宇宙世紀へ強キャラ転生   作:健康一番

13 / 18
オリジナルの機体が出ます、大したものではないですが。


(プロトだけど)ガンダム、大地に立つ

 UC79年7月、秘密部隊であったジオン潜水艦隊の公表と拡充により、地球連邦の海洋航路は寸断され、各地の補給は海運を頼らないやり方か、もしくは大規模な護衛をつけるしかなくなっていた。

 

 幸いといっては何だが、戦線が既に整理されていたこと、潜水艦隊の数が地球全域をカバーするには少なかったこと、ミデアによる空輸がメインになっていたこと、護衛艦隊にはフィッシュアイやドン・エスカルゴなどの迎撃能力があったことなどから、レビルの描く戦略は揺るぐ事は無かった。

 

 宇宙における小競り合いは幾度か発生していたが、基本的に終始連邦艦隊が押されており、連邦艦隊は艦隊保全に走らざるを得ず、ルナツーに閉塞することになる。

 

 ジオン軍の中にはこの際ルナツーを攻略すべしとの声も上がっていたが、ジオン本国から地球を挟んで真逆の位置にあるといってもいいルナツーの位置、近場にあるのがサイド7という建設中のコロニーしかない事、ルウムの損傷から復帰した艦隊の火力等を考えた結果、その考えは棄却された。

 

 だが、ルナツーは来るべき反撃の時のために内部工廠を拡張しており、いざV作戦のデータがもたらされたときにはモビルスーツなどの生産で大いに活躍することになる。

 

 膠着してしまった戦況と、地上において確認することの出来たモビルスーツにとって十分に脅威となる兵器、量産型ガンタンクを確認したジオン軍は重モビルスーツであるドムを前倒しで量産に入り、この戦況の埒をあけようとしていた。

 

 そして、V作戦は一つの節目を迎えようとしていた。

 

 

 

「久しぶりだねマーク君」

 

「お久しぶりであります、ゴップ閣下」

 

 ジャブロー内にあるゴップのオフィスで連邦軍大将である彼とマークは対面していた。

 

「最後に直接会ったのは・・・確か君が繰上げで軍に入る少し前のパーティのときだったか、あの時はこのような立場で会うとは思っていなかったが、君も立派になったものだ」

 

「ありがとうございます、これも偏に周りの者達や、お引き立ていただいたレビル将軍や閣下のお力添えがあればこそであります」

 

「うん、君のおじい様にもよろしくと伝えておいてくれ」

 

 和やかな様子で会話を続けていたが、しばらくしてゴップが話を本題に移した。

 

「・・・でだ、ついに君達の努力の結晶が完成したと連絡があったからこうして顔を見るついでに聞きたいんだがね、実際の所どんな様子なんだい?」

 

「はい、いいえ将軍、あれは試験機の試験機、頭にプロトと付くものであります、実際の試験機である78-2に比べればまだ完成度では劣っております」

 

「だが、あれでも十分にザクを倒せるんだろう?実験の出来ていない宇宙以外の環境でのテストが済み、後は実戦を体験するだけだと聞いているが」

 

「はい、ザクの5倍以上に達するエネルギーゲイン、ルナチタニウウムによる強固な装甲、全天周型モニター、高い推進力、使えば使うほど成長する教育型コンピューター・・・、今まで使っていたザニーがまるで玩具にしか思えなくなりました」

 

「それは素晴らしい!いやぁレビル君がここにいれば大喜びしたんだろうね」

 

 ついにV作戦の結実であるガンダムシリーズの最初の一機、プロトタイプガンダムがついに完成し、各種の稼動テストも終わり、後は実戦をこなして改修点を探すだけとなったのだ。

 

 なお、レビル将軍はベルファストから連邦軍ヨーロッパ方面軍を指揮する関係で今この場にはいなった。

 

「確か・・・そのまま完成した試験機を量産するのではなく、低コストな量産機を作るという話だったか」

 

「はい、本来なら完成したガンダムとガンキャノンを量産する予定でしたが、ガンキャノンもガンダムも量産するにはコストがかかりすぎるため、コアブロックシステムなどを廃した量産機を作る予定です。その際にはあまり性能を落とさない高級機と、更に機能を切り詰めた低予算機のミックスになる予定です」

 

