宇宙世紀へ強キャラ転生   作:健康一番

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地上侵攻作戦開始と秘密の日々

 レビルの演説により、ジオンは戦争の早期決着の道を立たれてしまい、戦争継続のための資源を確保すると同時に、連邦の厭戦機運を高めるためにも地上進行を決意。

 

 そのためにジオンは地上攻撃軍を編成、2月初頭から情報収集のための部隊を地上に降下させて様々なデータを収集、その翌月3月1日に地上侵攻作戦を開始した。

 

 《鷲は舞い降りた》地上侵攻の命を受けた地球降下部隊は作戦を開始、ジオンが戦争するために必要な資源を大量に算出する黒海、カスピ海周辺部・・・オデッサに攻撃を開始、ここに重力戦線の幕が上がり、地上においても地獄の釜の蓋が開くことになるのだった。

 

 ジオン軍のモビルスーツは地上においても遺憾なく力を発揮、連邦地上軍の必死の抵抗も虚しく、ジオンは2日にはオデッサ周辺の征圧に成功、連邦軍の援軍が到着する頃には防衛線の展開に成功、連邦地上軍は後退を余儀なくされる。

 

 しかし、オデッサ鉱山にあった施設のうち、GMG所有の鉱山採掘施設は既に破壊しつくされており、マ・クベとザビ家の上層部の血圧を上げることになった。

 

 アクシデントに見舞われながらもジオンは作戦を継続、体勢の整わない連邦を追撃するためにも穀倉地帯であり、地球における屈指の工業地帯である北米大陸へ向け第二次降下作戦を発令、この電撃戦に対しても連邦軍は抵抗できず、連邦軍の拠点の中でも最大規模の一つであるキャリフォルニアベースと、北米大陸の過半を短期間で失う大失態を犯してしまう。

 

 この時点でジオン上層部の意見は二つに分かれていた。

 

 ドズル・ザビを初めとする一派はジャブロー攻略への橋頭堡は獲たとして、即座に南米へ進出してジャブローを押さえ、この戦争に終止符を打つというもの。

 

 もう一つはギレンを中心とした一派で、ジャブローの正確な場所が把握できないこと、そしてジャブローを制圧するのに手間をかけすぎた場合、各戦線の敵が集結してしまえばジャブロー攻略などは夢でしかないとする一派。

 

 結局、ジャブローの正確な位置が分からない以上、ジオンは戦線を広げて戦果を拡大して連邦国民が厭戦機運を高める以外の方法も無く、第三次降下作戦、及びアフリカに対する攻略作戦が発動、戦いの炎は消えることなく、地球を焼き続けた。

 

 

 

「予定通りとはいえ、被害が酷いな」

 

 ジャブローのオフィスにおいてレビルはつぶやいた。

 

 高性能輸送機であるミデアを初めとした各種輸送機材を大量に投入し、撤退と戦線維持は昼夜を徹して行われているが、連邦軍が誇る官僚機構もミノフスキー粒子による通信途絶などもあり、戦線を把握しきることが出来ずにいた。

 

 また、実戦を体験していない各地の指揮官はミノフスキー粒子の恐ろしさも、ザクの恐ろしさもしらず、ジオン何するものぞとジャブローからの警告を軽視する者もいたために被害は増加していった。

 

「しかし・・・いくらなんでも早すぎるな・・・モビルスーツの威力を甘く見おって」

 

 予想以上の各地の軍の無様な敗退、それによる驚異的なジオンの進行速度、キャリフォルニアベース等はもう少し粘って欲しかったものである。

 

「いや、まてよ・・・」

 

 ふ、と気付く。

 

「もしジオンがキャリフォルニアで潜水艦を手に入れていたとして、無駄に海洋支配に目覚めて、無駄に海洋戦力を充実させて、無駄に国力を消耗してくれる・・・」

 

 頭を振って意識を切り替える。

 

「いや・・・無いな、無い」

 

 被害がありすぎて疲れてるのかな、と癖になったため息を一つついて、次の資料を見る。

 

「こちらは順調だな」

 

 手元のファイルには極秘の文字が躍り、Vをかたどったようなマークが描かれていた。

 

「ゴップ閣下が予算をもぎ取ってきてくれたおかげで、RX計画を格上げして勝利のための作戦・・・V作戦にすることが出来た、宇宙艦隊再建計画からの予算を流用することで運用母艦・・・ペガサス級をモビルスーツ用に改造することも出来た・・・か」

 

