今まで、台本形式で書いてたので、地の文を入れて書くのが
すごい難しい。頑張って慣れたいと思います。
非日常は、突然目の前に滑り落ちてくる。
一瞬早すぎず、一瞬遅すぎず、起こることがもう決まっていたかのように、自然に起こる。
それは、誰に止めることは出来なくて、後はなすがままにその身を委ねる―――――――――
ふと、そんなどうしようもない考えが、頭をよぎった。
胸がチクリと痛んでから、すぐに我に返る。
非日常となった日常に、再び吸い込まれるんや。
「う、ぅわあ!? 女A、どうしたっ!?」
「きゃあああ!!!!」
「な、何が起こったの?」
「お客様、どうされましたか?! こ、これは……」
我に返って、5人の姿が、目に入ってきた。女性が3人、男性が2人。
女Aと呼ばれている女性は、床に、倒れとる。
テーブルから、そのまま横倒しになって、ピクリとも動かん。
必死に呼びかける男は、きっと彼氏。今にも泣きそうな、必死な顔で、女Aさんの肩をゆすっとる。
「え、ど、ど、どうすれば……」
「ちょ、ちょっと。死んでるんじゃないの?! ナニコレ事件?! 早く警察を!」
「はい!すぐにお呼びします。皆さんはここでお待ちください!」
「お、おいっマスター!! 救急車も頼む!!」
「分かりました、直ちに!!」
ちょっと気の強そうな女性と、気の弱そうな女性、この店のマスター。
人のよさそうなマスターは、彼氏さんと女の人に言われて、一目散に電話口に駆けていった。
そして、しばらくしたら警察と救急車が来た。
ウチはずっとドアの前で突っ立っとった。見張りのつもりやった。
警察が来るまで、ウチなりに、事件発生時の様子を頭で思い描いてみる。
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↑向きにカウンター
○|【強女】|○|○|【弱女】|○ 返却口
入 【怜】
口 調理場 【マスター】
「 | 」「【女A】|【彼氏】
二人づつ座れるテーブル席 ドリンクバー トイレ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
カウンターがウチから見て左側に、約6席。そこに気の強そうな女の人と気の弱そうな女――――強女と弱女って略すわ。
右側にテーブル席が二セットあって、女Aさんとその彼氏さんが座っとった。
調理場にはマスターだけやな。ほんで入り口には、ウチ。
店はすこぶる見通しが良くって、ここから調理場のマスターの様子まで、観察できる。
「刑事の弘世だ。関係者はここにいる六名か……マスター?」
「そうでございます……」
「まぁ、死者を含めると、だが……」
「おい……なんだその言い草は」
「おや、失礼した。正確に数えたつもりだったんだが」
「てめぇ……」
美人やけど。見るからに堅そうで、冷徹そうな刑事はんやな。
彼氏さんは、死者という言葉に相当腹が立ったみたいで、事情聴取中、ずっと刑事さんを睨んどった。
事情聴取で分かったことを、メモしてみた。
★事件関係者6名
彼氏…………女Aの恋人。店の常連らしい。今日も彼女とスープスパを食べに来てたって言うてた。
女A…………以下彼女。【被害者】。同じく常連。死因は毒殺。死亡推定時刻はさっきだって聞いたで。
強女…………命名ウチ。この店に来るのは初めてらしい。無料のポスターに釣られたんやろなあ。うまそうに食いおって。
弱女…………確か名前は【宮永咲】。制服着てるからたぶん学生。ご飯ついでに、のんびりと本を読みに来てたらしい。
マスター……以下店員。男。この店の責任者で、マスター。人の良さそうな顔しとるわ。
怜………以下怜。ウチ。
★店内図
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↑向きにカウンター
○|【強女】|○|○|【宮永咲】|○ 返却口
入 【怜】
口 調理場 【マスター】
「 | 」「【彼女(死亡)】|【彼氏】
