名探偵 怜-Toki-   作:Iwako

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欺きの折り紙、最終話

竜華 VS おさげの勝負の行方は。

そして、怜に秘策はあるのか。





三巡先 欺きの折り紙⑩

『―――――――87.5%。』

 

  『人生三回目の――――神頼みや』

 

 

 

そう言ってのける怜の声色は、冷静ではあった。

けど、オレには怜の言ってる意味がさっぱり分らんかった。

 

竜華が、意を決して、一枚を引く。

残ったカードは、怜が片づけた。もう後戻りはできんぞ。

 

「はい、いいわね。それじゃあ、結果を見てみましょう」

「ううっ…あかん、もうダメやぁ」

 

「じゃ、審判さん、最後にひっくり返してもらおうかしら」

「……」

 

自分の勝ちを確信しとるからこその余裕やろうけど。

対して、怜はなんでそんなに落ち着いていられるんや。

 

「んじゃ、竜華のから……【3】やね」

 

竜華の選んだカードは【3】。ここにきて、【3】を引くとは。

 

「ふふっ、最後の最後までついてなかったわね。3なんて」

「もうおしまいやぁ…一千万の借金とか、ウチには背負いきれへんよ…」

「大丈夫や、りゅーか。そんなことさせへんから」

 

怜は間違いなく、借金ができたらオレら3人で割るつもりやろう。

もちろん、オレだって、そのつもりでおる。

こんな勝負を受けたんはアホやとは思うけど、

それでもこいつらだけにつらい思いはさせられへんからな。

 

「美しい友情ね。こっちが見習いたいくらいよ」

「でも、そろそろ幕切れよ。折り紙をひっくり返してもらえる?」

 

(ふふ……正直、初めは何か策でもあるのかと思って警戒してたけど)

(まさかの無策とはね。ある意味予想外というか。予想通りというか。杞憂だったみたいね)

 

(そのまま大人しく300万で済ませとけばよかったのに、見栄が高くついたわね)

(思いもよらない臨時収入が入ったわ、ホントにバカなコ)

 

「……」

「ふふっ、残念だったわね?」

「そうでもないで」

 

怜は、おさげの折り紙を、テーブルに思いっきり叩きつけた。

 

「ウチらは、賭けに勝った。」

 

 

「何をわけのわからないことを――――って、えっ――――?」

 

 

 【1】

 

 

「え、うわっ、なに、えっ、【1】なん???? やったら、ウチの勝ちやん!!」

 

(はぁっ、な、なにどういうこと?!)

 

「えー、皆さん見ての通り、清水谷竜華さんが【3】、おさげさんが【1】で」

「清水谷竜華さんの勝ちです」

 

「そ、そんなはず―――――」

 

 ・・・・・

「そんなはず?」

 

「っ…」

 

や、やった! なんやよく分からんけど竜華がやった!!

【1】やったら、竜華が何を引いても勝ちやってことや!!

これでオレらの借金はチャラになったぞ!!

 

「ま、待った!」

「何ですか?」

 

(お、おかしいわ。私が『引いた』のは【9】だったはず。だって、この紙は確かに―――――)

 

「ほ、他の!! 他の折り紙は?!」

 

そう言って、おさげは強引に残りの6枚の数字を確認し始める。

残った折り紙は……ん、あ、あれ、おかしいで?

 

「……ふっ、や、やっぱりね」

「ええと、残りは…【1】【2】【4】【5】【6】【7】【8】??」

「お、おいなんで【1】が残っとるんや?」

 

しかも、【9】がない。

んで、おさげが引いたのは【1】やったから――――つまり、最初から【1】が2枚あって、【9】はなくて??

どうなっとるんや??

 

「園城寺さん、これはどういうことかしら?」

「……」

「言ったわよね、イカサマがあった場合は、勝負自体『無効』だって」

「だから、残念ながら、この勝負は認められないわ!」

 

鬼の首を取ったように捲し立てるおさげ。

けど、怜は顔色一つ変えへんで、おさげにサバサバと言い返す。

 

「イカサマ?」

 

「だって、数字が1~9まで揃ってないんだから、勝負自体無効に決まってるわ」

 

「この数字を書いたのは、おさげさんやったよ?」

 

「ぐっ、そ、そうだけど!! 私は確かに1から9まで書いたでしょ??」

 

「さて、どうやったかなぁ。なぁ、セーラ、竜華。覚えてる?」

 

「ど、どうやったかな?」「オ、オレも記憶が曖昧やな…」

 