 モビルスーツ開発及びその運用法の確立のための計画であるRX計画を、それを含めたジオンに反抗作戦であるV作戦を立ち上げて組み込み、更に予算と人身を確保する、その結果モビルスーツ運用とデータ収集のための母艦として運用目的がぼやけていたペガサス級を確保することが出来た。

 

「モビルスーツ部隊を構築する基幹とする者たちはザクのシミュレーターを使うことで適正を調べることが出来た、その育成も既に始めているし・・・、だが、ザニー・・・だったか?あれで実戦をさせるわけにはいかんからな」

 

 旧ザクを回収したプロトザニーを基に、各所をマイナーチェンジしたザニー何機か生産し、練習と武装やOSの実験に使い、彼らはジャブロー地下の秘密区画の一角で訓練と実験に精を出していた。

 

「・・・分かっていたが、コアブロックシステムは金が掛かるな、・・・ギルダー君の提案どおり、コアブロックは実験機にだけ使い、量産機にはオミットするか、もっと簡易な物を使うしかないか」

 

 連邦軍は強大な組織である。

 

 だが、民主主義国家の定めとして、軍事に裂ける予算は議会に認められた金額しか使うことは出来ず、戦時予算を組んではもらえたものの、決して無駄遣いできるものではなかった。

 

「勝利は既に見えているとはいえ・・・耐え切れるか?・・・いや、ここまで無理に攻めてきているんだ、息切れも近いはずだ」

 

 確かにジオンは電撃的に地上を攻略、占領地に有る施設を使うことにより様々な物資を生産して戦力を拡大している。

 

 だが、ジオンの人口が少ないことは事実であり、戦力として補給できる人員は絶対的に限られている。

 

 占領地が広がればそこから徴兵して兵士に出来る?それも難しい、ジオンは既に恨みを買いすぎている、例え反地球連邦主義者やどちらにでもつくゲリラを雇ったとしても、それらをジオンの兵士として使うには自身が恨まれている事を把握しているジオンからすれば、自分からスパイ容疑者たちを身内に入れるのと大差はない。

 

 情報収集やかく乱の為の駒としては使えるだろう、だが、モビルスーツを使わせたり後方で補給作業させたりなどは、よほど切羽詰っても最終手段以外に使うことは出来ない、信頼できないから。

 

 そして、そんなジオンが攻勢限界に達したときこそ、反抗作戦の幕が上がるのだ。

 

 占領地を広げすぎて各地の防衛の密度を手薄にし、同時に広すぎる戦線を抱えさせることにより多量の物資と資金を消耗させ、そこに戦力を集中することでオデッサを落として補給の根元を断つ。

 

 根元を立たれた各地のジオンが集結してオデッサを再奪回するにしても、その頃には連邦のモビルスーツも量産化される予定であり、ジオンはむなしく戦力を削られていくだけであろうし、再奪回に動かなければカ各個撃破するだけである。

 

 地球に要るジオンを総て掃討出来ずとも足止めさえ出来れば、地上に大半の戦力を送ってしまった宇宙軍などは少数の精鋭と、臨時で徴兵された連中くらいであり、再建された宇宙艦隊が大挙して押し寄せれば脆弱になってしまったジオン宇宙軍に、サイド3を守りぬくことは出来ない。

 

「モビルスーツに明確に対抗できる兵器を各戦線に提供できれば士気は持つだろうが、それも出来ない」

 

 ジオンには情けない連邦などどうということは無いと思ってもらわねばならない、下手に新兵器で対抗してしまえば、それに対抗するためにモビルスーツ開発が加速しかねない。

 

 今だ連邦のモビルスーツ技術はジオンに比べて劣っており、苦労して耐えて作った完成品がジオンの新型量産機より弱いとなれば、それこそ連邦全体の士気が落ちきり、ジオン有利な講和・・・すなわち、南極条約で回避した

常に地球市民が滅亡の危機にある状況が発生してしまう。

 

 連邦軍の将軍としても、一人の市民としても、それだけは避けなければならなかった。

 

「・・・V作戦の成否は彼らに任せるしかないか、ジオンの侵攻速度は予想以上だが、V作戦の進捗も予想より早い、上手く噛み合えばオデッサ攻略を早めることも出来るはずだ」

 

 痛む頭を抑えながらこれからの戦いの予定を書き換える、既にアジアに対する降下作戦も発動し、これからも戦いは過熱していく。

 

「アジアの密林地帯がジオンを食い止める防波堤になればいいが・・・」

 

 

 

 そんなレビルの思いがかなったのか、アジアでのジオンの攻勢は北京攻略こそ成功したものの、東南アジアでは連邦軍が防衛に成功、同時に起こされた作戦により中東は陥落したもののアフリカは戦線形成に成功、各地に鉱山基地を建設されたもののダカールなどは守りきることに成功した。

 

 この時点で既にUC79年も半ばを過ぎ、その間に出番の無かったマーク達は何をしていたか?

