IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第30話

「あはははははははははははははははははははッ!!」

 

上条が右腕を切り飛ばされた瞬間彼は高笑いを始める、そしてその光景を見たアウレオルスは思わず後ろへ後退する。

 

「(何だ、あれは…)」

 

彼が疑問に思うのも無理はない、上条は痛みや恐怖で気が狂い笑っているわけではない、その表情には勝利を隠した様子がうかがえる、そしてその光景にアウレオルスは恐怖よりも不快を感じる。

彼は早々に上条を殺す事を決め、首筋に鍼を刺し

 

「暗器銃をこの手に、弾丸は魔弾。数は一つで十二分、用途は破砕、獲物の頭蓋を砕くために射出せよ」

 

そう言いながらアウレオルスは引き金を引く、人間の速さでは回避できない速度で繰り出された弾丸は上条を直撃し頭蓋を破壊されるはずだったのだが

 

「なっ…」

 

繰り出された弾丸は上条の横を通過する。アウレオルスは今度は銃を増やし上条を再度攻撃するが当たる気配がない、その時にアウレオルスは不安を感じ始めた。そしてその光景を見ていた一夏は

 

「(…術の拘束が解けた!?上条君の演技にビビッて自信を無くしてきてるって事か、そしてそのためにステイルはあんな状態にもかかわらず、魔術で蜃気楼を発生させて目測を誤らせたのか。だったら俺も上条君を援護しますか)」

 

一夏はそう考え短剣を取り出しアウレオルスに気づかれなように注意しながら剣先を向け魔力を集中させる

そうしている内にアウレオルスは

 

「く、おのれ…我が黄金錬成に逃げ場は無し断頭の刃を無数に配置速やかにその体を切断せよ!」

 

その言葉と共に上条の頭上にはいくつもの巨大なギロチンが現れる、だか上条は笑みを浮かべたまま避けようとしない

 

「(大丈夫だ、あれは避けられん、あれは必ず命中する。ゆえに問題はない!!)」

 

アウレオルスは何度も心の中で繰り返す、アレが当たれば必ず死ぬ、そのはずなのに思えば思うほど疑念が膨らんでいく。

そしてギロチンが上条の頭へと降り注ぐがそれが直撃することは無い、なぜならば振り落されるその瞬間刃がすべて爆発し、消滅する。そして突然突風が部屋中に吹き荒れる、その光景に少年はさらに笑みを強くする

 

「(く、そ。何たる…ッ!?)直接死ね!しょうね…!?」

 

最後の一言を話そうとした際に頭の中に声が響く、”そんな言葉でアイツを殺せるのか”と震える手で鍼を取り出そうとするが、懐にあった無数の針は床へと落ちる、そして床に落ちた鍼は風に飛ばされる形で部屋中へと散らばっていく

アウレオルスはゾッとするような表情で上条を見る、すると無意識のうちに一歩後ろへと下がる、その時に散らばった鍼のいくつかを踏みつけるがそんな事を気にする余裕が彼にはなかった

アウレオルスが使う魔術、黄金錬成。それは何でも思うがままに現実をゆがめる能力であるが、それは彼が”これには勝てない”などと思えばそれすらも実現してしまうもろ刃の剣。

そしてアウレオルスは言葉の制御を誤った、言葉に出す前の想像が勝手に具現化している。そのような事にならないためにアウレオルスは鍼を常備していたののだが

 

「(くそ、鍼は、あの治療針はどこだ!?こんな事にならないために常用していたというのに、アレが無いと私は…待て、それ以上は考えるな、それを考えては…ッ!)」

 

彼が考えている内にも上条は一歩一歩近づいていき、気が付くとすぐ目の前にまで迫って来ていた

すると突然

 

「おい、テメェ。まさか右腕をぶった切った程度で俺の幻想殺しを潰せるだとか思ってんじゃねぇだろうなァ?」

 

アウレオルスはその言葉に言葉すら発することが出来ない、そしてその瞬間上条の右腕からは巨大な竜の顎が飛び出してくる。そしてその光景はアウレオルスに止めを刺すには十分だった

 

「(そんな…馬鹿な、こんなことあるはずがない。これは私の不安 落ち着け 不安さえ消せばこんなことには…)」

 

