宇宙世紀へ強キャラ転生   作:健康一番

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V作戦~大詰め~

 8月、戦線が膠着している中、ジオン軍は開戦当初の規模まで戦力が回復したと発表、モビルスーツや戦闘艦艇を増産して連邦軍に対して圧力を高めていく。

 

 連邦海軍は占領されたハワイ諸島を奪還すべく残存している太平洋艦隊を結集、ハワイのジオン軍に対して攻撃を仕掛けるべく艦隊を進出させた。

 

 対するジオンもこれを迎撃すべく潜水艦隊を集結させてこれに対抗、水陸両用モビルスーツ達はその攻撃力を遺憾なく発揮し、連邦軍太平洋艦隊は壊滅的被害を受けることとなり、ハワイ奪還作戦は無残にも失敗してしまった。

 

 だが、ジオンの部隊にも大被害が出ていた、増産されたフィッシュアイ達は懸命に防戦し、その牙はジオンが驚愕してしまうほどの戦果を挙げていた。

 

 しかし、挙げられた戦果に目がくらんだジオンは更に潜水艦隊を増強、水陸両用モビルスーツの補充及び更なる新型機の開発、増産を積極的に行っていた。

 

 このような表に見える出来事では連邦軍は更なる窮地に追い込まれたが、その裏で動いている彼らは大きな一歩を踏み出していた。

 

 

 

「では、会議を始める」

 

 ジャブロー基地の一角、とある巨大な会議室。ここには今、V作戦に関わる様々な人々が集まり、多大な苦労の末に最終段階に入ったモビルスーツ開発計画の報告が行われていた。

 

「まずは私から説明させていただきます」

 

 起立したテムが会議室のスクリーンの前に立つ。

 

「皆様の協力もあり、ようやくV作戦最後の機体であるRX78-02、ガンダムが最終調整段階に入りました、後は宇宙でのデータを取るためにサイド7に設けられた開発基地に移送し、そこで最終テストを行う予定となります」

 

 スクリーンに映る画像がガンダムを映し出す。

 

「今までの開発経緯のおさらいですが、我々V作戦の最終目的はジオンのモビルスーツを圧倒できるモビルスーツを作成、そして、それらを量産してジオンを打倒する事がこの作戦の基礎であり、目的であります」

 

 スクリーンには旧ザクとザニーが映る。

 

「まず鹵獲したザクⅠを我々は徹底的に解析し、実験機として外側と駆動方法を改良したザニーを作り、これを基礎として開発が始まりました」

 

 スクリーンが切り替わり、ガンタンクとガンキャノンが映し出される。

 

「RX-75、ガンタンクは長距離での支援用・・・となってはいますが、実際はRTX-44をベースとした技術試験機です。モビルスーツ用の高性能ジェネレーター、そしてコアブロックシステムの実験機として開発されました」

 

 画面が量産型ガンタンクに切り替わる。

 

「現在はV作戦から切り離され、技術開発班の下で量産型の機体が開発・量産されており、地上戦線において防衛戦を展開しており、ザクに対する対抗兵器として活用されています」

 

 画像が切り替わる。

 

「また、モビルスーツではなく、純粋な戦闘車両としてジェネレータを廃止したタイプも設計されており、こちらも体勢が整い次第量産される予定です」

 

 画像がガンキャノンへ切り替わる。

 

「RX77、ガンキャノンはガンタンクとザニーから得られたデータから設計された連邦初の2足歩行モビルスーツになります」

 

 腰を落とした射撃体勢を取る画像に切り替わる。

 

「ガンタンクより高性能になったジェネレータを装備し、分厚い正面装甲を装備し、フィールドモーターとマグネットコーティングを使った柔軟かつ素早い間接、肩の240ミリキャノンはザクだけでは無く、水陸両用の重モビルスーツすら撃破が可能なものとなります」

 

 スクリーンに映ったガンキャノンが放った砲弾が継ぎ接ぎの付いたゴッグ・・・鹵獲したものを修繕したものと思われるそれが一撃で爆散し、会場内からどよめきが走る。

 

「現在開発中の専用ビームライフルが完成し、それを装備すれば火力は更に増強します、さらに任務に応じて240ミリキャノンは換装することも出来るため、様々な局面で役に立てる機体となります」

 

「なぜこのように火力を優先するのだ?中距離用のモビルスーツではなく、装備によって・・・バズーカも開発したのだ?開発する機体を少なくしたほうが開発しやすかろう?」

 

 将官からの質問にテムは落ち着いて答える。

 

「はい、確かにそのとおりです、しかし、モビルスーツの戦闘時におけるGは強力であり、戦闘機からの機種転換した者はともかく、戦車などからの機種転換の場合は近接戦闘時のGに耐え切れません。それにやはり、センサーの有効範囲もありますし、そのOSも専用の物の方がやはり効果は高いです」

 

 一息。

 

「それにただ支援するだけならば通常兵器でも可能ですが、モビルスーツの機動戦闘についていけて、なおかつ宇宙でも使用可能で更に敵を一撃で倒せる火力があって、装甲も厚いこの機体ならば無理なく戦闘が可能です」

