IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第22話

一夏達はあの後すぐに階段を上るのを再開し、暫くすると5階に到着する。この階に来たのは見取り図によるとこの階に隠し部屋があるという理由だからなのだが、あいにく入口らしいものは見つからない。するとステイルは

 

「おかしいね、見取り図によると、ここのはずなんだけれど…」

 

「はずなんだけれど…結局開かないならお手上げじゃねーか」

 

「だね」

 

上条とステイルがそう話している間も一夏は資料の内容を思い出しながら付近の壁を軽く叩いてみるが何もおかしな所は見つからない

裏の世界にいる一夏達は表の世界にあるドアにすら干渉できないため部屋に入るには生徒に混ざるようにして入る必要があるが生憎、隠し部屋に生徒が出入りする訳がない。

 

「でも場所を確かめておくのに越した事は無い。どんなに強力な結界とは言え張っているのはアウレオルスなんだ。処理なら脅せば済むし、なんなら殺したっていいんだ」

 

上条はステイルの方を見ながらもすぐに思考を切り替え隠し部屋が有ろうであろう壁を伝いながら一番近くの部屋を探していくとそこは学生食堂だった。入口には特にドアは無いため上条たちは生徒たちの波に呑まれないように注意しながら中に入っていく。そして中の光景を見ていたステイルが感心したように

 

「科学宗教って言うのは初めて見るけど…見た目は大したことはなさそうだね。てっきり教祖とかそう言う人の写真を大々的に飾っていると思っていたんだけど」

 

そう言いながらも退屈そうに周りを見渡す

 

その言葉に一夏と上条は

 

「確かに大したことはないが…」

 

「これは立派な科学宗教だよ」

 

確かにこの場には教祖の顔写真も信者たちもいない。居るのは学生だけだ。しかも普通に進学するための勉強をしている生徒たちである。そしてこういう科学宗教と言うものに対しては上条よりも学園都市の外部で生活している一夏の方が理解するのが早い。学園都市の外部にも科学宗教はある。しかも三沢塾よりも大規模な物であり、かなりの大事件を引き起こしている。だからこそ一夏はこの光景も一種の科学宗教であると言う事が理解できたのだ。そして女尊男卑であることにより、昔より規模は小さいがその手の宗教が芽生え始めていることが社会問題になり始めている

そしてこの食堂において教祖の写真と言うものは存在しないが似たような物ならば大々的に飾ってある。”勉強すれば幸せ、しなければ不幸”そう言う内容のポスターが大々的に貼られている。要はこれに従わず勉強しなければ必ず不幸になると大々的に言っているようなものだ。暗にそのように脅迫している所がカルト臭い

 

「まっ、ここの教師たちはおそらく生徒たちに対して、君たちにしか教えない重要なところだ今ここを勉強しないやつは劣っている。そんな事を堂々と言っているだろさ。だけど俺からすればこれはまだマシなレベルだぞ、昔外部にあった科学宗教なんてもっとタチが悪かったらしいからな。」

 

「織斑の最初の話に関しては俺も同意だ、全く胸糞悪い話だがな」

 

上条はそう思う、そしてその考えが理解できた自分に対してもそれは言える。

 

「ふん、二人ともカルトの毒気にやられたようだけど、当初の目的を忘れてはいないだろうね?僕は、隠し部屋の入り口だけでも確かめておきたいんだけど」

 

「あぁ、わかったよ!!」

 

上条はそう言い深呼吸をしながらもう一度周りを見渡す。すると一夏は真っ先に霊装である短剣を取り出し戦闘態勢に入る

 

「おい、どうしたんだよ織斑?」

 

そう言った瞬間、食堂にいる生徒達全員が上条たちの方向を向く

 

「これは…ま、ずいかな?チェックポイント通過って所かな?」

 

「え?」

 

「本来、表の世界の人間の生徒たちは俺たちの姿が見えるはずがない、けれど今学生たちは全員俺たちの方を向いている。そう言うタイプのトラップなんだよきっと」

 

一夏のその言葉に上条は改めて周りを見渡す。つまりこの場にいる人間はすべて裏の世界に所属する人間、つまりは

 

「魔術師か!!」

 

上条はそう言うとすぐにステイルの後ろに下がるが一人の生徒が

 

「…の…は光、輝く光は罪を暴く…」

 

独り言のようにそう言うと生徒が続々と言葉を続けているすると一夏が

 

「詠唱は終わってないんだ、今ならまだ俺が攻撃して強引に詠唱をやめさせることもできるぞ!!」

 

一夏が言いたいことはつまり簡単に言えばヒーローが登場した際のセリフを言っている途中に攻撃して強引にやめさせてしまおうと言う事である。そうしている間にも生徒たちは詠唱を続けて行くがステイルは

 

「なに、君が今、魔術を使う必要なんてどこにもない」

 

「何でだよ!?このままじゃぁあの攻撃を受けてお陀仏だぞ!!」

 