「あ、あなたたちねぇ…」

 

無理やり話を合わせるオレと竜華。竜華なんか、こんな状況やのに笑い堪えとる。

おさげは怒りに震えつつも、なんとか平常心を保とうとはしとるみたいや。

 

「……百歩譲って、なぜか私が数を書き間違えたとしても」

「やっぱり、おかしいわよね? 普通に考えて。始めに言った条件と違うんだから」

「いや、問題ないはずや」

「どうしてそう言えるのかしら」

「だって、数の勝負には変わらんし。誰かが、誰かの引くカードを操作したとか」

「そういう話やったら別やけどな」

「……」

「結局、おさげさんが9枚の中から、【1】を取った」

「竜華が【3】を取った」

「それだけや」

 

おさげは、それを聞いて大きく息を吐いた。

苛立ちが、募っているのが目に見えて分かる。

 

「今まで私はこれでも『公平』な条件で戦ってきたわよね?」

「……」

「そんな私が、どうしてこんな大事な勝負だけ、こんな環境で戦わなくちゃいけないの?」

「返答如何では、私は黙っちゃいないわよ。神聖な勝負を穢した、園城寺さん?」

 

所謂、半ギレ状態。今に爆発しそうなのを、理性で抑えとる。

怜は黙って見とったけど――――――急に笑い出した???

 

「何が可笑しいの? 流石に怒るわよ?」

「ふふっ、あははっ、ごめんごめん。あまりに可笑しくて」

「だから何がよ?!」

「いやいや、アンタみたいな『詐欺師』が『公平』やら『神聖』なんて口にするもんやから」

「ちゃんちゃら可笑しくてかなわへんもん」

「…園城寺さん、名誉毀損で訴えられかねないことを口にしてる自覚はある?」

「なかなか粘るなぁ、おさげさん」

「……」

 

場のボルテージが嫌な意味で上がってきた。

オレは、いつでも怜を助けられるよう、二人の動向を見守る。

竜華は、怜の無事を祈ってか、自然と両手に力が入っとるようやった。

 

「わざわざ折り紙に和紙を選んだり、物差しで毎回カットしてみたり。芸が細かいやん」

「!」

「加えて一発ご祝儀に全勝ボーナス…ここまで条件が揃って、とぼけられると思ったん?」

「……へぇ、あなた、何者?」

 

おさげの身にまとう、空気が変わった。

今までのおちゃらけは仮の姿、きっとコイツの本性は、こっちに違いない。

 

「ウチは、探偵や。探偵、園城寺怜。」

「なるほどね、あの時からなんとなく嫌な予感はしてたけど」

 

あの時、っていつや?

 

「ほら、そこの茶髪のコが私に殴りかかろうとしたでしょ。アレをあなたが止めたときからよ」

「オ、オレのあれがなんか関係あったちゅうんか」

「もち。あそこで暴力くらって、診断書貰えばさらにこっちが有利じゃない」

「連帯保証云々の話もあったしね」

 

それで、ワザとオレを怒らせたんか。

思い出すとふつふつと怒りが湧いてくる…

けど、これすらコイツの戦略の可能性があるってことか。

 

「で、おさげさんは結局なんなん?」

「私?私は久。職業、詐欺師。」

「しょ、職業が詐欺師?!!」

「ふーーん……珍しい仕事やね」

「あなたに言われたくないけどね」

 

そういって、おさげはついにおさげを解いた。

黄色のゴムを指でクルクル回しながら、もう片方の手で髪を整え始める。

 

「あーポカっちゃったかぁ。こんなにうまくいったの久しぶりだったのになー」

「おい…お前、そんな余裕こいてられるんか?」

「ん?」

「オレらが、お前を逃がすと思っとるんか、と聞いとるんや」

 

こいつは、許さん。竜華を騙して金を毟り取ろうとしたのもそうやし、

そもそも、詐欺師なんて犯罪者も同然や。ここで、叩きのめしとかんと―――――

 

「あー、ごめんごめん。悪かったわ、謝るから、ね?」

「だから――――――」

 

許してよ、っと言いながらテーブルクロスをオレに投げつけ―――――

視界を奪われとる間に、おさげは……怜を人質にとっとるやと?!!

