IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第43話

翌日、一夏が目を覚ますと、そこではとんでもない状況が起きていた

 

「なっ…なんでティナがここに!?」

 

そうティナが居ることには問題はない、がいた場所が問題なのだ。彼女は今一夏の布団に潜り込み彼の左腕にしがみついたまま眠っているのだ

 

「ん…すぅ…」

 

そして彼女は物の見事に爆睡中であり、無理やり叩き起こす気が起きなかった。しかも

 

「(おいおい、若干、浴衣はだけてないか!?見えて…まて考えるな、そんな事を考えたらだめだ)」

 

ちなみに彼らは寝る前に二人とも浴衣へと着替えている。寝相のせいか浴衣が若干はだけてしまっているため彼としても下手に動いてこれ以上状況を悪化させるわけには行かないと判断するが…彼としてはあらぬ誤解を避けるためにも早々に脱出することを考え行動を開始する

 

「(さて、まずはしがみついた腕を外すことからだな…とりあえずゆっくりと腕を振りほどいて…っと)」

 

彼はなるべく彼女を起こさないように腕をつかみ離そうとするが

 

「(落ち着け、落ち着け、なるべくゆっくりと離すんだ)」

 

彼はゆっくりと彼女の腕を移動させるとそのまま足音を立てずに部屋から脱出する事に成功する

 

「(危ない危ない、戦闘以外でここまで緊張したの何て久しぶりだぞ)」

 

彼はそう思いながら下に降りていくとそこには誰も居なかったため、彼はまだ全員が寝ているものと思い時計を見るが時刻はすでに10時を過ぎていた、彼らは相当長く眠っていたらしい

 

「俺がこんな遅くまで寝てるなんて珍しいな…自分で言うのも何だけど」

 

彼がそう言いながら周りを見渡すと一人の男性が一夏のもとにやってくる。すると

 

「おぅ起きたかねーちゃん。ここで泊まってたお客さんの大半は遊びに行ったみたいだぞ。」

 

「大半…って事はまだだれか居るんですか?」

 

「ん、見た感じじゃぁツンツン頭の少年も外出はしてなかったはずだぞ。まぁ俺もこれから食材の買い出しに行くんだけどな。」

 

そう男性店員が言い残すと海の家から出て行ってしまう。

仕方が無く一夏も、着替えに二階へあがり部屋へはいる。どうやらティナはまだ寝ているようだ

一夏はこの隙を逃すはずもなく素早く着替えるとそのついでにティナを起こすことにする

 

「おい、ティナ起きろ、もう朝だぞ」

 

「うん…あと一時間…」

 

「いやいや一時間って、流石に寝すぎだろ。それに後二時間もしたら昼だぞ」

 

「分ったわよ…」

 

彼女はようやく起き上がるが、この時彼は後悔した、なぜ起こしたらすぐに後ろを向かなかったのだろうと、その理由は…

 

「ん?どうしたの一夏…」

 

「ティナ、とりあえず俺は下にいるからな、早く着替えてこいよ」

 

「えっ?、…!?!?…わっ、わかったわ」

 

彼女の声を聴くと一夏はすぐに部屋から飛び出し、一階に向かう

そしてしばらくすると着替えたティナが下りてきたがその顔はどこか赤い

 

「おっ、おはよう一夏」

 

「あぁ、おはよう」

 

彼らは軽い挨拶をするが、すぐに沈黙。そして気まずい空気が流れていたがしばらくして神裂や土御門、ミーシャがやってくる。

そして土御門は一夏達に昨晩の出来事を報告し、作戦会議は上条の客室で行うと言う事を告げる

ちなみにどうしてこんな時間までかかっていたのかと言うと上条が夏バテで倒れてしまったからだと言う。そして神裂は上条に軽いお説教をするが途中で土御門が神裂に耳打ちをすると彼女は何故かおとなしくなってしまう。そして上条がこの会議の司会進行をすることになる

 

「んで、”御使堕し”の犯人は火野神作って事で良いのか?昨日の俺と御坂妹の目撃情報から判断するとどうにもアイツは入れ替わってないっぽいし」

 

火野神作、それが昨日彼らを襲った男の名前である。そしてそれを言い終わると上条は神裂の方を見ると彼女は

 

「私は直接見ていないので分かりませんが、それが事実なら彼は限りなくクロに近いでしょう」

 

「…となると火野神作ってのを捕まえれば言い訳…だがにゃー」

 

土御門は困ったような表情をしサングラスのフレームをいじる。そう火野を捕まえようにもどこに行ったのか痕跡さえつかめていないのだ

 

「火野が魔術師ならば彼の魔力の残滓を追跡することは出来ないのでしょうか?」

 

「解答一。昨夜火野が魔術を使用した痕跡は見つからず。おそらくは追跡を逃れるための工作かと推定される」

 

