IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第5章 敵と味方…本当の事を言ってるのは!?
第55話


九月八日、一夏はこの日も放課後楯無との特訓を終え自室に戻ろうとしていると後ろから声をかけられる

 

「あぁ、織斑君ちょっといいかな?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

彼に声をかけてきたのは女子生徒ではなく初老の男性。この学園で唯一の男性用務員だ

一夏も時々彼が学生寮の周りなどを清掃しているのを見かけている

 

「実はね、お使いを頼みたいんだけど良いかな?」

 

「お使い…ですか?」

 

「あぁ、ちょっと荷物を届けて来て欲しいんだ。…本当なら自分で行けば良いんだが今日はこの後も今月にある学園祭に向けて清掃業者やらいろいろな所と話し合わなきゃいけないんだ」

 

学園祭が近いこともあり生徒だけではなく教員たちも色々とあわただしくなっているのだ。それは千冬であっても例外ではない。

なので一夏はこのお使いを受ける事にする

 

「良いですよ。それじゃぁ今から行けば良いんでしょうか?」

 

「あぁ、必要な書類や手続きなんかは僕の方から担当の先生に頼んで済ませて貰うから、頼んだよ。荷物もすぐに持ってくるから入口で待っててくれ」

 

用務員はそう言うと走ってどこかに言ってしまう。そして一夏も駆け足で自分の部屋に戻るとすぐに着替えて外出の準備をする。それと万が一の場合に備えて霊装一色も忘れずにしまう。

 

そして気づかれずに寮を出て玄関に向かう。この時一夏が気づかれないように移動したのは、ただ単にほかの人たちに見つかれば余計な揉め事が起きて時間がますます進んでしまうと一夏が判断したからだ。そして玄関に向かうと

 

「あら、一夏。貴方ももお使いを頼まれたの?」

 

そう言って来たのはティナであった。

 

「貴方も…って事はティナもお使いを頼まれたのか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

二人がそんな話をしていると、話題の用務員が小さな箱を持ちながらやってくる。

 

「二人とも待たせたね。これが例の荷物だよ。それとこれが書類、外出届と念のために外泊許可も貰っておいたからね」

 

「外泊届…ですか?そのこれをどこにまで持っていけば良いんですか?」

 

流石に荷物を持っていくために外泊届まで許可されるのはおかしいと一夏とティナは思ったので一夏が代表して尋ねると

 

「場所は学園都市から大体3キロくらい離れた所にある建物…名前は”薄明座”だったかな?そこに荷物の受取人が居るはずだからその人にこれを渡してくれればいいよ」

 

「あの…ちなみに中身は何なんですか?」

 

「郵便とかでは遅れない重要な物だよ。なにそんな非合法的な物じゃないからそこは安心してくれていいよ。そのお礼代わりの外泊許可だ届け終わって疲れているだろうから届け先の近くにあるホテルとかでゆっくりと体を休めるといいよ。お金も領収書さえもらってくれれば後で全額返還するからね」

 

何かと引っかかる所が多かったが、一夏達は渋々納得すると、荷物を受け取り近くのモノレールのある駅まで移動する。ちなみにここから学園都市までに行くにはモノレールのほかにもいくつか乗り継ぎが必要である。

 

そして彼らは現在、モノレールに乗っているのだが一夏は物思いにふけっていた

それはある日、クラスメイトに言われた言葉であった

 

「(ティナが奥さんかぁ…そりゃ見た目も良いし料理も上手だし。文句なしだよなぁ…うーん…)」

 

とそんな事を気軽に考えていると、その考えられている本人のティナは一夏に

 

「どうしたの一夏?そんな難しい顔をして」

 

「ん…いや。なんでも無いよちょっと人生を振り返ってたんだ」

 

「ふーん。まぁ良いわ、それよりもその中身何なんでしょうね?」

 

「さぁ?あの用務員さんの個人的な荷物って訳じゃ無さそうだよなぁ…そんな生徒や書類を私物化なんて出来る訳ないし…ISのデータって言うのが一番有力なんじゃないか?」

 

「まぁ良いわ。それで一夏、年上の先輩との同居生活は楽しんでる?」

 

「楽しんでるって…そんな訳ないだろう。毎日からかってくるわ同居しているおかげで術式の再調整が進まないわ…大変だよ」

 

「術式の調整ってそんなに持ってる術式が多いのそれともいまだに完成していないの?」

 

「なに、象徴武器が増えたことで攻撃パターンにも幅が出来たからな。色々と新しい術式を日々研究しているのさ」

 

「ちなみに今使える攻撃術式はどのくらいあるの?」

 

「完成した奴と未完成なやつを合わせたら…そうだなぁ20種類くらいはあると思うぞ。」

 

「随分と豊富な攻撃術式ね。やっぱりほとんど”天使の力”関係の術式な訳?」

 

「もちろんって言うかどういう訳か”御使い堕し”が終わってから”天使の力”を使わない術式の大半が使えなくなっちまったんだよ。索敵や人払いは辛うじて使えるんだけどな」

 

そう一夏が常に術式の調整をしている理由の一つである。事件終了後、一夏は念のために覚えていた”天使の力”を使わない通常の攻撃方法の大半が使用不可能になっていたため一夏としては今まで使っていた魔術の出力上昇と同時に新たな攻撃方法を開発しているのだ。

 

「まぁ良いわ。あなたの場合魔術始めてから5年も経っていないのにそれだけ術式仕えるって事は魔術のセンスは良いのね」

 

「そりゃどうも。さて次でモノレールは終点だぞ。って言うかもう4時半か…早くしないと本当に泊まりになりかねないな。」

 

「あら、あなたは私と泊るのは不満?」

 

「えっ…いや、不満って訳じゃないけど…」

 

「そう?って言うかいつもなら軽くあしらうのに今日はそうしないのね」

 

「今日はたまたまだよ」

 

そんな事を言いながら彼らはモノレールから列車に乗り継ぎ目的の場所へと向かう

そこで大事件に遭遇するとも知らずに…そもそも荷物の話から彼らは誘導されていた事すら知らずに…


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