IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

125 / 126
第119話

左方のテッラが放つ小麦粉の刃、狙いは一夏ではなく上条である

魔術師の一夏と比べ撃破が容易であると判断したのは当然、しかし上条は迫りくる刃を右手で防ぐのではなく、首を振り回避する。

 

その後彼は、外壁の破片を手に取ると、それをテッラに向かって投げつける

 

「優先する-石材を下位に、人肌を上位に」

 

テッラは石材を優先の魔術で防ぐ、石が当たったはずなのに彼には傷一つついていない

しかし上条はそれを確認するとポケットに手を入れ「ある物」を投げつける

それをテッラは小麦粉の刃で切り付ける、しかし切り裂いたものを見て彼は眉をひそめる

 

上条が投げた物の正体は財布である。学生ならばポケットに入っていても何もおかしくは無く勿論武器として使えるわけがない

切り裂かれた財布からは硬貨が数枚+お札の切れ端が落ちる

 

それを見て上条は告げる

 

「どうしてだろうな」

 

その様子を見ていた一夏は

 

「(気づいたか…ってか若干涙目じゃん!財布の中に結構な金額入ってたのか)」

 

上条の目元を確認しつつそんなことを思う

そして上条はテッラの使う術式の弱点を言い放つ

 

優先の弱点、簡単に説明するなら複数の対象を同時に設定できないである

だから一夏との戦いでは壁を破壊しただけで一夏を仕留められなかった、土御門との戦いでは銃と折り紙の両方を見せられ動揺した、そして今は石を魔術で防いだのに、財布は防がなかった。もっと言うなら刃の攻撃に当たっているのに上条や五和が生きている

 

もしも優先が万能な術式であるのならこれら全ての事象は起こらずこの戦いは早々にテッラが勝利していて当然、むしろ苦戦すること自体が不自然なのである。

 

そして状況はテッラ一人に対しこちらは上条と一夏の二人

魔術師の一夏と一般人の上条であるが魔術と素手と言う複数の攻撃方法がある分、こちらが有利

後はうまくテッラを翻弄しながら攻撃すればいいだけである

 

すると一夏は

 

「援護する、テッラを頼むぞ」

 

「良いのか?俺が行って、お前の方が戦闘に向いてるんじゃ…」

 

「いいよ別に。それに本来の目的はC文書の破壊、霊装の破壊にはその右手が有効だからな」

 

「分かった」

 

彼らはそう言い目を合わせると上条はテッラに向かい一夏は上条を援護する形で魔術を使う

 

勿論テッラとて多少こうなる事を想定していたのか刃を放つ

ただこの場合刃は優先で人肌を切り裂くように調整されており上条とて当たればただで済むはずはない。

一夏は自身に向かって来る刃を召喚爆撃で破壊し、上条の死角から迫ってくる刃もついでに破壊する

 

その間、上条とテッラの言葉のやり取りは続く

テッラの目的は簡単に言ってしまえば「救い」である

「救い」と言えばイギリスにも救いを目的とした聖人がいる、しかし彼女の救いと彼の救いは大きくかけ離れている、上条もそれを知っているからこそテッラの「救い」という言葉とはかけ離れた行動は許せなかったのだろうとやり取りを聞いていた一夏は考える

 

そんなことを考え援護を続けていると戦いも終盤に差し掛かる

上条は攻撃をかわしつつ、まずは一撃テッラに拳を入れる事に成功する

 

しかしテッラは倒れない。倒れそうになるがどうにか体制を立て直し

小麦粉の刃を繰り出す

 

「優先する-人体を下位に、小麦粉を上位に!!」

 

放たれる刃は肌では無く人体を切断する事を目的に設定されたもの

距離があれば回避or一夏の魔術で迎撃できたのだが生憎、上条とテッラの距離が近すぎるせいで回避は出来ず魔術を放とうものなら上条事吹き飛ばす可能性が出てくる

 

「やばっ…」

 

絶対絶命、二人ともそう思っていたが離れていた一夏は上条の足元にある駆動鎧が落とした武器であるショットガンを見つける

 

「足元!!」

 

一夏は上条に大声でそう告げる

主語も述語もあったものではないが伝える暇はない、上条は一夏の言葉を信じ足元を確認するとショットガンがある事に気づき思いっきり踏みつける

幸いなことにショットガンは瓦礫の上にあったことで若干傾いており、踏まれることで上条の前で直立する

 

「甘いんですがね!!」

 

それでもテッラは表情を変えない

人間の上条にショットガンのトリガーを簡単に引くことは出来ない

そしてギロチンは勢いよく上条の腹へと突き刺さる

 

その瞬間テッラは驚愕した

刃が直撃したのにもかかわらず上条の体は切断されていなかったのだ

 

そして上条はゆっくりと立ち上がると

 

「言っておくけど、今のは幻想殺しとは無関係だからな」

 

