IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第9話

一夏が相川から話聞いて部屋に戻ろうとすると不意に携帯が鳴り始める、普通ならその場で出るのだが、着信相手がステイル=マグヌスとあり一夏はここではまずいと思ったので人目のつかない場所に行き電話に出る

 

<ステイルか、久しぶりだな>

 

<久しぶりに君の声を聞いた気がするよ、それよりも君にどうしても聞きたいことがあってね>

 

<聞きたいこと?なんだよいきなり>

 

<君、近いうちにイギリスに来ることは可能かい?>

 

<イギリスに…か、正直かなり難しいと思うぞ、俺の場合国籍が剥奪されているからな…>

 

そう一夏は本来日本国籍を持ち日本に所属しているのが普通であるのだが、彼がISを起動させてしまったことにより国籍が勝手に剥奪されてしまい、国際IS委員会で一夏の了承もなしにどこの国の所属にするかを話し合っているのだ。ここで一夏がイギリスに短期的にであれ行ってしまうと余計な火種になりかねないのだ

 

<そうか…それならいい。どうしても君にイギリスに来てもらうとなればうちの最大主教が何とかするだろうからな>

 

<最大主教……か>

 

<君もあの女狐にはいずれ会う事になると思うけどね、せいぜいそこの生活を楽しむんだね織斑一夏>

 

<なぁ、どうしてそんな話をいきなり…って電話切りやがった>

 

一夏が疑問をぶつける前にステイルは電話を切ってしまった。

 

「(ステイルの奴なんだったんだいきなり…まさかイギリスで何かあったのか?)」

 

一夏はそう思いながら部屋に戻り中に入って行ったが、この時一夏はステイルの話の影響もあってか相川の話の内容をすっかり忘れてしまっていた、その結果彼が部屋に入るとそのには

 

「えっと…その、失礼しました!!」

 

一夏が部屋にいなかったため安心していたのか部屋の鏡で髪を乾かしている女の子の姿のシャルルがいたので一夏はすぐに部屋の外に出た

 

「(ヤバい、さっきのステイルの話のおかげですっかり相川さんの話の事を忘れてた、本来ならノックの一つもすればよかったのに…)」

 

そうして一夏が部屋の前にいると中から

 

「一夏、その、もう入って来てもいいよ」

 

と中からシャルルの声がしたので部屋の中に入るとそのにはベッドの上に座っているジャージ姿のシャルルがいた。

 

そして一夏は部屋机の椅子に座ろうとすると、シャルルが

 

「あの、一夏僕の話を聞いてくれる?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

そうしてシャルルは一夏に話し始めた自分が男性として偽ってここに入学してきたのは父の命令で一夏のISのデータを集めて来いと言われた事や自分は本妻の子ではなく愛人の子であることを一夏に告げた

 

「(この女尊男卑の時代に愛人…か、ありえなくはない…のか?さっきのシャルルの話を聞く限りじゃぁ…)なぁシャルル一ついいか?」

 

「なに?」

 

「お前、フランスの代表候補生なんだよな?フランスでも性別は男で申請したのか?」

 

「フランスにいる時は女性だよ、でもIS学園に行くときはさっきの件もあって男性で転校届を申請したんだ…何故かあっさりと申請が通ったんだけどね。入学前の身体測定なんかもやらなくていいって言われたし、それでばれなかったんだよ」

 

「(と言う事は千冬姉やIS学園の上層部はシャルルが性別を偽っている事を知ってて入学を許可したってことになるよな、そうじゃなきゃシャルルはフランスの代表候補生、政府から何らかのコンタクトがあった時に性別の食い違いが発覚するはずだからな)」

 

「一夏、僕はどうすれば…」

 

「ばらすなら早い段階が良いに決まっている、嘘に嘘を重ねればいずれ取り返しのつかないことになると思うぞ」

 

「そうだけど…」

 

「幸い俺もそうだし、クラスメイトもシャルルが男であれ女であれ今までと同じように接してくれると思うぞ」

 

「そうかなぁ?」

 

「あぁ、そうに決まってる」

 

そうしてこの日の夜二人はすぐに眠ることにした、次の日の朝一夏達が教室に行くとクラスメイトはいつも通りに迎えてくれ、しばらくしてギブスをしたままだが谷本もやってきていつも通りの風景に戻っていたのだが朝のSHRの開始時間が近くになるにつれクラスメイトの一部の雰囲気がどこか悪くなっているような気がしたので一夏は疑問に思っていると横から相川がやって来て一夏に耳打ちをする

 

「篠ノ之さんの謹慎、今日で終わりらしいわよそれであの事の真相を知っている人たちからしてみれば嫌なのよ…」

 

「…成程な、それでどこか暗くなってるって訳か…(当然と言えば当然か、自分の親友殺されかけてその原因作った奴が戻ってくるんだからな。谷本さんと同じく明るく迎えろって言うのは無理があるしな)」

 

一夏がそう話していると朝のSHRの時間になり千冬と麻耶が先に入り、その後に箒も入ってくる

 

そして千冬が

 

「諸事情で欠席していた篠ノ之も今日から授業に復帰だ、全員いつも通りに過ごすように、いいな!!」

 

