IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第28話

彼らが開いているドアから中に入るとそこは広大な空間、かつては三沢塾の塾長が居座った部屋。

部屋は煌びやかだが品がない、そんな部屋である。そのような部屋に突入した彼らを見て姫神は驚くような顔をしているが、アウレオルスは何も感じてはいない、起こるべくして起こった、そんな顔だ

この場の空気はとても決戦の場と言えるようなものではない。

 

するとアウレオルスは

 

「ふむ。その顔を見る限りでは私の目的は気づいているようだが、ならば何故、貴様は私を止めようとする?貴様がルーンを刻む目的、それこそ禁書目録を助け救うためだけだろうに

 

そう言いながら彼は視線を落とす、その先には銀髪の少女、インデックスが眠らされている、上条は走り出そうとしたがステイルがそれを止める

 

「簡単な事だ、そんな事ではあの子は救われない。失敗するとわかっている手術に身を預けられるほどその子は安くないんだけどね」

 

「否。貴様のそれは嫉妬であろう。私の妄執とて原理は同じだ」

 

その言葉にステイルは少し眉を引きつらせるその後もアウレオルスは言葉を続けていく

 

「禁書目録はこれまで膨大過ぎる情報量のため記憶を一年おきに消さなければならなかった。だが人ならぬ身を使えば話は簡単だ。今となっては逆に不思議だなぜそんな考えすら浮かばなかったのか、とな」

 

その言葉にステイルではなく、一夏がアウレオルスに問いかける

 

「そのための吸血鬼か。」

 

「左様、吸血鬼とは無限の命、無限の記憶を人と同じ脳に宿すもの。しかし多すぎる情報量で脳が破裂したという話は聞いたことが無い。そして吸血鬼にはあるのだよ、多くの記憶を入れられようとも決して自我を見失わん術が」

 

それを聞くとステイルは煙草を吸いながら彼に

 

「ふん。なるほどね、吸血鬼と仲良くなってその方法を教えてもらおうって訳か、一応聞いておくけどその方法同じく人のみに不可能であったのなら君はどうする」

 

「当然、人の身に不可能ならば、禁書目録を人のみから外すまで」

 

「寝かしている禁書目録を有無を言わさず吸血鬼に噛ませるって事か…狂ってやがる、それが十字教の人間が言う言葉かよ…」

 

一夏が思わずこぼした言葉にさらにステイルが続ける

 

「彼の言うとおりだ、カインの末裔の慰み者などにされて喜ぶ信徒がいるものか。歴代のパートナーに共通して言えることだが、誰かを救いたいならまずは自分を殺し人の気持ちを知る事こそが常用なんだ、まぁこれは僕も最近になって覚えた事なんだけどね」

 

「それこそ偽善、あの子は最後に告げた、決して忘れたくはないと」

 

そして今までのやり取りを聞いていた一夏はアウレオルスに対し

 

「インデックスって子が言ったのはそれだけだろ、いつ自分を救うために吸血鬼にしてくださいなんて頼んだんだ?」

 

「そしてこういった、教えを破ろうが、このまま死のうが胸に抱えた思いを決して忘れたくはないと、涙を流しながら言ったのだ、何も知らぬ貴様が口を挟むな」

 

「そうだな、部外者の俺には口をはさむ権利が無いのは事実だ、悪かったな余計な事を言って(ここまで言ってもダメか…)」

 

アウレオルスはそう一夏に言い放つが一夏はアウレオルスはすでに彼女の最後の言葉の意味を理解していないと判断する。そして彼はこう思う、もしインデックスがアウレオルスに吸血鬼にされ救われたとしても、決して自分の身に起きたことを理解できず彼を否定する、そんな予感がしていた

 

「僕だけじゃなくて、部外者の彼が客観的な意見を言ってくれたのにもかかわらず自分の考えを曲げないか、それならちょっと残酷な切り札を使わせてもらうよ」

 

するとステイルは上条の方を向くと

 

「ほら、言ってやれよ今代のパートナー、目の前の残骸が抱えている致命的な欠陥を」

 

「…なに?」

 

ステイルのその言葉にアウレオルスはようやく上条の方を向く、彼のセリフのどこが癪に触ったのかは分からないが、彼は告げる

 

「お前、一体いつの話をしているんだよ?」

 

「なに?」

 

そう言いながらアウレオルスは上条の顔を凝視するとステイルは残酷な笑みを浮かべながらも淡々と事実を述べていく、そしてその様子を見ていた一夏は

 

「(アウレオルス=イザード、確かにお前には同情もする。そしてあの時見た偽物はきっとコイツの本質なんだろうな)」

 

彼がこうしている間にもインデックスは目を覚ますが、彼女は決してアウレオルスを見ることは無かった。そしてしばらくするとアウレオルスは上条を殺意を含んだ目でにらみつける。

 

「マズイッ…!!」

 

一夏はそう言い素早く先制攻撃を決めようとするが

 

「ひれ伏せ、侵入者共!!」

 

そしてアウレオルスがその言葉を発すると同時に彼らは全員が床にたたきつけられる

 

「(グッ、また言葉一つ思い通りに物事が進んでいる…)」

 

そしてその様子を見ていたアウレオルスは

 

「は、はは!!簡単には殺さん。じっくり私を楽しませろ、禁書目録に手を付けるつもりはないが、貴様で発散せねば自我をつなげることも叶わんからな!」

 

そう言うと彼は懐から鍼を取り出し首に刺すと、上条を睨みつけるがそこに待ったをかける者がいた

 

「まって」

 

そう言いながら立ちふさがったのは姫神であった

 

「(ダメだ、姫神さん、今の君はもう…!!)」

 

そうアウレオルスが固執していたのは吸血殺しであって姫神秋沙ではない。インデックスが手に入らない以上、単に目的のための手段である姫神に気を使う必要などどこにもない

 

「ひめ…」

 

そして同じくその事実に気づいた上条もそれを言う事は出来なかった、なぜなら彼女は本気でアウレオルスの事を心配していたからであるが、錬金術師は彼女を見つめると、何の感情も込めぬまま

 

「邪魔だ、女。死ね」

 

その言葉と同時に姫神は倒れる、出血も何もなく、ただ倒れるようにして死ぬ。

そしてその時の彼女の表情は驚き以前に、決められた結末通りに物事が進んだと言った表情だ

 

だが彼は、決してそれを認めようとはしなかった

 

「ふざ…けんじゃねぇぞ、テメェ!!」

 

そう言いながら上条は右手で自分の体に触れ自由を取り戻すと、すぐに立ち上がりどうにかして姫神を両手で抱きかかえる。もちろんその時彼は右腕で彼女に触れることも忘れずに

 

するとアウレオルスは

 

「な…我が金色の錬成を右手で打ち消した!?、ありえん、その右腕、聖域の秘術でも内包するか」

 

その問いに彼は答えない、彼は目の前の男を許すことはできない

同情もした、共感もした大切な人に忘れられ、それでも彼女を傷付けられなかった姿を見たときは戦う理由すら見失ったような気がしたが今となっては関係ない。

たとえすべてを失ったとしても、自分の事を大切に思ってくれた人間に対し怒りを押し付け満足するような人間を認めるわけには行かない

 

だからこそ上条当麻は告げる

 

「いいぜ、アウレオルス=イザード、テメェがなんでも思い通りにできるってなら、まずはその幻想をぶち殺す!!」

 

その声は一切の迷いのない言葉だった


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