完全にこれは時代が来てますね。
こちらは麻雀とは欠片も関係ないですが、三巡目第5話どうぞ。
「ウチの…心の中にあるカード?」
「さっきから『未来映し』って言ってるでしょ?」
そんな呆れ顔されても。
急に未来やら心の中やら立て続けに言われて混乱してしまうのは普通やん?
ウチは怜みたいに察しが良くないんや、そこは察してや!
「仕方ないわね。要はこういうことよ」
すると、おさげさんは裏返した9枚の中から1枚を選択して、こともなげにそれを表にする。
出てきた数字は7。
「7、ね。はずれだわ」
「え、どういうことやの」
「どうもこうもこれだけよ?」
「…やからこのどこが神経衰弱なん?」
段々とイライラしてきた。
この人、もしかしたらウチをからかって遊んでない?
ある意味、神経的にウチにダメージきとるさかい、神経衰弱といえば神経衰弱かもしれんけど。
「私の心の中のカードは9。だからはずれなの」
「…はい?」
「で、出てきたカードは7、だからはずれ」
「……」
そこまで言われて、さすがに分かった。
要するに、自分で先にカードを1枚宣言しておいて、そのうえでカードを捲る。
宣言したカードと同じなら、『あたり』ってことか。
「もちろんだけど、心の中で選択と言っても、実際に口で宣言してもらうけどね」
「なるほどな…何個か確認していい?」
「ええ、いいわよ」
「引いたカードは、そのままにしとくん?」
「良い質問ね。もしはずれなら、そのカードはその場で取り除いて、ゲームから除外するわ」
「当たりなら?」
「そのまま続行…と言いたいところだけど、当たりが出た時点で、『そのゲーム』は終了するわ」
そのゲームは、ちゅうことは、何回もゲームすることが前提ってことかな?
まぁ、最初は確率1/9やから、いきなり終わりってことはないやろうけど…
「ご明察、このゲームじゃ周回が前提なの」
「え、口に出とった?」
「いいえ、貴方は何も。ただ、顔にね」
何やこの人、怜みたいなことを…不気味に鋭いなぁ。
「当たりが出るまでのゲーム一回のことを、1ゲームと呼ぶとすると」
「1ゲームが終わる条件は二つ。①どちらかが当たりを引く」
「②最後の1枚まで当たりがでない。②はまぁ、最後の1枚まで外れたら、後は未来映しもクソもないから当然よね」
クソって…そんな汚い言葉、美穂ちゃんが聞いたらどんな顔するやろか…
セーラがちょいちょい言いうけどな。よく考えたらセーラと美穂ちゃんは相性悪いかもしれん。
「で、他に何か質問はあるかしら」
「それで、これを何ゲームやるん?」
「そうね…だいたい、10ゲームくらい?それで1セットよ」
「ちなみに…お金はかけるん?」
「ま、それに関しては」
おさげさんは、一呼吸置いた。
ウチにも一瞬余裕が生まれて、夜風の寒さを身体が思い出す。
気が付いたら、祭りの声も随分と収まってきたようや。
「一応、説明だけしておくわ。選ぶか、選ばないかは貴方の自由」
「……」
「聞く?」
「……一応聞きます」
「そう、じゃあ簡単に説明するわね」
「と言っても、単純よ。このボードを読めばかる~くイッパツよ」
料金体系表…やっぱりちゃんと準備しとるんやな。
どれどれ…
<未来映し-料金表->
・料金は、10ゲーム中の「勝ち」と「負け」の回数によって変わります。
・例えば、5勝5敗なら、お互いイーブンです。料金のやり取りは発生しません。
・もし貴方が、7勝3敗で勝った場合、④ポイント入手できます。
・あとはそのポイントに、事前の交渉で成立したベースの掛け金を掛けて、清算します。
「ええと…要はたくさん勝てばええってこと?」
「ま、簡単に言うとそうよ。ベースはまぁ、1万くらいでいい?」
「その場合、7勝3敗で勝った場合は4ポイントで4万もらえるってこと?」
「そうよ。理解が早いじゃない…で。」
おさげさんは、ここからが大事という風に話を区切った。
両手を絡めて肘をつき、私の目をじっくりと見つめる。
「基本的には、今言ったルールで進めるわ。でも例外が、2つだけある」
「一つは、『お祝儀』のルール。もう一つは、全勝勝利の時の『ボーナス』よ」
「お祝儀と、ボーナス…?」
「ええ。まぁ、分かりやすいから、先に後者から行くわね。
要は10勝0敗だったら、ボーナスが付くっていうね」
「けど、そんなことありえるん?」
「まずあり得ないわ。ただ、ルールとして有った方が、もしそうなったとき楽しいでしょ?」
なるほど、ポーカーでいう、ロイヤルストレートフラッシュみたいなもんやろか。
それぞれどれくらいの確率なんか分からんけど。一応、ルールにはあるってことな。
「ちなみに、そのボーナスってなんなん?」
「ゲーム清算後、そのゲーム内で本来貰える額が10倍されるわ」
「おお…ということは…?」
ベースが1万なら、1万×10ポイント×ボーナス=100万円?!
「ま、ボーナスは基本ないものと思っていいわ。それよりご祝儀ね。
こっちの方がよっぽど確率が高いの」
「ご祝儀は、カードを一発目で当てたときに、掛け金とは別に貰えるお金よ」
「一発ご祝儀ってことやんね」
「そうそう、この場合は一回のご祝儀つきベース分のお金が貰えるわ。今回は1万円ね」
「なかなかにリッチな設定やね」
まぁ、そうは言ってもお祝儀だって確率1/9やし、そうそうはないな。
最後の例外2つ言うから、何かと思ったけど、大したことないやん!
そうなったときに、また考えればええな。
「さ、これで説明は全部なわけだけど…どうする?」
「する?しない?」
ウチは、非常に迷った。
このゲーム自体は普通に面白そうやから1セット位はやってみたい気もする。
しかも、ゲームの進み方次第では、割と儲かるやんな。
10勝ボーナスは不可能でも、6勝4敗とかは十分にありうる。その場合は2万貰えるわけや。
平均で5勝5敗でイーブンやし、期待値(?)的にも損はないはず。
せやけど、例えば3勝7敗とかになったら、マイナス4万…それは痛すぎる。
いや、貯金は多少はあるから、自己責任でやるっちゅうのも…
「ふふ、お金があれば、なんでも出来るのよ?」
「!」
「例えば…友達を助けることだってね」
「!! 友達…怜……」
「あら、思い当たる節があるみたいね。いずれにしても、このままだと埒が明かないから」
「今回だけは大サービスよ。初回限定で、ベース千円でやるってのはどう?」
「せ、せんえん?」
「ええ、これならもし2勝8敗で負けても損害は6千円…酷い負け方でも、お祭りのお小遣い程度の物よ」
「どう?」
「や、やります」
「オッケー、初回千円で了解よ。それじゃ、1セットだけ…やりましょう」
「未来映し――――スタートよ」
次回は、また早いうちに投稿します。
お気に入りしてくださった方、普段読んでくださってる方、ありがとうございます。