ラウラ達との件から二日後、一夏はようやく一人部屋になりのんびり過ごしていると不意に部屋のドアがノックされる
「はい、どうぞー」
そう一夏が言うと部屋の中に入ってきたのはティナだった
「ようティナかどうした?」
一夏がそう尋ねるとティナは
「一夏、明後日って暇かしら?」
「明後日…確か日曜日だったな。あれから土御門の奴から連絡も来ないし、暇と言えば暇だな」
「よかったら私の買い物に付き合ってもらえないかしら?」
「買い物?鈴と行けばいいじゃないか」
一夏がそう言うとティナは深いため息を吐きながら、ギブスをしている左腕を見せながら
「けが人の私と買い物に行ったらいろいろ気を使わなきゃいけないでしょ。あなたなら気を使う必要が無いからね」
「あぁ、そう言うことか、いいぞ。で何時に待ち合わせる?」
「そうね…10時に校門前で良いんじゃないかしら?」
「分った10時校門前な」
「そっ、それじゃなまた明後日ね」
そう言いながらティナは一夏の部屋から出ていくが、その時一夏はティナがドアの付近に張った人払いを解除するのを見たため少々感心すると当時に呆れていた
「(部屋に入るときに瞬時に人払いを張ったのか、それに気づけないなんて俺もまだまだだな)」
一夏はそう考えると術式の調整をすることにした。彼の場合、今までも気づかれないように調整や新たな天使の力の取得を目指していたのだ。
彼の場合、すでに神の如き者(ミカエル)と神の火(ウリエル)の力を制御できているため残る天使の力は神の力(ガブリエル)と神の薬(ラファエル)であるのだが一夏はこの二つの力をうまく使えないでいた
「(恐らく上手く扱えないのは間違いなく俺の力不足と霊装だな。火と風は短剣で使えているが残る天使の二つの属性は水と土、そしてそれに対応する象徴武器である杯とペンタクルだが俺はこの二つを持っていない…まぁ火と風を短剣にくくってる時点でまともじゃないんだけどな。本来なら火は杖、風は短剣なんだが俺は裏ワザで一つにまとめてるんだしな。)」
そう本来は火は杖、風は短剣が象徴武器であるのだが、近代西洋魔術の流派によっては火の象徴武器を短剣に、風の象徴武器を杖にすると言う事もあるので、一夏はそこを工夫し火と風を一つの武器に纏めているのだ。
彼はそんな状況でもできることを探し、術式の調整をしつつも鈴たちとISの特訓をし二日を過ごしていった。
そして約束の当日、一夏はいつもより早く起き準備をしティナとの待ち合わせの時間よりも少し早く校門に行った。
そしてしばらく待っているとティナがやって来て
「あら、早かったのね」
「まぁ、女の子を待たすわけにはいかないからな」
「そう?それじゃあ少し早いけど行きましょうか」
そうして二人は近くのモノレールに乗り買い物に行くがその後を付けている人物がいた
「ちょっと、どうしてあの二人が一緒にいるわけ!?」
「一夏さん、予定が入っているとはこういう事でしたのね、まさかハミルトンさんとは予定外でしたわ」
「せっかく買い物に誘おうとしてたのに一夏ったら」
そう言いながら後を付けているのは鈴、セシリア、シャルロットの三人である、二人は朝一夏が校門の前にいたためお互い抜け駆けをしようとしていたがティナとモノレールに乗って行ったため彼女たちはあわてて後を付けているのだ。今は一夏達より後ろの席にいる。
そして一夏達は
「それで、買い物ってどこに行くんだ?」
「まずは水着かしらね?来週、臨海学校があるからそのためにね。あなたは水着買わなくていいの?」
「あっ、臨海学校すっかり忘れてた。そうか来週か…それよりもティナ、お前怪我してるのに水着なんて買う必要があるのか?」
「まぁ怪我しているとはいえ、せっかくの海に制服って言うのもアレじゃない。泳がなくとも水着は着るわ。それ以外にもいろいろ買いたい物もあるしね」
「そうか。」
そうして二人は他愛ない話をしながらもショッピングモールに着き一夏は最初に水着を買いに行くと思っていたが、ティナは一つの店の看板を凝視していた。そこには
{新作、フルーツパフェ絶賛発売中。数量限定なのでお早めに}
そう書かれていたため一夏は
「パフェ、食べに行くか?」
「いいの?」
「あぁ、時間はあるしのんびり行こうぜ」
そう言い二人は店に入り新作のパフェを注文すると丁度あと二人分だったらしく二人とも目的のものを食べることができた。そしてティナは
「おいしい!!やっぱりここのお店のパフェはいつ食べてもおいしいわ!!」
「うん、確かにうまいなコレ」