二人づつ座れるテーブル席 ドリンクバー トイレ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
事情聴取が終わって、再びウチらは集められた。
刑事さんが、これまでの調査結果をもとに、話を進めるみたいや。
「スープの中に毒物が仕込まれていたようだ」
「そ、そんな……」
「一体誰がそんなことを……許さねえ」
「一通り話を聞き終わったので、詳細を聞かせてもらうが。マスターよ、スープの中に毒物が入っていたのだが」
「す、スープの中に、ですかっ?!」
ギロリ、と彼氏さんがマスターの方に目を飛ばす。
「わ、わ、私は…私はやってません」
「証拠はあるのかよっ!!!」
「やってないとしか……ほ、本当に何も知りません。本当です、彼氏さん」
「信じられるかよっ、食い物の中に入ってたんだぞ!?」
「そういう、彼氏さんはどうだ。目の前で一緒に食べていたのだろう。お前こそ、怪しいんだが」
「隙を見て、毒物を仕込むくらい訳ないんじゃないか?」
「な、なに言ってんだ?! 俺がそんなことするわけない。
だいたい普通に考えて、付き合ってる彼女を殺すなんて……ありえないだろうが!!」
「どうかな? 愛の果てに心中したカップルや、三角関係が縺れに縺れて、とんでもない殺人事件を起こした奴らを私は知ってるぞ?」
「くっ、お前、本当にぶん殴るぞ!!!!」
「やってみろ」
「っ!!!」
刑事さんのセリフに、彼氏さんは、殴りかかった――――――が、拳一つ分、額の前でその手は止まった。
何か言いかけたが、口をつぐむと、目線を下に落として何も言わなくなった。
彼女さんのことを、急に思い出したんかもしれん。
「……埒が明かんな。おい、マスター。この店に監視カメラとかないのか?」
「ええ、ウチには設置してません。こんな物騒な事件が起こるなんて思ってもみないんで……」
「こうして実際に起こっているがな……目の前で見ていた彼氏。何でもいい。何か気がついたことはないのか」
「………」
「おい、聞いてるか?」
「……そう言われても、普通にいつもどおりのデートだったのに、なんで、彼女が……っ」
「な、なんて言ったらいいか…お気の毒です」
初めて、弱女さんが口を開いた。確か、名前は宮永咲。
丸っこい頭によく似合う、可愛らしいショートヘア、とでも表現したらええんか。
そういう表現するセンスみたいなんは、竜華とかのが上手そうやけどな。
「お二人共お店に何度も足を運んでくださる常連で……とても仲の良いカップルだったのに」
「アイツは、ここのスープスパ大好きだったからな……」
「……ええ。今日もスープスパ食べてたわ。お気の毒に……」
強女さんも、ここで初めて口を開いた。
ウチと一緒で、無料記念ってことでふらっと立ち寄った人の一人やな。
気の強そうなこの人も、流石に居たたまれない顔しとる。
「ううっ……彼女っ……」
「………感傷に浸ってるところすまないが、何か思い出せることはないのか。些細なことでもいいんだ」
「普段と何か違っていたこととか。そういえば変だと思ったこととか。他に何でもいい」
「他に、と言われてもよぉ……一緒に食べてたら、急に苦しみだして――――――――あっ」
一つだけぽっかりと抜け落ちてしまった大切な記憶が
突然ある日、何かの拍子に蘇ってきて、それがまだ、自分の正しい記憶かどうか、思い出せない
そんな、妙に得心したような、なのに戸惑ったような、正とも負とも取れる顔つきをしていた。
「……そういえば」
「何か思い出したのか?」
「そうだ。一つだけ――――――――そういえば、一つだけ」
「なんだ、言ってみろ」
「俺の彼女は、粉チーズに―――――っ」
最後は、聞かなくても、顔がそう訴えかけていた。
――――――――殺されたのかもしれない。
明日も、夜に時間があれば、23時くらいには更新できたらいいな。
見てくれた人ありがとうございます。
キャラの簡単な紹介とかは、ストーリー進んだら、あとがきでちょいちょい書いていこうと思います。