IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第21話

ステイル、一夏、上条の3人は三沢塾に侵入したが広がっているのはごく普通の光景。

そしてこの場所は外面、つまり生徒のための場所ではなく、これから入学してくるであろう人たちを引き付けるための場所だ。そしてその奥にはエレベーターが四機あるがその内の一つは他のエレベーターに比べ大きいことから荷物搬入用であろうことがわかる。すると一夏は

 

「流石に人通りも多いしエレベーターを使う訳にもいかないか」

 

彼がそう言っている間にも夕暮れ時と言う事で長い休み時間に入っているのか大勢の生徒が周りを行き来している。

 

一夏がそう言いながら周りを見渡しているがその時上条は

 

「(俺や織斑はともかくコイツが受験生って顔かぁ?)」

 

確かに、上条や一夏と言うのは何も知らない人間からすれば受験生と言う姿に見えなくはないがステイルは違う、赤い髪の毛に咥え煙草、そして大量の指輪を付けた神父である。最悪不審者と思われて通報されるレベルなのだが、周りの人たちは誰も彼らを気に留めない。予備校も客商売であるのだから来るものを拒んでも仕方がないのだろう。

 

「あれ?」

 

だからこそ上条は違和感に気づく四基あるエレベーターの内一基目と二基目の間に人型の物が立て掛けられているのだ。形としては現代的なフォルムが取り入れられた西洋の鎧と言った所だろう。右腕にはアルファベットで名前のようなものが刻まれていた。そしてそのような物があるのに周りは誰も気づかない、上条はそこに違和感を感じた

 

すると一夏は上条が動かないためどうしたのかと思い彼の見ている方向に目を向けるとすぐに上条に

 

「上条君、あまり立ち止まって直視しない方が良いよ」

 

「一夏の言う通りだここには何もない、姫神を探すにしろイザードを潰すにしろ移動するのが賢明だぞ」

 

ステイルも一夏の言葉に続いて言い上条はようやくロボットから目を離す。自分以外誰も気にしていないため幽霊でも見ているかのような錯覚に陥ったのだが、あれは確かに上条の目の前にある

するとステイルは彼に

 

「何だ、一夏と違って君にはあれが珍しく映るのか、確かに君には珍しい物なのかもしれないだろうけど」

 

「まあな…ってちょっと待てあれは科学側の領分だろう?」

 

その言葉に一夏とステイルは

 

「さすがに気づかないか…随分と綺麗にやられているから仕方がないのかな」

 

「確かに君には余り馴染みのないものか…あれはただの死体だよ」

 

ステイルのその言葉に上条は訳が分からなかった、その後もステイルは何かを言い続けているが上条はそれを無視し、改めて鎧を見る銀色の金属で作られた体が潰され、中から赤黒いオイル否、あれはオイルではなく人間の血液であり、あの鎧はロボットではなく鎧を付けた人間であるならば?

 

すると一夏は

 

「ここは戦場なんだ…人間の死体の一つや二つがあったって何も可笑しくはない…」

 

そう言う彼の口調もどこか暗い。おそらく一夏も目の前にある光景を認めたくはないのだろう。だからこそ上条が死体だと知らず眺めていた時も彼は目を離すように言ったのかもしれない

 

だが上条はその光景に納得ができない。彼はロビーの廊下を走り抜け鎧のそばに向かい息をしていることを確認しているとその時エレベーターからたくさんの学生が下りてくるなのに学生は鎧を全く気にしない。上条は学生の肩をつかみ声をかけようとするがそれは失敗する

 

「なんだ、今の?」

 

するとステイルは

 

「そういう種類の結界なんだろうさ。表の住人である学生たちに裏の住人である僕たちの干渉を受け付けない。逆もまた然りだ。学生たちは僕たちの姿なんて見えていないだろうね。見てみなよ」

 

ステイルがそう言うと、学生たちはまるでその場に何もないかのように通り過ぎていく。それはもはや無視とかそう言う次元ではなく。彼らが見えていないという感じだ。すると一夏は

 

「それにどうやら俺たちはもうここから出られないらしいな。話している間ためしにドアを開けようとしたがびくともしない。どうやら建物全体が表の世界らしいね。まぁ魔術師の要塞ならば納得できるけどな(もしかしたら前に職員室に入ってきた敵と戦っている事に周りが気づかなかったのはティナが人払い以外にこの手の結界を張っていたのかもな)」

 

ティナの張る結界を多く見ている一夏にしてみればこの状況に対してあまり驚いていない。

上条は自分の右手にある力、幻想殺しでその結界を破壊できるのではないかと思い地面に思いっきり右手を叩きつけるが何も起こらない、痛みが右腕に伝わるだけだ。

 

「ばっ、みぎゃぁ!」

 

