簡単に『未来映し』のルールを。
おさげさんの―未来映し―ゲームルール
<基本ルール>
・折り紙を『井』状に9分割し、1~9の、9つの数字をそれぞれの場所に書き、
その後切り分ける。
・紙を裏返し、シャッフルする。
・先攻後攻を決める。先攻から、一枚づつ順番にカードを捲っていく。
<詳細>
・捲る前に、好きな数字を宣言する。宣言通りの数字であれば、
『勝ち』でその時点で1ゲーム終了。
・外れれば、そのまま順番が後攻に移る。後は、当たりが出るまで、
あるいは最後の1枚になるまで、ゲームを続ける。
・ここまでが『1ゲーム』と呼び、これを10ゲーム繰り返す(これが1セット)。
※1ゲームごとに、折り紙に記入し、切り分けて、
裏返し、シャッフルする、という作業は必要。
<未来映し-料金表->
・料金は、1セット(10ゲーム)ごとに清算する。
・10ゲーム中の「勝ち」と「負け」の回数によって変わる。
・例えば、5勝5敗なら、お互いイーブン。料金のやり取りは発生しない。
・もし7勝3敗で勝った場合、その数の差の、4ポイント入手できる。
・あとはそのポイントに、事前の交渉で成立したベースの掛け金を掛けて、清算する。
Ex ベースが1万円で、7勝3敗で勝った場合は
⇒ベース1万円×4ポイント=4万 が貰える金です。
★例外 以下の二つは例外です★
・『お祝儀』
カードを一発で当てたときに貰えるお金。一回につき、ベース分貰える。
実質、一発ができるのは先攻のみなため、1セットでお祝儀のチャンスは5回。
・『全勝ボーナス』
1セットのゲームで10勝0敗だった場合、清算後、
そのゲーム内で本来貰える額の10倍が貰える。
※その他の条件は、交渉次第で決めてね☆
ベース1000円で始まった初回限定『未来映し』。
結論だけ言うと、ウチはこれに大勝やった。
「あちゃ~それじゃあ、合計7千円、貴女の勝ちってことで」
8勝2敗、しかも1ゲーム目にいきなり一発引いて、ご祝儀までついとるさかい、
その分含めて7千円の勝ち。
あれ、ウチ運良すぎやない?
ちなみに、言い忘れとったけど、先攻後攻はジャンケンで決めて、
そっからはゲームごとに交互に入れ替わる仕組みや。
「はい、どうぞ」
おさげさんからお金を受け取る。千円札を7枚、合計7千円。
ひ、人からお金をこうやって貰うのって、なんか不思議やな…
「いや~強いわね、あなた! ここまでぼろ負けしたのは久しぶりかも」
「そ、そうなん?」
「だって、普通にやっても5-5、あるいは6ー4、4-6ばかりよ。
たまーに3-7とかあるけど」
「8-2とかそうそうないわよ。しかもお祝儀付きだなんて」
あーあと言いながら金庫を奥にしまうおさげさん。
ダイヤルキーでロックがかけられるタイプの金庫ってあるよな。
あれって、アレごと持ち去られたらどうしようもないから、ウチは絶対に持ち歩きはせん。
「ん~このままじゃ悔しいわぁ。せっかくだから、もう一回やらない?」
「もう一回…?」
「ええ。だってあなたばっかり儲かってずるいわよ。私にも儲けさせてよ!」
あの、おさげさんが儲かるってことは、ウチが損するってことなんやけど…ふふっ。
お母さんにおねだりする子供みたいなことを言うもんやから、微笑ましく思ってしまった。
妹だけお菓子買ってもらってずるいから、私にも買ってよ!みたいなな。
「もう一回くらいならええよ?」
「本当、ありがとう!」
「ただ、同じだとつまらないから、ベースをちょっとだけ上げてもいい?」
「どれくらい?」
「うーん…あなたに損をさせることが目的じゃないから…まぁ、5千円とか?」
どっちかが儲かったら、どっちかは必ず損するの分かっとるやろうに、面白いこと言うなぁ。
もうちょっとだけ、付き合ったるか。5千なら、もし仮に3勝7敗で負けても2万で、
さっき7千勝ってるから、損害は1万3千…これなら、大敗しても許容範囲やろ。
「ベース五千円な。了解したわ」
「やたっ、それじゃあ二セット目、開始よ!!」
*
「…んー、あれ、ここはどこや?」
あれ、今日はそもそも何をしよったんやっけ…怜の家行って、荷物運んで…あー思い出した!
オレと怜は、河原で寝そべって色々話をしよったら、そのまま寝てしまったらしい。
って、寒っ!もう夜やん!!
「おい、怜、起きろ!!」
「んぅ…?」
「もうこんな時間になってまったぞ!」
「んんー…りゅぅかあぁ…」
「何寝言かましとんや!」
って、そうや竜華はどこや?
