IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第56話

一夏達が公共交通機関を乗り継ぎ目的の場所に到達した時には異様な光景が広がっていた

彼らは荷物を届けに来ただけだ。そこには本来ならば荷物の受取人が居なくてはならない。しかしその場に居たのは…

 

「ステイルに、上条君。それと後ろにいるのは…シスターか。どうなってんのコレ?」

 

一夏が代表してそう言う。その場にいたのは同じ魔術師であるステイルに三沢塾や”御使堕し”で行動した上条当麻に三沢塾の際に見かけた禁書目録。そして黒い服を着たシスターまで居るのだ。しかも地面には大穴が開いていたためさすがの彼らもただ事ではないと悟る

するとステイルは

 

「随分と遅かったね。あぁその箱中身はただのゴミだからその辺に捨てておいてくれていいよ」

 

「なんか怪しいと思ったら、犯人はお前か。用務員さんに催眠術でもかけたのか」

 

「やったのは僕じゃなくて土御門だ。あいにく僕は科学に関してはそれ程詳しくは無いんでね」

 

そう一夏達にお使いを頼んだ用務員は催眠術により一種の洗脳状態になっていたのだ。

学園都市の機器で行う催眠術では電話一つで他人を洗脳する方法さえ確立されているのだ。そもそも学園都市の能力者にもそのような精神操作系統の能力者さえいるのだから、電話一つで洗脳できると言われた所で違和感もない。ましてや学園都市の住人で有る上条にしてみればこの手の手口はあり得ないとは言い切れないのだ。

 

「(一体何の目的で土御門はそんな事をしたんだ…?まぁいいや)それでどうなってるのこの状況?」

 

一夏の話に続くように上条も

 

「そうだ、ステイル一体何が起きていやがるんだ?一から十まで説明する気は有るんだろうな?」

 

するとステイルは

 

「説明なら僕の方が求めたいぐらいだよ」

 

そう言い放つ。とはいえ一夏とティナには一応事の顛末を説明する。

彼らがここにいるのは”法の書”と言う誰にも読めない魔導書を解読することが出来ると言うシスターオルソラ=アクィナスが現れたと言う事。そしてそれらが同時に天草式によって盗まれたと言う事。さらには元天草式のトップでる神裂と連絡がつかないと言う事。イギリスとしては神裂が下手な行動を起こす前にケリを付けて欲しいと言う事を伝えた。そして上条が現場に向かっている時にそのオルソラ本人とも会っていると言う事も忘れずに

 

そしてそんな事を話している内に日が暮れる。

とはいえ周りはかなりあわただしい状況になっている。先ほど現場にいた黒い服を着たシスター。名前はアニエーゼ=サンクティスと言う少女が付近にいるシスター達に正確に指示を飛ばしている

そして一夏達はと言うと言語やら命令系統を乱さないためにも彼女たちの輪からは外れている

 

そして上条たちはと言うとステイルやインデックスが彼に法の書の説明をしている。そして一夏はティナと会話をしている

 

「なぁ、ティナ。一ついいか?」

 

「どうしたの法の書の説明なら私よりもあの子に聞いた方が良いんじゃないかしら?」

 

「いや、違う。違和感を感じないかって思ってさ」

 

「違和感?」

 

「いや、何で天草式はそんなヤバいものに手を出す必要があるのかと思ってさ」

 

「?そりゃ力が欲しいからに決まってるじゃない。聖人の神裂さんが抜けているんですもの力を求めるのは当然でしょ」

 

「それは分かるんだよ。でもさ、法の書でなきゃいけない理由なんてなくないか?ましてや十字教最大宗派が誇る魔導書を盗まなくたって世界には強力な魔導書が有るんだ。ならそっちを盗み出した方が良いような気がするんだ。俺ならそうするぞ」

 

つまり一夏が言いたいのは、どうしてそのような物を盗む必要があるのかと言う事だ。世界には法の書には劣ってしまうがそれでも強力な魔導書は有る。ならばそっちを盗み出した方が少ないリスクで大きな利益を得ることが出来るのでは無いかと言うのが一夏の言い分だ、さらに一夏は言葉を続ける

