一夏が職員室の前で楯無と会う。彼にしてみれば遅刻騒動や学園祭での争奪戦などの事もあり文句の一つでも言いたくはなったが相手は年上、さらに何か考えがあるのではないかと思っていたのでしばらく黙っていると彼女から
「ん、どうしたの黙りっぱなしで?」
「いえ、なんでも有りませんよ。それで要件は何でしょうか?」
「こんな所で話す訳にもいかないわ。生徒会室で話しましょう、お茶もご馳走するわ」
彼女がそう言ったため一夏としても軽く返事をし、彼女の後に付いて行くことにする。
そして暫く歩いていると、遠くから視線を感じる。
「(やけに視線を感じるな…狙いは、楯無さんか)あの、更識先輩」
「ん?どうしたの」
「さっきからやけに視線を感じるんですが…」
「あぁ、それはね…」
彼女が言葉を発しようとしたところで、複数の女子生徒、見た目から運動部であろう生徒たちは楯無めがけて一目散に飛び込んでくる。中には弓や竹刀を持った生徒なども紛れ込んでいる。
しかし狙われた本人は気にせずに簡単に攻撃を避け一人ひとり確実に撃破していく。その様子を見ていた一夏は
「(成る程、伊達や酔狂で暗部の当主をやっているって訳じゃなさそうだな。)」
そう感心しているとその間に彼女はすべての襲撃者を撃破すると
「ふぅ、こんな所かしらね」
「お見事。先輩慣れてましたね。もしかして襲撃は日常茶飯事だったりします?」
「生徒会長を倒した人間は生徒会長の座に付ける。そんな決まりなんかもあるから襲撃はよくあるのよ」
確かにIS学園の校則には生徒会長はこの学園で一番強い人間でなければ成らないと言う奇妙な校則も存在している。そして襲撃者の狙いはそれではなく
「それと今度の学園祭で優勝を狙えない部活が強引な手段に出たと。そんな感じですか?」
「その通り。織斑君、なかなかいい推理ね。…さてそれじゃぁ改めて生徒会室に案内するわ」
「一夏で良いですよ」
「そう?それじゃぁよろしくね一夏君。私の事も楯無で良いわ」
彼女はそう言い放つと一夏を生徒会室まで案内する。今度は襲撃もなく安全に生徒会室まで行くことが出来た。そして中に入ると
「おかえりなさい、会長」
そんな事を言いながら眼鏡に三つ編みが特徴的な三年生の女子生徒が彼女たちを迎え入れるさらに
「あっ、オリムー。いらっしゃい」
そう言いながら生徒会室にいたのは同じクラスの布仏本音だった
その後一夏は楯無に連れられる形で席に座ると、目の前にお茶が置かれる
「あっ、ありがとうございます。えっと…」
「自己紹介がまだだったわね。私は布仏虚(のほとけ うつほ)こっちは妹の本音って言っても織斑君は本音と同じクラスだから紹介はしなくてもよかったかしら?」
「昔から私たちの家は更識家のお手伝いさんなんだよー。前にも言ったような気がするけど、私もメイドさんなのだー」
「って事は姉妹揃って生徒会って事ですか?」
「えぇ生徒会長は最強でなければならないけど、それ以外は誰でもいいのよ。だから私は幼馴染の二人を入れたの」
楯無がこの生徒会の規則を説明し、しばらくはケーキを食べたりして和んでいると、不意に彼女が
「それじゃ一応今回の騒動の説明をするわ。一夏君を特定の部活に入らないからその関係で苦情が多くてね。生徒会としてはマズい事になったのよ」
「それで投票って事ですか…それならそれで事前に話してくれれば良かったのに…」
「ごめんなさいね。こっちとしても一刻も早く事態の収集を図りたくてすっかり忘れてたわ」
彼女はそんな事を言うが、どこまでが本当の話か一夏には分からなかったが、一夏としてはいい迷惑ではあるものの事情が事情であるため怒りたくても怒れなくなってしまった
「そのお詫び…も兼ねて私が一夏君を鍛えてあげるわ、生身、IS両方ね」
「ちなみに、それも誰かの要望だったりします?」
「違うわよ、単にあなたが弱いだけ。見てられないほど弱い。だから少しでもマシになるように私が付きっきりで鍛えてあげるわ」
彼女の提案は一夏にとってみれば願ったり叶ったりであった。ISの特訓であっても教える人が多く、途中でややこしくなったりした為、彼としれはマンツーマンで教わりたいとかなり前から思っていたのだ。決してほかの候補生の指導が雑と言う訳ではない。彼女たちの教え方は癖が強く、理解が難しいのだ。なので彼はあっけなく
「分りました…ご指導よろしくお願いします」
「…えっ?」
しかしここで楯無の様子がおかしくなる。と言うより表情を見る限りでは予想外と言った表情をしている。すると
「私としては、”お前にそんな事を言われる筋合いはねぇ、どうしてもって言うなら俺と戦え、俺に勝てたら言う事聞いてやるよ”的なリアクションが来ると思ってたのだけれど…」
「いやいや、そんな事言いませんよ。あいにく俺はISの技術や生身が強いだなんて思ってませんよ」
