IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第16話

福音は現在、小島の陰でうずくまるような態勢で動かなかったのだが、突然背後で爆発が起こる

爆発が起こった方向には砲戦パッケージであるパンツァー・カノニーアを装備したラウラがいたこのパッケージはレールカノンを両肩に装着し、遠距離からの攻撃対策として2枚のシールドが正面に展開しているのが特徴だ。

 

「初弾命中を確認、続けて砲撃を行う」

 

ラウラはそう言いながら砲撃を始めていくが2発目以降は福音に回避されてしまうがその回避先には高機動戦闘専用パッケージであるストライク・ガンナーを装着しているセシリアが待ち構えていた。

彼女は福音に対し正確に攻撃を叩き込んでいく、そしてその隙に紅椿を装着した箒が近接戦に持ち込み確実にダメージを与えていく、そして福音が二人を振り切ったとしても、衝撃砲の威力増幅パッケージ崩山(ほうざん)を装着した鈴が福音に攻撃を当てる。そしてシャルロットは防御パッケージであるガーデン・カーテンを装着し、この中では唯一防御力が低い鈴をかばいながら福音の弾幕を防いでいく。

 

「流石軍用機と言った所かしら、火力もスピードも桁違いね」

 

「でもこのままいけば倒せますわ」

 

セシリアの言う通り彼女たちの攻撃によって福音は徐々にではあるが動きが鈍くなり、なおかつ弾幕を張らずに防御や回避に専念し続けていることから福音のエネルギーがもう少しでなくなるとこの場にいる誰もが思っていたのだが、ここでありえないことが起きる

 

それは福音の周りを突然謎の球体が包み込み、福音がその中で悲鳴にも似た何かを上げると、機体の形が徐々に変わり始める、それは

 

「ちょっと…これってまさか!?」

 

「第二形態移行(セカンド・シフト)…そんな暴走中の機体がどうして!?」

 

「油断するな来るぞ!!」

 

ラウラのその掛け声と同時に福音は強大なレーザー攻撃を放つ、そして付近には大きな爆発が起こった

 

その頃一夏は、謎の少女との会話がひと段落したのか二人とも話さずにじっとしていると、少女が口を開く

 

「ねぇ、君にとっての力って何?」

 

「俺にとっての力…か、難しいことを聞くな…しいて言うなら、俺が俺としてここにいることを証明するもの…かな?」

 

「君が心に刻んだ覚悟…願いって言ったほうが良いかな。そのために君は力を振るうの?たとえその力を振るう理由が周りにとって悪だとしても、その理由は変わらないの?」

 

「そんなの決まっているよ。確かに俺もあまりやりたくはないけれど、どうしてもっていう時には力を使ってそう言う事をする。、たとえそれが周りにとって悪とみなされても俺の考えは変わらないよ」

 

そう一夏の所属している必要悪の教会は必要とあれば拷問なども平然と行う組織であり、一夏もそこに所属する一員なのであるからいずれは一夏も本格的な活動をする。そして一夏はその時が来れば必ず実行するであろう。それでも一夏自身あまりやりたくないと思うあたり、組織の中でも例外に近いのであろう

 

一夏がそう言うと少女は

 

「そう…それが君が力を振るう理由なんだね」

 

「あぁ、もしかして失望した?」

 

「ううん、君が力を振るう事に理由があるなら私は止めはしないよ。それでいいかな?」

 

少女がそう言うと少女の後ろには一人の騎士のような女性が現れ一夏の方を見ると

 

「私は構いません、それよりも急いだ方がいいかと…」

 

「そうだね。最後に私のお願い、聞いてもらってもいい?」

 

「お願い、どうしたんだいきなり」

 

「えっとね、あの子を助けてあげて欲しいの。あの子本当ならこんな事をしたくないのに無理やりやらされているから助けてあげて欲しいの」

 

「あの子…福音の事か?」

 

「うん、そう。本当はただ飛びたいだけだったのに…だから助けてあげて」

 

「やってみるよ。」

 

「ありがとう、それじゃぁいったんお別れだね。またね”一夏”」

 

「あぁ、またな”白式”」

 

二人はそう言うと周りが突然明るくなり、一夏が目を開けるとそこは旅館の天井だった。そして一夏は起き上がると自分の体の状態を確認する

 

「(傷はふさがっているな…さてそれじゃぁまずは福音を助けに行くとしますか)」

 

一夏はそう言い布団から出ようとするが点滴の管が腕に刺さっている。あいにくもう少しで中身がなくなりそうだったので一夏はそれを引き抜く。そして一夏は部屋を抜け出し、旅館の外に出るとそこには土御門、ティナがいた

 

すると土御門は

 

「さて、起きた所で悪いんだが状況は最悪だ。福音が戦闘中に進化して戦ってたほかの候補生が押されている。このままじゃぁ確実に全滅だ」

 

「そうか、それじゃぁ急がなきゃな」

 

「それと一夏、福音を見つけたら福音をどうにかして島から引き離して動きを止めておいてほしいぜよ」

 

「あぁ、いいぞ」

 

一夏はそう言うとISを展開するがその姿は変わっていた。それは白式も福音と同じように第二形態移行したためだ

するとティナは一夏に

 

「一夏、次はやられるんじゃないわよ。」

 

「分ってるよ」

 

一夏はそうティナに言い残すとすぐさま飛び立っていった。そしてそれを確認した土御門はティナに

 

「もうちょっと気の利いたことは言えないのかにゃー?」

 

「悪かったわね…それよりも本当にやるの?確かもう魔術は使えないんじゃなかったの」

 

「まぁあと何回かは使っても大丈夫だぜい」

 

「そう…それよりも神裂さんは?」

 

「ねーちんならもう向かったぜい、あの悲鳴が聞こえたときにはすでにいなかったからな」

 

