IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第23話

さて、二人は今現在もグレゴリオの聖歌隊の攻撃から逃走中なのだが、その途中二人はある違和感を感じていた。

 

「(まて、何かがおかしいぞ…)」

 

「(ここにいる生徒たちは全員学園都市の人間、それなのに魔術を使えるだと?)」

 

上条は記憶を失う前の知識から、一夏は自分の知っている知識と学園都市の能力開発を受けた魔術師が魔術を使えばどうなるかを知っているため、三沢塾の学生が魔術を使う事への違和感があった。

 

しかしそうしている間にも上から球体が迫ってくるため二人は言葉を出す暇もなく全力で駆け降りつつも階段の下を見渡すと、そこには彼らを待ち構えていた様に見知らぬ一人の少女が立っていた

そしてその少女も詠唱を始めていく

 

「罪を罰するは炎、炎を司るは煉獄…」

 

そして詠唱を続けて行くが上条は構わず少女に向かっていく。今ここにいるのは裏の世界に立っていると言う事は上条はこの少女を倒すことができると言う事だ。そして彼の右手にある幻想殺しならば一つ、二つの球体位ならば簡単に打ち消せる。そして彼は拳を握り向かっていこうとするが、その前に少女の頬が爆竹が爆発したような感じの音を立て吹き飛んだのだ。

 

「なっ…!?」

 

上条は一瞬、一夏がやったのかと思い後ろを振り向くが彼は何もしていないというような顔をしている。

そうしている今も少女の指、鼻、服の内側で小さな破裂が起きるが少女は気にも留めず詠唱を続ける

 

「(まさか…)」

 

この少女は自分の意志で魔術を使っているという風には見えない。自分の意志ではなく誰かに操られて魔術を使わされているのだ。だからこそ自分の体の状態を気にも留めずに魔術を使う事が出来るのだ。

 

「や、めろ…おい!自分の体がどうなっているのかくらい流石にわかってんだろ」

 

この時上条は拳を握る事さえ忘れていたのだが、一夏は自らの霊装を構えると

 

「こういうやり方はあまり好きじゃないんだけどね!!」

 

一夏は短剣を振ると少女の頭の後ろで小さな爆発が起こる。それは少女に対しダメージを与えると言うよりも爆発の衝撃を利用して少女を気絶させるために放ったものだ。一夏としてはこういう加減をするのは得意ではないのだがどうにかして威力を抑え成功させた。

その結果少女は気を失ったのか詠唱を止め、階段の段差に倒れこむが上条はどうにかして少女を受け止める。だが一夏はともかく上条は少女を抱えたまま迫ってくる球体を振り切ることは難しいが、それでも上条は少女を見捨てることはできない

 

「上条君、先に行って巻き込まれるよ!!」

 

「あっ、あぁ!!」

 

一夏のその言葉に彼は何とか急ぎ足で一夏から離れていく、そうしている間にも一夏は再び炎の壁を作り攻撃をいくらか食い止めるがそれでも防げる数には限りがある。

 

そうして二人が走り続けていると、ここで異変が起こる、それは今まで追尾してきていた多数の球体が突然止まったのだ。そしてそのまま球体は床へ落ちていく

 

「あ…?」

 

「これは…一体?」

 

二人は何が起こったのか理解できなかったが階段の下から足音が聞こえてくるので二人は踊り場から足音がした方向を見ると、そこには吸血殺し、姫神秋沙が立っていた。

 

その後彼らは怪我をした少女を抱え姫神のもとに連れて行くと

 

「見た目が派手なだけで怪我は大したことはない手当すれば平気、ただ…頭を強く打ってるみたいだからそっちの方が心配」

 

「平気ってこんなに血まみれじゃねーか」

 

「すまん…加減したとはいえ威力が強すぎたか(はぁ、後頭部に衝撃を与えて気絶させなきゃよかったかな…助けたとはいえやってることは前に箒がティナや谷本さんにやったことと同じじゃないか…)」

 

二人はそれぞれ彼女の言葉に反応する。上条は床に下ろした全身血まみれの少女を眺めつつ本当に平気なのか不安になったため一夏は加減したとはいえ相当強い衝撃を与えてしまったことを反省している

そして一夏は

 

