宇宙世紀へ強キャラ転生   作:健康一番

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間違って削除してしまった物の再掲載です


ジオンに兵なし~RXの鼓動~

『親愛なる地球連邦の国民諸君!恥ずかしながら捕虜になったことで、私はこの目でジオンの内情をつぶさに見てくる事が出来た!!』

 

 南極における連邦とジオンとの講和条約が締結するその間際、レビル将軍奪還なる、との報が会場を駆け巡り、まもなく彼を乗せたシャトルがルナツーに滑り込み、そこから地球権全域に放送が始まった。

 

『人類をここまで発展させてきた人類の英知の結晶たる地球連邦が!なぜ卑怯で残忍なザビ家の支配を受け入れねばならないのか!!』

 

 ルナツーに設けられた会場、その壇上にてレビルは官僚や政治家では無く、市民一人ひとりに対して語りかけるように熱弁をふるう。

 

『ザビ家は己たちを進歩した人類である新しき人類と呼び、我ら地球に住むものを愚劣なる古き人類と呼ぶ、そして新しき人類は古き人類に支配されるいわれは無いとしてこの戦争を始めた!それだけならば、腐敗した連邦上層部によって、新天地であるはずの宇宙が不平等な植民地と化してしまった宇宙市民の魂の叫びであっただろう!!』

 

 会場の片隅で壁に寄りかかって会見を眺めていたマークは、隣の絆創膏の男が吹いた口笛に肩をすくめた。

 

『だがしかし!!!彼らの行ってきたことはなんだ!!!同じ新しき人類足りえるはずの宇宙市民を核の炎で焼き払い!細菌で!毒ガスで!何のためらいも無く殺しつくし!彼らの住まう家であるはずのコロニーすら使って人類史上最大の殺戮劇に酔いしれるだけであり、そのどこに宇宙市民の独立という大義を見出せるのか!全うな神経を持つ我々は素直な疑問を生じるのである!!!』

 

 南極の会場では既に連邦、ジオン双方が顔をしかめ、あるいばつが悪そうに画面のレビルをにらみつけていた、既に実務担当のものたちは講和は不可能と見切りをつけ、戦時条約の締結に向けて舵を切り始める者達も居た。

 

『ギレン・ザビは言った、コロニーを落とされたくなくば宇宙をザビ家の物とし、地球に住む愚か者どもは頭上に注意しながら永遠に怯えて生きろと・・・ならば落としてみるがいい!!』

 

 レビルは会場とカメラと、カメラを通してこの放送を聴いているすべての人と目線を合わせるようにあたりを見回す。

 

『国民諸君!!ザビ家の謀略は巧妙だが、それに騙されてはならない!!確かに我々は敗北を重ね、ジオンに勝利を許してしまった。だがそれは所詮薄氷の上を渡っているようなものであると私は断言する!!』 

 

 地球件に住むものの多くがこの演説を見守っていた、猜疑、歓喜、怒り、嘆き・・・それぞれの胸の内にあるものは違えども。

 

『これまですべての戦いにおいてザビ家は華麗な勝利を必死に宣伝し、ただ大勝利という情報のみを貴方達にに見せ続け、彼らの被害はひた隠しにしてきた、それはなぜか!!・・・そう、彼らの動ける戦力は度重なる戦いにおいて既に枯渇し、一朝一夕では回復できないダメージを受けたために他ならない!!』

 

 デギンがため息をついて深く椅子に腰を落とし、ギレンが眉をひそめる。キシリアが笑みを浮かべ、ドズルが手すりを握りつぶし、ガルマが己が戦果を挙げるところを夢見る。

 

『既に彼らにルナツーを攻略するだけの余力も無く、コロニーを落とす余力も無い!!既にギレンの言ったコロニーを再び落とす等ということは、ただの脅しか狂人の妄言に過ぎない!!!』

 

 レビルは大きく息を吸い、一拍。

 

『起て、国民よ!!ジオンに兵は無く、ギレン・ザビの恫喝に屈する理由は無い!!勇敢にして賢明なる国民諸君一人ひとりに私は訴える!!己が欲望で宇宙を支配しようとするザビ家を許してはならない!!起てよ!!国民!!!』

 

 街のあちこちで気炎が上がり、保身にに走ろうとしたも者共が青ざめ、兵士は立ち上がり、ゴップは嗤う。

 

『兵も、大義も無いジオンに跪くいわれはない、ジオン・ズム・ダイクンの意思を歪めたザビ家こそ討ち果たされるべきである!!!』

 

 万雷の喝采が会場を、街角を、そして連邦議会を埋め尽くす。

 

 結局連邦とジオンは、核を初めとする大量破壊兵器や捕虜の取り扱いなどを中心とした戦時条約と交戦規定を結ぶにとどまり、戦いの嵐はいまだ吹き荒れることとなった。

 

 戦略資源を使い果たしたといっても過言ではないジオンは地球に降下して鉱物資源を確保して、連邦が根を上げるまで戦い続けるしか道を残されておらず、その戦線を広げ続けるしかない地獄へと引きずりこまれるととなった。

 

 最も、地球の広さを本当の意味で知っているものなどそうはおらず、勝利の美酒と熱狂に酔う彼らは進んで『その地獄に身を投じるのであった。

 

 

 

「なぜあのようにジオン公国ではなくザビ家を名指ししたのだね?」

 

 地球連邦軍において最大規模の派閥を組織、運営し、とぼけた振りをして相手の油断を誘う古狸・・・ゴップ大将はレビルの前においたグラスに、その琥珀色の液体を注ぎながらたずねる。

