IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第27話

上条が騎士とやり取りをしている中、一夏は冷静に騎士を分析している

 

「(ランスロットにパルツィバル。どうやらこいつらのモデルは円卓の騎士のようだな)」

 

ランスロットと名乗った騎士は上条に対し間もなく本物のグレゴリオの聖歌隊を使い三沢塾へと攻撃を仕掛けると言う。もちろん中にいるアウレオルスやステイル、学生達などお構いなしに攻撃すると言うのだからこの人間も最早、正気ではないのだろう。

 

「(しかし、こいつが本当にあのランスロットの名前を冠しているのならばこんな事をしなくても自分で乗り込めばいいじゃないか…)」

 

そして、騎士はグレゴリオの聖歌隊を使い三沢塾へと攻撃を放つ

 

「ヨハネ黙示録第八章第七節より抜粋、第一の御使い、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!!」

 

その声と共に、魔術の影響なのか大剣は遠吠えのようにラッパのような音を夜空に響かせたその瞬間、あらゆる音が消え、空に漂っていた雲は根こそぎ吹き飛ばされる。そしてその間から巨大な稲妻が三沢塾のビルの一つを貫く。そしてその威力は次から次へと隣のビルへと伝わっていく

その光景に彼らは言葉も出ないが

 

「くそっ、ふざけんな…ふざけんなよテメェ!!」

 

「お前ら…それでも騎士かよ!!」

 

あの中には、ステイル、姫神それ以外にも大勢の人間がいた、それにも拘わらず全身鎧は何の躊躇もなく攻撃を放った。それに納得できなかった彼らは真っ先に爆撃現場へと突撃しようとするがその行く手を阻むように砂嵐が襲い掛かるそれでも走るが、その時ありえない事が目の前で起きた

 

「なんだ?」

 

「これは…一体…?」

 

上条と一夏が驚いたのも無理はない、何せ吹き飛んだはずのビルが突然時間を巻き戻したかのように元通りに戻っていくのだ。

そしてその光景に全身鎧の騎士も呆然としながら座り込んでいく、本物のグレゴリオの聖歌隊と言っているからこそこの状況は認められないのであろう。

 

「(アレが、敵、アイツの…本当の力)」

 

「(おかしい、錬金術でここまでやれるなんて聞いたことが無い…)」

 

ここまで常識から外れた光景に彼らも立ち尽くしてしまうが、それでも考えを振り切るように三沢塾へと走り内部に侵入していくそして内部でもありえない光景が広がっていた。偽物によって黄金へと変換された生徒たちが何もなかったかのように授業を受け、姫神を庇った少女も元の姿で普通に授業を受けている

そしてしばらく彼らはビルの内部を走っているとようやく見知った顔を見かける

 

「なんだい、君たちそんな慌てて、君たちがいると言う事はここはやはり日本なのか?しかしこの奇妙な結界構造、見覚えのある魔力だが…」

 

上条にしてみれば自分たちを囮にした男、ステイル=マグヌスが、のうのうと笑って生きている

その光景が彼にしてみればとてつもなく安心できたが、一つだけ気がかりな事が有る。ステイルも殻ら同様に記憶を奪われているのだから、上条の右腕でで触れればすぐに思い出すのだが、先ほどの攻撃をステイルが喰らっていた場合、ステイルが生き返ったという事実も一緒に消える可能性もある。

そこで上条では無く一夏が彼に疑問をぶつける

 

「ステイル、お前今までどこにいたんだ?」

 

「どうしたんだいいきなり?」

 

「いや、まぁちょっとね」

 

「北棟にいたよ、それがどうかしたのかい?」

 

北棟、それは先ほどの攻撃を受けていなかった棟のはずだ。すなわちステイルは幸運にも攻撃を受けていなかったと言う事になる。その事実に彼らはほっとする、そして一夏は上条に

 

「上条君、こいつの目を覚ましてやれ」

 

「ちょっと待て俺にいい案がある」

 

「?」

 

すると上条は一夏に耳元でささやくと、一夏は笑いをこらえつつも

 

「いいんじゃ…ないか…クッ」

 

すると彼はステイルに

 

「おいステイル今からお前の疑問を解決するためのおまじないをしてやる」

 

「東洋の呪術なら一夏か神裂の専門だと思うけどね」

 

「この方法は織斑にも効果は出たから大丈夫だ、まず目を閉じて舌を出せ」

 

するとステイルは言われた通りに舌を出す

その時一夏は顔を伏せながら必死に笑いを堪えていた

彼は告げる

 

「祝!よくも俺たちを囮にして逃げ延びやがったな、記念!!」

 

「は?」

 

その直後上条はステイルに右手でアッパーを繰り出す。そして記憶を取り戻すのと同時に彼は舌をかみ床を転げまわり、その光景を見た一夏は爆笑していた

 

その後ステイルは炎剣を構え彼らを追い回したりし、一息ついたところで一夏がステイルに合流する以前に起きた出来事を報告していくと

 

「アウレオルスがローマ正教の真・聖歌隊をはじき返しただと…そんな馬鹿な」

 