 

「おい、怜を離せ!!」

「何もしないわよ。暴力は嫌いだし」

「ナイフを首に突きつけとる人間のセリフが信用できるか!」

「そうや、はよ怜を離して!」

「……そっちこそ、黙ってくれる? 私が何もしないのは、あなたたちが何もしないのが条件よ」

 

脅すような低い声で、ナイフの先端を怜の喉元に近づける。

 

「お前……どこまで腐っとるんや」

 

「はいはい、お説教は聞き飽きたわ。こうしましょう、私は園城寺さんを解放する」

「そして、あなたたちは私になにもせずに解放する。これでどう?」

 

「やったら先に怜を離して!」

 

「だから、主導権はこっちにあるのよ?」

 

「……竜華、セーラ。もうええって。とりあえず、久、やったっけ」

「うん?」

「目の前で借用書、まず破いてや」

「あぁ、そうね。それは約束だしね」

 

すると、器用にもおさげは片手で借用書をびりびりに破いて、その場に捨てた。

空いとる方の腕で、怜の首を締め付けたまま…ホンマに器用な奴やな。

 

「それで十分やろ。もうこの人解放したげて」

「怜?!」「なんでや!!」

「…警察に突き出しても、なんの証拠もないしな。ウチらにどうすることもできへんよ」

「でもな…」

「大丈夫や、この人は金にならんことはせんと思うで。ウチを殺してもしょうがないし」

「あら、詐欺師冥利に尽きる言葉をありがとう」

 

「じゃあ、清水谷さん、江口さん。ここから後ろにそのまま、30歩ほど下がってくれる?

  江口さんは怖いから、加えてその場に伏せることも要求するわ」

「……怜になんかしたら、殺すからな」

「約束するわ」

 

30歩、ゆっくりと下がる。15メートル近くは下がったか、二人の様子ははっきり見えるけど

ここから走って逃げられたら、隠れるところの多い参道付近、加えてこの暗闇じゃ見つけるのは難しいな。追いかけて、一発ぶん殴ってやりたいとこやけど。

 

「…園城寺さん」

「何?」

「一個だけ教えて。折り紙のすり替え、いつ、どうやってやったの?」

「アンタが借用書、細かく確認しとるときに、思いついたけどな」

「……あの時。はぁ、今回はやられたわ。けど―――――」

 

 

次回はこうはいかないわよ、と言い残して夜の闇に消えていった。

 

 

 

  *

 

  *

 

  *

 

  *

 

  *

 

 

帰路、セーラの車の中。

セーラの車は前に三人乗れるタイプのバンで、後ろは荷物を積んで置けるスペースや。

運転がセーラ、助手席がウチ、そして一番狭い真ん中には怜。

体格を考えると、このフォーメーションがバランスがええ。

怜フォーメーションってやつやな。

 

「……ホンマ、二人ともごめんな今日は」

「ええって。でも気をつけなあかんで、竜華」

「ま、万事解決したし。ええやん、セーラ」

「……そうやけど、怜。お前も色々甘すぎるぞ」

 

セーラは、おさげのことが大嫌いみたいやから、かなり不機嫌やった。

と言っても、明日には元に戻っとるやろうな。それがセーラのええところやし。

 

「ま、無事やったから、それは何よりや」

「竜華を置いて二人だけで楽しんでたオレらにも責任はあるしな」

 

舗装されていない田舎道は、ガタガタ音がなるんが普通やけど

セーラのバンはタイヤがしっかりしとるせいか、こんな砂利道でも安定しとる。

三人で窮屈なこと以外は、完璧や。まぁ、車あるだけありがたいんやけどな。

 

「ところで、怜。お前、そろそろ教えてや」

「ん?」

「う、ウチも知りたい!」

 

なんで、勝ち目0の勝負に勝てたんか、そのカラクリ。

おさげさんがなんで第3ゲームでは10連勝出来たんか、とか。

そもそも、どんなイカサマがあったんとか。気になることがありすぎる!!

 

「やっぱり、ひっくり返してシャッフルしても、

どこにどの数字があるかお前ら二人には見えとったんか?」

「まさか。そんなん、エスパーでもない限り不可能や」

「ならなんで?」

 

赤信号で、車が止まる。田舎町の信号やから、無視しても大勢にほぼ影響はないんやけど。

そうは言っても、やっぱり守るもんは守らなな。

 

「これは……気づけば、なんやそんなことかって感じの、

 トリックと呼ぶのも恥ずかしいようなモンやけど」

「ふんふん」

「竜華、そもそも『未来映し』ってどんなゲームや?」

「えっと、先に、一枚のカードを予言して当てたら、勝ち。一枚神経衰弱とか言ってたしな」

「そうやな。やったら、『1枚分かれば』十分やってことや」

 