 

 わざわざザビ家と名指しせずとも、地球圏に満ちた怨嗟の声の持ち主たちは進んでジオン兵たちを攻撃し、その命を使って命を削り取っていくのは間違いなく、そんなことをせずにジオン公国を攻撃対象にして分かりやすく士気を高めるほうが簡単ではあった。

 

 連邦はジオンに対して30倍以上といわれる圧倒的な国力差がある、しかし、度重なる敗戦とミノフスキー粒子の影響下での戦闘における不安は大きく、先の演説で持ち直してはいるものの更に士気に火を入れておきたかったのだ。

 

「閣下、既に勝利するための算段はついてます、ならば、戦後のことを考えればヘイトは管理しやすくするに越したことは無いでしょう」

 

 少し、呆気ににとられる、ジオンの継戦力は高が知れている、とは言うもののその攻撃力と工業力は間違いなく、もしジオンに大規模な鉱山帯でも押さえられようものなら、戦争がいつ終わるかも分からなくなり、そうなるとジオンへの協力者も増えていくだろう。

 

 そうなれば最早戦争云々などはどうにもならなくなり、レビルや、彼の救出を命じ一連のショーの演出をしたゴップも死刑台に向かわねばならないかもしれない、その状況の中でレビルは勝利に確信を持っているのだ。

 

「やれるのかね・・・?」

 

 ゴップは自身が連邦に巣食う寄生虫だと理解している。

 

 それゆえに今回のジオンが起こした大虐殺は彼の宿主たる連邦・・・ひいては人類そのものに深いダメージを当たる行為だと判断し、宿主が倒れるのを防ぐために劇薬たるレビルを救出させたのだ。

 

「一年以内にはほぼ確実にサイド3に連邦の旗が翻るでしょう」

 

 レビルは対ジオンにおける急先鋒であり、最右翼である。しかし頭が固いわけではなく、むしろその思考はリベラル派である。

 

 だからこそコロニーの住民に対して偏見など持つ意味もないと考えているし、ジオン・ズム・ダイクンの提唱した新人類論・・・ニュータイプなどは戦争をしなくても分かり合える連中であると思っているし、搾取され続けるコロニーが独立戦争を挑む心情も理解できた。

 

 それ故にアースノイドとスペースノイドの対立を無くす為には連邦による移民の再開と、コロニー自治法の発行が必要であると考えており、高い工業力を持ったサイド3は宇宙開発全体でとても重要だと考えていた。

 

 だからこそザビ家を悪とすることにより、戦後のコロニー再建などでサイド3を使いやすくしようと思っているのだ。

 

「大口を叩く・・・何が必要だ」

 

「最低でも大将の地位・・・出来れば陸・海・空・宙全軍の指揮権を・・・そして」

 

 レビルは懐からファイルを取り出しゴップに渡す。

 

「連邦によるモビルスーツ開発計画であるRX計画、これを最重要な作戦として進めていただければ」

 

 ぺらり、ぺらりとページをめくり、内容を確認していき、その資金、機材、資材、人材の要求する質と量を考え、ファイルを閉じながらレビルに確認していく。

 

「資金と資材はどう確保するつもりだ」

 

「すでにギルダーマテリアルに渡りをつけてあります、コロニー落としの余波で屋敷が流されたとムスカ御大も大層お冠らしいですからな、私を全面的にバックアップしてくれるそうです」

 

(資金と資材が何とかなるなら、後は機材と人材だが・・・地上はジャブロー、宇宙は・・・ルナツーよりは建設中のサイド7の方がいいか)

 

「分かった、全部飲もうじゃないか、その代わり・・・」

 

 すべての案を実行に移すために必要な資金と人間を考えながら、レビルに問いかける・

 

「ええ、間違いなく連邦に勝利をもたらします」

 

 ここに密約はなり、レビルの人気を恐れた政府高官がルウム敗戦の責任を取らせる形で処分しようとしたのを、根回しと人気取りのために議会と大統領が大将に任命し、同時に一年戦争に限定されるという注釈がつくものの、連邦軍の最高指揮官となった。

 

 彼は精力的に各所に働きかけ、細々と進められていた研究に大々的な予算と人材をつけて一大プロジェクトとし、早急なモビルスーツの完成と戦力化を目指すことになる。

 

 

 

 ジャブロー内におけるレビルの執務室、そこにはこの部屋の主であるレビルと、彼に呼ばれたマークの姿があった。

 

「サイド3からの脱出、ギルダーマテリアルを動かしての私とRX計画への支援、本当に助かった、ありがとう」

 

「サイド3は成り行きでしたし、祖父はお気に入りの考古学の書物がなくなったせいで怒り狂ってましたから、小官は全力を尽くしたまでです」

 

 レビルはにやりと笑う。

 

「しかし、功績は功績だ」

 

 と、彼に封筒を渡す。

 

「今日付けで貴官は大尉へと昇進させ、RX計画のモビルスーツ試験部隊の指揮官へ任命する・・・まさか、嫌とは言わんよな」

 

 レビルの眼光がマークを貫くが、何食わぬ課顔で受け流し敬礼で返す。

 

「ハッ!全力を持って職務を全うします!!」

 

 レビルはその言葉にうなづく。

 

「うむ、よろしく頼む・・・まあ、しばらくは君の持ち帰った玩具しかないんだがね」

 

「ハッ!・・・え?」

 

 部屋にレビルの大人気ない笑い声が響いた。


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