一夏が向かったのはフランスの南部にある街、アビニョンである
目的地はフランスとしか書かれていなかったがアビニョンに何かあると彼の勘が告げたためその勘に従ってこの街に来たのだ。
「(こういう時の勘っていうのは意外と当たる時があるからな…)」
彼はそう考える。ちなみに今回はいつも一緒にいる案内役の少年や聖人のジュノンはいない。単独での行動だ
そして彼は街の内部を散策しようと考えたのだがその行動は不可能に終わる
デモを行っている人たちは一夏を確認すると、学園都市の人間だと思い込みいっせいに向かって来るのだ
ちなみに今回も一夏は変装しているため正体はばれていない
「ったく、勘弁してくれよ…!!」
これがもし魔術師ならば召喚爆撃の一つでもお見舞いして蹴散らしていたかもしれないが向かって来るのは民間人、無暗やたらに魔術を使うのは一夏の好みではない
なので彼は細い抜け道を使いながら人の流れを回避していく
もしも一夏が土地勘のある人間であれば抜け道を使いながら調査も出来たかもしれないが、あいにく彼は日本人。そんな事は出来ない
「(シャルロットならこの街の道ぐらいなら知ってたかもしれないな…)」
彼はフランスの代表候補生の少女を思いうかべる
彼女であれば街の特徴について知っていた可能性もあるが、今は力を借りる事は出来ない。今回は自分一人でどうにかしないといけないのだ。
とりあえず今は前に進むことが重要
そう考えた彼は暴動に巻き込まれないように慎重に歩き続ける
そうして歩き続けていると遠目にではあるが、一人の白人の男性を見つける
最初は一般人かと思っていたが、緑色の服装で雰囲気も一般人と違う
何よりこの暴動の中で冷や汗一つ流さず平然と歩いてる時点で異常なのだ。
一夏は万が一の事態を想定しいつでも魔術を使える体制を整えつつ男性に接近、その直後であった
上空から白い刃が彼を切り裂くために向かって来る
「いきなりかよ…!!」
一夏はポケットから短剣を取り出すと右に一閃、直後に爆発が発生し刃を破壊する。砕け散るというより拡散したと表現した方が正確である
「おやおや、意外とやりますねー。今のを回避するとは」
そう言いながら男性は一夏の方を向く
一夏は武器を構えつつ
「敵魔術師を確認、名前は?」
「私の名前は左方のテッラ。貴方には”本命”の前の準備運動になってもらいましょうかねー」
「(本命…ねぇ)その余裕、すぐに無くしてやるよ!!」
その直後、付近に轟音が鳴り響くのであった
その轟音はわずかな地響きとなりこの街にいる上条当麻に耳にも入った
彼は学園都市の人間だないろいろな理由があり現在では天草式の五和と共にアビニョンにある施設、教皇庁宮殿へと向かっているのだ
「なんだ今の音…?」
「暴徒が武器や爆薬を使用し始めたのかもしれませんね」
ただの暴動であればそのような物使用する必要が無いのかもしれないが、現在発生している暴動と言うのはただの暴動ではない、C文書と言う特別な霊装によって引き起こされた暴動なのだ。C文書の効果は大まかに説明するならば”正しいと人に信じ込ませる事”である。武器を使用してでも学園都市の人間を潰してもいいと信じ込ませれば人々はそのように行動するのだ
そうしていると上条のポケットにある携帯が着信音を鳴らす
上条と同じく学園都市からアビニョンにやってきた土御門である
本当ならば彼らはともに行動を行っていても不思議ではないが、彼らが学園都市からアビニョンにやってきた方法と言うのは非常に特殊な方法であり二人はともに行動していないのだ。
<上やん、そっちは大丈夫か!?>
<土御門、お前は今どこにいるんだよ!?暴徒は武器とか使ってるみたいだし怪我とかしてねぇだろうな!!>
<さっきの地響きなら気にしなくていいにゃー、原因は暴徒じゃなくて助っ人が原因だにゃー>
<助っ人…?>
<正体は合流してからのお楽しみって事にゃー。こっちは今教皇庁宮殿に向かっている最中だにゃー>
<教皇庁宮殿…お前もあそこに向かっていたのか>
その後彼らは通話を行う中で教皇庁宮殿とバチカンを結ぶパイプラインの破壊がカギとなる事を伝え、土御門は上条たちにポイントを伝え彼らはそこへと向かうのであった。
一方の一夏はと言うと左方のテッラと名乗った男相手に苦戦を強いられていた。
白い刃、刃と言うよりギロチンと表現した方が正しいのかもしれないそれは一夏へと降り注ぐ
「おおっと、当たるか!!」
一夏はそれを左手に持った杯を使い水の壁を出現させ防ぎつつ、隙を見つけては右手に持っている短剣を振るい風の刃で敵に攻撃する
しかし相手は
「優先する。-魔術を下位に、人肌を上位に。」
刃は直撃するが、彼の肉体には傷一つつかない
「(やっぱりだめか、火から水、水から風、途中で召喚爆撃を使おうが魔術と言う一つのカテゴリーに分類されてるからダメージが通らない)」
このやり取りはさっきから続いている
相手からの攻撃はどうにか回避出来てはいるが一夏の攻撃は相手には届かない。
「(優先の制御…思った以上に厄介だな。攻略法は無いわけじゃないけど、俺の手元には無い。無いなら別な方法をつくまでだけどな…!!)」
一夏はそう考えていると左方のテッラは
「手詰まりですかねー、ならさっさと倒れてくれると嬉しいのですが」
「寝言は、寝てから言って欲しいね」
彼はそういうと強力な風を使い地面を抉る
そして巻き上げられた岩は左方のテッラへと向かう
それを見ながら一夏は内心
「(あいつはこういうはずだ)」
「優先する。ー岩を下位に、人肌を上位に」
左方のテッラは一夏の想定していた道理のセリフを言う
岩は彼に当たるがダメージは無い。ダメージは与えられなくても一時的に視界を妨げる事は可能である
一夏はその隙に近くの建物へと入って行くのを相手は見逃さない
「優先する。ー壁を下位に、刃を上位に」
その言葉と同時にギロチンは彼の入って行った建物を真っ二つにし、直後建物は完全に崩れる
「極東人らしい無様な最後ですねー」
そう言いながら男はその場を去るのであった
しかしこの時男は見逃していたのだ、崩れた建物の瓦礫が何かを守るような規則的な崩れ方をしていたのを。