セーラはお腹が空いたんか、そこらのコンビニに一旦車を止める。

何か飲むもん買ってくるって行って、すぐに戻ってきた。

 

「1枚だけ、言われてみればその通りや…」

「でも、その1枚だってオレには記憶できへんで。模様だってないし、裏返したら一緒やん」

「うん、シャッフルしたらもう、見つけられへんよ…」

「いや、『模様はある』んや」

「えっ?」

「模様ちゅうか、目印やけどね。確実に、1枚だけははっきり分かる」

 

怜は、ペットの烏龍茶をごくっと飲んで続ける。

一口で、500mlの半分いくってどうなっとるんや。

 

「はっきり?」

「ぷはっ…ん、そうや。真ん中だけはな」

「真ん中……?」

「―――――そうか。怜、分かったぞ」

「分かった、セーラ?」

「え、えっ、ちょっと待ってウチを置いていかんとって!!」

 

真ん中だけって、なんで?

別に他のパーツと変わらへんやん、囲まれとるくらいで―――――あっ。

 

「え、あ、もしかして……」

「単純なことなんやけどな。あの薄暗い中では、目を凝らして見んと気が付かんかもな」

「それで『物差し』で切ったちゅうわけか」

「そうや。真ん中だけは、『周りの淵が、すべてギザギザ』なんや。

 ただ、これはよく見んと分からん」

「そのギザギザが目立つように、わざわざ『和紙』っぽい折り紙を選択したんやろうな」

 

セーラは緑茶、ウチはミネラルウオーターを飲みながら、話を続ける。

コンビニやのに、客はおらず、車もウチらのしか止まってへんかった。

 

「もしかして、『毎回』折り紙をリセットしたのも…?」

「そうや、竜華の話を聞いて、すぐに違和感を感じたのがそこやった。

 一枚当てるだけやったら、もう一回全部裏返してシャッフルしてやり直したらええ話やのに」

「確かに…」

「まぁ、やないとおさげが当てる数字が、毎回固定になるからな。

 2、3回ならともかく、10回連続やと流石に怪しいからな」

 

セーラは車を発進させた。次に向かう先は、ガソリンスタンドや。

 

「もうここまで言えば分かると思うけど。第一、二ゲームでの連敗は、

 全部おさげの筋書き通りやった、っちゅうことやな」

「始めは、ベースの金額を低めに設定して、竜華を気持ちよくさせておいて」

「第三ゲームに、一気にベースを釣り上げて。

 そこで、まとめてそれまでの負けを回収しつつ、多額の借金を背負わせる」

「まぁ、竜華が二連勝したのは、竜華の実力やろうけどな。

 おさげさんだって、真ん中以外のカードは分からんわけやし」

 

「ホンマに、恥ずかしくて穴があったら入りたい…」

 

「例外ルールとか言って、ご祝儀、特に全勝ボーナスなんて完全に第三戦のためにあるようなルールや」

「相手は相当手慣れとるな、コレ」

 

「確かに、全然違和感は感じんかった…」

「しかも竜華は優しいさかいな。ウチがおさげやったら、そこに徹底的につけこむ」

「例えば、可愛くおねだりしたりとか、生活かかってるんです、とか」

 

「う、それっぽいこと言われたかも…」

 

「仕舞には、相手のことを可哀想とか、悪いのは自分や、なんて思っとったんやない? 」

 

「返す言葉もないです…」

 

「ま、それがプロの仕事ってやつなんやろうな。詐欺師だとしても」

 

落ち込んどる間にガソリンスタンドに着いた。

レギュラー満タン、入りまーす…ウチのココロも、マンタンにしてくれへんかな?

 

「それで怜もプロの仕事をしたわけか!」

「とりあえず、借金だけはもうこれ以上勘弁やし、なんとかしようと思っただけや」

「珍しいね、怜が依頼料なしで動くんも!」

「いや、竜華から取るよ?」

「ええっ?! いくら?!」

「一千万」

「まさかのおさげ並みに極悪?!」

 

美穂ちゃんにすら百万やったのに!

冗談もほどほどに、怜の解説は進む……じょ、冗談よね?

