IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第10話

セシリアたちの件から二週間が過ぎ、学年別トーナメント当日、アリーナの観客席に一人の女子生徒の声が流れてきていた

 

「さぁさぁ、前回のアクシデントを踏まえ今年度はタッグルールになった学年別トーナメント。一年生は初のタッグ戦と言う事ですが参加者はどのような戦いを見せてくれるのか、実況のこの私、天野もとても楽しみであります!!」

 

そう前回の襲撃事件の際、ティナや谷本に比べれば軽いが、無傷ではなかった彼女がまたこうして実況をしている。それだけでその放送を聞いた女子生徒全員が彼女の事を尊敬していた

 

そして、一夏とシャルルは待機場所で自分たちの初戦の相手を見ていたのだがその初戦の相手が

 

「まさか初戦でラウラと当たることになるとはね」

 

「うん、でも一夏油断しないでね、彼女は1年の中じゃトップクラスだからね」

 

そう一夏の初戦の相手はラウラ、相川ペアだったのだ、箒に関しては謹慎開けとは言えさすがにすぐ行事参加は許可しなかったのだろうと一夏は予想する

 

「(それにしても相川さんが今朝この世の終わりみたいな顔をしていたのはこういう事か…まぁ万が一あいつが相川さんにもセシリアたちと同じような事をしようとしたらその時は全力で止めさせてもらうけどな)」

 

そうこのトーナメント、参加者はペアを組むことが条件なのだが、ペア組まないで参加しようとした場合、前日にくじ引きでペアが決められるのだ、実際クジ目当てであえてペアを申請しない生徒もいたのだが、さすがに一夏も相川には同情をしていた。

 

そして一夏達は試合開始の時刻が近づいてきたのでシャルルとともにアリーナに出ると

 

そこには専用機を装着したラウラと訓練機を装着した相川が立っていた

そしてラウラは一夏に

 

「まさか初戦で当たるとはな、余計な手間が省けたというものだ」

 

「まぁ、これ以上余計なけが人が出る前に当たってよかったよ」

 

そう二人が話していると、シャルルは相川に

 

「相川さん、よろしくね」

 

「お手柔らかにお願いします」

 

そうしていると、アリーナのスピーカーから試合開始の声があげられるのと同時に一夏とラウラは格闘武器で戦い、シャルルと相川は射撃武器での戦闘に持ち込んだ

 

そうしてその試合の様子を全開の行事同様、アリーナの管制室では千冬や麻耶がその様子を見ていた、今回セリシアや箒に関しては生徒と同じ観客席で見ているため、この場にはいない。

そして試合を見ていた麻耶が

 

「織斑君とデュノア君、コンビネーション抜群ですね」

 

「ふん、あれは単にデュノアが合わせているだけだ。織斑の実力などたかが知れている」

 

「それでも十分凄いと私は思うのですが」

 

確かに試合はシャルルが一夏に合わせて戦っているだけなのだが、それだけお互いを信用していると言う事なのだ。ペアを組む場合で重要なのは個人の強さではなく、お互いの連携であると麻耶は考えているし、千冬は個人でどれだけ対応できるかを見ているので評価が違うのだ。

 

そして試合も中盤に入り、一夏とラウラが刀と手刀で戦っていると突然ラウラがワイヤーブレードを明後日の方向に向かって射出し、一夏は目で軽く追いすぐに視界から外すが

 

「(ラウラの奴いったい何を考えているんだ…待てよ…まさかアイツ!)」

 

そう丁度ラウラがワイヤーブレードを射出した先には確かシャルルと戦い、エネルギーは残り戦闘は続行できるものの、武器をすべて失ったため事実上リタイアしている相川の居る方向だったのだ

そしてラウラがこの後行うであろう行動に気づいた一夏はいそいで相川に通信を送る

 

「相川さん、急いでワイヤーブレードを回避するんだ!!」

 

「えっ!?…ちょっと、待って…きゃあっ!!」

 

一夏が通信を送るがすでに彼女はワイヤーに捕まってしまい、一夏が予想した最悪の展開になる

それはラウラが彼女の機体をワイヤーでとらえたのは別に助けたりするのではなく、その遠心力を使いISを装着した彼女をを一夏かシャルルの機体に叩きつけダメージを与えるためではないかと一夏は予想しそれが見事に当たってしまう。そしてそれは一夏の方へと向けられていた

 

「避けることもできる…けど!!」

 

そう一夏はあえて避けずに彼女の機体をを受け止めることにしたのだ、多少ダメージを受けはしたが一夏は何とか相川を受けとめワイヤーから解放されたことを確認する。

 

 

そしてそれを観客席で見ていたティナと鈴は

 

「(いくら勝つためとは言えまさか、障害物ならまだしも、仮にも自分の味方を相手にを叩きつけるような真似をするなんてね…あの子本当に候補生なの?それ以前に、あの子に味方と言う概念が無いからこんな真似が平然とできるのかしら…)」

 

「アイツ、何であんな考えが浮かんでそれを平然と実行できるわけ!?」

 

ティナがそう思うようにティナ以外の観客もラウラの行動を理解できなかった。

そして一組の生徒も

 

「清香ちゃん!!」

 

「いくらなんでも、やり過ぎじゃない?」

 

そう谷本と鷹月が声を上げ、セシリアも彼女の行動を理解できず、ある疑問を出す

 

