宇宙世紀へ強キャラ転生   作:健康一番

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間違って削除してしまった物の再掲載です。


巨人と踊れ

 ルウム戦役、それは一年戦争序盤における連邦、ジオンの総力を結集した戦いであり、今後の趨勢を決めた大きな要因となるまさしく決戦であった。

 相次ぐ敗北とコロニー落下阻止の失敗した連邦宇宙艦隊は、その持ちうるすべての戦力を吐き出し二度目のコロニー落としを防ぎつつ、さらに敵主力艦隊を粉砕することによる戦局の打開をするべくジオン艦隊をはるかに上回る火力を持ってジオン艦隊を押しつつみ、航空兵器の不足をその火力を持って補わんとした。

 対するジオンはコロニーを移送する作業の最中であり、作業と迎撃を平行してしまっていたために無為にその戦力をすり減らしてしまっていた。

 彼らを率いるドズル・ザビは作業を中断し、すべてのモビルスーツを連邦艦隊を攻撃に回すことにより劣勢に落ちいる艦隊を救援するとともに、逆に連邦艦隊を撃滅して一息に休戦にまで持ち込もうと考えた。

 彼の放った無数の矢はミノフスキー粒子の守りとルウムで破壊されたコロニー等のデブリによりその身を隠し、本来なら奇襲による一撃を持って連邦艦隊に致命傷をあたえ、歴史上にもあまりないほどの完勝を得ることが出来た。

 だが、その歴史は一個人の手により少しだけ捻じ曲げられた。

 転生者・・・マーク・ギルダーが敵攻撃部隊を途中で発見、連邦艦隊はわずかばかりながら、迎撃体制を整えることが出来た。

 レーダーが利きにくいために眼暗撃ちながらもその火力は本物であり、メガ粒子とミサイルの嵐は確実にジオン攻撃部隊を打ち減らしていた。・・・もちろん、焼け石に水ではあるのだが。

 迎撃部隊も彼らの帰る場所でもある艦隊を守るために必死の努力を重ね、決して無視できない損害をジオンに与えていた。だが、その代償はあまりにも大き過ぎた。

 

『だめだ!!後に付かれた!!・・糞が!!こいつら振り切れねぇ!!』

『マイクゥッ!!こ、こいつらこんなに・・・』

『よし!!後につい・た・!!馬鹿な!!後を振り無いて・・・だ』

 

 絶対的な数の差、それは確かに大きかった。だがそれ以上にモビルスーツと戦闘機、その無慈悲なまでの機動性の差が戦闘の趨勢を決めたといっても良かった。

 四肢のあるモビルスーツにのみ許される戦闘機動・・・AMBACである。

 本来なら燃料の節約などを主眼においていた姿勢制御であるが、それを自在に操ることにより、戦闘機では不可能な複雑な機動を駆使することにより、直線的な機動しか取れない戦闘機たちを翻弄し、容易く討ち取っていった。

 そのような戦闘機乗りの地獄とも呼べる戦場の片隅で、マークはまだ、生き延びていた。

 

『こいつ・・ちょこまかと!!』

『これだけの数で狙っている!なのになぜ当たらない!!』

 

 5機ののザクに囲まれ、そのザクマシンガンから放たれる必殺の砲弾をときにロールし、または緩急を織り交ぜてくぐり抜け、同士討ちを誘って射線を減らし、その振り回されるGにより意識が朦朧としながらも、彼の戦いはまだ終わることはなかった。

 あれだけ頼りがいのあった隊長も、軽口を叩きあえる程度には仲良くなっていた仲間たちも、その奮戦もむなしくすでにこの戦場に解けて消え、今彼にあるのは嫌な意味で孤独ではない戦場だけであった。

「俺に何の恨みが・・・って何機か落としちゃってたっけな畜生!!・・ん?気がそれた奴がいる!なめるな!!!」

 機首に取り付けられた25mmの機銃が火を噴き、本来の戦場である艦隊に突入する部隊に視線が動いた機体のパイプを吹き飛ばし、流体パルス駆動に支障をきたしたザクは姿勢が崩れランドセルにまで被弾してしまい、推進剤にまで引火してしまったのか火球となり、ルウムに散って行った。

 動揺したように開いた包囲の輪を突破し、彼は愛機を友軍艦隊へと走らせた。

 

 戦いの出だしは順調そのものであった。一撃離脱を心がけながら片方が気を引いた後に、もう片方がランドセルを破壊して行動不能に追い込む。それはこちらを侮り、連携も忘れて撃墜数を稼ごうとする未熟な連中には非常に良く効き、隊長と彼は共同戦果を稼いでいった。

 この戦法が予想以上にうまく言ったのは、MS機動性を知っていた彼がそのことを隊長につたえて、戦闘機のりの本能とも言える巴戦に持ち込まずに一撃離脱に終始したためである。

 更にザクマシンガンは120mmの大口径であり、その連射性と破壊力は弱装甲の部分を攻撃すれば戦艦などですら致命傷を与えることが出来た。

 だがその反面反動を抑えるために初速は低く、高速で動く戦闘機を狙うには威力がありすぎる割にはそこまで向いているわけではなかった。

 これらの要素がかみ合うことにより、MSを相手にしながら戦闘機で戦果を挙げつつも生き延びるという幸運を彼らはつかんでいた。

 しかし、戦場の神は無慈悲であった

 ここに障害があると見るやジオン側も連携して射線を構築し始め、一機、また一機とザクマシンガンによる砲火の網に絡めとられ、ついに残るは彼だけとなっていた。

 

(ブースターはとっくに被弾してパージしちまったし、ロケット弾ももうない。機銃も弾切れ寸前とかマジチェックメイト寸前・・・一か八かで艦にもどるか・・?いや、CPとの連絡がつかないし、もうザクにかなり切り込まれてしまっている、識別もつかめねぇなら沈んだと考えるほうが妥当か・・・クソ!!)

 既に地獄と化しつつある艦隊の中で、彼は行くあても、戦う力すらも失いながらもそれでもまだ、飛び続ける。

 果たして彼の先にあるのは救いか、それとも更なる試練が待ち受けているのか・・・それはまだ、彼自身にもわからぬことであった。


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