IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第35話

夏休みも終盤に差し掛かったこの時期、一夏はその間学園からの課題と、ティナから譲り受けた霊装の調整に大半の時間を割くことになってしまった。そのおかげで彼はこの夏休み、序盤にティナ達が家にやってきた以外はこれと言って外出することが無かった。しいて言うならば機体のデータ取りで二日ほど研究所に半ば拘束された事ぐらいであろう。そして今は8月の25日、彼は今日も霊装の調整に励んでいた

 

「よし、だいぶコイツにも馴染んできたな…後は実戦でどのくらい通用するかだよな…さて、今日は天気もいいし、ちょっと外出してみるか」

 

彼はそう言いながらすべての霊装を隠し持つと戸締りをして外に出る。ちなみに気温は29度まで上がり真夏日と言う言葉が似合うほどの熱さであった。

 

「うわっ、熱いなぁ…さて今日はどこに行こうか。」

 

とは言ったものの彼の行く先は大半がIS学園近くのショッピングモールである。ここは以前ティナと一緒に買い物をした場所でもある。このあたりの店は水着店以外にもゲームセンターや喫茶店もあるなど繁盛しているエリアでもある

 

「さて、いざ来てみたは良いけど、どうしようかなって…これは魔力か、ちょっと後を辿ってみるか」

 

彼が到着すると近くで魔力を感じた。魔力の力から言えば大したことはないが、一応念には念を入れて発生源を探る事にする。彼の実力ならばたいていの魔術師ならばそこそこ戦えると言う事もあり、しかも彼は召喚爆撃を使うことが出来、奇襲すればほぼ確実に撃退できると思っているからだ。

 

そう思いながら彼は魔力の発生源を探っていくのだが…そこには…

 

「占いの館?…そうだった、別に魔術なんて戦闘以外にもこういう業界でも使う場合があるんだったな」

 

そう、彼の所属している組織上魔術結社と言うのは戦闘集団の集まり、と言うイメージが強いが。別にそうと言う訳でもない、中には占いに魔術を使う結社もあるのだ。そして今現在はこの建物から魔力の痕跡があるため、一夏は一応の警戒をしつつも建物に入るとその中は…

 

「(うわ…恐ろしい程に胡散臭い館だな。何と言うか初心者知識丸出しだ。これは魔術師がいると言うよりたまたま道具揃えたらそれが魔力秘めてましたって言うパターンだなこりゃ。心配して損した)」

 

彼はそんな事を思いつつ中の様子を確認する。そこにいるのは大半が若い女性であるが時折男性も見かける。彼も気休め程度と思い、料金を払い占ってもらう事にする。そして自分の番が来たため彼は占い師の居る部屋に入ると

 

「いらっしゃい、まぁどうぞどうぞ、座ってくださいな」

 

「はぁ、お願いします」

 

部屋に入るとそこには老婆がおり、一夏が入ってくるのを確認すると座るように進めたため彼もおとなしく座る。すると老婆は彼に

 

「それでは、あなたの運命の相手と未来の出来事を予想しましょう」

 

「はぁ、お願いします(見かけからして胡散臭いけど…怪しい感じではないな…)」

 

その間も老婆は何やら水晶玉にパワーを送る動作をし、一夏をじっと眺めている。すると

 

「成程、成程。結果の前にあなたは随分と面白い方ですな」

 

「面白い…俺がですか?」

 

「えぇ、貴方は誰よりも珍しい道を歩んでいる。そんな風に見えますぞ。」

 

そう言いながらも老婆は淡々と事実を告げていく

 

「さて、あなたの運命の相手、それはもっとも身近な人物ですな。それ以上は分からぬ。そして貴方はこの先、いくつもの騒乱に巻き込まれる。それこそ国、世界を揺るがしかねない大きな騒乱にのう。」

 

「大きな騒乱…ですか」

 

「だが少年、あなたは周りではなく、自分の考えで行動しなされ。その行動がたとえ周りからは信じて貰えなくとも、己の魂に刻んだ信念に従い行動するのじゃ。そうすればきっと、理解をするものが必ず現れる。そんな風に見えますな。結果は以上じゃ」

 