 

 画像が切り替わる。

 

「無論ですが、こちらも量産の際には様々なものを簡略化し、そのコストを下げる予定です」

 

 現状でのガンキャノンはザクの数倍という生産コストがかかっており、これを減らせなければ量産など夢のまた夢である。

 

「そしてRX78ガンダム、これこそがⅤ作戦の結実であり、我が軍の切り札となる量産機の雛形であり、フラッグシップとなる機体です」

 

 画像が切り替わり、ガンダムが映し出される。

 

「ガンダムは現在の技術と戦闘データの粋を集めて作り上げられた、近距離での白兵戦を主眼としたモビルスーツとなり、この機体はありとあらゆる面においてザクを上回る性能を上回っており、戦闘になったとしても一方的にザクを撃破出来ます」

 

 画像が切り替わる、ザクマシンガンを弾き返し、うろたえるザクがビームライフルで貫かれ、逃げようとして大ジャンプしたザクに、スラスターを吹かして後から追い抜きビームサーベルで両断する。

 

 水中でゴックをバズーカで撃破し、近付いてきたズゴックをビームサーベルを押し付けてから起動させて貫く。

 

「主武装となるのはマゼランの主砲と同程度の威力を実現したビームライフル、接近戦用に作られたビームサーベルを防げる装甲は存在せず、更に出力を上げることによる形状変化を起こすことによりサーベルからジャベリンに変更可能となります、頭部には60ミリのバルカン砲を備え、ルナチタニウム製の大盾を含めたこれらが基本装備となります」

 

 画像はザクを持ち上げて投げ捨てているガンダムの姿が映り、またも脅威に会場がどよめく。

 

「この機体に搭載された学習型コンピューターを使用して様々な経験させることにより、モーションパターンの蓄積・最適化を進め、しかもそのデータは連邦製のモビルスーツに共有することができ、練度の低いパイロットでも歴戦のエースと同じ行動をとる事も出来る様になります」

 

 ざわめく場内、テムは落ち着くまで待ってから、再び話し始める。

 

「このためガンダムにはエースを乗せ、様々な戦場を経験させてデータを蓄積させ、それを量産機に反映させる事によりジオンに対してモビルスーツの搭乗時間での劣勢を覆し、戦争終結の大きな原動力となるでしょう」

 

「ガンダムだけ顔のセンサーが違うタイプのようだが、何か理由があるのか?」

 

 士官の一人が疑問の声を上げる。

 

「白兵戦を重視するためです、これまでの機体では格闘戦時にセンサー部にダメージが行きやすかったため、装甲部を増やし、センサーの配置を変えた結果です」

 

 成程、と士官が納得したところで画像が切り替わる。

 

「しかし、この機体も量産には向かないために、様々な機能をオミットしたものを量産機とする予定です」

 

 会場内の明かりがともされる、圧倒的な戦果を挙げたガンダムの性能は疑いようも無く、これらの機体が多少性能が落ちた状態で量産されても、今まで苦しめられてきたジオンモビルスーツに反撃できる事へ期待が彼等の胸にあった。

 

「現在ガンダムは量産データを取るために、余剰パーツを利用した陸専用機及びその簡易型を試験的に少数量産しており、モビルスーツ量産の為のマニュアルもほぼ完成していると言ってもいいでしょう」

 

 会場を見回し、言葉を発する。

 

「今週中には各量産機の設計も終わります、それが終わり次第私もサイド7に移り、ルナツーと連携して宇宙でのデータをとります、それが終わればジオンなどは恐れることは無くなるでしょう」

 

 会場内から拍手が巻き起こる、それに一礼してテムは着席する、そしてレビルが前に出て発言をする。

 

「諸君、聞いたとおりだ!!今や忍従の時は終わりを迎えつつあり、モビルスーツを有してなかった我々は今!!ようやく連中と同じ土俵に立つことができた!!」

 

 会場を見回しながら言葉を続ける。

 

「永きにわたる我々軍人の・・・いや、連邦国民総ての努力と苦労が報われるときが来た!!我々の流した血も、流した涙も、重ねた努力も、その一切が無駄ではなかったのだ!!」

 

 様々な思いを含んだ視線がレビルを貫く。

 

「ジオンの攻勢は既に限界を超えており、戦線は伸びきり、補給線はまるで細い糸のようである!!ならば後はその糸を断ち切ればジオンは地上で枯れ落ちるしかなくなる、勝利は既に目前なのだ!!」

 

 一息。

 

「・・・あと一息だ、諸君、あと一息でこの戦争を始め、人類史上類を見ない虐殺を引き起こした者達への断罪が出来る」

 

 皆の顔を見ながら話を締めくくる。

 

「連邦国民総てが我々に期待しているのだ!!各員が各々の使命を全うし、この戦いを終わらせる力となることを私も期待している・・・以上だ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 時系列は少し巻き戻る、何時ものV作戦のオフィス、そこで量産機に付いての熱い激論が交わせられていた。

 