 

「で、まぁタイミングはおさげさんが、ウチが拇印を捺した借用書を確認しとる時。あの時、手を拭くティッシュ貰ったやん?」

 

「うん、え、まさかあの時??」

 

「そうや、毎回カットして、リセットしとるってことは、ゴミ箱が絶対あると思ってな」

「ばれんようにするの大変やったけど、『周りの淵が、すべてギザギザの【1】の折り紙』をそこでキープしたんや」

「結局、あの最後の数対決になった時、先攻権をあっちが要求すると思ったんや」

 

「へぇぇ…お前、あの一瞬でそこまで…」

 

「で、そうなったらこっちがどのカードを引いても同じ、あっちが引くカードを操作するしかないと思ってな」

「ま、もしかしたらない可能性もあったけど、すぐ見つかったのは運が良かったな」

 

「なるほど…」

 

「それでウチが審判としてシャッフルする時、一瞬のスキをついて、【9】とキープしておいた【1】を入れ替える」

「あとは、勝手におさげさんが【1】を引いてくれて、ジ・エンドや」

 

ガソリンがマンタンになったから、ようやっと怜の家に向かう。

もう10時を回っとる、こんなに遅くなるとは思わんかった。

 

「思い出してみれば、おさげの奴、【9】を折り紙の真ん中に書いとったな」

「ほんとや」

「ウチは正直、笑いそうやったで? 気づいてないフリするんも大変や」

「こっちは、正直怜が頭おかしなったんかと思ったで」

「ウチも。今でこそ、止めんで良かったと思えるけど…事前に教えてくれれば良かったのに」

「アホ、竜華とセーラが知っとってその安堵感が伝わったら、

 それこそ向うが不審に思って、ゲームを受けてくれへんなるよ」

 

車が、止まる。怜の家…探偵事務所に着いた。

この辺にはホンマに、何もないから、文字通り真っ暗や。

今日は月が見えるからええけど、ない時のことを思うと……アカンアカン、寒くなってきた。

 

「今日は、家具のことから、色々お世話になったで、ありがとう二人とも」

「ええって、色々スリルもあってなんやかんや楽しめたデー」

「胸にグサッとくるんやけど…」

 

そう言えば、ロシアンルーレットも外れ食べさせられるし、今日は厄日やなホンマ。

 

「いやいや、なんやかんや、最後は竜華のおかげなんや」

「え?」

「やって、最後のあのドロー。あれは、決して必勝やないんやで?」

「え……あっ」

 

ウチが引く前に残っとった8枚は、

 

【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】

 

や。もし、これで【1】を引いとったら――――――

 

「もし竜華のが【1】やったら、ウチの計画はすべて水の泡、勝負は無効で借金300万が確定するところやった」

「やから、ありがとう竜華。確率7/8……87.5%を引き当ててくれて。」

「と、ときぃ……」

 

 

涙がじんわりと出てきた。

たまらなく嬉しくって、怜をぎゅっとすると、怜も抱きしめ返してくれた。

セーラは、頭を優しく撫でてくれた。

 

 

  *

 

 

「それじゃ、またな。怜」

「本当にありがとうね、怜」

「んーん。おやすみ、りゅーか、セーラ。」

 

 

「…それじゃ、ここでええな?」

「ありがとうな、セーラ。ウチまで送ってくれて」

「ええってことや。ほななー」

「うん、セーラも元気でね。また会おね」

「あ、そういえば、泉が今度渡したいものがある言いよったで」

「ホンマ、なんやろ?」

「またそん時言うわ。んじゃ、おやすみ」

「おやすみー」

 

 

今日は、ちょっと二人に恥ずかしいところ見せてしまった。

ちゃんと二人を支えていけるように、二人のそばに居られるように、もっと精進せんといかんね。

 

けど、あの詐欺師のおさげさん――――― 一体、何者なんかな。

次あったら、ちゃんとリベンジせんとな。

よし、そうと決まれば情報集めしよう! もしかしたら、周りに知っとる人がおるかもしれんし!

 

風越女子並みのお得意先も見つけんといかんし、やることはいっぱいある。

よし、頑張れ、頑張るぞ、ウチ!!

 

 

 

 




三巡先のお話は以上です。

折り紙のトリックは単純なんですが、実際にやるとかなり有用なテクニックだったりします。主に、飲み会とか合コンのゲームなどでですが。

久は、ペテン師、イカサマ師のポジがよく似合うと思います。
(もちろん、大好きなキャラです)
いい意味で、物語を動かしてくれるキャラクターになっています。



ここまで、一巡先と、二巡先は、某サイトで書いてたものを手直ししただけったのですが、三巡先は、途中から構成し直したので、思ったより時間がかかってしまいした。

読んでくださった皆様、ありがとうございました。

あと、お気に入りが50件超えました、滅茶苦茶嬉しいです。
娯楽のようなミステリーのような何とも言えないお話ですが、
これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

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