上条は今、床下から鳴り響く金属音を聞きながらようやく冷静さを取り戻し自らも彼を助けるために床下に向かおうとしたその瞬間、恐るべき速度を持った赤いシスターが彼の視界に飛び込んでくる
その速度に彼はそれが人間である事にすら気づけなかった。床をなめるように身を沈めて走る少女は腰に差した金槌を引き抜くと、そのまま足元の床を思い切り打ちつけると、床が砕け、直径にして70センチほどの大穴があく。するとシスターは金槌を捨てペンチを持ち大穴へと飛び込む
その光景に上条はあっけにとられていた
「(何だ、何が起きた!?)」
そしてそれは床下にいる一夏も同じだった、突然大きな物音と共に一人の金髪の少女が飛び込んで来たのだから驚くのも無理はない。
「君は…一体…?」
彼のその呟きに彼女は反応せず、再び走りだし火野へと突撃していく。そこから先は圧倒的な光景だった。その矢のような速さで火野を追い詰めると彼を殴りつけ、しまいにはペンチで歯を抜き、そのまま火野を床上へと放り投げる。もちろん彼女も火野を追うために床上へと飛び出していく
その後、床上において火野が錯乱したように声を上げていく、そしてしばらくすると声が無くなったことから火野が逃げ出したのだと言う事が確認できると一夏も近くに開いた大穴から這うように床上へと脱出する。
すると
「一夏、よかった無事だったのね」
「全く、あなたと言い上条当麻と言い随分と無茶をしますね」
「とりあえず二人とも無事でよかったにゃー」
そうティナ、神裂、土御門が言う、ちなみに上条はどうやら毒のようなものを受けたらしく、赤いシスターの少女が毒を抜く動作をしていた
そしてしばらくするとシスターの少女はこちらを向くと
「ロシア成教、殲滅白書所属。名はミーシャ=クロイツェフ。」
彼女はそう自己紹介をするそして彼らも一応の自己紹介をすると、不意にティナが
「とりあえず、一夏。上に行くわよ」
「ん?何でだ」
「その足を治療するために決まってるでしょう…」
「いや、でも状況を詳しく知りたいし…」
一夏がそう言うと神裂が彼に
「話は後で伝えます。あなたはとりあえず治療を受けそのまま休みなさい」
「そうそう、けが人はさっさとねるぜよ」
そう二人が言うが土御門はにやけながら一夏に告げた為一夏は怪しみながらも渋々了承し、彼女に連れられる形で彼女の部屋へと行く。
そして彼女の部屋に彼女は足の治療を始める。一夏は念のためティナに疑問をぶつける
「なぁ、ここってやっぱティナと神裂さんが泊まる部屋だろ?」
「いや私と神裂さんは別室よ。と言うか土御門と同じく神裂さんも個室だったはずよ。って言うか神裂さんは男に見えてるんだから個室に決まってるじゃない。」
「そうか…」
一夏はそう言いながらできるだけ周りを見渡さないようにする。下手に見渡して下着でも見ようものならお互い気まずくなることは容易に想像できたからだ。
するとティナは
「ねぇ、一夏。あなたの部屋なんだけれどね」
「おぅ、俺の部屋がどうかしたのか」
「私と…一緒…なんだけれど…」
「はっ?」
彼女の告げた言葉を彼は一瞬理解できなかったが、すぐにその理由を理解する
「(そうだった。俺は今神裂さんに見えてるんだった…って事は箒に見えてるティナと同室になるのが自然…だから土御門の奴はにやけながら俺の方を見てやがったのか。全くあのシスコン野郎…)」
暫く両者が沈黙していると、不意にティナが
「かなり遅い時間だし…寝ましょうか…」
「そっ…そうだな…」
そう言い一夏は押入れから布団を出して眠ろうとするが、眠れない。距離があるとはいえ隣には女子が眠っているのだからそうなるのも無理はない。
「(だーっ、眠れん。ちょっと夜風にでも当たってくるか)」
彼はそう思うと立ち上がり、ティナを起こさないようにこっそりと部屋から脱出する。この時足を見てみると傷は完璧に塞がっている。逆に完璧に塞がりすぎて本当に刺されたのかと錯覚してしまうほどだった
そして彼は海の家から出ると、そこにはミーシャが立っていた
すると彼女は一夏を確認すると
「問一。少年、その枷は自分でつけたのか?」
「枷?何のことだ。」
「問二。君の周り全体を力を押し込めるために大きな鎖のようなものが纏わりついている、それはなんだ?」
そう彼女は問うが彼には枷と言われても自分では全くと言って良い程心当たりがないが、ティナが行っていた事を彼は不意に思い出す
「枷って言われても俺には何も心当たりがないんだよなぁ…、なんかティナが俺の周りに莫大な天使の力がまとわりついていたから強引に押し込めた的な事を言ってたけど、もしかしてそれの事か?」
「回答一。その事だ少年、まぁ自覚が無いのなら別に気にする必要はない。今はまだ…な」
そして彼女は言葉を続けるように
「問三。少年、その枷を外してほしいか?」
「えっ、外せるのかこれ?外したら俺やばいことになるんじゃぁ…」
「回答二。手順を踏み枷を外せば何も影響は起きない。外すか?」
「うーん…それじゃぁお願いしようかな?(どうしてもヤバかったらティナに土下座して謝ってまた直してもらおう…)」
彼の言葉に彼女はうなずくと彼の右腕をつかみ力を込めていく、これは何処かティナのやる動作に似ているとさえ思えた
ここで一夏は彼女の名を聞いた時に感じた疑問をぶつけてみる
「なぁ、俺の力の事を誰から聞いたんだ?…そもそも君の名前のミーシャって、ロシアじゃ確か…って居ない、どこに行ったんだあの子…まぁいいか」
一夏が疑問をぶつける前にすでに彼女は居なくなってしまっていたため、彼は仕方が無く自室に戻る事にする。そして布団に入ると彼はすぐに眠りについた
ちなみに眠りについてすぐ、彼の布団に何かが潜り込んできた感覚があったが、彼は眠気に負け無視した
後にどんな事が起きるか知らずに…