ティナから連絡のあった次の日、一夏はいつもより早く起きていた。いつ来るか具体的な時間までは告げられていなかったためである。そして彼は今IS学園で出された夏休みの課題をやっているのだが…
「はぁ、課題が多すぎるんだよなぁ…特にISに関する物の多さが異常だぞ」
そう、国語や数学などの基礎科目の課題に関しては一夏は早々に終わらせられたのだがIS関連科目に関しては一夏はほとんどと言って良い程終わっていない。
彼の場合ISの勉強を始めたのが四月からと言う事もあって知識に関してはほかのクラスメイトよりも大きく劣ってしまっている。
そしてしばらく彼が暫く机に向かっていると、インターホンが鳴る
「おっ、来たか。」
一夏はそう言い机を片付け、家の玄関を開けると
「久しぶりね一夏」
「おう、久しぶりだなティナ。まぁ入れよ」
「お邪魔するわ」
そう言いながらティナは一夏の家へと入る。この時ティナは両手に袋を持っていたため一夏が袋の一つを持ち、そのまま居間へと入っていくそしてティナをソファーに座らせ一夏はお茶を入れようとするが
「あれ、ティナって麦茶大丈夫か?」
「えぇ大丈夫よ」
彼女がそう言ったため一夏は麦茶を入れテーブルに置く、ちなみに時刻は朝の10時だ
すると彼女は一夏に
「さて、戦利品なんだけれど、表の戦利品と裏の戦利品どっちを先に渡してほしい?」
「うーん、それじゃぁ裏の戦利品で」
「分かったわ」
彼女はそう言うと袋の中から一つの箱を取り出す、そして中身を空けるとそこには驚くべきものが入っていた
「これって…杯とペンタクルじゃないか、どうしてこんなものが!?」
そう箱の中にはちょうど片手で持てるサイズの杯と首にぶら下げされるサイズのペンタクルが入っていたのだ。これは水と土の象徴武器であり彼が最も必要としていたものだった。
「父さんがそういった霊装を作る関係の仕事をしていてね。あなたの事を話したら”彼に渡してあげなさい”って言って渡してくれたのよ。もちろんお代はいらないって言ってたわ」
「いや、でもこれって…」
「まぁそう言うんだからもらっておきなさい。これでようやく全力を出せるんじゃないの?」
一夏はちょっと申し訳ない気がしながらもありがたく霊装を受け取ることにする、そしてここで一夏はふと思ったことを告げる
「そう言えば、ティナの家ってどういう家系なんだ?お父さんが霊装職人で娘のティナが結界使い…かなりすごそうな家系に見えるんだが…」
「うーん…あなたが言うほど私の家は特別大金持ちって訳じゃないわよ。イギリスなんて世界有数の魔術国家なわけだし、そんな国に住んでいるんだもの別に霊装職人だっていても不思議じゃないでしょ?ちなみに母さんも私と同じ結界使い、一時期は王室の近衛侍女も務めてたらしいわよ。」
「(それは…普通の家系なのか…もしかしてティナってかなりのエリートかつお嬢様なんじゃぁ…?)」
彼女の話に一夏は冷や汗が止まらない、もしかして自分はとんでもない身分の子と仲良くなっているのではないだろうかとさえ思えてくる。セシリアもかなりのお嬢様だがティナはそれの上を行っているのではないかと思えてくるほどだ。
するとその表情も見ていた彼女は
「だから、私の家はそんなにお金持ちじゃないわよ。母さんだって引退してかなりの年月がたってるし。貴方が心配することなんて何一つもないわ、それにお金なんて霊装を買ったりいろいろやってるから、むしろ家計が火の車だって嘆いてたわ」
「そっか、それじゃぁこの話はこれで止めるか。」
「そうね、さてそれじゃぁ表のお土産と行きましょうか」
そして彼女はもう一つの袋から箱を取り出すと、そこからはクッキーの箱が出てくる
「これは、クッキーか?」
「えぇ、イギリスじゃ有名な安くて美味しいお菓子屋さんの人気商品よ、せっかくだから一緒に食べようと思ってね」
「そっか、それじゃぁ麦茶じゃなくて紅茶とかにすればよかったかなぁ」
彼はそう思う、さすがに麦茶とクッキーはミスマッチだと思ったのだが、これはこれで有りと感じたのか二人がクッキーを食べようとした時に家のインターホンが鳴る
「ん?誰だろ、ちょっと出てくるな」
「えぇ」
そして彼がインターホンから送られてくる画像を確認するとそこには
「あれっ、シャルロット、どうしたんだ?」
「えっと…、その、きちゃった」
「そっ、そうかちょっと待っててくれ」
彼はそう言い急いで受話器を下ろす。するとティナは
「あらら、予定外のお客さんね。」
「恐らく流れ的に家に入れることになっちゃうと思うけど良いか?」
「分かっていれば居留守もできたけど、もう出ちゃったものは仕方が無いわ。良いわよ別に、まぁ理不尽な言いがかりつけられたら私もフォローは入れてあげるわ(やっぱり人払いの結界を張っておくべきだったわね…)」
「ごめんなティナ。全く、来るなら連絡の一つでもしてくれればよかったのに…」
一夏はそうぼやきながらも玄関に向かいドアを開ける
するとシャルロットは
「あっ、一夏ゴメンね連絡もしないでいきなり来ちゃって。迷惑だったかな?」
「いや迷惑って訳じゃないが…まぁとりあえず入れよ」
「おっ、お邪魔します」
そう言いながら彼女は家の中へと入るが玄関に靴が会った事に気づくと
「あれ、誰か来てるの?」
「あぁ、2組のティナが来てるんだよ」
「ええっ!?どっ、どういう事!?」
彼女は驚きながら一夏に尋ねるが彼はどう答えて良いか分からず言葉を濁しつつも彼女を居間へと連れて行く、するとティナは彼女に
「こんにちはデュノアさん。」
「こっ、こんにちは。えっとハミルトンさんで良いのかな?」
そうティナは気軽に挨拶をするが実を言うとティナとシャルロットが挨拶をするのはこれが初めてである。と言うのも彼女が転校してきたとき、スパイ疑惑が有ったのでその疑いが晴れるまではあまり会わないようにしていたがそれも晴れたためティナは気軽に挨拶をする
そしてシャルロットもそれに返すように挨拶をし、一夏が適当に座るように進め彼女を座らせると一夏は麦茶を用意しに台所へと向かう。その間も彼女はずっとティナの方を見ながら
「(ハミルトンさんと一夏ってどういう関係なんだろう…まさか付き合ってるのかな?)えっと、一つ聞いてもいいかな?」
「良いわよ、何かしら」
「ハミルトンさんと一夏ってどういう関係なの?」
「どういう関係…ね、そうね言うなら大切な友達の一人かしら。(まぁこの子は魔術とは無縁の存在、こんな感じでごまかしておけばいいでしょ)」
「そっ、そうなんだ。それじゃぁどうして一夏の家に来てたの?」
「イギリスのお土産を渡すために来たのよ。」
そんなやり取りをしていると一夏が台所から麦茶を持ってきて彼女に渡す。
こうして波乱の一日は幕を開ける