IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第104話

時刻は午後1時30分

一夏は現在自分の母親と思われる人物の日記を慎重に読み返していた

ただの日記のはずか自分の母親が魔術師である可能性を示していたのだ。慎重になるのも無理はない

日記を読み返していると魔術4:日常:6の割合で内容が進んでいく

母親の魔術師としての特徴でわかったことがいくつかある

一つ、彼女は何処の組織にも所属しないフリーの魔術師である事

一つ、主な仕事としては魔術的、学術的に貴重な品々が公表される展覧会や輸送の護衛に付くのが主な役割である事。任務先は日本にとどまらず欧州の国々や北米にも行っているようだ

一つ、護衛ではあるが実力は相当なもので日記では複数相手でも余裕であったような事が書かれていた

 

日記に書かれていた物品は一夏でも知っているようなものが多く、それの護衛を受ける事から相当優秀な人物である事が伺える

 

「めっちゃ優秀じゃねぇか…続きは」

 

一夏が一人そうつぶやくと日記を読み進める

 

{19××年 12月15日 場所日本 天候曇り

  今日は横浜で懐かしい人に出会った。以前アメリカでご飯を奢った学生の一人だ。彼は学校を卒業し今はとある会社で働いているそうだ。向こうも私を覚えていたらしく見かけるとすぐに声をかけて来てくれた。その後今度は彼がご飯を奢ってくれ、連絡先を交換する。}

 

日記に登場したこの男性が後に一夏の父親になる人物である事は読み進めていく中で明らかになる

彼の特徴として真面目で運動は得意、中学、高校と剣道で全国大会に出場するほどの腕の持ち主であったが高校最後の大会では全国ベスト4まで進出したものの試合で怪我を負い、それが原因で剣道をやめてしまったと言う

彼らはその後いろいろありながらも結婚する。結婚はしたが彼女は魔術の事を父親には一切話しては居ないそうだ。

その数年後に姉である千冬を出産、この時には彼女は一時的に魔術師を引退している。

そうして千冬が2歳の時の日記には

 

{19××年 6月28日 場所日本 天候晴れ

  今日は旦那から相談を受けた。旦那は剣道をやめた後もボランティアを兼ねて近くのシノノ道場と言う場所で子供に剣道を教えているそうだ。相談の内容と言うのは指導と言うよりそこの道場師範…いわゆる道場のボス夫婦の娘に関する内容で、言うには 娘は異常なほど他人を拒絶しており自分たちを辛うじて両親と認識する位で他の人は拒絶していたらしいが、今日千冬を道場に連れて行くと最初は拒絶されていたが後半になり始めて千冬を拒絶しなくなった。その後も千冬を認めるだけで他の子は認めない…ただの人見知りなのだろうか? と言う内容であった ちなみに旦那は拒絶されている。話を聞くだけでは分からない今度会ってみよう}

 

「この娘って間違いなく束さんだよな…あの人昔からあんな感じだったのかよ」

 

日記に登場した道場師範の娘は間違いなく篠ノ之束であり彼女が子供のころからあのような感じで会った事に一夏は呆れる

そうして飲み物を軽く口に含めると日記を読み進める

 

{19××年 7月1日 場所日本 天候雨

 今日は旦那と一緒にその娘に会ってみることにした あってみた感想を一言で言うなら…こんな事を行ってしまうと非常に不謹慎である事は十分承知であるが、不気味である

アレは人見知りを超えている。それと同時に魔術師の勘でありこれには根拠など一ミリもないが彼女は将来なにか問題を起こしてしまうのではないか…それも世界の常識を覆す事の事を。そのように感じざるを得ない そしてあの子は私たちに敵意を持っているようにも見える 千冬を取られたくない故の嫉妬なのか、あるいは…}

 

そうして日記を読み進めていくとこの数年後彼女は再び妊娠、これが一夏である

次の日記は妊娠が分かった数か月後の日であった

 

{19××年 2月17日 場所日本 天候曇り

 大変な事になった 魔術師で編成された窃盗団が貴重な物品を盗むために近いうちに日本に来ると言う情報だ。その窃盗団の規模はかなり大きく、こちらの戦力が足りないため力を貸してほしいと言う事だ。魔術に関しては引退してからも精度が落ちないように隠れて調整していたから不安は無い。ただ問題なのは、お腹の子だ。場所はここから離れているため旦那には誤魔化せるが。戦闘でもしもの事が有ったら大変だ。本当ならこの任務は断るのが常識である。だけど話を聞く限りでは水際で食い止めるのも難しく、何より戦力と言うのが日本の魔術師がメインでイギリスからの増援は厳しいと言う。向こうも今はかなり大変な事になっていると言う話である もしこれらの品々が盗まれれば魔術的にも大変な事になるのは分かり切っている。 どうしたものか…}

 

「妊娠期間に戦闘なんかしたらお腹の子が…あっ、俺が居るって事は無事って事だよな。やっぱすげえわ。妊娠してるのに戦闘して俺が無事に生まれる訳だしなぁ」

 

一夏から見れば母親は千冬以上の超人ではないのだろうかと思えてならない

そして日記を読み進めていくと

 

{19××年 2月19日場所日本 天候珍しく雪

  任務を受ける事にした。それと今日からは術式を万全にすると同時にお腹の子を守りきるような術式を作らなければ。とはいえ肉体強化は危険すぎる。やはり作るなら結界系統が良いだろう。今日の日記はここまでとさせてもらう}