「何、だったら何だと言うのだこのふざけた結果は…!!」

 

「答えると思うか?」

 

上条はそう告げるとテッラを思いっきり殴り飛ばす

今度こそテッラの体は床へと投げ出された

 

 

それで緊張の糸が途切れたのか、彼は痛む脇腹を抑えながらその場に座り込む

そして一夏は彼の元に近づく

 

「お疲れさん」

 

「全くだ、それにしてもショットガンで本当に防げるとは思わなかったよ」

 

「完璧にとはいかなかったみたいだけどな。」

 

「体がつながってるんだ、それだけで十分だよ」

 

そう彼が刃の直撃を受けながら無事に生きている理由、それは蹴り上げたショットガンが楯の役割を果たしたためだ

優先で設定できるのは一つだけ、あの場では人体が優先になっていた為間に硬い物を入れたため助かったのだ。人体の範囲がどこまでなのかは提案した一夏にも実際に行動した上条にも分からなかったが結果オーライである

 

そして上条は

 

「そうだ、五和は!!」

 

「大丈夫、気を失ってるだけで命に別状はないよ」

 

「よかった…」

 

上条は安堵すると倒れているテッラの元に行きこの騒動の元凶であるC文書を右手でつかむ。すると文書は粉末状になり風と共に散っていく

その消え方があまりにもあっけなさ過ぎて上条は力が抜ける

 

そして周りを見渡すと一夏はテッラに近づき状態を確認している

それを見た上条は

 

「テッラ、どうするつもりだ?」

 

「一応こいつは魔術サイドの人間だし、イギリス清教で身柄を拘束する事になるのかなぁ…その確認も込めて今連絡してるんだけど、電波が悪くてな。携帯がつながらないんだよ…」

 

「そうか…」

 

上条は一夏の言葉を聞くと辺りを見渡し戦闘の途中で彼が使用した五和の槍を回収に彼女のふもとに置く

 

そうしてしばらくすると

 

「動くなよ、下手に動くと身の保証は出来なないぞ」

 

一夏の声が聞こえたため上条は振り返ると、テッラの倒れている場所を囲むように水の槍が展開され離れた場所では瓦礫が浮遊している…こちらはおそらく風の魔術を使っているのだろう

 

テッラは忌々しげに舌打ちする

 

「幻想殺しは確かに我々とは分が悪い、こうもあっさり無効化されると自分たちの努力が否定される気分ですよ」

 

テッラは忌々しげにそう呟きながら一旦一夏の方を睨む

 

「幻想殺しもそうですが、貴方もなかなかですよ。その力、一体どこで得たんですかねー。ただの魔術師にしては身に余る力…だと思いますが」

 

「気づいてたか…生憎それは秘密だ。答えるつもりはないよ」

 

「そうですか、まぁ良いです。それに関しては私は”管轄外”ですので。…さて、そこの人間は尋ねないんですか?」

 

その言葉に上条は反応する

 

「何を」

 

「幻想殺しについて」

 

それを聞き彼はわずかに考える

当たり前のように使ってきて、正体が分からない力

上条は少しだけ考えると

 

「知ってるのか?」

 

「その反応を見ると本当に忘れているそうですねー、なぜ右手に備わっているのかを考えてみる事です。そこには大きな答えが隠されている」

 

テッラは悩む上条や話を半信半疑で聞いている一夏を見て笑みを浮かべる

 

「簡単な事です、幻想殺しの正体は…」

 

最後の言葉が言われるその瞬間異変は起こる

爆音とともにテッラ、そして近くにいた一夏が吹き飛ばされる

 

一夏が攻撃した訳では無い

上空から降り注がれたオレンジ色の閃光がテッラの真上へと降り注がれ近くにいた一夏も巻き込まれたのだ

勿論衝撃で上条も吹き飛ばされる。上条が付近を確認すると上空には複数の爆撃機が確認される

 

「な…何が…」

 

一夏のかすかな声だけ上条は確認する事が出来た

一夏は攻撃が当たる寸前で防御したが間に合わずダメージを受けている

命に別状はないが火傷を負っており、出血している場所もある

 

その後爆撃機は再度狙いを定めると今度は一夏が吹き飛ばされた場所を避け、テッラのいた場所を狙撃するような正確さで攻撃する

 

上条のテッラを心配するような声は途中で途切れ、彼も気絶する

そしてテッラがいた場所は完全に消し飛んだのだ

 




久しぶりの更新です
最後は若干駆け足気味になりました…

もしかしたらアックア戦飛ばして暗部→イギリス編になるかもしれません

就活が継続中のため次の更新もかなり遅くなることは明確です
更新が不定期気味になり本当に申し訳ないですが、今後もよろしくお願いします。
というか就活忙しく禁書最新刊、IS最新刊共に購入できずネットでレビューを見て内容を軽く把握するだけになっております

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。