「何をしているんだい君は?恐らくこの結界は僕の魔女狩りの王と同じタイプ、すなわち核を破壊しなければ意味がないのさ。もちろん核はこの結界の外に置いてあるんだろうね」

 

ステイルはあきれながら上条にそう言う、その後も上条はどうにかできないかと彼に言うが、彼は冷酷な真実を上条に黙々と告げていく。するとその光景を見ていた一夏が上条に対し

 

「上条君、納得がいかないにしろこれは事実だ。だけれど、その人にはもう時間も残されていない。そして死者を送るのはあいつの仕事だ。」

 

一夏がそう言う通りステイルは鎧を着ている騎士に向かい合うと彼らには聞こえないような小声で何かを言うと、その騎士もステイルに何かを告げていく。

 

するとステイルはやり取りを終えた後、二人に対し

 

「それじゃぁ行くよ、戦う理由が増えたみたいだ」

 

神父ではなく、魔術師の声で告げる。そしてこれまでの光景を見て上条はようやくこの場が戦場であるという事実に気づく

そうして彼らは改めて最初の目的地を目指すために非常階段を使って移動しているのだが、途中から疲れの色が見え始める。上条やステイルも決して体力が無いと言う訳ではないのだが、それでも早くに疲労の色が見え始める。その原因としてはこの結界。建物も表の世界と言う事は踏んだ衝撃がすべて自分に返ってくる。あまりにも硬すぎる床を歩いているため普段よりも疲労のペースが上がってきたのだ。するとステイルは

 

「敵、も対等の条件であることを、祈るよ」

 

すると上条は

 

「そう言えばどうして織斑はあまり疲れてないんだ?」

 

「まぁ日頃のトレーニングのおかげ…かな?数十キロの重さの物を担いだまま何キロも歩かされるのに比べたらこのくらい朝飯前だよ」

 

「数十キロの重さの物を担いだまま何キロも歩かされるトレーニング…か(そんなハードなトレーニングをする魔術師もいるんだな)」

 

この時上条から見た一夏の印象としては普段から余程ハードなトレーニングをしている魔術師なんだろうなと思っていたのだ。ちなみに一夏がこれだけ昇っても疲れないのは彼は夏休みのトレーニングの中にISのパワーアシストを切ったままアリーナの周りを歩かされるという内容の物も課せられていたからだ。ISのパワーアシストを切ったまま歩くと言う事はすなわち数十キロの重さがある鎧を身に着けたまま歩かされると言う事だ。そのようなトレーニングに比べればこの程度の疲れなど気にならないのだ。

 

そして上条は突発的に

 

「そう言えばさ、電話って使えるのかな?」

 

「は?」

 

「えっ?」

 

二人はその言葉に一瞬言葉を失うが彼は言葉を続けていく

 

「いや、表の世界とか裏の世界とかの話だよ。やっぱり電話も繋がらないのかなーってさ」

 

言いながら彼はポケットから携帯電話を取り出すそんな事を言っているがそんなことは建前であると彼は思っているため、なにか正常な出来事をしなければ気が狂いそうな。ちなみに一夏も上条の疑問に対し言われてみればそうかと思い携帯を取り出しある人物に電話をかけようとするがすぐにやめた。

理由としては「何?、暫く会えないのと、久しぶりの任務で怖くなって私の声が恋しくなったの?」などと言わそうだからだ。いや彼女ならば確実に言うその保証が一夏にはあったため電話をかけるのをあきらめた。第一彼女は今イギリスだ、時差の事も考えれば妥当なのかもしれない

するとステイルは一夏に

 

「なんだい、君は電話をかけないのかい?彼は今電話をしているよ。」

 

「まぁ、上条君が電話をするなら別にいいかと思ってさ」

 

「僕にはかける相手からの毒のある言葉を恐れての判断に見えたんだけれどね」

 

「…」

 

ちなみに彼らが話している間にも上条は電話で誰かと連絡を取っている。どうやらこの結界の中でも電話は使えるようだ。

 

その後、上条は連絡を取り終わるとステイルは何やら物言いたそうな顔で上条を眺めている。そしてそれに気づいた上条はステイルとやり取りをしていくが、そのやり取りを見た一夏は内心

 

「(ステイルの奴、なんだかんだ言って上条君と仲がいいんじゃないのか?それにしても1年おきで記憶を消してそのたびにパートナーが変わるインデックス。それを救った上条君。まぁこれは本当ならばいいことなんだけれど、もしインデックスが救われたことを知らずにいまだに彼女を救うために努力する魔術師がいたとしたらその魔術師は…)」

 

はたしてインデックスはすでに救われたという事実を受け入れ新たな目標を目指すのだろうか?それとも暴走しとんでもないことをやるのであろうか。そんな事を一夏は不謹慎ながらも思ってしまった。


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