そう千冬が言うとクラスメイト達も返事をする。これに関しては千冬の威光のおかげと言う奴であろう、もしこれが普通の担任であったのなら間違いなく箒に対しての不満が爆発していたであろうから

 

そしてその日も授業は何事もなく順調に進み放課後になり、その日鈴とセシリアは早くアリーナに向かったのだが、二人とも丁度同じタイミングでアリーナに現れた

すると鈴が

 

「セシリアじゃない、あんたいつもより早くない?」

 

「さすがにあの雰囲気のクラスに長く居ろと言うのは無理がありますわ」

 

「あぁ、あの子今日復帰なんだっけ?それじゃぁクラスの雰囲気悪化も当然ね、むしろよくそれで済んでよかったなってところじゃない?」

 

「私もそう思いますわ…どうです鈴さん、特訓には少し早いですけど準備運動がてらに軽い模擬戦などいかがでしょうか?」

 

「模擬戦…ねぇ、まぁいいわよ、それじゃぁ始めましょうか」

 

そうして二人が模擬戦を始めようとすると二人の間を突然一発の砲弾が通過する

鈴とセシリアが発砲先を見ると、そこにはISを展開したラウラがいたため、彼女たちは抗議の声を上げる

 

「いきなり何するのよアンタ!!模擬戦に混ぜて欲しいならもう少しましな方法にしなさいよ!!」

 

「そうですわ、昨日の件と言い少々品が悪いのではなくて?」

 

「はっ、何を言っているのか理解に苦しむな、時代遅れの二国の言葉など分らなくてな。ましてや片方はEUの中でも弱小国、むしろよくEUにいられたなと感心するぞ」

 

彼女の発言に対し鈴は何食わぬ顏だがセシリアに関しては違っていた

 

「時代遅れって…そこまで言われるのは心外ね」

 

「そもそもの原因はあなたたちが理不尽な圧力をかけたからでしょう!!」

 

そうイギリスがEUの中でも立場が弱いという原因はイギリスには必要悪の教会を含め多くの魔術結社がある魔術大国であり、EUで最も影響の強いローマ正教とイギリス清教の関係が悪くその影響でEUではイギリスに対しかなりの圧力がかけられてしまっているのだが、生憎、彼女たちはそのような圧力の背景にある裏事情を知らないため、ラウラは必然的に挑発材料に、セシリアもそれに反応しているのだ。

 

「だから何を言っているかわからんと言っているだろう」

 

「だったら実力で示してあげるわ、それにここであんたと戦っておけばその分アンタの機体の特徴もわかるしね」

 

「あなたの腐った性格、叩き直して差し上げますわ!!」

 

「来い凡人共、軍人の力を見せつけてやる」

 

そうして3人の模擬戦が始まった

一夏とシャルルはそのような状態になっていることなど知らずに普通に特訓の場所に向かおうとしているのだが、クラスメイトの谷本と鷹月が走って一夏達のところにやってくる

 

「織斑君、デュノアさん、大変なの今アリーナで模擬戦が始まっているんだけどね…」

 

「オルコットさんと凰さんがボーデヴィッヒさんに一方的にやられているのよ、このままだと危ないから早く来て!!」

 

「分った!!、行くぞシャルル」

 

「うん!!」

 

そうして一夏達が走ってアリーナに向かうとそこにはISを装着しているが地面に倒れた鈴とISすらも強制解除されてしまったセシリアと無傷でISを装着しているラウラがいた

 

「はっ、あれだけ威勢のいいことを言っていてこのザマか凡人共、特にイギリスに関しては候補生までもが弱小なのだな、こんな弱小国そうそうにEUを抜けることを進めるぞ」

 

「まさか、あんたのISシュヴァルツェア・レーゲンと私たちのISの相性がここまで悪いなんてね…予想外だったわ」

 

「貴方のその発言だけは今すぐにでも撤回しなさい、私はともかくイギリスは決して弱小国ではありませんわ…」

 

そうして彼女たちが言った後ラウラはISのワイヤーブレードで二人の首を絞め、痛めつけようと思っていたのだが、ここで鈴がうっすらと笑みを浮かべながら

 

「何それ?さっきのAICと言いその砲門と言い、その複数のワイヤーブレードと言い本当に最強じゃない」

 

「当たり前の事を今更、命乞いのつもりか?」

 

「別に、それじゃぁどうしてアンタは開始と同時にAIC使って私たちの動きを止めなかった訳?そんな卑怯臭い武器があるなら開始早々に私たちの動き止めてそのワイヤーブレードなりレールカノンなりで一方的に痛めつければいいじゃない」

 

さらに鈴まるで誰かに話しかけるように独り言を続けていく

 

「あんた、何でそれをしなかった訳?」

 

「何?」

 

ここでラウラは鈴の言いたいことを理解したのか彼女は先に彼女を潰そうとするために鈴の首にワイヤーを巻き処々に占めていくがそれでも鈴は言葉をつづける

 

