IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第45話

彼らが車の後ろに隠れた事を確認すると土御門は

 

「さてさて、流石にここから先は隠密だけでは難しいぜい。カミやん家を取り囲んでいる機動隊は全員双眼鏡でカミやん家に大注目しているだろうし。誰にも気づかれずに突撃するのは難しいぜよ」

 

「難しいって…どうすんだよ?」

 

上条はあわてて口を挟むが神裂が案を提案する。内容は機動隊に全く違う家を上条の実家として認識させると言うのだ。すると彼女の周辺に太陽の乱反射が無ければ見えないほど細いワイヤーが現れる

 

「禁糸結界、元ネタは東南アジアの家守ノ神の召喚陣かにゃー?」

 

その言葉に彼女はため息を吐きながらも

 

「土御門観客の前でタネを明かすとは何事です、本来ならばこの手の結界を張るのは私よりもティナの方が良いんですが…とにかくすべての機動隊員を効果範囲に収めるには半径100メートル程の蜘蛛の巣を築く必要がありそうですね。糸を張り巡らせるのに20分位掛かりますのでその間はどこかに身を隠していてください」

 

そしてその後彼女は上条に決して糸に触れないように告げるとその場を移動する。途中彼の言った”不幸”と言う言葉に彼女は一瞬反応し彼も理由を聞いたが彼女は軽く返すだけだった

 

そして一夏とティナは土御門と上条のやり取りを聞きながら

 

「さてさて後20分位でようやく中に突入できるな…全くここが民家じゃなくて空き家ならこんな事をしなくてもよかったのになぁ」

 

「まぁ、確かにそうね」

 

とここで一夏は土御門がちょうど魔法名の話題に突入したので一夏も彼女に疑問をぶつける

 

「そう言えばさティナ、お前の魔法名ってなんなんだ?」

 

「私の魔法名?うーん…まぁいいわ教えてあげる。土御門もこの場にいる全員の魔法名を教えてるみたいだし、聞こえたと思うけど私の魔法名はdefendo856よ。私らしい魔法名でしょ?」

 

「確かにそうだな。」

 

彼らがそんなやり取りをしている最中、土御門は上条にさらに説明をしている最中だった

すると彼は土御門に

 

「それにしても神裂、遅くねーか?まさか警官に見つかってるんじゃないか?」

 

「そりゃありえないぜい。ねーちんはロンドンでも10指に入る魔術師だけどどうにも使う術式にはムラっ気が有るんだぜい。結界張るのは得意じゃないから手間取ってんだよ。本来ならこういう結界の類はティナがやればいいんだがおそらく結界張ってもカミやんの右手で結界を壊してしまうかもしれないからにゃー、だから3次元的な結界を張るためにねーちんが行ったぜよ。」

 

その後も土御門は上条に対し魔術、そして彼の得意分野の風水などの説明をしていく。そうしていると神裂が物陰から移動するような形で帰ってくる

 

「禁糸結界、起動しました。上条宅を囲んでいる機動隊は300メートル離れた無人の家を上条宅と勘違いして包囲を崩しているはずです」

 

「んじゃがら空きになったカミやん家にお邪魔しますかにゃー」

 

土御門がやけにあっさりと言い神裂、ミーシャ、ティナ、一夏もそれに続いていく

そして一人残された上条に一夏は振り返りつつも

 

「上条君どうしたの?俺たちが仕留めるまでの間そこで待ってるって言うならそれでもいいけど…」

 

「あっ、あぁ」

 

上条はそう言いながらあわてて走る。そして神裂、土御門、ティナも律儀に待ってくれていた。そして彼は神裂につらい思い出を思い出させてしまったことを謝ろうかと思ったが本当につらかったのならば思い出させないほうが良い。彼は一人で首を振ると不思議そうな顔をしている彼女たちを振り切るように速度を上げた

 

”上条”と書かれた表札がコンクリート塀の端、玄関ポーチにポストや呼び鈴と一緒にくっついている

彼らは上条家の向かいの家の植え込みに隠れ様子をうかがう、外見は平凡な木造二階建ての建売住宅。しかしその家は現在真夏の炎天下にも拘わらずすべての窓を雨戸とカーテンで覆い隠している光景は異常であった。

そしてそれは間違いではない。太陽の光を拒むように閉ざされた家の中には悪魔崇拝じみた理由で28人もの人間を惨殺し”御使堕し”を引き起こし全世界を巻き込んだ脱獄犯が立てこもっているのだから。

 

一夏と神裂は植え込みの陰から二階のカーテンに阻まれた窓を盗み見つつ小声で

 

「これじゃぁ火野がどこにいるかわからないなぁ…家の見取り図でもあればまだ何とかなったかもしれないけど…」

 

「あれだけ厳重に閉ざしていると火野もこちらの接近には気づいていないように思えます。奇襲をかけるなら手早く行いましょう。上条宅の鍵はどこですか?」

 

「ここですにゃー」

 

何故か土御門がそう言いながらポケットから鍵を取り出す、彼はいつの間にか上条から鍵を奪い取っていたらしい。彼女や一夏でさえ彼の無意味な手癖の悪さに呆れたようにため息を吐きながら

 

「では土御門と一夏、ティナは陽動として玄関からできるだけ大きな音を立てて侵入してください私とクロイツェフはその音を合図に別ルートから隠密で侵入します」

 