一夏の言うとおり、彼は土御門のような反則技やティナのようなカウンターを使える訳ではなく、ISの操縦技術に関しても他の候補生に大きく劣っていると自覚している。唯一勝てる候補生のセシリアにしても機体のおかげで勝てている物だと彼は自覚しているのだ
するとその話を聞いた楯無は感心したような反応をすると
「それじゃぁ早速だけれど、生身の戦闘訓練から始めましょうか。準備が終わったら畳道場に来て頂戴。」
「分りました。それでは失礼します」
彼はそう言うと生徒会室から出て行き。自分の部屋に向かうと白胴着と袴を取り出す。この二つはどういう訳か入学した時に一夏に渡されたのだ。この学園では女子も選択で武道が有り。一夏も、もしかしたら強制的に選ばされていたかもしれないのだ。
そして道具を取り出すと畳道場の近くにある更衣室で着替え、中に入る
中には一夏と同じ格好をした楯無が待っていた
「すいません待たせてしまって」
「私も今来た所だから謝る必要はないわ。それじゃ始めましょうかルールは…そうね私を床に倒したら一夏君の勝ち、君が戦闘続行不可能になったら私の勝ちで良いかしら?」
「(まぁ忍びの当主が相手なんだし、その位のハンデは貰っても良いよな)分かりました。」
「よし、それじゃ始めましょうか。お先にどうぞ」
彼女がそう言ったため一夏も構える。余談ではあるが一夏も小学生時代に箒と通っていた道場で一応古武術を学んでいる。
「(さて、随分と久しぶりにやるな。特に魔術始めてからはほとんど魔術便りだからなぁ…中学時代に魔術教わる傍らで軽く体術も稽古してもらってたけど…付け焼刃だしなぁ)」
そう一応彼は中学時代も自分の魔術の師である者たちに魔術を教わる傍ら、体術も指導してもらっていたのだ。なので彼は当時の感覚を思い出すように、彼女に接近すると足を払いにかかるが、彼女はすぐさま回避。そして一夏の腕を取り一気に畳にたたきつけようとするが、彼はすぐに後方に移動し彼女のタイミングを外す。
すると彼女は
「やるじゃない。所見で回避するなんて見事よ」
「マグレですよマグレ」
「そっ、それじゃぁこっちから攻めさせて貰うわ。いつまで持つかしらね」
彼女はそう告げると一気に接近し一夏を投げ飛ばそうとするが一夏は回避、すると彼女は隙を見逃さず、顔面に蹴りを叩き込もうとするが一夏は左腕を使って防御する
「嘘っ!?」
「右足が、がら空きですよ」
そして一夏は彼女を支えている右足を軽く払う。
一夏はもともと忍びの当主である彼女と正面から戦った所で勝ち目が無いのは分かり切っていた。ならば彼女にあえて攻撃をさて、一瞬のすきを突いて床に倒させればいい。そう考えていたのだ、そして案の定右足を払われバランスを失った彼女は床に倒れそうになるが、そこは忍びの当主。空中で体を一回転させるとうまくそのまま体制を立て直し着地する
「げっ、マジですか」
「危ない危ない、ちょっと冷や汗掻いたわ」
今の行動で彼女も一夏の認識を改めたのか、その後は攻撃の回数が極端に少なくなる。一夏も隙をうかがい攻撃を試みるも全て彼女にいなされてしまう。そうしている間に時間は過ぎて行き、ふと時計を見ると試合開始から15分も経過していた
「(一夏君、動きは素人くさいけど、だとしてもこの反射神経の良さは異常よ。攻撃をすべて回避するなんて予想できなかったもの…持って生まれた才能って奴なのかしらね。まぁあの様子ならボロが出るのも時間の問題かしら)」
「(この人…本当に強い…さすがは忍びの当主と言った所か。)」
二人がそれぞれ対戦相手の評価をしているが、戦況はどちらかと言うならば楯無が有利であった。現に一夏は肩で息をしているが楯無はまだまだ余裕の表情をしている
そうして場がこう着していると、不意に彼女が
「さて、本当ならこのまま戦闘続行と行きたいのだけれど…それやっちゃうとさらに時間かかるし、アリーナの使用時間も来ちゃうからここで切り上げって事で良いかしら?」
「…はい良いですよ。と言うかどう考えてもこの勝負は楯無さんの勝ちじゃないですか。(魔術もISも使わないとここまで弱いのか俺…)」
一夏はそう言いながら畳に座り込んでしまう
勝敗条件の一夏が戦闘不能になったら楯無の勝ちと言う条件も満たされているのだ…敗因は一夏の体力不足と言う形だが
その後休憩を入れ、一夏は彼女に連れられる形でアリーナに向かうのだった
前回の話の一夏の魔術基準は大幅に訂正しました
方角云々だと4大の歪みの影響をもろに受けてしまいかなりの食い違いが発生してしまうので
体術の強さとしては
ティナ=土御門=楯無>一夏と言う形ですね
土御門は反則技の数々、楯無は忍びで鍛えた技術の豊富さが売りです。どっちも相手に決まれば大ダメージとなる技です。
三人はイコールですがその中でも一番強いのはティナですね。彼女は攻めませんが強力なカウンターが有りますので