すいませんがあとがきは省かせていただきます。
明日に追記するかも?
さて清水を後にした俺たちは、まず清水の坂で土産を見つつ下っていき、四条へと向かう電車へと乗り込む。そして歩むがままに四条を堪能して、気が付けば時刻19:30。このままでは夕食に間に合わないと悟り、旅館へと再び電車に乗ることに。
そして、20:00。何とか旅館へとたどり着けた。ひとまずは夕食にありつけそうだだけど、予定の時間より少々遅れてしまった。
「しかし、おかみさんには感謝しないとな」
そう、実はその点に関しては問題ない。拓海曰く、遅れることを見越し、あらかじめ女将さんに遅くなると伝えていたらしい。手際がいいね。
正直な話、旅館とか9時には夕食が閉まると思うけど、貸切だからこちらの都合に合わせてくれるとの事だ。が、そこまでサービスしてもらってもいいの?というのが俺の本心。旅館の裏事情とかよく知りませんけどね。考えたくもないが、黒いのでは?この旅館。
ちなみにそんな拓海は旅館へ帰るや否や、俺たちの部屋分けを聞きに行くべく、受付の中へと入っていった。おおよそあいつに任せっきりなのは、奴がそうしたいと言ったからだったりする。断じて俺たちが面倒だからという訳ではない。いや、ほんと。
「はー、歩き疲れましたねぇ。足が棒みたい」
飛龍はそんな事を言うと、ぼふっと勢いよくロビーのソファーへと腰掛ける。それに続き、皆はそれぞれ座り始めた。
「望は座らないの?」
タイミングを逃した俺に、蒼龍は不思議そうに問う。まあ、タイミングの事もあるけど、別段疲れているわけではないし、何より座ると暫くそこから動きたくなくなるのは、誰もが共感してくれるはず。どうせすぐ移動するんだし、立ってる方が良い。いつもの腕組みスタイルで、突き通しておく。偉い立場ではないのに、エラそうにする感じ。割と痛いがクセを直すのは難しい。
そんな俺のどうでもいいクセの事はいいとして、拓海が来るまで暫く本日の観光地を振り返り和気藹々と話に花を咲かせつつ、盛りあがりがクールダウンし始めたタイミングで拓海が戻ってきた。バインダーに挟まれた紙っぺらに、数本部屋の鍵を持っているし、どうやら振り分けがわかった様子。
「はい。では振り分けの発表します。まず統治さんと夕張さんは201号室、七星さんとキヨさんは202号室で、次にそうりゅ―あ、いや。青柳さんと飛田さんは204号室。ヘルブラザーズは―」
「は、はい!ちょ、ちょっと待ってください!」
つらつらと言う拓海に対し、蒼龍が手を上げて止めさせる。そんな蒼龍の行動を拓海は予測していたのか、「振り分に納得いかないんでしょ?」と言葉を返した。
「え、ええ。どうして望と一緒じゃないの?」
「まあ、男は男。女子で別れて欲しいそうですわ。でも、どうしても奇数どうしですし、青柳と飛田さんは仕方なく…。それに念のため…」
念のためって、何を言っているんだろう。まあ、どうせいかがわしい事を踏まえてだろうが…。って、そこまでサカってるように見えるの?大学生は性欲の塊だとでも思われているの?男子中学生、高校生じゃねぇんだぞ。
「そんなぁ…。まあ、仕方ないかぁ…」
心底残念そうな表情な蒼龍。まあ、仕方ないよね。確かに振り分けを任せたのは、こちら側だし。もちろん俺も残念無念の思いだが、いまさら変えてくれなどと因縁をつけるが如く言うのはマナー的によくない。我慢しよう。
「じゃあ、夕飯は三十分後になると思います。割と時間がこっちも押してるので、こればっかりはかんにんしてほしいっす」
「まあ、予定を狂わせたのは俺らの暴走もとい、わがままだったからな。本来であれば夕飯抜きなところを、お前のおかげで食える。それくらいは従うさ」
