一夏と鈴はあの後、千冬から今回の件は他言無用であると告げられた後。急いで3人がいる保健室に向かっている。
向かう途中で鈴が
「一夏、わかっているとは思うけど部屋の件はなかったことにするわ」
「あぁ分かったよ。それにしても箒の奴なんであんなことしたんだよ…」
「私にだって分らないわよ。ココが治外法権じゃなかったら少年院行き確実だったわね」
箒はあの後すぐに生徒指導の教員に連れて行かれた。恐らく今頃かなり厳しく怒られているだろうと一夏と鈴は思っている
そうしている内に保健室に着いたので、一夏と鈴は中に入る
そうして目に入ったのは3人は起きてはいるもののティナと谷本の二人はギブスをし天野に関しては左足に包帯を巻いている。
そうして一夏と鈴の二人はすぐに頭を下げる
「皆、ゴメン…」
「私たちが倒すのに手間取っちゃったからこんな事に本当にごめんなさい…」
そうしていると3年の天野が
「あなたたちが謝る必要はないわ、むしろあの状況でよくやったって言いたいわ。悪いのは1年のあの子じゃないの?私彼女の事よく知らないけどいきなり現れて殴りつけるなんて常識が無いんじゃないかしら…貴方たちに言っても仕方がないんだけれどね」
そう言う彼女の声には怒りよりも呆れの色が強い
一夏と鈴はお互いのクラスメイトの居るベッドへと向かっていく
そして一夏は谷本の居る所に行くが、彼女の表情は暗い
「谷本さん…本当にゴメン、大丈夫…じゃないよな」
「うん…右肩にひびが入ってるって言われてね……ううっ…」
そうして彼女は突然泣き出してしまう。おそらくあのような状況から解放された事から来る安心感なのだろうと一夏は推理し、彼女の話を聞き続ける
「あのね…突然光が落ちてきて出られなくなったと思ったら…うしろから突然殴られて…それで意識がなくなったの…気が付いた時には光が迫ってて、そしたら突然目の前に変な図形が見えて…放送室崩れてて……」
その後も彼女は泣きつづけたが一夏は彼女を安心させるためにずっと隣にいた。さすがに鈴もこの状況に関しては何も口を出さなかった。
そしてしばらくすると入口から
「織斑君、凰さんちょっといいですか?」
と言われたので一夏と鈴はすぐに保健室からでると、麻耶に廊下の奥まで連れて行かれる
そして麻耶は
「みなさんの様子はどうでしたか?」
「ティナと天野先輩に関しては大丈夫そうです。」
「谷本さんに限って言えばかなり混乱しています…ずっと泣きっぱなしでした」
「あの状態ではそうなってしまっても不思議ではありませんからね。私達もすぐにお見舞いに行きますが、あなたたちにちょっと言っておくことがありまして。篠ノ之さんの事なのですが…」
その言葉に一夏と鈴も表情を厳しくする
「彼女に関してはこの後怪我をさせた生徒に謝罪の後、一週間の微罰部屋での謹慎処分になりました。私としては今回の被害でこの処分はあまりにも甘すぎると言ったのですが…」
彼女の言葉から察するにあまり厳しい罰を与えない方がいいという意見の大半に根負けしたのだろうと思う。箒の姉はあの篠ノ之 束であり下手に彼女を罰すれば何らかのアクションが来る事を恐れたのであろうと予想する。
「(恐らくはこの後怪我をした皆にも箒が殴りつけたことを言わないように教員が言うだろうな。箒の奴…束さんの妹と言う立場に救われたな。それじゃなければ普通に警察行きだぞアイツ)」
「(私が前に注意したのに、それにも拘わらず今回のこの有様。この調子だと謹慎が明けた後にもまた何かやらかすんじゃないかしら?)」
一夏と鈴がそう思ったところで、一夏は一つの疑問を口にする
「それで山田先生、ほかの一般生徒の人たちに今回の件は…」
「彼女たちが怪我をしたと言う事は知っていますが、その直接の原因は大半の生徒が無人機の攻撃だと思っているようです。」
「そうですか…」
一夏がそう返答をすると不意に麻耶が
「それと織斑君この場で言う事ではないような気もしますが、部屋に戻った後、篠ノ之さんの荷物を全て纏めておいてくれませんか?」
「良いですけど…微罰部屋にいる期間内の荷物でしたらすでにほかの教員が持って行っているんじゃぁ?」
「いえ、流石に同じ部屋いつまでもで男女が同室だとマズイと言う事で彼女には部屋を移動してもらう事になったんです」
「成程、それでは部屋に戻ったら箒の荷物をまとめておきますね」
「お願いします」
そうして一夏と鈴は麻耶と別れた後、二人で部屋に戻り一夏は箒の荷物を纏め取りに来た教員に荷物を渡した。
そして一夏はすぐに持ってきた鞄を開けなにか魔術に使えそうなものが無いか探し始める
一夏の場合、戦闘以外の魔術も使えるので怪我をした人が寝ているすきに回復魔術をかけて怪我を治してあげようと考えてはいたのだが…
「(戦闘用の霊装以外何も使えるものがない…日常品で回復魔術が使えるっていうのはエイダさんから聞いたことはあるけれど何をつかってやるのかまでは聞いてなかったんだんだよな…)」