 

この後彼女は術式を作り任務を受けた

彼女は移動の負担を考え関東圏内で戦闘を行ったと言う

この襲撃は関東、関西、東北の三つの地域に同時に襲撃を掛けてきたと言う

関東は一夏の母親と現地の護衛隊が、関西は陰陽師が中心であり、東北はそれとはまた別の組織が派遣され、どうにかしのぎきったようである

 

そうして日記は16年前の明日 つまり一夏の誕生日に至る

 

{19××年 9月27日 場所日本 天候晴れ

 戦闘と言うイレギュラーは有ったがどうにかこの子を産むことが出来た。まずは神に感謝である

 何故神?私は日本人だけと使っているのは西洋の魔術、ルーンや近代西洋がメインだからね。旦那からは任務の行き先が関東方面であり私は友達に有ってくると言ったため、神社のおまじないが聞いたんだなと喜んでいた。 ちなみに子供を一目見た時にこの子は私に似ていると感じだ。 非常に疲れた為日記はここまでとさせてもらう}

 

「母さん、俺と同じような魔術を使っていたんだ…なんか親近感わくなぁ。でも俺が生まれて数年後に失踪するんだよな…ちょっと覚悟を決めるか」

 

一夏は覚悟を決める。ここまではただの日記であるがこの数年後に両親は失踪しているのである

生きているのか死んでいるのかすらわからない。考えたくもないが育てるのが嫌になったのかもしれない。いろんな考えが彼の頭によぎる。失踪した理由は無くてもいい、せめて両親の生死位は知りたい。そんな考えで日記を読み進める。すると一夏が一歳になって数日経った日の日記を読む

 

{19××年 10月1日 場所日本 天候曇り

 こんな事が有っていいのだろうか…一夏がクレヨンを使って壁に落書きをした。ここまでなら良い、掃除が大変だけど良い。その内容が問題だ。赤、青、緑、黄色、この四色を使い十字架を書くと東西南北に一色づつ色を付ける 天使の方角、司る色、すべて完璧である もしかして受け継いだ…私の力を?心当たりは一つ、以前の任務で使った術式の影響で私の力の一部が遺伝したのだろうか

 だとするとこの子は私が守らなければならない}

 

「マジで…こんな事してたのかよ俺、でもそんな記憶全然無いんだよなぁ…まぁ一歳の話だし忘れてても不思議じゃないか…」

 

そうして日記を読み進めていくと、驚きの真相が明らかになる

あの後、束の異常性はますます強くなり、千冬と束の妹である箒以外には心を閉ざしたまま、と言うより拒絶しているようだ

そして最後の日記になる

 

{19××年 8月30日 

  こうするしか方法は無い。子供たちに許してくれとは言わない。理解してくれとも言わない。

 今日、私たちは彼らの前から姿を消す。と言うか身を隠す。

それと一夏の記憶にも細工をした。語弊はあるが行ってしまえば記憶の魔術に関する部分の封印である。このままいけばあの子は近いうちに覚醒する。それを遅らせるためである。魔術師にならない限り大丈夫であろう。 旦那はもう行った。後は私だけ。千冬には旦那は上手く説明するだろう。問題は一夏、母親として一人の魔術師として、あの子の前から姿を消したくはない。あの子には力が有る。その行きつく先を見れなくて残念である。居なくなる理由は簡単、ここに居ると私たちは殺される。なにより子供たちに要らぬトラウマを与えてしまう。最近それが頻繁になった。車のトラブルや移動先での事故、学園都市外に集中している不審な機器の故障。犯人は分かり切っている。でも私以外誰も知らない。もしこれが大人で合ったら私は間違いなく殺しに行った。でも相手は子供。私は子供に力を向ける事だけはしない。そう誓っているのだ。とりあえず千冬にはしばらく帰れないが心配するなと伝え、生活費の振込先等を旦那が伝える。

 

 ただ私たちは生きている。これだけは確かである これを最後の日記とさせてもらう}

 

そして日記は終わるかに見えたが最後の一分の数行が術式加工されている

それを一夏は深呼吸し”天使の力”を使い加工を解いていくと、そこには

 

「”一夏、これを読んでいると言う事は何らかの事情で魔術師になったのね。この力を与えた私を憎んでもいいわ。でも言いたいことは一つ、どんな形でも後悔無い選択をしなさい。成長したあなたが私を見つけて再開できる日を待っています”…か。別に俺は自分の力も恨んでないし、母さんの事も恨んでなんかいないよ。」

 

一夏は最後の一文を読みそんな言葉を漏らす

ただ一言、愚痴を言うならば”自分たちの居る場所位書け”であろうか。

その後一夏は日記をしまい物置の中にしまう

 

日記を読み終わりひと段落していると少年とジュノンが帰宅

こうして誕生日の前日は終わるのであった

 

 

ちなみに日記の最後には両親の名前が英語で書かれてあった

自体からして母親の文字である

 

父:織斑政春

母:織斑秋菜 (旧姓:箕田川)

 

と書かれていた




一夏の母親は束の危険性を十分に分かっています
引き離そうかと考えましたが彼女以外に気づく人は居ないためどうしても旦那に言えなかったのかもしれませんね
白騎士事件が起きた際には本気で後悔してそうです。

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