土産選びでこんなに時間を食うとは思わなかったよ正直。まあミリタリーショップがまさか四条にあるとは思わなかったし、こっちの情報収集不足だった感もある。今思えば、明日の帰りでもよかったかもしれない。反省しなければ。旅館の事情がどうあれ、時間をずらしてくれたのには、本当に感謝かな。
*
時がたつのは早いもの。と、いうかむしろ時間が少ないくらいだ。振り分けられた部屋に行き、荷物を部屋に置き、そうこうしているうちに三十分など刹那のように感じる。
幸いにも全員遅れに対する罪悪感があるのか、迅速かつ手際よく、荷物の整理やら部屋の確認などを済ませた。目まぐるしい活躍を見せたのは以外にも艦娘たちで、さすがは規律を重んじる軍属なだけはある。彼女たちから見習うことは、まだまだありそうだ・
「こんなところでお食事なんて、私初めてです」
さてさてそんなこんなで移動を開始。蒼龍には向こうの世界でこういう経験はなかったのだろうかと思いつつ、俺たち一向は座敷に通された。艦娘たちは蒼龍だけに限らずみな感激したような顔で室内を見渡していて、察するに高級料理店での食事経験は艦娘にはないと結論付ける。室内は床の間に掛け軸がかかっており、花が活けてある。畳の匂い鼻を突き、雅というべきであろうか。いや、そもそもここは高級旅館だし、この一言は間違いか。ただ、拓海のおかげで安く泊まれているだけだし。
「さてはて、お味を拝見させてもらおうかね。どれも良い品を使ってると見える」
先ほど運ばれてきた目の前に広がる料理の品々を見て、こういうときだけ玄人っぽく振る舞うのがキヨという男である。と、いうかそもそも玄人に片足を突っ込んではいるので、にわかというわけではなさそうだが。趣味はプラモデル作りとかなんだがね。こいつ。
「お待たせいたしました。ビールと焼酎です」
襖が開いて、従業員が顔を出してきた。少々小柄―というよりはかなり小柄な女の子というべき彼女は、いそいそと俺たちの前へ酒を置いていく。
「こりゃあいいなぁ。うへへ、酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞぉーっと」
ヘルブラザーズは酒が置かれてゆくのを見て、どこかで聞いたことのあるような曲を口にする。うん、君ら大好きだよねその歌。
「さーて!お酒も並び終わったし、早く食べましょ?料理が冷めちゃうじゃない!」
花より団子と言葉が似合うだろう飛龍が、料理に向けて目を輝かせながら言う。こういうところは、割とかわいいとは思います。はい。
「では、いただきますか」
俺がそういうや否や、皆はそれぞれ手を合わせて料理に手を付け始める。素人目で見ても、どれも艶やかというべきなのか、料理が輝いて見えて、何とも旨そうだ。
全員もそれぞれ手を合わせて料理に手を付け始める。豪華絢爛ともいうべき品々の数々に、みな夢中の様子。
大雑把に御品書きを説明すると、造りに鮎の塩焼き。吸物に季節の天ぷら、小鉢に白滝そうめん。そしてメインディッシュは、丹波牛のステーキといったところか。丹波牛とか聞いたことないんだけど。と、まあ東海方面出身の俺であるが、後で調べてみると結構有名だったらしい。一頭一頭じっくりと匠が育て上げ、その中からさらに厳選し、今食べているものが残るという。農業もとい酪農など、そうしたものは残念ながら俺は疎いが、一つだけ言えることは感謝。ただそれだけではないだろうか。
「のぞむー。はい」
と、そんな思いを馳せつつ料理を楽しんでいると、隣に座る蒼龍がにこにこと笑顔を俺にふりまき、スッと俺へ向けて何かを差し出そうとする。これは俗にいう…!