 

 

 UC79年3月1日、ジオンが地上に侵攻してきたまさにその日、モビルスーツ開発計画であるRX計画をジオンに対する反抗作戦に組み込んだV作戦を発動、本来ならば説得や工作に時間がかかり4月1日を持ってようやく発動できたが、そこはギルダー家のバックアップが物をいい、一月も短縮して無事に予算と権限は大幅に拡大した。

 

 実働部隊と技術者達の定期会合、その場でマークとテムはお互いの状況を確認していた。

 

「テムさん、そちらの状況はどうですか?」

 

 目の下に隈を作ったマークが、同じく隈が酷いテムにたずねた。

 

「ああ・・・、マーク君・・・、こちらは大変だが・・・・君らも大変そうだね・・・」

 

 テムは新しく入ってきた技術者たちの配置、その管理運営、目玉の一つである教育型コンピュータの作成、高出力小型核融合炉やコア・ファイターの開発状況の確認、ザニーの運用データや改良点の確認、整備マニュアルの作成やほその他もろもろの作業を責任者としてこなし、その中でも上がってきたデータからザニーの更なる改良と、データを設計中のモビルスーツへ反映させたり、それを技術主任としてレビル将軍へのレポート作成など、24時間働けますかを地で行っていた。

 

 朗報もある、携行型メガ粒子砲の開発はマークのアイデアにより、メガ粒子そのものではなく、縮退寸前のミノフスキー粒子を保持しておき、それを機体側のジェネレーターからの電力を使ってメガ粒子にする方法を採用した。

 

 これならば難しかったメガ粒子の保持ではなく、技術的にも難易度が下がる、それにより開発期間は大幅に短縮、ほかの作業にも人手が割けることになり、V作戦の進行速度は上がった。

 

 他にもどこで情報を仕入れてきたのか工学博士のモスク・ハン博士を招聘し、フィールドモーターだけではなく、彼の提唱する新技術である、電磁気による駆動部分の保護によりメカニック同士の干渉を極限まで提言させる装置・・・マグネットコーティングの研究を進め、これを組み込めば新型モビルスーツの機体追従性は数倍にも跳ね上がることが予想された。

 

 他にもセンサーを増加させることにより全天周モニターの設置や、それを支えるためのパイロットシートであるリニアシート等、有用なアイディアを出しまくり、それらを実現させるために技術者陣は更にオーバーワークをこなす羽目になった。

 

 だがその代わりというべきか、計画が開始した時期が早かったことや資金、物資や人員の拡充、エネルギーCAP技術の早期開発成功などにより余裕を持って進めるはずだったV作戦のスケジュールは、マークが出してしまったアイディアを実現するために遅れ気味となってしまう。

 

 無理ならばあきらめれるが、実現すれば性能向上は間違いない上に、もう少しで手が届きそうなものばかりだった事も研究のヒートアップに拍車をかけた。

 

 上層部からは早く結果を出せとせっつかれ、しかし、ここで妥協してしまえば前線の兵士たちが死ぬ可能性が増える、それ故に最低限スケジュールどおりに進めるためにも、栄養ドリンクが手放せない上に家にも帰れない状況が続いていた。

 

「まあ・・・私以外は大丈夫そうですね・・・私は少しオーバーワークぎみですけど」

 

 マークはマークで疲れ果てていた。

 

 時間は少しさかのぼることになる。

 

 たしかにマークは大尉に昇進し、RX計画の実働部隊の主任となった。だが、当初は実働部隊の主任とは言っても肝心の実働部隊がいない、RX計画はこれまでは冷や飯食いであったこともあり、主に技術者たちで構成されていたために、モビルスーツの教導部隊を作れるような人材がいなかった。

 

 そこでまずはザクに入っていたシミュレーションデータを解析をテムに依頼、そしてそのデータをジャブローの強力なコンピューターを使って運用が出来るようにレビル将軍に依頼した。

 

 許可が下りたらまたテムにシミュレーターを作ってもらい、それを待つ間に原作知識を使い今の身分でも召集できそうな未来のエースを引っこ抜いて、基幹となる人材として訓練し、完成したシミュレーターやプロトザニーを使わせて周囲の説得を行った。

 

