼが質問に答えるがティナはその話を聞き流していた。と言うより教会の立てる場所的に不安になっていた。何せ学園都市のすぐ近くに教会を、しかも十字教最大宗派の教会を建てると言うのだ。その事に彼女は疑問を覚える。ちなみにこのあたりにはイギリス清教管轄の教会は無かったりする。近くにある教会を探すのであれば最低でも10キロは離れないと教会は存在しないのだ

 

そして上条がアニエーゼと話終わったあたりで一夏はステイル達に提案をする

 

「なぁ、ステイル。俺たちも2手に分かれないか?そっちの方が効率が良いと思うんだ」

 

「まぁ、かまわないけど。どうせ行くのは君とハミルトンだろう?」

 

「まぁな。それじゃ、俺達は反対側から回り込むよ。」

 

一夏はそう言い残すと反対側に移動していく。ティナも彼の後を付いていく。

するとその様子を見ていた上条は

 

「なぁ、ステイル。どうして織斑はさっき露骨に不満そうな顔をしていたんだ?」

 

「あぁ、彼はその批判された近代西洋魔術を使う魔術師…しかも天使の力を重点的に使う魔術師なんだよ。自分の使うもの批判されて気分を悪くしない人間は居ないと思うよ」

 

「そう言う事か」

 

そんな会話が繰り広げられていたことを一夏達は知る由もない

そしてその噂の本人はと言うと

 

「ほら、一夏。そんないつまでも怒らないの。いい年の高校生が年下の理論聞いて腹立ててどうするの?」

 

「別に怒ってないよ…ただ自分の事棚に上げるのは気に食わないだけだよ」

 

「自分の事?」

 

「あぁ、あの杖。実はあれにちょっとした心当たりがあるんだよ…まぁ形が似てるだけのただの杖って事もあるしなぁ」

 

「どっちにしろ怒ってるじゃない。まぁいいわその八つ当たりで私ごとテーマパークの破壊とかやめてね。味方の魔術で死にたくないわ」

 

そうしているうちに時刻は午後の11時30分あたりだ。そうしていると入口の方向で大きな爆発が起こる

 

「始まったか」

 

「それじゃ行きましょうか。基本はあなたが交戦私が結界とかそう言う支援系統の魔術で援護するでいいわよね」

 

「もちろん。頼むよ」

 

「まっ、過度な期待はしないで頂戴」

 

彼らは裏口のフェンスをよじ登り突入する。そうして内部に突入するがそこには明かりなどは無い。星空の光によってあたりが照らされているだけだ。彼らは慎重に移動していく。そうして移動していると、付近に3人組の少年が何やら慌てているような感じで話をしている。一夏はなるべく気づかれないように近づき話を聞いてみると

 

「居なくなった!?まさかもう捕まっちまったのか!?」

 

「また逃げ出したようだ。ローマ正教の連中もかなりの数で来ているみたいだぞ」

 

「くそっ、こっちにはもう時間が無いってのに…どうして俺たちを信じてくれなかったんだ…俺たちは…」

 

「細かい話は後だ。とにかく付近を徹底的に探せ!!なんとしても身柄を確保するんだ」

 

「「了解!!」」

 

彼らは一夏達には気づかずに走って移動していく

 

「今の話…どうして俺たちを信じてくれなかったのか…だって…?」

 

「なーんか雲行が怪しいわね…」

 

彼らは先ほどの話を聞きながらますます訳が分からなくなってくる

そしてしばらく歩いていると、彼らの前にはまた別の天草式の人間が現れる。今度は女性2人男性2人のチームだ

 

「そう何度も見逃してはくれないか…」

 

一夏はそうつぶやくが彼らは気にせず、一糸乱れぬ連携で一夏達に襲い掛かってくる

彼もやむを得ず杯を取り出すと天使の力を籠め水の球体を複数呼び出すとそれを彼らにめがけて放つ

しかし彼らは一糸乱れぬ連携でその攻撃を放つと、三又槍を持った少女が一夏めがけて突進してくる。

 

「うおっ、あぶねっ」

 

一夏は右手で短剣を持つと槍の隙間に短剣を差し込みどうにかして攻撃を受け止める

そうしてその一瞬のすきを突き彼は左手に持った杯で水を呼び出しそのまま水の球体を彼女めがけて放つ

 

「!?」

 

すると彼女は不意を突かれたのかその攻撃をもろに喰らってしまい後ろに飛ばされ体制を崩す

 

「五和!!」

 

「大丈夫…です」

 

そう天草式のメンバーの誰かが叫ぶが五和と呼ばれた少女は平気と合図をする。このチームはどうやら女性二人、男性二人がそれぞれペアを組んで行動をすることも出来るのだ。

 

ちなみに男性二人と交戦しているティナはと言うと

 

「女の子を武装した男が寄ってたかっていじめるなんて良くないわよ…っと」

 

「くっ…この結界」

 

「相当固いぞ…!!」

 

結界を張りながら彼らの攻撃を防いでいく。ちなみになぜ彼女が体術を使わないかなど理由は単純彼女の体術は一対一でようやく本領を発揮するのだ。しかも相手は二人とも武装していると言う事もあり迂闊に使う訳にはいかないのだ。

なので彼女はこうして彼らの攻撃を結界で防いでいるのだ。

 

そして一夏も武装した少女二人相手に善戦している。とはいえ状況は若干一夏が有利になって来ている。彼の使う魔術は威力もそうだが大体が複数相手を想定した術式なのだ。現に今もペンタクルを利用し大量の石の刃を天草式めがけて放つが相手はプロそう簡単にダメージは入らない

 

飛んできた石の刃を五和は槍を回転させることで弾き、もう一人の少女は刀から風を発生させ刃を吹き飛ばす

 

「まともに入ったのは不意打ちで使った水球だけ…か(こりゃマズイな…向こうもかなり本気で来てる。男二人をティナが抑えてくれてるからまだマシなのか…ティナ様々だな。こっちも召喚爆撃、炎、風使わないとこの実力はこの程度か…もっと早くから水と土使ってればよかったな)」

 

「(この人…さっきよりも術式の制度が上がってる。それにあの顔まだ余力は残っている…相手が聖人だと五和のアレが使えるけどこの人はただの魔術師。そうはいかない)」

 

「(相当の術者…ですね。私たち数人相手に余裕の表情…すごいです)」

 

そうして彼らはこう着状態に入ってしまう。

だがその状況を崩したのは一夏であった。彼は水球を呼び出すとそれを彼女たちめがけて放つ

 

もちろん彼女たちはすぐに回避動作を行おうとしたのだが、そこで異変が起きる。なんとその水球は突然爆発したのだ。さすがの彼女たちもそれは予想できなかったらしく、その攻撃をもろに受けてしまい地面に倒れ気絶する。威力は抑えた方なのでものの10分もしないですぐに起き上がるだろうと一夏は予測する

 

「さて、ティナの援護にって…あれもう終わってる」

 

そして一夏はティナの方を向くとそこには地面に座らされている形で二人の男性が結界に閉じ込められていた。

 

「別に気絶させるだけが勝利じゃないって事。さて、それじゃぁ貴方たちに質問と行きましょうか…ってそんな顔しないの。何も拷問なんてしないわよ…聞きたいのは…」

 

彼女がそう問い尋ねしようとしたとき不意に何処からか女性の悲鳴が聞こえる

それを聞いた天草式の男性は悲しげな表情をしたのだった

 

 

 

 

 


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