IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第51話

昼食を取り終えた後一夏は午後の授業に向けて更衣室で準備をしていた

すると背後から人の気配を感じた為一夏は後ろを振り返るとそこには

 

「あら、ばれちゃった」

 

水色の髪の女子生徒、リボンの色からして二年生と言う事が判断できる

 

「あの…誰ですか?」

 

「さて、誰でしょうね?」

 

一夏はそう尋ねるが女子生徒は曖昧な返答をする。まるで一夏をからかって楽しんでいるような雰囲気さえ感じられる。

そして暫くの間沈黙していると不意に女子生徒が

 

「私と無駄話をしていていいの?織斑先生の授業に遅れるわよ」

 

「げっ…!!」

 

女子生徒の言葉に一夏はあわてて更衣室を飛び出すが時すでに遅し、アリーナについたころには授業開始からすでに数分が経過していた。そして千冬が一夏に

 

「ほう、織斑。私の授業に遅刻するとはいい度胸だな」

 

「すいません…」

 

ここで言い訳の一つも一夏はしたかったのだが、あいにく言い訳を聞き入れるような教師ではないことを弟の一夏は知っているためここは何も言わずに素直に謝罪する。

しかし千冬は

 

「丁度いい。デュノア、ラピッド・スイッチの実演をしろ。的はそこの馬鹿者でいい」

 

「ちょっ…」

 

流石の一夏も反論しようとしたが、肝心のシャルロットは

 

「一夏、どうせ遅刻の原因だって別の女の子と話してたのが原因なんでしょ…なら仕方が無いよね」

 

そんな事を言いながら彼女も機体を展開し、武器を呼び出す

流石の一夏もこれには焦る

 

「(おいおいおい、こんなのって有りかよ…はぁ今日はついてないなぁ)」

 

一夏は何も語らずに彼女の攻撃をひたすら回避し続けるのであった。

 

 

そしてその日の放課後一夏は今日の件もあり以上に疲れた為一足早く部屋に戻って休むことにした

とは言ってもまだ夕食の時間帯ではないので部屋で術式と霊装の再調整をしている…すると不意に部屋のドアがノックされる

 

「はーい、誰ですかー?」

 

「あっ織斑君。私、谷本だけど…今大丈夫?」

 

「うん、谷本さん?あぁ、いいよちょっと待ってて部屋のドア開けるから」

 

谷本が部屋にやってくるのは珍しかったため、彼は一瞬気が抜けた返答をしたがすぐに気持ちを切り替え、霊装をしまうと部屋のドアを開ける。すると彼女以外にも

 

「織斑君、今日はお疲れ様。」

 

そんな事を言いながら彼女の横には同じくクラスメイトの鷹月がいた。

 

「二人ともどうしたんだ?」

 

彼がそう尋ねると、鷹月が

 

「私と谷本さんでクッキーを作ってみたんだけどちょっと作り過ぎちゃってね。それで織斑君にも上げようと思って」

 

彼女はそう言いながら小さな紙袋を一夏に渡す。そして谷本も同じように紙袋を彼に手渡す

 

「二人ともありがとう。」

 

「それじゃぁ、私たちはこれで帰るね織斑君また明日」

 

彼女たちはそう告げると自分たちの部屋に帰っていく。

その後彼はもらったクッキーを食べながら霊装の再調整を行っていたのだが

 

「(やっぱりそうだ、”御使堕し”が終わってから術式の精度が大幅に上がってる…後俺に必要なのはとにかく多く術式を使う事。それが出来れば全属性の威力が大幅に上がるんだが…生憎そこまで多くの戦闘経験を積んでないからな。それでようやく大規模攻撃が出来るんだから俺も面倒な術式を組んだもんだ。まっその方がトリックが敵にばれなくていいんだけど)」

 

彼はそんな事を考えながらこの日も霊装と術式の再調整を行うのであった

 

そして次の日、この日は今月の中旬に行われる学園祭の説明のための全校集会が開かれている

生徒会役員の一人が説明をすると同時に女子生徒たちの話が止まる。そして壇上に現れたのは…

 

「やぁみんな。おはよう」

 

そう言いながら現れたのは昨日彼の前に現れた女子生徒だった

女子生徒は軽く一夏に視線を送るが一夏は綺麗に受け流す

 

すると女子生徒は

 

「さてさて皆、初めまして。私の名前は更識楯無、この学園の生徒会長よ。よろしく」

 

「(この人が忍びの当主…名前は知ってたけど顔を見るのは初めてだ。)」

 

「(さっきの目配せを見る限り一夏、昨日彼女と会ったのね。)」

 

楯無を見た一夏とティナはそれぞれそんな事を思っている

 

そして生徒会長は今月開催される学園祭の特別ルールとして各部対抗で一夏の争奪戦を開始し一位の部活に一夏を強制入部させると言うルールを導入すると言うが、もちろん一夏にとってみれば初耳でいきなり巻き込まれたのだから一夏としても戸惑う。そして争奪戦ルールが導入された学園祭の説明が終わり全校集会は幕を閉じる。

 

そして教室に帰ると早速HRが開催され各クラスの出し物を決める会議が開かれていた。

この時一夏は通信用の霊装でティナと話している

 

<なぁ、これさ俺、生徒会に抗議できると思うんだけどどう思う?>

 

