名探偵 怜-Toki-   作:Iwako

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なんとなく気になって、園城寺と清水谷の苗字調べてみた

◇園城寺
・全国順位…40097位
・全国人数…60人
・分布…茨城に50人、千葉に10人

※桓武天皇子孫の平氏が賜った名前、らしい。他説あり。

◇清水谷
・全国順位…16477位
・全国人数…320人
・分布…東京に80人、大阪に40人、兵庫に30人、青森に30人、そのほかちらほら

※諸説あり、天智天皇から賜った、等



2人とも会ったことないけど、やっぱり少なからずいるのには驚くね。
確か、咲キャラで現実世界に存在しない苗字は、『東横』だけだとどこかで見たなぁ。


豆知識もそこそこに、つづきです







二巡先 嘘と真実④

 

 

 

ドアを開けて、おずおず依頼人は入ってきた。『開けて』というか、壊れないよう、崩れないように丁寧にゆっくり『押して』って感じやな。

今にも壊れそうな木製の戸は一週回って、長い歴史をもつ建造物の一部みたいな気がしてくる。

二束三文以下のあばら家なんかに細心の注意を払うのがなんともおかしくって、ウチは笑いそうになるのを堪えた。

 

「こんにちは。お邪魔します」

「こんにちは。まあ座ってください」

「何もないところだな…」

 

先に入った一人は、よく見知った顔。もう一人は、初めて見る顔。

後から入ってきた子は、入るなり眉をひそめて、全体を見まわした。

そこら中に転がっとる疑念いう疑念を、360度体に巻き付けたような、そんな目をしとる。

 

「どうぞ、そこのソファにかけてください」

「あ、ここでいいのね」

「きったないソファだな…こんなボロっちい事務所、見たことないぞ」

「華菜。失礼よ。人様の場所よ」

「そうですけど…」

「それに、今日のこの場所は、私の大切な友人に紹介してもらったのだから。竜華さんにも失礼よ」

 

そう、何を隠そう今日私が依頼人として招いたのは、うちの大の仲良し。

 

「よく来てくれたなぁ、美穂ちゃん。わざわざありがとうな」

「いえいえ、こちらこそ、ご紹介頂きありがとうございます、こんにちは」

「こんにちは」

 

 

【福路 美穂子(ふくじ みほこ)】

職業:学生

風越女子高校の部長。華道部。単一の部で数百人を擁する、西地区屈指の名門部。

 

 

「その様子やと、二人は友達?」

「そやでー」

「さよか」

「風越言うたらお嬢様学校やん?そのお嬢様学校の華道部の部長さんなんやで、美穂ちゃんは」

「なーるほど」

「…ホンマに分かっとる?」

「ごめん、よく分からん」

 

やと思った。顔に『さっぱり分からん』って書いてあるし。

正直も悪ないけど、もうちょっと隠す努力しようや、怜。

 

「怜、ええ?名門お嬢様学校の華道部部長いうたら…それはもう、とんでもなく凄い人いうことやで」

「そうなん?」

「はっきり言って住む世界が違うで。

 それでいて、美穂ちゃんは誰に対しても優しくって、いい子で」

「ふんふん」

「ウチは美穂ちゃんと友達でいられることを誇りに思ってるんよ」

「そ、そんな、言い過ぎよ竜華さん。違うのよ、本当に、全然、大したことないのよ?」

 

謙遜する美穂ちゃん。ちなみに私は美穂子ちゃんのことを美穂ちゃんて呼んでる。可愛いやろ?

恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、ほんのりほっぺを赤くしとる。

ちょっと捲し立てすぎたかな?でも、本心やからしょうがない!

 

 

「そういうもんなんやなぁ」

「――――はあ。まだキャプテンがどういう人か分かってないみたいだな、そこの…」

「か、華菜」

「お前にも分かるように、華菜ちゃんが説明してやるし!!」

 

隣におる、青いショートカットの、猫みたいな子。

随分とずけずけ物を言う子やな。この子も風越やろか。

 

「隣におる子は?」

「この子は部員の華菜よ。本当は一人で来るつもりだったんだけど、

  どうしても着いてきたいって聞かないから…」

 

 

【池田 華菜(いけだ かな)】

 

職業:学生

風越女子高校の生徒。華道部レギュラー。美穂子を慕っている。

 

 

そして我慢ならないと言わんばかりにソファから跳ねあがった華菜さんは、私はここにいると言わんばかりに勢いよく続ける。

 

「いいか?風越女子は日本の伝統技芸、いわば『道』を極めに極める、西地区屈指の名門校…

 華道・茶道・香道・武道、その他広くにわたって、優秀な成績を収めてるし」

 

「その中でもキャプテンは華道部のトップ。

 伝統技芸の分野において、国の将来を背負って立つお方なんだし!」

「か、華菜。それはいくらなんでも大げさよ」

 

「おおげさじゃないですし!部で一番上手なキャプテンのお花は、

 風越の華道部の部室から学校の至るところにまで飾られてるんだし!!」

 

「ほおぉ、すごい人なんやなあ…申し遅れましたけどウチ、

 竜華の友達の園城寺怜いいます。今後ともよきに…」

いつの間に、小さな手を美穂ちゃんの目の前にあった。

怜が人に握手を求めるなんて、なんか珍しいものを見た気分や。

それにしても美穂ちゃんが立派屋と分かった途端…いくらなんでも現金やで、怜!