実際彼らが食べているパフェには季節限定のフルーツがこれでもかと言う程盛り付けられ、下には生クリームがかなり詰められている。正直食べ過ぎると糖尿病になるのではないかと一夏は真面目に心配する。
そうして二人が食べ続けているとティナが小声で一夏に語りかける
「一夏、あなたもこれほど、とまではいかなくてもフルーツ、つまり果物はこまめに食べた方がいいわよ」
「確かに果物は体にいいけれど…どうしてまた」
「果物、これは大地の恵み、すなわち神の薬(ラファエル)の力を使う際の簡単な魔力源になるのよ」
「そうなのか?」
「えぇ、そのほかにも確かワインでもできたはずよ。ワインの原材料はブドウだから。まぁ十字教徒にとって、あまりお酒は進められたものではないし、そんな人いないとは思うけれどね」
二人がそんな話をしている中鈴たちは店の外からその光景を見ていた。周りからしてみればただの不審者以外の何者でもないのだが周りの通行人はあえて見逃している
「一夏達仲良すぎじゃない!?いつの間にあんなに仲良くなってるわけ?」
「お二人とも、ここは突入しますか?」
「いや、まだ早いと思うよ」
そんな会話を三人は繰り広げていた事を一夏達は知らない
そして食べ終えた一夏達は、今度こそ水着を取り扱っている店に入った
するとティナは店の入り口近くで立ち止まり
「水着、どうしようかしら?」
「どうするって何が?」
「自分で決めるか一夏に決めてもらうか、どうしましょ?」
「いやいや、自分で決めろよ…さすがに俺水着なんてわからんぞ」
「えっ、あなたの好みの水着を買おうとしてたんだけれど、そう言うの興味ないの?」
「俺好みって…いや無いわけじゃないが…」
「それじゃいいじゃない、さっそく入りましょ」
「おい、忘れてたけど、女性の水着のエリアに俺が入っても大丈夫なのかよ!?」
そう忘れてはいけないのはこの女尊男卑の時代下手に男が女性の水着専門店に入ろうものなら最悪警察沙汰になってもおかしくはない。がティナは
「私の彼氏って事にしておけばいいじゃない。それとも私が彼女じゃ不満?」
「そういう訳じゃないが…はぁ…わかったよ入ればいいんだろ…どうなっても知らないからな俺」
「それじゃぁ行きましょうか」
そう言うとティナは一夏の手を取ると店に入って行った。この時もちろん後ろからついてきている鈴達も店に入っていく。
店に入るとティナは小声で一夏に
「それで、さっきからつけてきているクラスメイト達はどうする?」
「どうするって言ったって何か方法はあるのか、今更出ても遅いぞ」
「方法は二つ、一つは一緒に試着室に入って立ち去るのを待つ、もう一つはこの周囲だけ人払いを張る。私はどっちでもいいわよ」
「後者にするよ。」
「そう、度胸が無いわね。とても戦闘要員とは思えないわ。普通試着室に男女で入る方を選ぶでしょうに」
「ばれたときのリスクを考えれば人払いが無難だろ。狭い試着室の中じゃ逃げられんだろ。って言うかテンション高いな」
一夏はそう言うと見つからないように周囲に人払いを張る。ここでティナにやらせなかったのはティナの買い物を邪魔させるわけにはいかないという一夏なりの心づかいである。そして鈴たちは何が起きたかもわからずに一夏達の居るエリアを避けて行った
そしてティナは一夏にどんな水着が良いのかを聞くとティナは真ん中に小さな白いリボンのついた水着を持ってくると早速試着室に入り、着替え終わると
「どう?似合うかしら?」
「ん…結構いいと思うぞ」
「本当?実はどうでもいいからそんな事を言ってるんじゃないの?」
「いや、本当だってすごく似合ってるし可愛いと思うぞ」
実際一夏はそう思っていたのでティナにそう告げると
「そっ、それじゃぁこれにするわね」
そしてティナは買う水着を決め制服に着替えたので、一夏が人払いを解き、二人で会計に行くとそこには
「ああーっ、一夏それにティナもこんなことろにいたわけ!?」
「一夏さん探しましたわよ」
「ひどいなぁ一夏勝手に行っちゃうんだもん…」
そんな事を言いながら三人は一夏達のところに駆け寄って来ようとしたが、後ろから
「何をしているのだこのバカ者どもが」
「みなさん、静かにしないといけませんよ」
そう言いながら担任の千冬と副担任の麻耶がやってきた。どうやら二人も水着を買いに来たようだった。そして麻耶は
「織斑君、それにハミルトンさん、もしかしてデートのお邪魔でしたか?」
「いえいえ、そんな邪魔だなんて思ってませんよ(やっぱ人払い張っておいてよかったー試着室に入ってたら見つかって説教だったな)」