一夏がそう言い終わると詠唱が終わったのか、生徒の眉間からピンポン玉位の大きさの球体が現れる、それは一つ、また一つと増えて行き最終的には80弱くらいまで増えて行ってしまった。それは狙いが曖昧だったのか一つが上条の横に落ちる、すると床は塩酸がかけられたかのように溶け出す。するとステイルは上条に

 

「そら最強の楯、君の出番だ!!」

 

「はっ…ってこんなもんいちいち相手にしていられるか!!」

 

ステイルの言葉に上条が振り返った瞬間、彼の目の前には何百と言う数の球体が現れたため上条はすぐさまステイルと一夏を追い抜くように食堂の出口へと向かう、そしてステイルは上条が楯になると思っていたが肝心の彼が逃走したためステイルもあわてるように上条の後を追って食堂を飛び出す、そして一人置いてきぼりを食らった一夏は

 

「ったく、結局魔術使わなきゃダメなんじゃないか!!」

 

そう言い霊装に魔力を込めると刀身に炎が現れる、そして短剣をを生徒たちではなく、食堂の床に向かって振りかざす。すると床一面に炎の壁が現れると一夏はすぐに二人を追うようにして食堂を飛び出す。

一夏が追いつくとどうやらステイルと上条が言い争っている声が聞こえてくる

そして暫く走り続けるとようやく二人の姿が見えるが決して足を止めない、こうしている間にも後ろからは壁を突破した球体が追いかけてきているからだ。なのでとにかく走り続けるしかない

 

するとステイルは

 

「それにしても偽物とは言えグレゴリオの聖歌隊を作り出すなんて、少々アウレオルス=イザードを甘く見ていたのかもしれない」

 

「なんなんだよその、ぐれごりおの何とかってのは!?」

 

すると一夏が彼の疑問に答える

 

「元々はローマ正教の最終兵器だ。およそ三千人の修道士を聖堂に集めその人たちの聖呪を集めて発動する大規模な魔術の事のだよ、太陽の光をレンズに集めるみたいな感じで大量の魔力を集めて魔術そのものの威力を上げる魔術の事さ、そしてここにはおよそ二千人の学生がいるんだ人数だけなら申し分ない。まさにちりも積もれば山となるって奴さ」

 

一夏の解説に上条は唖然とする。つまりは今自分たちは二千人の敵に囲まれている状況であり、そのような戦場に先陣に突撃したと言う事だけは理解できる。つまりは二千人を同時に敵に回したと言う事になる。

 

「そんなもんにまともに戦って勝てるわけねーだろ!!、広いつっても建物の中だ。いずれはつかまっちまうじゃねーか!!」

 

するとステイルが前を向きながら

 

「それがまだ決まってないんだ、要は核さ、グレゴリオの聖歌隊は二千人の人間を同時に操らなければ成功しない、そしてそのカギとなる核さえ破壊すればコレは止めることができる」

 

暫く走り続け、ようやく階段の近くまでたどり着くが、その時前方からも球体が洪水のように迫ってくる。これで挟み撃ちになってしまう

 

「階段、行くよ」

 

ステイルのその言葉に上条と一夏も横の階段へ飛び込む。上か下、どちらに走ればいいのか上条は栖悩んでいるがその時違和感を覚える

 

「お前、随分とのんびりしているな、なんか策でもあるのか?」

 

上条がそう問うが一夏は言葉を聞かないまま下の階に向かっていきながら彼らに

 

「とにかく、俺は下に行く。さっき魔術を使ったことで俺の魔力はすでにバレたんだ。ここでお前達について行っても足手まといになるだけだしな。まぁ核を破壊したころにでも合流すればいいだろうしな」

 

その言葉にステイルは

 

「ふむ、一夏が下に行くのならばちょっと頼み事をしようか」

 

「なんだよ?」

 

「なに、簡単な事さ。ついでにこれも持って行って欲しいんだ」

 

そう言うとステイルは上条を一夏の居る下の階に突き飛ばす

 

「な…」

 

上条は一瞬何が起きたかわからなかったが理解できるのは体のあちこちが階段に打ち付けられていると言う事だけだ

 

ステイルは英語で何か言いながら上の階へと向かっていく

すると一夏は上条をなんとして受け止めると

 

「上条君、大丈夫か!?」

 

「あぁ、なんとかな、それにしてもあの野郎!!」

 

二人はそう言うとすぐに走り出す。こうしている間にも球体はすべて二人の元へと向かっているのだ。そもそも一夏はこれが目的だった。自分が時折魔術を使い球体をすべて自分のもとへ向かわせる、そしてその隙に自分よりも優秀な魔術師であるステイルに核を破壊させるつもりだったのだ。

唯一の誤算があるとすればステイルが上条を自分のもとへと突き飛ばしたと言うところであろう。

要は一夏に厄介事を押し付たものだ。

 

「織斑、すまない…」

 

「まぁ俺も一人じゃ心細かったから気にしなくていいよ」

 

二人はそう言いながら走っていくがこの時上条は心の中で、次会ったら確実に殴る。と決意したらしい 




学園都市に悪質な科学宗教が存在しない理由の一つとして暗部組織の活躍と木原一族のあの人が関係していると思うのは僕だけでしょうか?

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