<いや、普通に抗議出来るわよ。むしろあの場で抗議しても良かったんじゃないかしら。>

 

<だよなぁ…>

 

<でもこれってチャンスじゃないかしら?>

 

<チャンス?>

 

<えぇ、だってそうでしょ。上手く事が進めばこっちの正体がばれずに暗部の当主と本格的に関われるのよ。もし下手な行動を起こせばそれを材料に交渉さえすることが出来る。何事もプラス思考よ>

 

確かに彼女の言うとおりだと一夏は思う。このような事を起こした以上遅かれ早かれ必ず楯無は一夏に接触してくる。それも向こうは一夏をただの学生と思い込んでいるのだ。自分の身分を明かさずに相手の情報が勝手に入ってくる。これほど美味しい話は無いのだ

 

とここで彼女は

 

<まっ、話はこんな所にしておいて通信を切るわ。自分のクラスの出し物を教えるつもりもないからね>

 

<そうだな。それじゃ>

 

こうして彼は通信を切り黒板を見るとそこには

 

「(織斑一夏のホスト、王様ゲームその他諸々…アカンやろ)」

 

と言う訳で迷わず一言

 

「いや、ダメだろ。」

 

「「「えええっ!?」」」

 

彼も一言にクラスが騒然となる。そして後ろの席の鏡ナギが一夏に

 

「織斑君、そんなこと言わずに…ね?」

 

「いや、お菓子とかは…許容範囲としても、もっと現実的なやつで行こうぜ。ホストとか男は俺しかいなくて他は全部女子とか違和感半端無い事になるぞ」

 

「うーん、そうだよねぇ」

 

ちなみにこの場に担任の千冬はいない。なんでも”時間がかかりそうだから職員室にいる。決まったら報告に来い”だそうだ。これはこれで無責任ではないだろうかと一夏は思っている。そして副担任の麻耶は

 

「私的には…ホストが良いと思っていたのですが…」

 

このありさまである。するとラウラが突然

 

「ならば喫茶店など、どうだろうか?」

 

その発言にクラスが静かになるとさらに彼女は説明を加えていく

 

「当日には外部からの大勢の人間が来るのであろう?飲食関係ならば収入も多くなるだろう。私の部隊の副官曰く、そのような喫茶店をコスプレ喫茶やメイド喫茶と言うそうじゃないか。」

 

彼女は淡々とした口調で話していく、途中疑問に思う事もあったが皆は気にしなかった。するとセシリアが

 

「メイド喫茶…良いと思いますわ。本場のメイドさんからすれば気になりますが。日本ではその事を気にする人は居ないでしょうし」

 

彼女の言葉に鷹月が

 

「本場のメイドさん?」

 

「えぇ、噂に聞いた限りなのですが英国には王族護衛専用のメイド、近衛侍女と呼ばれる方々がいるそうですわ。私は会った事が無いので本当かどうかわかりませんが…」

 

「(ゴメン、セシリア近衛侍女の娘なら二組にいるんだ。説明もちょっと違っているけど…まぁいいか)」

 

セシリアがそんな豆知識を話したあたりでちょうど一息ついたので、一夏が

 

「それじゃぁ出し物は喫茶店、メイド喫茶?でいいのかな」

 

「「勿論」」

 

その後も具体的な打ち合わせをしていく。衣装に関してはラウラとシャルロットが貸してくれそうな場所に心当たりがあるためそこから調達、それでも足りなければ演劇部のクラスメイトが作成。一夏は執事として客受けと厨房を担当することなどが具体的に決められた。

 

そしてクラス代表である一夏が職員室に向かい、千冬に報告する

 

「一組は、メイド喫茶に決まりました」

 

「成る程、それで立案は誰だ?田島、リアーデの騒ぎたい連中、時点で布仏、谷本と言ったあたりか?」

 

彼女の言葉に一夏は返答することが出来ない。まぁ千冬自身提案者を予測できないのも無理はない。そして一夏は

 

「提案者はラウラです…最初は喫茶店だったのですが、副官の話辺りでメイドの話が出て、セシリアがメイド喫茶を後押しして決まりました」

 

すると千冬は

 

「成る程、まぁあの副官は趣味が特殊だからな。ボーデヴィッヒもそれに影響されたのだろう。しかしオルコットがメイド喫茶を進めるのには驚いたが、まぁいい。それじゃぁ織斑この紙に必要な機材や食材を記入して提出しろ。いいな」

 

「分りました。」

 

そうして彼は紙を受け取り、職員室から出ようとしたが不意に千冬は

 

「それと織斑わかっているとは思うが、学園祭には多くの人が来場する。一般人が入る事は出来ないが、生徒一人一枚配布されるチケットを渡せば入場は可能だ。相手を考えておけ」

 

「分りました。それでは」

 

ちなみに学園都市の大覇星祭では厳重な警備をゆるくし生徒の関係者以外の一般客を大量に迎え入れているあたりからもISに関しては無駄に警備が厳重であるのだ。

 

彼が職員室から出ると目の前には

 

「やぁ」

 

「どうも、こんにちは」

 

IS学園の生徒会長で有り忍びの当主の人間。更識楯無が居るのであった

 

 

 

 




学園都市でさえ警備をゆるくするんだからIS学園の学園祭でも警備ゆるくすればいいじゃないか…と思っていたけど敷地の都合などもあるから仕方が無いのかなぁ…と思ってみたり

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