第31話
一夏が三沢塾の事件を終え自宅に帰ってきたときにはすっかり日が昇っていたが、一夏はすぐに眠ってしまい、目が覚めたときには昼の十二時を過ぎていた
「げっ、もうこんな時間か…家の片づけとかもしたかったんだけどなぁ。」
そう言いながらも彼はベッドから起き、着替えると居間に向かう。
そして居間の掃除を始めようとしたところで彼の携帯電話が鳴る。相手はティナであった
<はい、もしもし>
<ようやく出たわね…あなたこんな時間まで寝てたの?>
<まぁ、ちょっといろいろあってな>
<そっ。まぁいいわ所で明日って暇?>
彼女がそう言ったので一夏は台所にあるカレンダーを確認する。彼は大体予定がある日にはこのカレンダーに予定を書くようにしているからだ。
確認したところ何も書いていないので明日は暇な事を確認すると
<あぁ、明日は特に何も予定はないぞ>
<それなら明日あなたの家にお邪魔してもいいかしら?>
<ん?まぁ別にいいけど>
<そう、それじゃぁ明日イギリスからの戦利品を持ってあなたの家に行かせてもらうわ>
<わかった、後、来るのってティナだけか?>
<ええそうよ、それがどうかした?>
<いや、もし大人数で来るなら俺もこれから買い出しに行かなきゃなって思ってな>
<用意周到ね。とりあえず明日は私一人でお邪魔させて貰うわ>
<そっか>
一夏はそう言いながら電話を切る。そして一夏は今真っ先にしなければいけない行動を開始する。
それは家掃除である。流石に人が来るのだがら家を汚くしておくわけには行かないと思ったからだ
そして彼は家全体を掃除していき、一番最後に回した自分の部屋の掃除を始めていく
「まぁしばらく家を空けてたから仕方が無いけど随分と汚れてるなぁ俺の部屋…」
そう言いながらも部屋を掃除していくと、彼は一冊のアルバムを見つける。それは自分の幼少時代の写真が張られていた。
「ははっ、これが昔の俺か、まさかこの頃俺が魔術師やるなんて思っても居なかったからなぁ」
そう言いながら掃除をいったん止め写真を眺めていくそこには幼少時代に箒と同じ道場に通っていた頃の写真もあったが、ある時代の写真がかけていることに違和感を覚える
「あれ、どうしてこのアルバム俺が小学生より前の時代が無いんだ…?」
そう彼の部屋にあったアルバムはすべて自分の小学校時代から始まっておりそれより前、すなわち生まれたときから幼稚園または保育園時代の写真が一つも残っていないのだ
さらには卒園アルバムもないのだから流石の一夏も疑問に思う。ここに有る写真はすべて千冬ないし、それ以外の人物がとった写真だけなのだ。
そこで彼は掃除を中止し、家のあらゆる場所を探し写真を探し出そうとするがどこにも見当たらない。
これにはさすがの一夏も驚きを隠せない
「なんで写真が無いんだ…考えられるのは千冬姉が俺に気づかれないように処分したと言ったのが妥当か。」
彼としては疑問に思ったままだが、ひとまずこの問題を考えるのを止め、部屋の掃除を再開する。そしてその後明日のための買い出しに行くことにする。せっかく人が食うのだからお菓子の一つも出さないと言うのは彼のポリシーに反するからだ。そして近くのスーパーまで向かうと
「あれ、織斑君?こんなところで奇遇だね」
そう言いながらやってきたのはクラスメイトの谷本であった。怪我の影響でつけていたギブスはすでに外れている
「あっ、谷本さん久しぶり。谷本さんも買い物?」
「うん、まぁそんな所。明日は本音や清香ちゃん達と私の家で遊ぶからそのための買い出しにね」
「成る程ね」
「そう言う事、それじゃあね織斑君」
「あぁ、またな」
そう言いながら彼は谷本と別れると、スーパーに入り買い物を始めていく。
「今日は冷凍食品が安いのか…まぁ寮暮らしの俺には関係ないけれど、中学時代には世話になったな。」
一夏がそう言いながらも店内を歩き回っていると店のBGMが陽気な音楽へと変わりだす
この曲には一夏も聞き覚えがあった
「確か、超機動少女カナミンだったかな?」
超機動少女カナミン、最近話題沸騰中の魔法少女アニメだ。アニメに疎い一夏でも知っているほど知名度の高いアニメだ。なぜここまで人気が有るのかと言うと、その理由の一つが衣装。その独特な衣装は男女構わず高い人気を獲得している。まぁそのおかげでロシアのとあるシスターが大迷惑を受けているのを彼は知らない。
さらにはこのアニメのテーマ曲も発売されれば音楽チャートでトップ10に入るなど大人気のアニメなのである
その曲も聞きながらも一夏はお菓子や飲み物、さらにはある程度の食材の買い出しを進めて行く
そして買い出しを終え、自宅に帰るころには時刻はすでに夕方の5時を過ぎていた
「ふぅ、一通りやる事もやったし、後は晩御飯作って寝るだけか…千冬姉は今日も帰ってこないんだろうな」
実際千冬が家に帰ってくることはめったにない。一夏もIS学園に通う事で理解はしているのだがそれでもさびしいと感じることがある。そのせいなのか彼は明日が楽しみになっていた
一夏が買い物などをしている一方、IS学園では一夏のクラスの副担任、山田真耶が書類整理に追われていた
夏休みと言っても教員は休みと言う訳ではない、特に今年は問題が多すぎる。無人機事件に職員室の惨状、さらには福音事件。それらの事後処理に追われているのださらには
「(織斑君だけではなく篠ノ之さんまでもが専用機を持ってしまうなんて思ってもみませんでしたからね…IS委員会からは織斑君の身柄引き渡しの要求が来ていますが…)」
そう最大の問題は一夏と箒をどこの国の所属にするかである。一夏に関しては以前からイギリスが筆頭で一夏に自由国籍を与え彼の好きなようにさせるのが良いとの見解を女王のエリザードが言っているのだがそれに対し他国は猛反発。さらには最近になり箒までもが最新鋭の専用機を手に入れてしまって議会では論争が続いているのだ。
「(私としては彼らには平凡な生活を送って欲しいと思っているのですが、それも厳しくなってきました…いえいえ私が弱気になってはいけません。生徒が楽しく学園生活を送るようにするのが私たちの役目なんですから)」
彼女はそう思いながら事務作業を再会する。