「ふむ・・・援助があるとはいえ、予算も資源も人命も、総てに限度があるからね、コストの管理は大事だよ」

 

 そこまで話して少し息をつく。

 

「・・・しかしこれで、ようやくレビル君の戦略に目処が立つね。・・・そういえば余ったガンダムのパーツは量産実験機の作成に使うんだったか」

 

「はい、パーツを厳選した時に大分余剰パーツが出てしまいましたから、これを利用しない手は無いと判断しました。既に教導は終わっていますから、部隊として結成できた所から配備していき、データ収集にも使う予定です」

 

「ジャブロー工廠の拡張は予定通り拡張している、君達が量産機を完成させればいつでもモビルスーツの量産は可能だ、あとは、君達しだいだ」

 

「はい、最善を尽くします」

 

 そしてマークが出て行った後、ゴップは葉巻に火をつけながらひとりごちる。

 

「これで一先ず安心は出来そうだな・・・既に老いが見えて切れ味の鈍ったデギンはともかく、ギレン・ザビは危険すぎる、この戦争で何とか排除できれば良いが・・・」

 

 大きくため息。

 

「まあ、いい、この調子ならレビル君の言うとおり年内にチェックメイトまで出来そうではある、人類自体にダメージを残しそうな戦争など速めに終わらせるに越したことは無いからな・・・」

 

 そして口には出さずに心でささやかな野心を思う。

 

(それにこの戦いに勝利すればレビル君は英雄、民衆からの支持とその発言力は大いに高まる、もしかすれば軍部から大統領を出せるかもしれん・・・いや)

 

 老獪なる軍政家は何かを楽しむかのようにニヤリと笑う。

 

(もしかしたらそれ以上の何かを成し遂げることも出来るかもしれん・・・それが何かは分からんが)

 

「さて・・・マーク君も上手くやっているようだし、私も仕事をしようかね」

 

 そうして各方面の陳情を捌き、補給などに一切の手抜かりが無いように、そして最終的な勝利のために、彼もまた己の戦場に戻るのであった。

 

 

 

「母艦・・・ですか?」

 

 何時も通りのミデアの中でミラが疑問の声を上げた。

 

「そうだ、新型艦種であるペガサス級なんだが、先行で2隻の船体が完成したようだ、我々ケルベロスは一番艦であるペガサスを受領する予定だ」

 

「?あれ、その船って確か・・・」

 

「どうした、曹長?」

 

「ああ、いえ、確かジャブローの宇宙船ドックで何隻か建造中で、ネームシップのペガサスのほうはエンジントラブルがあったって話を聞いたんですけど・・・」

 

 その言葉にマークは頷く。

 

「そのとおりだ、新機軸の装備であるミノフスキークラフトという物が不調らしい、これがあれば戦艦が空を飛べるようになるらしいが、データでは上手く言っても実機では上手くいかないようだ」

 

「うへぇ、そんなもんが頼りになるんですか?」

 

「実験中の物ならそんな物だろう?どのみちミデアでは限界が有るのはヤザンも分かるだろ?俺達の扱う機体は実験機ばかりで現地での整備もつらい、母艦が出来て整備が楽になるならありがたいことだ」

 

 ヤザンの愚痴をフランシスがたしなめる、照準のずれが多少あっても何とかなるヤザンと違い、狙撃主体の彼にとっては整備ミスによる照準のずれは致命傷になりかねないのだ。

 

「エンジントラブルの無いほうは使えないんですか?早めに受領しておけばその分早く船になれるし、隊長の機体のデータ取りも楽でしょう?」

 

「そっちはテム大尉達の技術班と一緒に宇宙へ上がる、サイド7には実験用の基地も作られてるからそこでコアブロックのついたままの75と77、そしてこの78-1と2,3を持って上がり、そこで宇宙でのデータを取るらしい」

 

 まあ、何度か往復せにゃならんらしいが、と付け加えながらマークは言う。

 

「俺らは着いていかなくて良いんですか?」

 

「・・・あぁ、俺達は試作型の量産機の実戦データを取らねばならん、ほかの連中のデータも取るつもりだが、地上戦はかなり重要だからな、試作機のデータ取りはやめられんし、一箇所に集まっていれば襲撃でもされたときにはV作戦チームの全てがやられるかもしれん、技術班も全てが上がるわけでもないし、リスクの分散のためだ」