「あの方…もしや戦うと言う以外の行動を教わっていないのではないのでしょうか?そうじゃなければあそこまでは出来ませんわ…」

 

 

 

そして相川を受け止めた一夏は自分の機体のシールドエネルギーを確認するとシャルルに通信を送る

 

「シャルル、ちょっとの間ラウラを抑えててくれ」

 

「もしかしたら勝負を決めちゃうけど良いの?美味しいところ取りになっちゃうよ」

 

「別にいいよ。」

 

一夏がそう言うとシャルルはラウラの方へと向かっていく。一夏は抑えてろと言ったが、実際は一夏のエネルギーではラウラに止めを刺すことはできなかったので、シールドエネルギーが余っているであろうシャルルに価値を譲ったのだ。

 

そして一夏は相川に声をかける

 

「相川さん大丈夫?いくら受け止めたとはいえ体にダメージはあるんじゃない?」

 

「絶対防御が発動したから何とか大丈夫だったけれど…さすがにきついかも…」

 

相川がそう言うと彼女の機体から煙があがり戦闘続行不可という表示が出る

そして一夏はシャルルとラウラの戦闘状況を確認するとシャルルが言っていたようにもうすぐシャルルの勝ちと言う結果になりそうではあったが、一応一夏もシャルルの応援に向かおうとすると、突然ラウラが悲鳴を上げる

 

「なっ、なんだ!?」

 

「一夏、いったん下がって様子がおかしい」

 

そう彼女が悲鳴を上げた後、彼女を黒い泥のようなものが包み込み、そして一人の人物を形作っていく、それは

 

「なっ、千冬姉!?一体どうなっているんだ!?」

 

ラウラを包み込んだ泥は千冬の形になると、一夏めがけて剣劇を繰り出す

 

「おっと、危ない!!」

 

しかし一夏は難なくそれを回避するとシャルルとともに相川をつれ安全な距離まで離れる、どうやらあれはある一定の距離内にある対象を無差別に攻撃するのだと一夏達は認識すると改めて一夏がシャルルたちに問いかける

 

「しかし、姿は千冬姉だし刀も千冬姉と同じ雪片、なんだありゃあいつの機体の隠された能力とか何かか?」

 

そう別に一夏としては千冬の姿を真似されて怒りが沸いてくる以前にあれは何なのだと言う疑問の方が強かった、確かに人に変装する魔術は存在し一瞬、彼女も実は魔術師なのでは?と言う疑問もあったのだが、それならばもっと千冬に似せるはずだし、あの泥からは魔力が感じられなかったことからその疑問はなくなる

すると相川が一夏の疑問に答える

 

「確かValkyrie Trase System(ヴァルキリー・トレース・システム)通称VTシステムだったかな?過去のモンド・グロッソの優勝選手とかのデータをそのまま再現するシステムで今は開発禁止だったような気がするなぁ?それよりもどうやって織斑先生のデータを入手したんだろう?」

 

「(成る程、千冬姉はドイツに教官として行っていたからその時にとったデータをもとにしたんだろうな)…それにしても、自分の力をあれだけ見せつけて結局最後は千冬姉か。それに俺に対して偽物とは言え、千冬姉をぶつけてくるとはな、よっぽど俺と千冬姉を比べたいらしいな。」

 

一夏のその呟きにシャルルが反応した

 

「それだけ、ボーデヴィッヒさんにとって織斑先生の存在は絶対って事だよ」

 

その言葉に対し一夏は

 

「それじゃ、あいつは俺が倒すとするか。エネルギーも零落白夜一発分はあるだろうし」

 

一夏にしてみればいつまでも千冬姉の陰に怯えるわけにはいかず、ここで改めてではあるが自分の魔法名を再確認する意味も込めあの偽物を倒す決意をする

すると相川が一夏を心配しつつも一夏に声をかける

 

「織斑君…その…気を付けてね」

 

そして観客席ではシャッターが下ろされアリーナの様子が見えないが、なんとなく中の状況が理解できていたティナが

 

「(一夏、あなたならその程度の忌まわしい亡霊すぐに勝てるでしょ?あなたは必要悪の教会の戦闘専門の魔術師であり、私の大切な同僚なんだから。)」

 

ティナは自らの同僚の勝利を確信しつつもやはり心配なのか避難している生徒がいる中、しばらくその場を動かなった

 

「(iaceo231…俺がここいることを証明する。俺や白式はいつまでも千冬姉や千冬姉の機体と比べられるために居るわけじゃない!!)」

 

そして一夏は自らの魔法名を心の中で唱え一呼吸置き集中すると、千冬の偽物に向かっていく。もちろん一夏を認識しすぐに剣劇を繰り出してくるが一夏は当たり前のようにそれを回避し自らの一撃を叩き込む準備をする

 

「あいにく、偽物に殺される程、俺は、お人よしじゃないんだ!!」

 

そう言いながら彼は偽物に対し一撃を確実に叩き混んでいき、最後に体の中央を切り裂くとそこからラウラが出で来るので一夏はそれを受け止める

一夏はせめて一発くらいは殴ってやろうと思ったが、戦意を失っているものを攻撃してはラウラと同じだと思ったので一夏はそのまま駆け付けた教員に引き渡した

 

そして学年別トーナメントは公式にはラウラの機体の暴走と発表され、さらにはトーナメントは中止で参加者のデータを集めるため1回戦のみ行うという事になってしまった


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