そう考えている内にも顎が大きく開きアウレオルスの目の前にまで迫って来ていた

 

「(無理 敵うはずが )」

 

そう思った瞬間、最大限まで開かれた竜王の顎が錬金術師を飲み込んだ。

 

 

そしてその光景を遠くから見ていた一夏と、体が元に戻ったステイルはどこか驚いた表情で見つめていながらも

 

「おいステイル、どうするんだコイツ?」

 

「こいつの顔の形を変えてそこら辺に放っておくよ」

 

「そっか」

 

ステイルはそう言うと倒れているアウレオルスの方へと向かっていく

そしてその間一夏は携帯電話で病院へと連絡し救急車を呼ぶ。その短い間にステイルはアウレオルスの顔の形を変え、一見しただけでは誰か分からないほどにまでなっていた

 

「さて、後はコイツを外にいる十三騎士団の目をかいくぐって放てば仕事は終わりだ」

 

「ステイル、姫神さんはこれからどうなるんだ?」

 

一夏は一番の疑問をぶつける、姫神は表向きは三沢塾に監禁されたことになっているのだ。そして主犯は倒された。そうなると彼女の今後の扱いが気になる。下手をすればまた別な場所に監禁されると言う事にもなりかねないからだ。するとステイルは

 

「上層部の判断になると思うけど、多分、必要悪の教会で預かることになるんじゃないかな?表向きは一般学生になってね」

 

「そうか、それじゃぁ俺は帰らせてもらうかな」

 

「ん?病院には行かないのかい?」

 

「後はお前に任せるよ。本当なら俺も病院に行きたいんだけど”表”の生活もあるしな。下手に家を空けると疑われかねないからな」

 

そう一夏としても病院に上条を連れて行き事後報告をしたかったんだが、それをすると日が明けてしまう。そして彼は今夏休みで自宅に帰ってはいるが、自分の留守中に知り合いが訪れ、その時に自分がいないと何処に行っていたのかと問い詰められそうな気がしたからだ

 

「そうかい、僕としては君に任せたかったんだが仕方がないか」

 

「もう少しで救急車が来る。俺たちもさっさそこの元錬金術師を運び出すぞ」

 

 

一夏はそうステイルに告げると二人はアウレオルスだった人間を抱え、どうにかして外へと運び出すことに成功する。そして一夏はステイルと別れ学園都市を出るために移動を始めるがその際中

 

「(確かに上条君の演技は成功だった、けれど一番最後の竜の顎。あんなものをアウレオルスは自分が負ける寸前に想像したとは思えないんだよな…まぁ俺が気にしても仕方が無い事か。)」

 

一夏はそう考えながらも学園都市を後にしようと街中を歩いているが

 

「ちょっと待ってくださいまし」

 

そう言いながら一人の少女が現れる、腕には風紀委員と書かれた札をぶら下げている

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「完全下校事項は完璧に過ぎていますの。そんな時間に外出しているなんて、どういう事ですの?」

 

「(学園都市の治安維持機関って所か、この子も相当な実力者なんだろうな、とはいえ下手に騒ぎを起こすのもまずいよな…仕方ない)あっ、すいません。僕、外部から来たものでここの決まりとかよく分っていないんです。それで、もう遅いので早く帰ろうと思って歩いていたんですが道に迷っちゃって…」

 

一夏はなるべく騒ぎを起こさないよう、外部からやってきた民間人を装ってどうにかこの場を切り抜けようとする。そしてそれを聞いた少女は

 

「成る程、お名前を教えてもらってもよろしいですか?」

 

「あっ、はい。織斑一夏です」

 

「ちょっと待っててくださいまし」

 

その少女の口調に一夏はセシリアに似ているなと不謹慎ながらも思ってしまう。

そしてしばらくすると少女が

 

「確認が取れました、確かに外部の人間のようですわね。こんな時間はいろいろ物騒ですのでこちらでお送りいたしますわ」

 

「ご迷惑をおかけします」

 

そうして彼は少女に連れられるような形で学園都市のメインゲートまで飛ばされ無事に外に出ることが出来た。

しかし彼らは知らない、学園都市内部ですぐに一夏の確認が取れたのは学園都市上層部の干渉が有った事を

 

 


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