 

 本当はマークも宇宙へ上がり、『機動戦士ガンダム』本編にかかわり、色々と改変したいのではあるが、レビルの意思までは動かせずに地上にとどまることになった。

 

「そんなもんですか・・・いや、まあ理屈は分かりますがね」

 

「えっと、話を戻しますがペガサスはいつごろ受領されるんですか?オペレート用のデスクとか色々確認したいんですけど」

 

 ミラの言葉にマークが返す。

 

「俺達の集めたデータを使って格納庫等の改装を行われている、それが8月には終わるから、それが終わり次第だな」

 

「艦長のあてはあるんですか?」

 

「ああ、一応、だがな。ルウムに乗っていた艦の参謀をしていた、敗戦した時に連絡が取れなくなって心配していたが、船が沈んだ後で撤退する艦隊に収容されていたらしい、今は再編成中で体が空いているらしいから、その人に頼むつもりだ」

 

「隊長の人を見る目は確かだ、期待してますよ」

 

「他のスタッフも優秀な人材を選別している最中だ、期待してくれてかまわん」

 

 話は再び切り替わる。

 

「所で・・・隊長殿は良いとして、何で俺らはあんなのを・・・」

 

 ヤザンが愚痴る。

 

「不満はとても分かる・・・、俺も正直どうかと思うが・・・」

 

「なら!!」

 

「すまんな、本当にすまん・・・」

 

「--------ッ!!!!ギィルダアァァーーーーーーーーー!!!!」

 

「良いんですか?ほっといて?」

 

 やいのやいのと騒ぐ二人を横目にミラはフランシスに問いかける。

 

「ほっとけよ、俺も思うところがない訳ではない、いい加減隊長にも思い出して欲しいしな」

 

「何をです?」

 

「俺は狙撃手であって、魚雷も大砲も専門外ってことをだよ」

 

 そのような話をしながらしばし経つと、今回戦場となる地点が近付いてくる、各自機体をチェックして出撃の準備を終え、陽動部隊が敵モビルスーツを誘き寄せるのを待ちわびた。

 

 

 

『チィッこいつらちょろちょろと逃げやがる!!』

 

『落ち着け!連携して狙えば確実に倒せる、一度深呼吸するんだ!!』

 

『しかし、こいつらのせいで・・・!!』

 

『落ち着けといっている!!先行しすぎだぞ!!』

 

(クソッ、初陣だからといって手柄に執着しすぎてやがる・・・!!)

 

 その攻撃は奇襲から始まった。

 

 最近この基地周辺では連邦軍の偵察部隊が散見され、近く襲撃が有ると予想されており、警戒のために戦力を増強させていた。

 

 そしてその日の黎明、予想されていたとおり連邦軍の襲撃が始まった。

 

 機能は低下しているものの働いてくれているレーダーが、基地に迫る爆撃機の編隊を捕らえ、基地はすぐさまそれを迎撃するために戦闘態勢に入った。

 

 増強されていたドップの編隊が迎撃に飛び立ち、爆撃機の編隊に襲い掛かり、それを突破した重爆撃機デブ・ロックとフライマンタの群れが基地に襲い掛かる。

 

 大挙飛来した爆撃機部隊を迎撃をしている最中に61式戦車を中心とした陸戦部隊も現れており、もし戦力が増強されていなければ苦戦は免れない規模の攻撃であった。

 

 だが、ザクやドップを小隊規模から臨時で中隊規模に増強し、戦力を整えていたジオンの迎撃には隙は無く、奇襲の衝撃から立ち直った後はジオンが盛り返しており、戦力を無駄に消費するのを嫌ったのか連邦の撤退は鮮やかであった。

 

 丘の間の少しだけ見通しの悪い道を連邦の戦車隊は一目散に逃げ出し、追撃を命じられた彼は少しの違和感を感じてしまった。

 

(戦力が事前調査より多かったからといって、あまりにも引き際がよすぎる・・・、もしかして誘い込まれているのか・・・?)