「まずは量産機全般で削る物だ、とりあえずオミット出来る物を考えよう」

 

 テムの言葉にその場に集まった皆がその言葉に頷く、今この場には実戦部隊と技術班の主な人員が集まっており、皆が真剣な顔でテムを見ていた。

 

「全ルナチタニウム装甲は不可能だ、コストから見てもセラミック系との複合装甲にせざるを得ないだろう」

 

「コアファイターも無理でしょう、アレを付けるだけで戦闘機一機分以上のコストが増えます」

 

「・・・やはり、最低でもそれらは削らねばならないな」

 

 しばしテムが考え込む。

 

「良し、最低限削るものはとりあえずそれでいい、だがコアファイターの変わりに脱出用ポッドでも着けれる様にしなければな・・・」

 

 ガンキャノンの話に移る・・・が。

 

「・・・あまり、削るものがないですね」

 

 あまり、削るものがない、センサーを削れば利点が削れ、装甲を削りすぎれば自慢の装甲も無意味である。

 

「・・・量産型モビルスーツはパーツの共有率を高めてコストダウンするしかありませんね」

 

「そうだな、だが、問題はガンダムの量産機だが・・・」

 

 テムの言葉にマークが手を上げ、発言する。

 

「それについては一つ提案がある」

 

「何か良いアイディアが?」

 

「ええ、データの出揃っていないガンダムではなく、戦闘データが出揃ってるプロトタイプガンダムを基に作りませんか?」

 

「ふむ・・・確かに、量産機ならばそれでも十分ですからな・・・」

 

 ガンダム・・・とはなっているが、実際にはアレックス並みの性能を持っている機体である、量産機とするには少しオーバースペックではあるし、いまだ完成していない機体よりは既にある程度完成しているプロトタイプガンダムを基にするのも、一つの選択肢としては間違いなかった。

 

「では、そうするか、では削るものと削らないものを考えよう」

 

 

「削れないものは・・・、シールド、頭部バルカン、コクピット周り・・・くらいかな?」

 

「ジェネレータは少し出力が低くてもかまわんだろう?確かタキム社製の新型にコスパの良い物があったが」

 

「ああ、あれがいいな、これと装甲だけで大分安く出来る」

 

「武装は78の物を共有できるだろう、ビームライフルは少し難しいかもしれないが、90ミリマシンガンとハイパーバズーカ、ビームサーベルとシールドは問題ないな」 

 

「ビーム兵装は・・・取り回しのいい物・・・このジェネレータの出力ならビームガンがあるな、Pガンダムのビームガンを手持ちに仕様変更して、それを使えば設計に時間はかからないな」

 

 サクサクと仕様が決まっていく、そして次に削る物が決まっていく。

 

「大気圏突入はいらんな、これは撤去だ」

 

「あれは実験機でどこまで出来るか試すためのものですからね・・・」

 

「水中戦闘能力もいらないですね、そのうち水陸両用機は作らねばならないでしょうが、今はいらないです」

 

「顔のセンサー部もバイザー型に戻していいでしょう、案外コスト高いですし、サーベルは最終手段ですから1本あればいいでしょう」

 

「バイザー型ならセンサーはいい物が使えます、脱出装置は全天周型コクピットにあわせて球形脱出装置を設計して有ります、コアファイターほどではありませんが、生存率は高まるはずです」

 

 このような会話で仕様は決定していった、史実に比べれば性能と生存性は向上し、生産コストは上がったが

その後のコストも考えれば悪くない機体であった。

 

「よし、これで一先ずはよさそうだ、後はこの仕様で設計をして行こう」

 

 ふう・・・と一息を付き、テムは微笑む。

 

「・・・これが終われば、私がジャブローにいる必要は一先ずなくなるな、予定通り私はホワイトベースで実験機と共にサイド7に移り、ここは他の皆に任せることになるね」

 

「・・・テム大尉、十分に気をつけてください、宇宙はジオンの勢力圏です、奇襲でもされたら目も当てられない」

 

「ああ、大丈夫だ、ホワイトベースの艦長は歴戦の勇士であるパオロ中佐だ、油断さえなければ何も心配いらないよ」

 

 こうして、ジャブロー内にて先行量産試作型ジム・・・というべき物が作られ、それのデータ取りのためにマークの実験部隊は今までの機体をテムに預け、母艦としてのペガサスと3機のジムと支援用のガンキャノン3機、そしてコアファイターを戦闘用に改良したコアブースターを2機、更にガンペリーを受領し、Ⅴ作戦実戦部隊は大きく拡張した。

 

 この拡張に伴いマークの階級は特務少佐に昇格、これは今後の作戦の戦果に対する前借でもあり、戦争が終われば軍大学に叩き込まれてしまうことになるだろう。

 

(これで夢の20歳少佐・・・守るべき部下もアップでストレスマッハ・・・う、嬉しくねぇな・・・)

 

 マークの心労をよそに実験機材を乗せたホワイトベースはジャブローを飛び立ち、テムはサイド7へ旅立っていった、これからの怒涛の日々を思い、マークはため息をこぼすのであった。


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