当たりを見回してみる。空が暗んで、ほぼほぼ真っ暗や。
特に俺らが寝そべっとった場所なんか、川べりやから明りなんてない。
祭りのとこに戻らな、竜華も探しとるかもしれんしな。
「とりあえず、怜を起こすか…おい、怜!」
「zzzz…」
「起きる気ないなコイツ…しょうがない、奥の一手使うか」
これだけは使いたくなかったけど、しゃーない。竜華のためや。
「おい、怜。メシやぞ」
「えっ、今日のご飯は何?!……メシは?」
「おう、おはよう怜」
「ごはんは?」
「見ての通りや、川に魚はおるかもしれんで」
「……ウチを騙したな。もうセーラとは口聞かん」
「ごめんって、ほら竜華探しに行こう、な?」
「嘘つくセーラは嫌いや」
はぁ、これだからこの手は使いたくなかったんや…
寝起き&腹減り状態の怜はめんどくさいからな。
こうなったらもう仕方ない、奥の二手を使うしかない。
「竜華が、後でお好み焼き買ってくれるって言よったで」
「ホンマ?!」
「お、おぅ。オレに二言はあっても竜華にはない」
「そうか、やったら行くわ」
竜華…すまんな。ちゃんと折半はしたるさかい。美味しいお好み焼き食べに行こうや。
*
「く・や・し・い~~~!!!」
「あ、あはは…」
「なんで、あなたってばこんなに運がいいわけ?」
「ま、まぁ時の運ってやつやろか…?」
「あり得ないわ…でも約束は約束よね…お金出すわ…」
ベースアップ後の二回戦も、さっきくらい程の大勝ではないけど、7-3で勝った。
ベース(5000円)×3ポイントで1万5千円の勝ち。
まぁ、一回だけおさげさんに一発があったからご祝儀分引いて、丁度一万円の勝ちや。
「はい、一万円よ…」
「ど、どうも」
「はぁ…こちとら商売あがったりよ。あなたに会うんじゃなかったわ」
まぁ、実際そうやろうな。だってゲーム時間は実質計30分くらい。
それで1万7千もスったっていうのは、普通に商売しとるものの
感覚からしたらとんでもない損害や。
まぁ、こっちは逆に大儲けやったわけやけど…ま、日ごろの行いってやつやな。
「ねぇ、もう一回だけ、もう一回だけやらない?!」
「ええ~もう暗なってきたし、なぁ」
それに、怜やセーラもそろそろ心配しとるころや。
このゲットしたお金で、お寿司でも食べに行けるなぁ。
「ね、あと一回だけ!本当に、すぐ終わるから!!」
「でもなぁ…」
「じゃ、そうだ! 例えば、次あなたが勝ったら、
臨時ボーナスで最後に貰える金額2倍にするわ!」
「え?」
に、二倍?じゃあ、もしベース5千で6勝4敗でも2万儲かるんか…
「もちろん、それ私には適用されないわ」
「なんなら、ご祝儀が出たら、それもベースの二倍出す!」
「ね、このままじゃ私も引き下がれないの。お願いよ」
そういって、頭を下げるおさげさん。
そうやなぁ、この人だってギャンブルとはいっても商売なんや。
業種は違っても、同じ商売人として、流石に可哀想になってきたなぁ…
とはいえ、やるならやるで条件はキッチリ確認しとかんとな。
「…本当にうちが勝ったら二倍?」
「! え、ええ!」
「ご祝儀もついたら二倍くれる?」
「もちろん、約束は守るわ!」
さ、ここが西地区のオンナの見せどころやな。
調子いい時は、行くだけ行く、立場が有利な時に出来るだけ良い条件引き出さな。
「…ご祝儀の条件緩和してくれたら、もう一回やってもええよ」
「え、条件緩和?」
「やから、例えば今までは一発目で当てたらご祝儀やったやん」
「でも、先攻後攻の関係で、一発目で当たるのは結局先攻の時だけやん?」
「それを、ウチの時だけ後攻でも一発ご祝儀認めてほしい」
「え、そ、それは…私が先行で一発目外して、次にあなたが当てたらご祝儀ってこと?」
「そうや」
ウチが負ける可能性もあるからな、ここできちんとリスク減らしとかな。
さっきの第二セットみたいに、おさげさんは一発ご祝儀のおかげで5千円負けを減らしとるしな。
しかも二倍貰えるんなら、さらに好条件や。
「さ、さすがにそこまでは…」
「ダメやったら、このゲームはなかったことに―――――――」
「あーーーーーーやる、やる、その条件も飲むから!!!」
渋っとったから、背中を向けて帰るふりをしてやる。
おさげさん、ウチから搾り取ったろうという算段やったんやろうけど
ちょっぴり甘かったな。ウチはそんなに甘い女やないで。
「もぅ、あなたって結構あくどいのね…あ、ただこっちからも一個だけいい?」
「なに?」
「そこまで、リスクヘッジされて…流石に、こっちも一個だけ条件を出したいの」
「あ、もちろん私にだけ有利な条件とかじゃないわ」
「どういう条件やの?」
「条件ていうか、ベースアップよ」
「ベースアップ、ふぅん、いくら上乗せ?」
この時、ウチの心の警戒心は、すっかり溶けてしまっとった。
きっと、心のどこかで、このおさげさんを下に見ていたんや。
「千、5千ときたから…次、1万でどうかしら?」
「1万、な…」
「実際、この金額が元々提示してたものだから、元に戻るだけなんだけどね」
「……ま、ええよ。もう遅いし、サクッといこか。」
「ありがとっ」
やから、気が付けんかった。想定できんかった。
この後、ウチに起こることを。
さて、この後のりゅーかの運命は。