「あいさー、ミーシャたんも異常なしかぜよ?」

 

土御門がそう問いかけると彼女は

 

「問一、少年。私と来てもらっても構わないか」

 

彼女は一夏を見つめながらそう告げる、一夏は驚いたように

 

「え、俺?」

 

するとその様子を見ていた土御門が

 

「まぁ陽動が一人減ったところで問題ないぜい。」

 

「そうか、それじゃぁ俺はミーシャと行くよ」

 

「解答一。少年、感謝する」

 

彼女はそう告げると腰のベルトからノコギリを引き抜くと助走もなしに上条家の一階の屋根へと飛び乗るそして一夏もそれに続くように助走をつけ一階の屋根へと飛び乗る

そして神裂に関しては助走もつけずただの垂直跳びで二階の屋根へと着地する

 

そして下にいる土御門たちが突入したところで一夏とミーシャも音を立てずに内部に侵入する

そして部屋に突入するとそこは寝室なのかベッドが二つ置いてあった。しかし一夏が気になったのはそこではない

 

「(これはすごい数のお土産だな、んこれって緑色の置物か、部屋の北の方角に緑色の置物…まぁこんなまぐれもあるのか)」

 

そうこの部屋には海外のお土産らしきものが大量に置かれている。

ミーシャは彼に小声で

 

「問一。少年何か気になるものでもあったのか?」

 

「あぁ、色と置物の配置を見てると4大天使の一つ神の薬(ラファエル)に関連した配置法があったんだよ。まっ、たまたまだろうけどな」

 

その言葉に彼女も納得をする。そしてしばらく様子をうかがっているとしたから大きな物音が聞こえてきたため彼らも急いで下に降りる。そしてすぐ後に

 

「無事ですか、土御門!」

 

そう言いすぐに

 

「なんですか、この異臭は?」

 

そう彼らが下に降りてくると部屋からは異臭が漂ってきていた、そして一夏はすぐにその匂いがガスである事に気が付く。

そしてミーシャは火野の顔を見ると腰のベルトからL字型のバールを引き抜こうとするが一夏がそれを止める。そして上条はガスの事を神裂に告げると彼女は身を強張らせ

 

「火野神作の尋問は我々が行います、あなたは至急窓を開けて換気を行ってもらえませんか?」

 

彼女の言い分は一見正しそうに見えるが上条はそれでも尋ねる

 

「おい、それなら家の外に連れ出した方が安全じゃねーの?」

 

「必要な情報を聞き出すまで尋問はこの場で行います。ここまで来て火野を取り逃す機会は作りたくないのです」

 

「そうか」

 

上条は納得が出来なかったがとりあえず頷き窓を開けに向かう。そして一夏は神裂に

 

「ちょっとこの家を捜索させてもらいますね。尋問の件はお願いします」

 

「どうかしましたか?」

 

「ちょっと気になる事が有るんですよ」

 

彼はそう言い残すと上条家の捜索を開始する。そして途中、窓を開けていた上条に

 

「上条君、ちょっと家の中を詳しく見せてもらってもいい?」

 

「ん?あぁ良いぞ。」

 

「ありがとう。」

 

そんなやり取りをしたのちの家を調べる。そして最初に玄関に向かうとそこには

 

「(玄関は南向き。そこに南の象徴色の赤色の置物…か。)」

 

彼はそれを確認すると二階に向かい部屋の東側に向かうと、そこには黄色の置物があった、そして下に降りると家の西側にそしてそこには青色の置物が置いてある。ここで彼は尋問など気にせずに焦り始める

 

「(成る程、そう言う事か。さてさてこりゃ困ったことになってきたな…しかも)」

 

彼が意識を外した時には時すでに遅し。この事件の真相が露呈し、ミーシャは家を飛び出し上条と神裂も後に続くように家を飛び出していったのだった。家に残っているのは一夏、土御門、ティナの3名である

 

すると土御門は

 

「さてさて一夏も真相に気づいたのかにゃー」

 

「あぁ、俺は風水に関しちゃ専門外だけど近代西洋魔術の儀式に関しちゃそこそこの知識がある。それを考慮してもこれはよく出来過ぎている。南には赤、西に青、東に黄色、北に緑。これは4大天使に当てはまる事が出来るんだ」

 

「それ以外にもいろいろあったわよそれこそ世界規模の災害を引き起こせる魔法陣が大量に。ね、土御門」

 

「あぁ。しかも問題なのは風水のスペシャリストの俺や結界やらこの手に詳しいティナでさえわからない魔法陣がこの家には大量にある。」

 

そう彼らはこの家を捜索しこの事件の真相に気づいたのだ。

そして一夏はさらに

 

「それにロシアのミーシャって子だ。ミーシャなんて偽名だと思うがそれでも変だ。だってミーシャって言うのは…」

 

「ロシアじゃ男性に付ける名前だからにゃー」

 

そうミーシャと言うのは本来ならば男性に付ける名前。いくら偽名とは言え男性の名前を女性が名乗るのはあまりにおかしすぎる。そして彼らの結論はただ一つ。そしてそれを代弁するかのように一夏が

 

「つまりあの子の正体は…アレなんだろうな」

 

「とりあえず俺たちもカミやんを追うぜよ」

 

土御門の言葉に納得すると彼らもタクシーを呼び急いで海の家に向かう事にする

 

 

 

 


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