 

「それにさ。誘拐経験のある俺からしてみればオルソラの扱いにも違和感があるんだ。上条君の話しではオルソラは平然と歩き回っていたそうじゃないか。いくら戦闘の隙を捕えたとはいえ人質に傷一つ付けずに見逃すなんておかしいって思っちゃってさ」

 

「要は一夏はこの任務は乗り気じゃないって事?」

 

「そう言う事になるな…まぁ俺の考えすぎかもしれないけど」

 

そんな話をしていると不意に横の方でも会話がなくなる。どうやら一通りの説明は終えたようだ

そうしていると指示出しが終わったのか、アニエーゼが短いスカートを揺らしながらも上条たちが居る方向に歩いてくる

上条はアニエーゼが来たことで身構える。と言うのも彼は外国語が得意ではない外国語で話しかけられても彼は分かったふりをしてやり過ごすしか方法は無いのだ。そうして身構えていると、アニエーゼは

 

「あ、え、っと。これから状況の説明を始めちまいたいですのでそちらの準備は整っていますでござりますか?」

 

余りにも強烈な日本語で話しかけてきた、さすがにこれには上条だけではなく一夏やティナも絶句する。

そしてしばらくすると彼女は

 

「ど、どうも本場の日本人に自分のつたない日本語を話すのは、き、緊張しちまって…」

 

彼女がそのような事を話すと、それを聞いていたインデックスは落ち着くように外国語語りかけ、ステイルは暗い顔をして下を向いている。上条にしてみれば海の家でティナの流暢な日本語を聞いているためアニエーゼの日本語はかなりの違和感があった。そしてアニエーゼもなんとか持ち直すと

 

「いや、すいません。では改めて、こっから今の状況と今後の我々の行動行動についてお話をってひゃぁ!?」

 

「うわっ!?」

 

彼女の言葉が終わる前にアニエーゼは大きくバランスを崩す

そして彼女は上条の手をつかんだことで、二人そろって地面に倒れてしまう。それだけならばまだ良かった。転んだのならば普通に起き上がればいい。しかし問題はそこではない。倒れた二人の体制がかなり危ない恰好になっていたのだ

 

「(な、ななななっ!?)」

 

上条も事態に気づき首を引き抜こうとするが、アニエーゼがスカートごと上条の首を抑えた為、事態はますます悪化したのだ

その光景を見ていたほかの人物は

 

「と、ととと、とうま!さすがにそれはいたずらの限度を超えているかも!!」

 

「マンガみたいな光景だけど、実際に遭遇すると痴漢で通報されてもおかしくない光景だな」

 

「仕事中に発情するな、さっさと起きろ」

 

「(ローマ正教の上層部の人選ミスかしら?)」

 

インデックス、一夏、ステイル、ティナがそれぞれその光景を見て感想を告げる

どうにも緊張感が欠ける光景だが、それでも会議は続いていく

 

 

 

その頃IS学園では、一夏達にお使いを頼んだ張本人が部屋で頭を抱えていた。と言うのも

 

「(おかしい、今まで何をしていたのかが思い出せない…男の人から電話が来たところまでは覚えているんだけど…)」

 

そう、彼はいつものように電話がかかってきたため電話を受け、対応をしようとするとすぐに意識を失ってしまい。先ほどまでの記憶が無いのだ

そして机には一夏とティナの外出届と外泊許可書の予備が置かれそこには自分の筆跡で書かれているので疑う余地などは無い

 

「(疲れがたまっているのかもしれないね…もう年だ。いい加減”用務員”としての業務は引退した方が良いのかもしれないな)」

 

そう言いながら彼は別の書類に目を通していく、そこには学園祭の日程以外にも、いろいろな事が記されていた




電話越しでの催眠術をやる学者を実際にテレビで見たことが有るので書いてみました
学園都市ならばその手の催眠は意外とポピュラーだと思うのは僕だけでしょうか?

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