「そもそも天使の気配すらしないじゃない、まぁ天使クラスの魔力なんて放置しようものならそれだけで土地が歪むんだから隠しているのは間違いないんでしょうけど」

 

彼女たちの言葉を聞いていた上条は

 

「隠して…ってそんな簡単に出来るのか?」

 

彼がそう尋ねると一夏が

 

「まぁ旧約の話になるんだけどね、天使が自分の正体を隠して街にいって民家に上がって人間と食事をしたって話はあるよ。それ以外にも川でおぼれた子供を助けた大天使なんても居たそうだ。要するに天使って言うのは優れた隠ぺい技術を持っていると考えた方が良いよ」

 

一夏の言葉に神裂とミーシャも頷く。ミーシャの場合、前髪に隠れて表情は読めないがどこか得意げな表情をしている。専門の一夏はともかくミーシャまでそう言う表情をするとは、インデックスもそうだがシスターと言うのは聖書について語るのが好きなのか?と上条は思っている

 

「とにもかくにもまずは情報収集かなーっと」

 

そう言いながら土御門は客室の隅に置いてある古臭いテレビのスイッチを入れると、そこではアナウンサーが火野についての話題をだしその後大野という大学教授が火野の行動パターンを説明している。とちゅうで教授のはなした”エンゼルさま””儀式殺人”と言う言葉を聞き一夏は顔をしかめる

 

しかし上条は一夏のその表情に気づかず上条は頷くと

 

「そうだ、エンゼルさま。昨日火野も言ってたこの評論家が入れ替わる前の火野について語ってんなら、これは入れ替わる”前”と”後”の共通点になる」

 

「問一。今一度確認を取るがやはり火野神作が”御使堕し”の実行犯と言う事か。」

 

ミーシャの言葉に上条は頷く火野には上条のような幻想殺しを持っている訳ではないのに入れ替わりが起きていないのだ。現時点で火野が一番怪しいと考えるのは妥当な判断である

すると上条は

 

「それにしてもエンゼルさまってのは何なんだ?」

 

「それについては昨日床下からこんな物が出てきたぜい」

 

そう言いながら土御門はノートぐらいの大きさの薄い木の板を取り出す。そこには表面が釘のような物でボロボロに傷つけられ傷のない部分など存在しないほどだ

 

「どうにもアルファベットが刻んであるらしいぜよ。後から上書きしていくんでこんなにボロボロになっちまったがにゃー」

 

その後も彼はこれは自動信託の類であり、簡単に言えば”こっくりさん”や”プランシェット”のようなものであると告げていく

 

「(こっくりさん?)」

 

上条は土御門の言葉の一部に疑問を覚えたが黙っていることにした。

 

「それでエンゼルさまの命に従って行われたのが判明しただけでも28人もの儀式殺人…ですか。それで一体何の儀式をしたんでしょうね」

 

「…まさか、それが”御使堕し”だってのか」

 

「となるとアイツが呼び出そうとしたのは堕天使とか悪魔とかそう言う部類のモノを呼び出そうとしてたって事になるぞ。」

 

すると土御門はうなるように両手を組みながら

 

「しっかしそうなるとコトは複雑になってくるぜい。火野神作が”御使堕し”を起こしたのは良いとして命令したのはエンゼルさまって事だよにゃー?エンゼルさま=天使なら何でわざわざ”御使堕し”なんて引き起こしたんだか」

 

その言葉に上条は思ったことをそのまま言ってみる

 

「…ストレートに地上に降りたかったから?」

 

彼のその言葉に一夏が反応し

 

「いやいや、それは無いんじゃないかなぁ?天使に人格ってものは無いんだ。天使って言うのは書いて字のごとく”天の使い”。それに天使って言うのはよっぽどの事情が無ければ神の命令なしには行動が出来ないのさ」

 

「…天使ってそんなもんなの」

 

彼のその問いに土御門は補足する感じで

 

「そんなもんだにゃー。新約には最後の審判ってのが有ってな善人と悪人をさばいて天国地獄へ送るのは世界の終りの神様の仕事って事になってる。つまりそれ以前に天使が勝手に人を殺したりして歴史を変えたらマズイって訳ぜよ」

 

その後も彼は上条に対し天使についての解説を加えていく

そして一夏は話を聞きながらも一人で考え事をしていた。

 

「(今回のこの事件なんてのは例外の中に当てはまりかねない。天使は確実に堕ちてきている、後は居場所だ。本当に火野の手に渡っていたらとんでもないことになるぞ。それと天使がどれだけ堕ちてきたかも気になるよなぁ…)」

 

そして彼のその表情をミーシャは観察するように見つめていたがそれに気づく人物はいなかった

そして作戦会議は終盤に差し掛かっていく


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