 その結果、部隊員とした二人は周囲にも認められてRX計画・・・のちのV作戦に組み込まれ、マークと彼らはシミュレーターをしてはミーティングをして駄目出しを行い、武装を試しては駄目出しをし、モビルスーツ部隊の効率的な運用の最適を探し続けた。

 

 マークの原作知識を使った結果もあり、モビルスーツ3支援機1が地上におけるバランスの良い編成であると判断し、支援のための車両にはソナーを持っているホバートラックの配備を要求し、それを押し通している。

 

二月も残りわずかとなったある日のミーティングの最中のことである、その日もシミュレーションがおわり、部隊員で意見を交換していた。

 

「隊長殿、やはり実戦は必要です、我々の中でもモビルスーツを使った実戦をしたことのあるものはいません、戦果を挙げていない教導隊など侮られるだけです」

 

 ヤザン・ゲーブル、Ζガンダムにおける強敵の一人であった彼とマークは士官学校で同期であり、マークからヤザンに接近したこともあり関係は良好、友人となって馬鹿騒ぎを起こしたり馬鹿騒ぎに首を突っ込んだりと楽しくやっていた。周囲は用心棒と親分くらいで見ていたが。

 

 一年戦争が始まってしまったこともあり、士官学校が繰上げで卒業したところをマークがスカウト、その高い戦意とむき出しの本能のおかげかシミュレーションでも高い成績を収めている。

 

「確かに、シミュレーションで取れるデータは取り尽くした以上、どこか適当な戦場に出してもらって実戦をしなければ、教導できるものも出来なくなってしまいますよ」

 

 フランシス・バックマイヤー、若手で優秀な狙撃主として軍内部でも名前が売れており、レビルにおねだりして引っ張ってきてもらったのだ。

 

 史実の一年戦争において少しマイナーな人物ではあるが、ジムスナイパーを使って高い戦果を挙げており、後衛を任せる人材が欲しかったマークとしては喉から手が出るほど欲しい人材であった。

 

「実際のザクのデータも取りたいですし、何とかなりませんか隊長?」

 

 ラ・ミラ・ルナ、こちらも士官学校出たての新人であったが、マークがオペレーターに当てが無く、人事に顔の効いたレビルの副官の一人である眼鏡の人に当てが無いか聞いてみたところ、情報処理などで優秀な成績を収めていた彼女が抜擢された。

 

 まあ、マークとしても聞いた事がある名前であった、という理由も大きかったが、実際に優秀だったので問題ない、一応モビルスーツにも適正があったので、緊急時にパイロットをしたりもするが。

 

「まあ、肝心要のモビルスーツが無ければどうしようもないですがねぇ」

 

 水を差してきたのは絆創膏の男・・・今はエルンスト・イエーガーを名乗る彼はホバーの運転手をしているが、レビルがマークに対してつけた秘密の連絡要員である。

 

「無理をすればRTX-44くらいは何とかなるが・・・それで実戦した所でモビルスーツで戦った・・・とは言えませんからな」

 

「プロトザニーでいいからある程度の数は揃えられないんですか?旧ザクのジェネレーターならコピーも作れるでしょう?」

 

「思索中の高出力小型核融合炉の進捗がはかばかしくないらしく、いま融合炉の生産ラインはそっちに付きっ切りで他の物を作る余裕はないそうですよ」

 

 フランシスの疑問にはミラが答える、現在試作されたRTX-44も核融合炉が上手くいっておらず、ディーゼル機関と併用してよたよた動く的くらいな扱いである。

 

 最も、そのRTX-44もジオンに対する欺瞞の一つとしてキャリフォルニアに送られており、既にこの場には無いのだが。

 

「・・・やはり、現段階で実戦は難しいか、ジャブロー内の工廠も拡大中だしな、生産拠点がもう少しあれば・・・」

 

「案外、ザニーの数を揃えるより、特殊部隊の連中がザクを鹵獲するほうが早いかもしれませんな」

 

 ヤザンの言葉に皆で顔をゆがめる、案外あり得るかもしれないと思ってしまったためだ。

 

 微妙な空気のまま、その日のミーティングが終わった。

 

 ジオンが怒涛の攻撃を仕掛けてくる前の、嵐の前の静けさを楽しめるのはあと少ししかない日であった。




調べてみたらヤザンがΖガンダムの時点で27歳、マークさんの設定年齢とかぶってたんで仲良くなりました。
なお、シロッコがあと一年早く生まれていたときは、マーク・ヤザン・シロッコで部隊を構成してました。
・・・シャアでも死ねマスね!!

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