「まぁ皮膚がはがれて毛細血管が傷ついているだけだなこれは」

 

「彼の言うとおり、動脈を切られたらこんなもんじゃすまない、噴水みたいに血が出る」

 

「なっでも、何で」

 

上条には二人がどうして自信を持って言えるのかが分からなかったなぜ彼らは精密検査をしなければ分からないような事をスラスラ断言できるのだろうか、と思っていると二人は

 

「学校で傷の手当とかパターンとかを教わったんだ。」

 

「血の流れについてなら私は他人よりも詳しい。」

 

上条は二人の言葉に唖然とする。一夏は一体どんな生活をしているのか。そして彼女の持つ能力名を思い出したからだ。

ちなみにどうして一夏が怪我のパターンを知っていたのかと言うと専用機持ちは全員がけが人の応急手当の方法を一通り教わることになっているのだ。一夏に関しては男だからと言う理由で相当なグロテスクな写真を見せられたこともある。この時一夏は本気で具合が悪くなった。

 

そうして彼女は二人に傷の手当てを手伝うように言い彼らは手伝うが、上条はほとんど眺めているだけだった。姫神は慣れている手つきで的確に血を止め、一夏も付近にある道具を利用し上手に傷をふさいでいく。上条にはせいぜい姫神の指示に従っているだけだったのだが彼の両手も血まみれになるが人助けで付いた血だと思うと不思議な気持ちになっていた。

 

「とりあえず、おしまい。止血は完了血液が凝固するまでに15分。それで傷はふさがる、だけど消毒は不完全病院に連れて行って処置した方が確実」

 

「とりあえずやれるだけの事はやったんだ。後は学園都市の医療技術を信じるしかないかな」

 

そう言う二人の両手も血まみれであった、そして横たわるけが人を見ていると姫神が現代医療に基づく適切な知識を言うが、上条にはどうにも納得が出来ない。それは悪い意味ではないのだが引っかかってしまう。

 

「そう言えばすごい腕だったな。アナタ達は無免許の医者なんですか?」

 

「いや、普通の高校生だよ」

 

「医者じゃない、私魔法使い」

 

「「…」」

 

姫神のその言葉に二人は黙る。上条は前にも聞いた気がするがどう見ても魔法使いには見えないがけが人を助けたため、最大限の譲歩をし。一夏は彼女の能力が能力なため間違ってはいないんだろうなと思い話を聞いている

すると彼女は言葉を続けていく

 

「魔法のステッキ、持ってる」

 

「はぁ…ってそれスタンガン埋め込んだ警棒じゃないか!!」

 

「新素材」

 

「ふざけんな!!」

 

「(姫神さんの警棒といい箒の木刀、真剣そしてIS。最近の巫女は武装するのが当たり前なのか…いやそんな事は無いんだろうけど…)」

 

一夏にしてみれば知り合いの巫女が武装しているため姫神が警棒を出した時に驚かなかったが、それを驚かない自分の精神に驚いていた。

だが上条にしてみればようやく目の前のけが人は目を話しても平気なくらい持ち直した。その事実が彼の全身から力を抜いていったのだ。すると一夏は

 

「とりあえずここから脱出するのが先決だろうね。この子もいつまでもこうして置いておく訳にはいかないと思う」

 

「織斑の言うとおりだな、こんなとこに怪我人を置いて行く訳にいかない。それに外に救急車を呼んでおいた方がやりやすいのかもしれないし」

 

二人の言葉に彼女も

 

「それはいい。けが人は一人じゃない。救急車を用意しておけば病院に行くまでの時間を短縮することもできる」

 

姫神がそう発した後、上条と彼女は何やらやり取りをしているが一夏はその会話よりも大きな違和感を抱いていた

 

「(確かにその通りだ。おそらくこの子以外にも大勢の生徒が血まみれなんだろうな…でも何か引っかかるな。塾一つ乗っ取る魔術師のトラップが大勢の生徒を使っての攻撃だけなんて到底思えないんだけどな)」

 

そうステイルから聞いた話では相手は力は衰えているとはいえ有名な錬金術師、そしてローマの騎士団すら倒した者が生徒を大勢使ってのトラップしか使わないのはおかしい。彼はそう感じていたのだ

 

そして彼の勘はこの後当たる事となってしまう


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