 

『隊長!ジャニスの奴止まりません・・・どうします?』

 

『どうするもこうするも・・・帰ったら説教してやるくらいしかできん、今はとにかく追うぞ!!』

 

 追撃の命を受けて進んだのはいいが、連邦をなめきり己が英雄願望を満たすことを求める新兵の暴走のために陣形は乱れ、後続のマゼラ戦車が追いつけていないのが気がかりだった。

 

『!!隊ty』

 

 突如閃光が走り、何かに驚いたジャニスのザクがその閃光に貫かれ、その気体は膨張し、爆発の中に消えていたった。

 

(何だ・・・?あの光・・・まさか!!)

 

『トールス!!逃げ・・・』

 

 何かに気付いた隊長が部下に逃げるように伝えようとしたが、言い切る前に再び閃光が走り、装甲もむなしくこちらも爆散してしまった。

 

『隊長!?ち、畜生!!!』

 

 爆煙の向こうに見えた影をめがけて無我夢中で打ち続ける、マガジンが空になり警告がなり、ようやく自分の行動に気がついた。

 

『は、はは・・・や、やったか?』

 

 そう言った直後に彼は超高熱のメガ粒子によって灼きつくされ、その意識は空気に溶けて消えていった。

 

「フラグ乙・・・と」

 

「何か言いましたか?隊長?」

 

「いや、何となく言わねばならん気がしてな」

 

「はぁ・・・これからどうします?」

 

「予定通りだ、ヘッド2と合流して護衛に回る、その後基地が顕在ならこれを攻撃する、中尉の機体が一番取り回しづらいからな・・・」

 

「現在作戦は順調に進んでます、予定ではまもなくヘッド2,3の出番ですね、早く後続を片付けたいところです」

 

 爆煙の晴れたその先で佇むのはいわずと知れたV作戦の成果の一つであるガンダムの試作機、プロトタイプガンダムがいた。

 

 陽動で敵を追撃させ、そして分断したところで伏兵を使って叩く、ありきたりな戦術ではあるが、成功したときの降下は確実である。

 

「ボディよりヘッド1へ、敵追撃部隊の二陣を確認、・・・マゼラアタックが5...いえ6、異変を察知したらしく全速力で来ています」

 

「了解、こいつらを撃破した後、ヘッド2の護衛に移る」

 

 スラスターをふかしてホバリングの要領で水平飛行し、驚き戸惑っているマゼラアタックの群れに襲い掛かる。

 

「む、意外と難しいな・・・」

 

 フットペダルを細かく操作し、浮き上がりすぎる機体を無理やり地上を這うように飛ばす、片手に備え付けられたビームライフルで砲塔を打ち抜く。

 

「ヤザンが暴走しなければいいが・・・」

 

 今回ももろもろの事情でモビルスーツに乗れていない部下がやらかすだろうと思いながら、マークの白黒の機体は新たな犠牲者を求めるのだった。

 

 

 

(追撃部隊は補足した頃か・・・、おそらくはこれは第一波、次が本命か・・・?)

 

 敵の襲撃が終わってからしばしの時が過ぎた、連邦軍の手際のいい撤退に疑問を覚えた基地指令は、被害の確認と戦力を再編していた。

 

「敵航空部隊第2波接近、先ほどより多いと思われます」

 

「また来たか、連邦め、こちらを出し抜けると思っていたのか!!」

 

 一方で襲撃をしのいだジオン基地に対して再度の襲撃がかけられた。

 

 基地指令も再度の攻撃を予想しており、襲撃に備えて戦力を再配置し、迎撃体勢を整えていた。

 

 今回の襲撃では爆撃機だけではなく、多数の制空戦闘機も出撃しており、ドップの部隊はそれらを迎撃する為に謀殺されていた、地上は地上で先ほどまでとは違う激しい攻撃を受けていた。

 

「さっきまでとは違う・・・やはりこちらが本命か!!」

 

 管制塔から見える景色の中に、砲弾ではない桃色の閃光が走り、ロケット弾を迎撃していたザクが貫かれ、射角があるのかビームの光芒はそのまま滑走路を穿った。

 

「何・・・ビームだと!?連邦の新兵器かっ!?」

 

 思わず一足後ずさる、だが、彼とて前線基地を任される男である、すぐに判断力を取り戻す。

 

「お、落ち着け!!我らとて地上で使えるビーム兵器とて持っている!!連邦も必死だ、これくらいの事はしてくる!!・・・発射元を探せ!!ダンの小隊を向かわせろ!!・・・発射した奴を見つけたら脅威となる前に破壊するんだ!!」

 