怜の手を握り返す前に、美穂ちゃんは一言後輩に声をかける。

 

「華菜、あなたもご挨拶なさい」

「はい、キャプテン」

「改めて、風越女子高校、華道部部長を務めます、福路美穂子と申します。こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 

今度こそ美穂ちゃんの方から、にっこり笑って手を差し出す。続いて、池田さんも。怜も、それに応える。

 

「ふふっ、園城寺さん、手が小さいのね」

「せやろか?」

「怜は、色々ちっさいしな」

「りゅーかうるさい」

「それに色も白くて羨ましいわ」

 

たぶん、怜のソレは不健康な白やと思うけど。

色白というか、色を失ってるというか。

 

「さっきから聞きたかったんやけど、二人は何つながり?」

「風越華道部はウチのお得意さんなんやで。毎週たくさんのお花を発注してくれるんや」

「いつも本当に助かってるわ。とても質のいいお花を入れてくれるから」

「確かに質は悪くないな。そこは認めてやるし」

 

そう、近年、気軽にお部屋にお花を飾る家も少なくなり、プレゼントとしてお花を贈る風習も、母の日などのイベントだけってなってたりと、一般向けのお花の需要は減ってきとるのが現状。

その一方で華道の部活であったり、生け花教室であったり、

業務用向けのお花の方は相も変わらず市場は活発や。

しかも風越女子となると、数百人規模でかつ毎日の利用になるし、そこに認められればそのOGの人たちからの発注がくることにもなり、『風越女子華道部御用達』というブランド力もつく。

そうした点からも、美穂ちゃんは非常に有難い取引相手やったりする。

 

「へえ。りゅーか上手にやっとるな。いつの間そんな」

「ふふっ、一回偶然お店に買いに来てくれて知りおうてな。それから世間話してたら仲良くなったんやで」

「へぇー」

「そのつながりで取引させてもらえることになったんや」

「そんなあっさり?」

「ふふ…あの時の竜華さんはとても積極的だったわ」

「み、美穂ちゃん!」

「携帯番号教えたのが間違いだったわ。私機械苦手なのに…半日も経つと着信履歴だらけで」

「っ!!」

「ふふっ、私も押しに弱いのかもしれないわ」

「どんだけ押したんや、りゅーか…」

「わーわーわーわーわ!!!」

 

怜にそんな裏話聞かれるのめちゃめちゃ恥ずかしい!

 

「堪忍してや、美穂ちゃんー…」

「でも、竜華さんのお花は使いやすいお値段で、それでいていいお花で…」

「先生や、OGの方に推薦して正解だったわ」

「ほ、ほんま?」

「ええ。お陰様で、皆さんからご好評よ。これからもよろしくお願いするわ」

「みほちゃん…」

「良かったやん、竜華」

「う、うん! よし、それじゃあウチ、お茶淹れてくる!」

「うん、頼むわ」

 

 

 *

 

 

美穂ちゃんに褒められて、嬉しくって、ふわふわ夢見心地で、外のお水を汲みに行く。

流石に中でキャンプファイアーするわけにはいかんからな。

家から持ってきたちょっといいお茶淹れて―――せっかく美穂ちゃんたちが来るわけやし、わざわざ持ってきた。

相手は華道部とはいえ、風越女子や、お茶への味覚は肥えてるハズ。怜はどうでもええ言うけど、やっぱりウチは気になる。

怜やウチの沽券に関わるし、下手なモンは出せん。

付け焼き刃ではあるけど―――これならきっと大丈夫。これなら!

 

 

「ただいま戻りました、お茶を――――」

 

「ふ――――ふざけるなしっっ!!!!」

 

 

ドアを開けると、そこには机を強打し、敵意むき出しで怜に食いかかる池田さん。

対照的に、事もなげに座ってのんびり構える怜。

 

アンタ、一体、一体何をしたんや―――

 

「………」

 

――――――怜!!!






次回、怜ちゃんが攻める。


また時間が取れたときに書くので、遅いですけどよろしくお願いします。

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