「そうですよ(人払いで避けたので)満足な買い物もできましたし。」
そう一夏とティナは麻耶に言うと千冬が
「せっかくの買い物、邪魔するわけにもいかんな。ほらお前たち、私と麻耶の買い物に付き合ってもらうぞ付いてこい」
「「「分かりました…」」」
こうして千冬は鈴たちをつれ店を出て行き麻耶も
「それではお二人とも、よい休日を過ごしてくださいね」
そう言い残し、店を出て行った
その後、二人は時間を見るとちょうど昼過ぎだったのでどこかで昼食をとろうと思い道を歩いていると
「おい、一夏じゃないか。久しぶりだな」
「いっ一夏さん!?お久しぶりです」
そう言いながら一夏の友人五反田弾とその妹、五反田 蘭(ごたんだ らん)が二人のもとにやってきたのだが、弾を見たティナは一夏に
「誰?あのステイルに似ている兄妹は?」
「中学時代の親友とその妹だよ」
「成程。」
一夏とティナがそう話していると弾が
「一夏、隣にいる怪我してる女の子はお前の彼女か?」
「えーっと…同じIS学園の」
一夏がティナをどう紹介しようか迷っていると横にいるティナが
「ティナ・ハミルトンです。お二人とも怪我している姿を見せちゃってごめんなさいね。こんな状態だから満足に荷物を持てなくて…力のある一夏君に頼んで荷物持ちを手伝ってもらっていたの」
ティナは出来る限り彼女を傷つけないように言う、彼女はなんとなくではあるが蘭が一夏に好意を持っているのではないか、と思ったからだ
それを聞いた蘭は
「そうだったんですか。お怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫、と言えば大丈夫ですね」
そんな話をしながらも一夏達は早くに弾達と別れた。別れたというよりは蘭が弾を引っ張って去って行ったという方が正しいが
しばらくするとティナが
「一夏、分かっていたけど随分と人気があるのね。」
「そうか?」
「まぁ自覚がないならそれでいいわ。」
その後二人はファーストフード店で昼食をとり、いろんな店を回っているうちに夕方になったので一夏達はモノレールに乗りIS学園に向かっていると、不意にティナが
「今日はありがとう、買い物に付き合ってもらっちゃって」
「別に気にしなくていいぞ、俺もティナと店とか見れて楽しかったし」
「本当に?」
「あぁ、本当だよ。」
「そう、あっそうだあなたに渡したいものがあるんだった」
そう言うとティナは一夏の持っていた袋をあさりその中から小さなペンダントを渡す
「これは、さっきアクセサリーショップで買った…」
「あの店にたまたま魔力が込められているペンダントが売られていたからね、少しは自分の力に上乗せできるでしょ」
「ティナは付けなくて良いのか?」
「それに私はそれよりも良いやつ持ってるからね。」
「そうか、ありがたく受け取っておくよ」
一夏はそう言うと首にペンダントを付ける。
そして二人は駅に着きIS学園の寮に向かおうとしたが。もちろんその途中で鈴たちに説明を求められたのは言うまでもない
そしてティナが部屋に戻るとすでに鈴がいた
ティナは買った品物を開けていると鈴が
「ねぇ、ティナ。あんたってさ一夏の事好きなの?」
「正直分らないわ、好きって言ってしまえばそうなのかもしれないけれど…」
「それにしてもまた随分とお菓子を買ってきたわね、それによく分らない置物まで…まぁこの買いものなら一夏に頼んで正解だったのかしら?あいつ昔からこういう魔法的な物好きだったから」
「昔からってどういう事?」
「ティナには言ってなかったっけ?あいつ中学時代にそう言う本なんだったかな…近代西洋魔術とかどうとか言う奴の本を結構読みこんでたのよ。好きよね男ってそう言うもの」
「(成る程、彼が近代西洋魔術を使うことになったのは魔術を知らなくともその手の本を読んでいたって事ね。そりゃ本読んでれば使いたくなるわね)そうなんだ、それよりも凰さん、このお菓子今から一緒に食べない?」
「また唐突に降ってきたわね…良いわよ。それで食べ終わったらまた置物を置くの手伝えーとか言うんでしょ?」
「当然」
こうして二人で一夏との出会いの話やら何気ない話題をしつつもティナが一夏の話題で鈴をいじったりしながら夜を過ごしていった。
ちなみにティナがかって来た置物はどれも魔術的な意味がある置物であり、それをティナの指示のもと部屋の正しい位置に配置することによって学園に張っている結界の強度を保っているのだ。
とは言っても置物から供給される魔力はどれも少なく月に一回は新しいのと交換しなくてはいけないのが難点だが