 混乱が走っていた司令部が命令を受けて落ち着きを取り戻す、先ほどのビームが発射された地点にザクを偵察に向かわせる。

 

 だが、その間の指示のなかった間に出来た空隙を利用し、一揆のミデアが凶暴なる殺意の塊を腹に抱えたまま基地上空を飛び越える。

 

「敵輸送機が高速で基地上空を通過・・・いや、何かを投下しました!!」

 

 それは、ミデアの格納庫から飛び出し、着地する寸前にスラスターをふかして軟着陸する、Gの恐怖を知るパイロット達は驚愕する。

 

「でかい・・・噂のタンクモドキか!!」

 

 周囲のザク達がその武器を振り上げる、しかしそれよりも襲撃者のほうが一足早かった。

 

「すっとろいんだよ!!そのまま沈めぇ!!!」

 

 ガンタンクの両腕から次々とミサイルが吐き出され、周囲のザクはたまらず飛び退る、もちろん避けた分は周囲の被害は拡大している。

 

「出来損ないが生意気な!!」

 

 バズーカを振りかざしたその時には既に時は遅く、ザクのセンサーは格納庫を盾にされたことを告げる。

 

「クソ、マッドは裏から回れ!!俺とハンスはこちらから・・・!!??」

 

「ハッ、誘われたお前が悪いんだよ!!」

 

 スラスターをふかして格納庫を飛び越えたガンタンクから放たれた主砲が、今まさに指示を出そう押していた隊長機を破壊する、敵討ちに燃える部下達がマシンガンを放つ。

 

「は、速い・・・!!」

 

 履帯が軋みを挙げながらうなり、右へ、左へと左右に機体が動き、直撃弾を許さない、多少当たったところでルナチタニウム製の頑強な装甲はビクともせず、虚しくその攻撃ははじかれている。

 

「フルマグネットコーティングガンタンク・・・なかなか良い動きは確かに出来る・・・、だが、俺が求めたのはこれじゃ無い!!」

 

 ヤザンの怒りをまとったガンタンクが急発進し、前方でうろたえたザクに突撃し、そのままの勢いでぶちかます。

 

「誰でもかまわん!!この思いのはけ口にさせてもらう!!」

 

 倒れたザクの顔面を履帯で踏みにじり、その場で旋回してミサイルをばら撒きながら足元のザクを使い物に出来なくする。

 

「ば、化け物か・・・・」

 

 爆撃と弾雨の降り注ぐ中、ヤザンのガンタンクは近くの敵から血祭りに上げていった。

 

 

 

「くそ・・・基地の様子がおかしい、引き返すべきか?」

 

「隊長、もうすぐ射撃地点です」

 

「分かっている・・・!!」

 

 偵察と敵の撃滅を命じられた部隊は大ジャンプを繰り返して現地に急行していた、関節に負担は掛かるが、急いでいかねばビームの被害が増えてしまうために避けえぬ被害と割り切った。

 

 既に2射目も放たれていたために、時間の猶予は無いと思われた。

 

「ひかtt」

 

 ジャンプの頂点に達したとき、彼の部下の機体は三度放たれたビームに貫かれた。

 

「アレク!!・・!!あいつか!!やったのは!!」

 

 発射元を見ればそこには不恰好なガンタンクが鎮座していた。

 

「あの背負っている奴は・・・まさか加速器か!!」

 

 本来両方に備えてあるはずの砲台を片方降ろし、その背後には円形の装置が怪しげに明滅している、その装置が重いのかよたよたと後方に下がろうとしているその機影をザクの単眼は確実に捉えた。

 

「部下の仇だ・・・死ね!!化け物!!」

 

 彼のザクバズーカ火を噴き、鈍亀のような機体に襲い掛かる、この距離であの速度なら何も無ければ確実にダメージが入るだろう、仕留めることが出来れば良し、仕留め損なってもあんな機体では懐にもぐりこめれば確実に仕留めれる。

 

「ちぃっ、こいつ、予定よりチャージが遅い!!」

 

 フランシスの口から舌打ちがもれる、本来の予定では彼が今作戦で使っているこのガンタンク・・・の初期の実験機の一つ、エネルギーCAPを使用しない形でのビーム兵器搭載実験機であるこれは、本来であればもっと連続でビームを放つことができた。

 