「アーンって、やつですかな?蒼龍」
「ふふーん。ええ、そうです。と、いうかやってみたかったですね。はい」
今までやらなかったのに、こういうところでなぜやろうとするのか。自宅だと、若葉ににらまれるから?いや、それとも家族そのものに見せたくないのか?ともかくこいつらの前でやらないでほしい。後々いじられる。もうお婿にいけない。うん、何を言っているんだおれは。
「うん、じゃあいただくわ」
まあうれしくないわけがないので、俺はされるがまま口を開き、蒼龍の箸運びにより料理が口の中へと入っていく。うん、うまい。
「はぁ…。ほんとはぁ…ですねぇ二人とも」
そんな俺たちを見て、あきれ返ったかのような―もう呆れ尽きた顔つきで飛龍がぼそりと聞こえるようにつぶやいてくる。うん、言いたいことはわかる。だが、蒼龍はそうしたいと言っているんだし、俺も抵抗する理由はないからね。毒見させているわけでもないだろうし。
「なんだぁ飛龍ちゃんよぉ?オメェも望にしたいってか?」
ぐへへとそろそろ酒がまわってきていることがわかる浩壱は、にやにやと若干赤くなった顔をゆがませて言う。
「うーん、そうですね。今後の事も踏まえて、やってみようかなぁ?」
すると、飛龍も悪乗りをしたのか、蒼龍に向かってにやりと口元をゆがませる。ああ、やっぱりからかいスイッチが入ったご様子でしょうかね。
「だーめ!だめ!練習ならそこのじんべえさんとやったらどう?」
「甚平さんって俺の事?ねえ、とうとう名前でも呼んでくれなくなったの?」
そんな飛龍に対して呆れたようにいう蒼龍に、キヨが不服そうに反応を見せる。キヨ、お前はそういうキャラ付され始めてるんだよ。察しろ。
「えー。なら自分でたべますー。まったく、蒼龍は冗談が通じないわねぇ」
飛龍はそういうや否や、グラスに入った酒をごくごくと飲み干した。と、いうかさっきから気になってはいたが、飛龍は酒のペースがなんだか早いような気もする。以前の蒼龍はかなりきわどい状態―性格がおかしくなったゆえに、また介抱しなければならないのかと嫌な予感が走る。
「酒は…ほどほどにしないとな。こわいこわい」
さすがに急性アルコール中毒になられても困るので、飛龍に何気なくやめるように独り言を俺はつぶやく。だが―
「誰のせいだと思ってるのよ…」
と、小さな声でそう聞こえてきた。
*
料理も美味ゆえか結構速いペースで進み、ふと周りも見れば食べ終えた様子。時刻を見れば9時半を過ぎたころ合い。約一時間で済んでしまったようだ。まあ飯を食いながらべらべらと本日の振り返りパート2なんかやってれば、酒と合わさり食事が進むのは間違いないと思う。
「あーおいしかったなぁ。うーん。ふへへ…」
だいぶ満足が行った様子の飛龍をはじめ、艦娘たちも表情には堪能した様子が見受けられる。強いて不服そうな顔をしているのはヘルブラザーズくらいだが、奴らの事だ。どうせ酒がたりねぇ!もっと寄越せ!的な何かだろうし、放置しておけばいいだろう。
さて、飯が食い終わればここにはもう用はない。俺たちはそれぞれ靴やらぞうりやら下駄やらを吐き、外へと出た。
「しかし、食事の際に酒を飲んじまったし、これは風呂に入るとぶっ倒れるフラグだな」
正直な話、今日の疲れを湯水に溶かしてしまいたいのは理解してもらえるだろうが、厄介な事にアルコールが入ってしまっている。すなわち風呂もとい温泉に入れば体中にそれが回り、ぶっ倒れること間違いなし!―とは言い切れないせよ、危ないのは明確だろう。特に実のところ、俺はそういう経験がないわけではなく、二の舞にならぬよう全員にくぎを刺しておく。
「そうですね。でもシャワーは浴びたいなぁ。かなり汗かきましたし」
それもそうだろう。京都は盆地で、夏はクソ熱いことは地理を真面目に習っていればわかるはず。一応食事前に数人―女性陣はシャワーをささっと浴びたようだが、もう一度、今度はゆっくりとシャワーを浴びたいだろう。
「じゃあ、ここらでいったん解散だな」
「せやな。じゃあ夕張、俺たちは部屋に戻ろうか。PCに写真を転送しないと」
何故俺たちはダメで統治達は許されたのが疑問でいっぱいではあるが、同室である統治と夕張は近くの階段から二階へと上がっていく。それに乗じて、ヘルブラザーズは「売店で酒を買ってくる」と言い残し、その場を離れていった。
「私たちも上がりましょ?シャワー浴びたいし」
どうやら蒼龍は酒の事もあり、また汗ばんでしまった様子。今回自重していたように見えたが、体が火照るのは仕方がないだろう。飛龍も結構酔っているようで「はぁーい」と呂律がまわっているかいないかきわどいラインで返事をした。
「おいおい、大丈夫かこいつ。うーん、俺はちょいと二人の様子を見つつ、部屋へと戻る。七星もくるか?」
こういう時はけっこう気の利く、キヨらしい反応を見せ、飛龍の近くへと歩み寄る。足取りがふらついている飛龍に対し、ついにぼけっとしている飛龍に対し肩を貸し始めた。
「だから言ったによ…。疲れにも酒は効くんだよ…。よし、んじゃぁ俺も肩を貸すわ」
とりあえず飛龍に俺も肩を貸して、俺とキヨはいっせいのと足取りをそろえて歩いていく。蒼龍も心配そうについてきて、エレベーターへと向かったのだった。