ここにきて一夏は本気で後悔していた。彼個人が負傷した場合も自らに魔術を使い回復するか、それこそティナに頼んで回復してもらっていたのだ。
そうしているとティナから霊装で通信が入る
<ティナ、そのさっきは話せなくてゴメンな…>
<いいわよ別に。あの後の事を教えようと思って今連絡を入れたのよ>
そうしてティナは一夏に一夏達がいなくなった後箒と千冬が保健室に現れ謝罪したことを伝えた。それでも谷本さんに関してはすっかり箒におびえてしまったという。そして箒が連れて行かれた後千冬が謝罪し、今回の事は他言無用だと言う事を彼女に使え部屋から出て行ったと言う事を一夏に報告した。そしてそれを聞いた一夏は
<そうか、その本当にゴメン…>
<別に一夏が謝る事じゃないわよ。それよりもあの時一組のあの子の話を隣で聞く限りじゃぁ結界見られたわよね>
<でも、恐怖時に見た幻覚ってことで処理されるんじゃないのか?>
<そうなると私も思うわ>
<それにしてもティナ、あの一瞬で良く結界張れたな>
<私が気絶してなきゃ完璧に攻撃を防げたんだけどね、気絶から覚めて無意識のうちに魔法陣書いたから形も強度も最悪の出来になっちゃったわ。私も戦闘スキル身に着けようかと本気で考えているわ>
<最悪の出来でISの攻撃の威力半減させるんだからやっぱり凄いよ>
無意識の内に魔法陣を書いて4人全員の命を助ける強度の結界を張るのだからティナの技量の高さが分かる
<私も少し早いけど今日はもう寝るわ、おやすみなさい>
<あぁ、お休み>
そうして一夏はティナと通信を切り一夏も早めに休む事にした。
そして次の日、授業は休みであるのだが一夏は怪我をした生徒のお見舞いに行こうと思い保健室に行くと、そこには一夏以外にも相川や鷹月、布仏に簪、それに鈴もいた。
「あれっ、みんなもお見舞い?」
そう一夏が尋ねると鈴が
「そんな所ね、それと昨日の三年生の人はもう自室に戻ったらしいわ次の行事の実況が私を待っているんだーとか言ってわね。」
「そっか」
そんなやり取りを鈴と交わし一夏は谷本の居るベッドに向かうと
「あっ、織斑君、昨日はその、いきなりゴメンね…」
彼女はおそらく昨日泣きついたことを思い出し顔を赤くしていた、一夏もそれを思い出したのかちょっと気まずい沈黙が流れると相川が
「ねぇねぇ、みんなでトランプしようよ、それ以外にも私いろいろ持ってきたんだよ」
そう言うと彼女は紙袋からトランプ以外にも携帯版の将棋やオセロなんかも出てきた
「この大人数でトランプと言うとかなりやる事が限られてくるような…」
「そんなことは気にしてはいけないのだー」
そうしてみんなでトランプをしたりしてこの日は遊んですごした。その結果昨日よりも谷本の表情も明るくなっている事から、少しはストレス発散になったのではないだろうかと一夏は思っていた
そして3日後授業再開の日となり久しぶりに教室に登校したが谷本と箒は出席していない。
麻耶と千冬が教室に入ってくると
「今日はなんと転校生が二人います」
「(二人も同じクラスに転校生だと?)」
そう一夏が怪しんでいるうちに二人の転校生が教室に入ってくる
「(片方は女子、もう片方は…なっ男!?)」
そしてまずは金髪の綺麗な顔立ちの生徒が自己紹介をする
「フランスからやってきましたシャルル・デュノアです。みなさんよろしくお願いします」
とシャルルが言い終わるが、銀髪の女子生徒に関しては一向に挨拶をしない
「あの、自己紹介をお願いしたいのですが…」
そう麻耶が言うが彼女は無視。仕方がなく千冬が彼女を諭す
「挨拶をしろ、ラウラ」
「分りました、教官」
彼女が教官と言ったことで一夏はすぐに彼女が千冬がドイツに言っていた時に教えていた生徒だと理解する。そして
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
彼女がそう挨拶すると、一夏のもとにやって来ていきなり彼の頬を叩くと
「私は、貴様が教官の弟などと絶対に認めん!!」
そう言って自分の席についていく
この時一夏は避けてカウンターを入れることもできたがあえてそれをしなかった。それよりも彼の頭には一つの疑問が浮かんでいた
「(千冬姉の教え子は置いといて、とりあえずはシャルルだな。フランスから来たって言ってたが、イギリスとフランスなんて表立った争いは無いけれど、裏では対立しているんだぞ。しかもイギリスの候補生の生徒のセシリアとイギリス清教の俺、2組にはティナだっている。それにもかかわらず自国の人間を送り込んでくるなんて一体何を考えているんだ?)」
そう彼に関しては別にラウラなど眼中にもなかったがそれ以前に、シャルルがなぜ一組に来たのかと言う事が疑問だった。なぜなら常識的に考えて対立している国の人間がいるクラスに送り込む事が理解できなかった。そしてフランスで男性操縦者が出たというニュースは聞いたこともなかったため、一夏はシャルルに関しては警戒をしておくことにした。