「実験機のつらいところだよ・・・!!全く!!」

 

 チャージが済んでいない砲口からメガ粒子が吐き出され、飛来した砲弾を消し飛ばす、即座にデットウェイトになった加速器をパージし後退する、攻撃力の無いミサイルの代わりに両手に装備された60ミリバルカンが火を噴き、近付こうとする敵を牽制する。

 

「無駄な足掻きを・・・!!」

 

 マシンガンとバズーカが襲い掛かり、確実にフランシスの機体にダメージを与える、装甲のおかげで生き残れているものの、機動力と手数の差にフランシスは死神の足音を聞くようであった。

 

「これで止めだぁ!!!」

 

 しばし攻防はザクに軍配が上がる、既に互いに残弾は尽きているが、ガンタンクは既に満身創痍、ザク2機は弾の切れた装備を投げ捨てており、灼熱したヒートホークがガンタンクに迫る。

 

「しまった・・・!!」

 

 しかしその瞬間に横から飛来した何かによりそのザクは腰から二つに分割され、コクピットは酷くへしゃげており既にパイロットの息は無かった。

 

「マードック!!ッ新手か!!」

 

 その飛来したものは薄い長方形のものに見えた、たとえるなら、盾のように彼には見えた。

 

「すまん、遅れた」

 

「隊長!すみません」

 

 増援がきた方向を見た彼の目が驚愕に見開かれる。

 

「モビルスーツ・・・、連邦のだと!?」

 

 驚きながらもヒートホークを構えなおす、脅威度は分からないが盾のようなものを投げただけでザクが両断されるパワーを見るに、ザクを上回っていると見るべきだった。

 

(どうする・・・逃げてこの情報を持ち帰るか)

 

 しばし逡巡する、相手の見た目では判断しづらいが武装らしきものは既に無く、最後の武器でもあったであろう盾は先ほど手元から離れている、握られている筒状のものが気にはなるが、目に見える脅威はなさそうだ。

 

(いや・・・ここで仕留めればそこまでだ・・・、こいつをヤれば昇進だって夢じゃない・・・!!)

 

「・・・・おおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 ヒートホークを振りかぶり、最短距離で機体を走らせる、最後の一歩でスラスターに火を入れ、爆発的な加速で襲い掛かる。

 

「貰ったあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

「踏み込みが甘い!!」

 

 半歩、連邦のモビルスーツが身をそらし、すれ違うようにザクの横を通り過ぎる、・・・その手に持っていたビームサーベルを振りぬきながら。

 

「お見事、隊長」

 

 両断されたザクはその勢いのまま取れこみ、そのカメラから光が失われた。自身が死んだ瞬間を認識できなかったのはザクのパイロットには幸運であっただろう。

 

 その場には半壊したガンタンクと、Pガンダムしか動けるものは無かった。

 

「友軍から連絡、我、敵基地の制圧ニ成功セリ、貴隊ノ奮戦ニ感謝スル・・・以上です」

 

 その報告にマークが頷く。

 

「滑走路は使えるな?」

 

「はい、無傷で確保できた模様です」

 

 少し考え、半壊したフランシスの機体を見やる。

 

「・・・よし、エルンストに滑走路に着陸しておくように伝えてくれ、フランシスはコアファイターで基地の滑走路に向かい、ヤザン達にこいつの回収をさせてくれ」

 

「了解・・・シミュレーターで体験したけど、元陸兵の俺が飛行機を飛ばすことになるとは・・・」

 

 上半身がパージされ、コアファイターが顔を出す、下半身部分も切り離してコアファイターが飛び立つ。

 

「ミラは俺と一緒に回収地点まで付き合ってもらう、ライフルの場所はマーキングしてあるな?」

 

「大丈夫です、ジオンに回収されてもいません」

 

「ならいい、・・・敵だけでなく、味方にも姿をさらせないのは手間がかかるな」

 

「でも、サイド7でデータの回収が出来れば、後は堂々と戦えますよ、あと少しの辛抱です!!」

 

「・・・そうだな」

 

 こうしてガンタンクの残骸と加速器を回収させた後、彼らは別の回収地点に赴いた、その後、荒れたヤザンを宥めるための組み手をしたりしながらも、彼らはジャブローに帰還した。

 

 運命の歯車は回り続け、この戦いの転換点はまもなくであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。