「グッ…あんたのAICは、あくまでも1対1の時に有効であって…複数を同時に捉えるとなるとかなりの集中力がいるから…複数を同時にとらえることは不可能…なんじゃないの?…そういう訳だからさ…この女を倒す権利はアンタに上げるわ…」

 

そして鈴が言葉を発し終わるのと同時にラウラの右側から一つのISが向かってくる

 

「いい加減にしろよお前!!」

 

そう言って向かってきたのは観客席のバリアーを破壊しISを装着した一夏だが、すぐに動きを止められてしまう

 

「これが、さっき鈴が言っていた奴か…本当に動きが止められるなんてな」

 

一夏が動きを止められているうちに、ISを装着したシャルルが鈴とセシリアを素早く回収し安全な場所まで退避させる。そして退避が終わるとすぐに機関銃を手に持ち一夏を援護する

 

するとラウラはAICを解き回避したので一夏も動けるようになる

 

「シャルル、援護を頼むな、アイツは俺が倒す」

 

「分ったよ、援護は任せて」

 

「教官の面汚しとフランスの旧世代型が相手か、話にもならんな」

 

そう言いながらも一夏は雪片をラウラはプラズマ手刀を使い近接戦に持ち込もうとするがその間に武器を持った千冬が入りラウラの手刀を受け止める

 

「模擬戦をやるのは構わないが、アリーナのバリアーまで破壊されるような事態を教師としては見過ごせないのでな、この決着は学年別トーナメントでつけてもらういいな?」

 

「教官がそうおっしゃるなら」

 

「(バリアー破壊よりもオーバーキルしかけた事を咎めるべきだと俺は思うんだがね…言った所で無駄かな?)わかりました織斑先生」

 

「僕も異存はありません」

 

二人もそう言うと千冬はアリーナ全体に向け今後一切の私闘を禁じる事を告げ強制解散となった

そしてその光景をアリーナの観客席で見ていた箒は

 

「(私にも力が欲しい、一夏達に後れを取らないような力が…!!)」

 

そして怪我をした二人をつれ保健室に向かうと、あの事故ほどの怪我を二人はしておらずかるい捻挫との事なのでひとまず安心したところで一夏は騒ぎの原因を聞く

 

「それにしてもどうしてあんな事になったんだよ?」

 

「アイツがいきなり乱入してきて挑発したのよ、私はともかくセシリアには相当ひどく言ってたわよ」

 

「セシリアにか?」

 

一夏がそう言うとセシリアが

 

「デュノアさんはご存じかと思いますが、イギリスはEUの中でかなり立場が弱いんですの。それを話に出されたのですわ」

 

「そうなのか…(EUはほぼローマ聖教が抑えているからローマ正教と対立しているイギリス清教があるイギリスに対して圧力がかかっているが、何も知らないラウラがその話題を出すとはな、つくづく気に食わないな)」

 

「EUではフランスもそうだけど、イギリスに対しかなりの圧力をかけてるからね…」

 

「とはいえあのような挑発に乗るなんて私も修行不足ですわ…」

 

そうして話し合っていると保健室の中に大勢の女子生徒が押しかけてくる、なんでも次の学年別トーナメントは二人一組で行うらしく、女子たちは一夏やシャルルと組みたくてやってきたのだが、シャルルが女子とわかるのはまだマズイので一夏はシャルルと組むことを告げると女子たちは納得して引き上げて行った

すると鈴が

 

「一夏、私が怪我をしてまでラウラの機体の弱点を教えたんだから絶対に勝ちなさいよ」

 

「あぁ、お前の怪我は無駄にしない…って言うかお前よくあの状況でそれを言う気になったな」

 

「私もそう思いますわ。」

 

「僕も」

 

「何、情報は早いうちの方がいいかなと思ったわけよ、それにあの模擬戦だって私的にはあいつの機体の特徴を得られればそれでよかったんだし、まぁあそこまでやるのは予想外だったけど」

 

「成程な」

 

そうして一夏達は保健室を後にし自室に戻ることにした、自室に戻った後は授業の復習をしその後シャルルは眠り、一夏は一応ティナに通信をいれ今日の出来事を報告すると

 

<私は初めから見てたけど、あのドイツの子、この事イギリスに報告したらあの子死ぬんじゃないかしら?>

 

<やっぱりティナもそう思うか…っていうか最初からいたのかよ!?>

 

<えぇ、それでちょっと雲行き怪しくなってきたからあなたを呼ぼうとしたらクラスメイトの子たちが呼びに行ったのよ>

 

<成程な、ティナそれとさ昨日なんだけど、ステイルから連絡が来てな>

 

<あの不良神父から?仕事の連絡?>

 

<いや、イギリスに来れるかって聞かれただけ>

 

<イギリスに…か、確かに必要悪の教会のメンバーが一回も本部に行ったことがないっていうのはちょっとまずいからね>

 

<やっぱりそう思うか…とりあえずはそんな所だね>

 

<そう、学年別トーナメント頑張りなさいよ>

 

そう言い二人は通信を終え一夏もすぐに眠りについた

 

 




ドイツにはハロウィンの時にフランス共々痛い目を見てもらいます
それと禁書キャラの本格的な出番は福音戦のあたりを予定していますのでもう少しお待ちください

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