 

その頃戦況は絶望的であった。福音が第二形態移行をした際に放った攻撃は今までのISの兵器の威力を大きく上回っていたため、その攻撃を食らってしまった彼女たちは機体を大きく破損させてしまう事になった。今は全員が残っている武装で必死に攻撃をしようとしているが福音はその驚異的な速さで攻撃をすべて回避している。

 

「ちょっと…圧倒的すぎじゃない」

 

「これほどの力だとはな…」

 

鈴とラウラはの言葉にその場にいる全員が納得する。そのような状況でも紅椿はほかの専用機よりも破損が少ないのだから、紅椿のスペックがいかに高いのかがわかる。

 

そうしてると福音は箒に向かっていくが、箒は何とか刀で福音を受け止める。

 

「ぐっ…」

 

「今の内ですわ!!」

 

箒が攻撃を受け止めているすきにセシリアが福音に攻撃をするが福音は箒を蹴り飛ばし、その時の反動を使い攻撃を回避、そしてレーザー攻撃をセシリアに放ち、セシリアは回避が間に合わず攻撃を受け海に墜落する

 

「セシリア!!」

 

「シャルロットはセシリアの回収に向かえ!!」

 

「分った」

 

ラウラがそう言うとシャルロットはいそいでセシリアを回収し、近くの浜辺まで運んでいく。この時戦線は小島のほぼ上空である。

その後も福音は圧倒的な性能で彼女たちを攻撃していく。

すると福音が突然動きを止めると、その場から大きく飛び立つ、そしてその直後に一筋の光が通り過ぎる

 

そして光の飛んできた方向には

 

「さて、待たせたな福音、お前を助けに来たぜ」

 

そこにいたのは白式の第二形態である雪羅をまとった一夏が立っていた

一夏を見た鈴、ラウラ、箒は

 

「遅かったじゃない、全く待ちくたびれたわよ」

 

「すまない一夏、私たちの機体は限界に近いんだ…簡易修理が終わるまでの間、持ちこたえてくれないか?」

 

「一夏…!!もう大丈夫なのか!?」

 

三人の言葉に一夏は

 

「それじゃぁ、福音を倒してくるよ。…さて福音、俺とのリベンジマッチと行こうか!!」

 

一夏はそう言いながら雪片を呼び出し、福音に切りかかっていくが福音はそれを回避し、一夏に攻撃を放つが一夏は冷静に回避、そして福音の注意を自分に向けると、攻撃を回避しつつも彼女たちを福音から遠ざけていく

 

「(さて、ある程度の距離まで引き離して動きを止めておけって言われてたけど、このくらいで良いのかな?)」

 

その頃旅館のはずれでは土御門が一人で立っていた。この時周りには誰もいない

 

「さて…それじゃぁ俺からの援護と行くぜい」

 

土御門がそう言うと懐から紙ふぶきの入ったケースを取り出し、それを周りに巻いていく、そして、亀、虎、鳥、龍を象った折紙を設置すると彼は詠唱を開始していく

 

「──場ヲ区切ル事。紙吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ選定(それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)──界ヲ結ブ事(ほんじつのステージはこちら)…ゴホッ…」

 

そう土御門は学園都市の超能力開発を受けているため魔術を発動すると体に大きな負担がかかり下手をすれば命を落とすこともあるのだが、彼は気にせずに詠唱を続けていく

 

「四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン──折紙ヲ重ネ降リ紙トシ式ノ寄ル辺ト為ス(まずはメンドクセエしたごしらえから-それではわがマジックいちざのナカマをしょうかい)──四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ城式、南ノ赤式、東ノ青式──式打ツ場ヲ進呈。──凶ツ式ヲ招キ喚ヲ場ニ安置(はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう。ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)──丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)──人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ、──釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ(ピストルにはけっかいを、ダンガンにはシキガミを)…──槌ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン(トリガーにはテメエのてを)」

 

土御門の詠唱が終わると、その場から大きな光が上がり光はそのまま一夏達の居る方向へと向かう

彼が今発動したのは赤ノ式。遠距離砲撃の魔術である。

 

その光は一直線に福音に向かっていく。福音はその光の危険性を理解したのか翼を前面に展開しそこから大がかりなバリアーを展開することで攻撃を完璧に防ごうとしたのだが、福音のその目的通りにはいかない。その光が当たると大爆発を起こし福音の羽の大半は破壊されてしまう。それでもなお福音は立っていられるのだから大したものである。

だが福音はまだダメージの衝撃から立ち直れないのかしばらく動かないでいる。そして一夏はその隙を見逃さない

 

「(土御門が命がけで作ってくれたチャンスだ。ここでミスるわけにはいかないだろ!!)」

 

そして一夏は雪片で福音を大きく切りつけるがそれでも福音は地面に落ちながらも何とか体制を立て直し残りの羽にエネルギーをため反撃しようとするが一夏はすぐさま懐に飛び込み、もう一太刀入れると今度こそ福音は解除されパイロットの女性が姿を現すがそのまま落ちてしまう、この時一夏は何とかしてつかもうとしたのだが手が届かないが地面に落ちるその寸前で神裂が女性を空中で受け止めゆっくりと地面に着地する

そして一夏は神裂に語りかける

 

「神裂さん、ありがとうございます」

 

「気にしないでください、それよりも私はひとまず退散します。また後で合流しましょう」

 

神裂はそう言うと音もなくその場を立ち去ってしまうそしてしばらくした後で

 

「一夏、大丈夫か!?」

 

「一夏さんすごいですわあれを一人で倒してしまうなんて」

 

そう言いながら箒とセシリアがやってくる。そしてそれに続く形で鈴、シャルロット、ラウラがやってくる。そうしてこの作戦は一応の幕を下ろした


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