「(己の信念、魔法名に従い行動すれ…か)ありがとうございました」

 

彼は老婆に挨拶し、席を立ち、部屋を出ようとすると。老婆は彼を引き留め

 

「一つ言い忘れておった、貴方を理解する相手、それは日の当たらぬ人間じゃ。華やかな舞台に立つ人間よりはお主を理解してくれると思うぞ」

 

その言葉を聞き彼はもう一度老婆に礼をするとすると部屋を出て、館を立ち去る

その時、彼は

 

「(大きな騒乱…か。まぁ必要悪の教会に所属している以上覚悟は出来てるけどな。さて…問題は…)」

 

そう彼にとって一番の問題は老婆の言った運命の相手は身近にいる。その一言は彼に大きな疑問を残した

 

「(身近な相手…やっぱ近いのはティナだよなぁ、次点で仲のいい鈴や谷本さん、鷹月さん辺りか…。もしもティナが運命の相手…やべぇ普段からしょっちゅう話しているから全然想像出来ない。)」

 

彼はそんな事をぼんやりと考えながらも街中を歩いていると建物の周りに人だかりができているのが見える。一夏も野次馬に混じって先を見てみるが、そこには警察官が立ち、道をふさいでいた

 

「あの?何があったんですか。」

 

「なんか武装グループが立てこもってるらしいぞ」

 

彼は野次馬の一人からその情報を得ると、様子を確認するために、近くの人気の少ないビルに入り現場の見える位置まで移動し、内部を確認すると

 

「(人数は三人、全員が武装してるのか。…って中にいるのはシャルロットとラウラ!?何してるんだあいつ等?いや格好からしてバイトか。さて問題は犯人の武器だが…二人は銃と爆弾。三人目はこっからじゃよく見えないな…ちょっとしたおせっかいを焼かせてもらうかな)」

 

彼はそう思うと懐から短剣を取り出すと、魔力を込めつつ、近くにある室内タンクに狙いを定める

ちなみに彼の居るビルは人気が少ないと言うより、廃ビルであり近々解体されるビルである。とはいえ室内タンクには多少の燃料が入っているため、彼の得意な炎を使い爆発させればそれなりの威力以上に音が出る

 

「(俺が戦闘に加わるのは不味いけど、アイツらの気を逸らす事位ならば問題はない。それにこれを爆発させればかなりの爆音が出る。そしてその隙にあいつ等なら犯人を制圧するだろうしな)」

 

彼はそう思った後、短剣から炎をタンクにぶつけを一気に爆発させる。そしてその時に発した爆音により犯人たちは怯み、その隙に彼女たちは犯人を制圧する。

こうして事件は幕を閉じる

 

ちなみに本来ならばその場で大火災が発生するのだが、一夏は炎を当てた後すぐに杯を取り出し、魔力を籠め水を発生させ、消火し、さらに一夏は事前にビルの周りに人払いを張り人を避けた為落ちてきたガラスの破片が人間に当たることは無く二次被害は一切起こらなかった

 

 

そしてその日の夕方、事件解決の彼女たちは寮の自室でくつろいでいたのだが不意にラウラが

 

「それにしても私たちは運が良いな。まさかあのタイミングで近くのビルにあった室内タンクが爆発してくれるなんて思いもしなかったぞ」

 

「あの後警察がビルに立ち入った時に話してたもんね。それにしても何であのタイミングで爆発なんてしたんだろうね」

 

「さぁな、あの暑さでどこか壊れたのかもしれないな、それにしても解体予定とは言え燃料が入ったまま放置しておくのは許せんな。もしあの場が戦場ならば敵にやすやすと燃料を明け渡すことになるぞ」

 

「まぁ…確かにそうだよね。」

 

「それでシャルロット、この服はずっと着てなきゃダメか?」

 

「ダーメ、ラウラよく似合ってるんだから」

 

「むぅ…」

 

彼女たちは真相を知らず、だがとても楽しい一日を過ごしていった

 

 

 

 

 

 

 




次回からは4巻に突入します。その後新学期、IS学園学園祭、法の書へと進んでいきます
4巻は三沢塾編ほど長くならない…予定です

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