12月にしては珍しくだいぶ温かいから、ありがたいです。
咲の話題ですが、気が付いたら準決勝が終わってました。
なかなか最近原作を追えてないから、どっかで時間取って単行本一気読みしたいっすね。
シノハユは手を付けてないけど、どうなんだろうか。
可愛いアラすこやんが出るなら見ようかな。
続きです。
散々じらして、引っ張って。
満を持しての発表と言ったところか、竜華はしたり顔でウチの反応を待つ。
ここまでドヤ顔されると、なんだかくすぐったいというか、可笑しな気持ちになってまうな。
ちなみに、ウチはこの顔と空気が嫌いやない。
「妙にもったいぶると思ったらそういうこと」
「なんや、嬉しくないの?待ちに待った依頼やで?仕事や仕事!!」
どうやら、りゅーかスペシャル大先生はウチの薄い反応が気に入らんらしい。
先生はもっと大げさにリアクションが欲しかったみたいやな。
「いやいや嬉しいよ。うれしゅーてかなん」
「ホンマ?」
「嬉しすぎて涙出る。千載一遇のチャンスに胸が震える」
「そ、そんなに!」
「あ、涙出そう。出るぅぅ」
「よしそれじゃあ一発泣いとく?」
振り上げられる右手、ニコニコしとるのに目が笑ってない竜華。
「や、やめ!ごめんって!!そんなことしたらウチ死んでしまう!」
「やったら白々しい演技やめ」
「流石にばれたか」
「そもそも怜が泣いたとことか、ここ数年見たことないんやけど」
「失礼な、割とあるで。近々なら昨日」
「な、何があったん?」
「バナナ食べてたら、上半分が床に落下した件や」
「そんなんで?! ウチの心配返してや!」
「ま、食べたけど」
「食べたんかい!!」
ところでこの種のやり取りで必ず話題に挙がるのが“3秒ルール”やけど、
ウチはこのルールを考えた人間は素晴らしいと思う。
何が素晴らしいかって、3秒のレンジが厳密やないとこが素晴らしい。
このルールの下では“落としてから3秒”と“落下に気が付いてから3秒”が同一に扱われる。
例えば落ちてから時間が経った食べ物でも、『3秒ルールやからセーフ』って適当に言っておけば、なんとなく汚くない気がする、っちゅうありがたい魔法のフレーズなんや。
ちなみに竜華にこのことを言ったら、『この家で落ちたもんは無条件で食えんから関係ないわ』って引っぱたかれた。
「で、話飛んでしもたけど、肝心の依頼は?」
「もうすぐここに来るで」
「来る?」
「うん。実は依頼人がもうすぐここに来ることになってるさかい」
「なるほど、それも込みで今日ここに来たんやな」
「そういうことや」
「りょうかいりゅーか」
「じゃあ、それまでにおもてなしの準備せな」
竜華は、改めて事務所の中を片付け始めた。
片づけるっていっても、モノが少ないから特にやることないんやけど。
「そんな今さら悪あがきみたいに…ええやん、適当で」
「多少のボロはしゃーないとして、できればそういうのって綺麗にしときたいやん」
「なんやそれ生娘じゃあるまいし…」
「アンタは一体何の話をしとるんや…って誰がボロやねん!!」
「とりあえず、用意できるものは、と…」
「スルー?!」
竜華はからかうと反応が面白いなぁ。
竜華コンピューターを通すと、どんどんいじりネタを出力してくれる。
ここにセーラがおればさらに竜華PCがアップデートされて、動作(テンポ)も良くなる。
まぁ、竜華の言う通り、お茶くらいは出さないかんな。あ、お茶ってウチにないな。
今から買いに行くか…ちょっと時間ないか。
「はぁ…で、なんか依頼人に出せるもんあるの?怜」
「ないわそんなもん。事務所の近くの小川産のお白湯でよろしければいくらでも」
「いや…」
「あ、淹れるもん?コップは一応あるな。ウチのと、竜華にもらったやつが一つ…合計二つ」
「そういうことやなくてな」
「?」
「さすがに依頼人にはちゃんとしたもてなしをするべきやと思うで。いくらお金ないいうても限度があるで」
「……」
「これで依頼人が気分害して、帰ってしもうたら損やろ?元も子もないやん」
言われてみれば。ウチは我慢できても、もしかしたらこの事務所の有り様に耐え切れん人もおるかもしれん。
ウチとは全く縁のないアッパークラスの人…お嬢様とか、政治の先生とか…とんとその状況が思い描けんけど。
そもそもそういう人がウチなんかに頼りにするとは思えんけど。それでも。
「そう、やな。この依頼でもし、まとまったお金入ったら…最低限のもんは買うわ」
「そうしよ、それがええ!」
「でも買い物なぁ…色々考えるのめんどくさいような…」
「大丈夫、ウチも一緒に考えてあげるさかいな」
「わざわざ外出歩くのがなぁ…それに移動手段が…」
「セーラも呼んだる!」
「お金が…」
「それを今から稼ぐんやろ!」
*
怜には無精グセがある。面倒くさがりというか、大雑把というか。
それは身体のことを考えた、『省エネ行動』から来とるんやろうけど、
それとは関係なく元の性格が几帳面とは言い難い。
この事務所で言えば、始めに掃除したっきり、ほとんど手をつけてへん。玄関を始めに、天井、壁、床、インテリア、一事が万事。
リフォームが必要な部分がほとんどにもかかわらず、マザーテレサもビックリの無関心や。
よほどの事情がなければ動こうとせんし、動いて何かを使ったら使ったで使いっぱなし、出しっぱなし置きっぱなし任せっぱなし。
この事務所は元々物が少ないから、なんとなく綺麗に見えるけど、普通の女の子の部屋に怜を住まわせたら、さぁ大変。
園城寺怜の辞書には『整理整頓』なんて言葉は、生来載ってないんや。
外見にこだわらない分、見た目で判断したりすることはないっていいとこがあるけど、女性らしさが皆無でウチとしてはちょっと心配やったりする。
せやからこうしてたまに来て掃除を手伝ったり、 花を持ってきて少しでも見栄えを良くしたりしてフォローしてあげてる。
無精癖以外に怜の特徴を挙げるとすると、妙に凝り性なとこやな。一度ハマったら止められへんタイプや。
自作の冷蔵庫もそうやし、推理とかもきっとそうやと思う。一度集中したら辞められへん止められへん。
あと、頑固な時は頑固。いったんそれと決めた怜を動かすには、それ相応の覚悟が必要や。
「…ここ、なの、かしら…?」
「キャプテン、こんなボロっちいとこに本当に依頼するんですか?」
「でも、お友達の紹介だし…」
お、あの子について話しとる間に、いよいよ依頼人が来たみたいやな。
「竜華、外で声が聞こえる」
「うん。ちょうど来たみたいや。怜はそこで待っとき」
さて、怜。
お仕事―――――頑張ってや。
おわり。
そういえば、お気に入りに登録してくれた人がちょっぴり増えました。
こんなのろーりした更新の小説を読んでくださってありがとうございます。
年内に、このパートは少なくとも終えたいっすね。