「弾き返すと言うより時間が戻って行ったの方が正しいかな」

 

彼らはそう言いながらも走り進んでいく、どうやらステイルはアウレオルスの本拠地付近で記憶を消されていたようだ

 

「…だとすると、現存する錬金術でアレはありえない…」

 

ステイルは苛立ちながら煙草の煙を吐き出しながら呟く

すると上条は彼に

 

「ほかにも俺たちに”近づくな”とか”忘れろ”なんてのがあったな、魔術ってのはあそこまで有能なのか?」

 

「まさか、魔術と言うのは学問、キチンとした理論と法則の世界だ。そんなルール違反があってはバカバカしくて誰も魔術を学ぶ気にならない」

 

「じゃぁ、ありゃ何だよ言葉一つで世界は思い通りじゃねーか」

 

「思い通り…か、嫌な言葉だ。アルスマグナを思いだしてしまう」

 

その言葉で彼は思い出す、世界を思い通りに歪める、それはまだ誰にも到達できていない錬金術師の究極の目的ではなかっただろうか?

そして上条は

 

「それじゃぁ、アイツは錬金術を極めちまったんじゃねーのか!?」

 

その言葉にステイルは珍しく声を荒げて否定する。それもそうだろうアルスマグナは人間になせる業ではない。呪文を省略しようにも肝心の省略する部分が無く作業を分割しようとしても必ず歪みが生じる魔術なのだから。なので彼は別の角度から物事を考えてみる

 

「確かに、それが本当なら俺たちが生きているはずないもんな、偽物なんかをけしかけなくてもアイツが俺たちに”死ね”って言えばいいんだしな」

 

そう本当にそんなものがあるのならば吸血殺しも吸血鬼も必要ない。作ってしまえばいいのだから。

 

「そもそもアイツの目的は何なんだ?人を助けたいと言いながら平気で他人は殺すし、インデックッは巻き込まれるし…」

 

「なに、あの子が?」

 

「野郎がそれっぽいこと口にしただけだ、俺らは直接みてねーから本当かどうか分からねーよ」

 

上条は己に対する気休めの意味も含みながらステイルにそう告げると、ステイルは錬金術師の話よりも深刻な顔をして

 

「成程、奴の目的が分かった、禁書目録だよ」

 

「やっぱりな…」

 

「な…」

 

ステイルのその言葉に一夏は予想道理と言った、上条はなぜこの場でインデックスの話題が出てくるのかが分からないと言った表情をしている

 

「一夏、君は気づいたようだね」

 

「最初はまさかって思ってたけど、インデックスの事をよく知るお前がそう言って確信が持てたよ」

 

彼らがそんなやり取りをするが上条は全く理解できない、するとステイルは

 

「いいかい上条当麻。インデックスは一年おきに記憶を消さなければならなかった。つまり一年おきに新しいパートナーが彼女の隣にいたんだ、今は君、二年前は僕、三年前はアウレオルス=イザード、役割は先生だったかな」

 

「なっ…!?」

 

そして一夏が話を補足していく。

 

「おそらく歴代のパートナーは全員が記憶消去を食い止めようとするけど全員が必ず失敗する、それはアウレオルスも同じだったんだろうな。」

 

「そうだ、奴も同じ末路を辿ったが、それでもその結果を認められなかった訳だ」

 

「どういう事だよ…」

 

彼のその言葉にステイルが同意し言葉を出す

 

「僕たちパートナーはインデックスにフラれた訳じゃない、単に忘れているだけ。だったら話は簡単だどうにかして治療して思い出して貰えばいいだけさ」

 

その言葉に上条は心臓に杭でも打たれたかのような気分になった。彼女の頭が治るのはいいことだと思うのに、訳の分からない衝撃はいつまでも続いていた、しかしステイルは

 

「だけど、そんな事が許されるはずがないのに…人の記憶を消すのが許せないなら記憶の改ざんなどそれ以上の非道だと言うのにそれすらも分からなくなるほど追いつめられたのかアイツは」

 

「だけどよ、ステイル、アイツの目的が禁書目録の救いだとしてもそこに吸血鬼を関わらせるって事は最悪…それ以上にインデックスはもう…」

 

「前者に関しては僕もまさかとは思っているが、後者に関しては君の言うとおりだ、アイツは絶対にあの子を救う事は出来ない」

 

「なんだって」

 

ステイルのその言葉に今まで口を開かなかった上条が声を上げる、それもそうだろう。言葉一つでビルの破壊さえも戻してしまう男が絶対に出来ないなんて事があるのだろうかと思うが彼は致命的な事を忘れていた、そしてステイルがそれを告げる

 

「君が彼女を救ったんだろう?すでに救われている存在をもう一度救う事なんて出来るはずがない。話はそれだけさ」

 

その言葉で上条はようやく気付く、アウレオルスはインデックスの3年前のパートナー、そして彼女を失ってからの3年間は音信不通、最近の情報を知るはずがない

 

「着いたぞ、丁寧に扉まで開いてやがる。」

 

一夏がそう告げる

三沢塾の北棟の最上階、校長室の扉は彼らを出迎えるかのように開かれていた


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