世界一可愛い錬金術師がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:スキン集め隊

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今回主人公がちょっとだけキャラ崩壊かもしれないです。


3話

ウロボロスが暴走してどっかいった。

 

 

文面として書くならこれだけだが、まずい。

 

やばい、やばい、非常にやばい。

 

 

何がやばいってウロボロスはあんな見た目だ。もしウロボロスが猛進していった先に人がいたらどうなる?

 

空中を蛇行しながらその鍛え上げられた尻尾でモンスターをなぶり殺し、あの凶悪な牙でモンスターを穿ちながら突っ込んでくるウロボロスを見たらどう思うだろう。

 

うん、軽くホラーだ。それだけならいいとしても、モンスターがいる世界だ。それもポ〇モンのようなほのぼの系じゃないものの。きっとモンスターを討伐するためのギルドもあるだろう。それでもし、ウロボロスが討伐対象にでもなったら俺は号泣する。意外とウロボロスは可愛いのだ。そんな不当な扱い、誰が許せようか。

 

それに俺はどうやらこの場所では錬成も録に出来もしないようだから、ウロボロスに守って貰わなければいけない。あまり防具として使えそうなものも身につけていないし、元のカリオストロもウロボロスにそういった補助をしてもらっていたのだろう。庇護対象が庇護する者に危険を持ち込まれても困る。

 

それに何より─────今がやばい。

 

 

ここでは錬成も1回分しか魔力がもたないようだ。そしてその1回は先程使ってしまった。

 

…やばい、こんなところ襲われたら

 

 

『ゲッゲッゲッ』

 

 

───絶対絶命じゃないですかヤダー

 

 

「ヤダヤダ助けてウロボロスーーー!!」

 

 

眦に涙を滲ませながら俺は全力でウロボロスを追った。もちろん、モンスターを引き連れて。

 

 

ちょっとだけ涙目のカリオストロを想像して、そのレアな光景にほんのちょっとだけ興奮してしまった自分を色々と残念に思った。…ちょっとだけだよ?

 

 

 

* * * * *

 

 

不幸中の幸い、というべきかこの身体の身体能力は高かった。魂は天然物だが身体はカリオストロが創り出した言うなれば半ホムンクルスの身体だからだろう。

 

『最強可愛い』を自称するカリオストロのことだから魔力も多めに設定している筈だが、それでもあの消費量なのは…この場所が酷い暴食だからだろうか?異世界定番の魔力回復のポーション的なものがあればいいんだが…。

 

 

『ゲッゲッゲッ』

 

『ウオオオン!!』

 

 

しっつこいな、こいつら!!軽く十体はいるかもしれない。把握するには後ろを向かなければいけないので正確に数えてなどいられない。だが、普通に走れば逃げ切れるらしく現在はなんとか落ち着いていられる。

 

 

だけど、流石に疲れてきた。ここまでは一本道だったし、モンスターは空間を裂いてどこからでもでてくる。今後前からもモンスターが来て手詰まりなんてことになったら洒落にならない。階段らしきところも二つぐらいあがってきたし、そろそろウロボロスに会わないと危険かもしれない。

 

 

って、ウロボロスいた────!!

 

 

何故かウロボロスがわたわたと忙しなく動いてた気がするが、悪いがこっちの事を優先してもらおう。

 

「ウロボロスー!!このモンスター達どうにかしてくれー!!」

 

なんか他人?他龍任せで情けないな。心底この体が美少女で良かったと思う。これが筋骨隆々の大男だったら、ね?ウロボロスにも見捨てられたかもしれないし…。う、ウロボロス見捨てないでね?

 

そんな不安な思考を薙ぎ払うように、ウロボロスが俺に呼ばれて一直線に向かってくる。その頭を軽く撫でると、その後ろにいたモンスター達に威圧をかける。威圧といっても、ただその眼光を鋭くしてモンスターを見ただけ。

 

安定の最強ウロボロス先生マジパネェ…。

 

その後、一匹一匹丁寧に蹂躙し、落ちた紅石をガリッと苛立たしげに食べていた。もしかすると、俺の為に怒ってくれているのだろうか。

 

一度そう思ってみると思考の渦にはまっていく。

 

ウロボロスに指治してもらって、モンスター倒してもらって、錬金術のこと教えてもらって、今もモンスター倒してくれたのにさっきは尻尾ふんじゃって……。なんかすごい罪悪感ががががが。

 

 

「うわあああああ!!ごめんね、ウロボロスぅぅお願い捨てないでぇぇぇ!!!」

 

 

ウロボロスがぎょっとした顔でいそいそと戻ってきてぺこりと申し訳ないといわんばかりに頭を垂れる。副音声に「申し訳ありません、お嬢」と聴こえた気がした。

 

 

その後、十五分ほど互いに俺達は懺悔し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか慰め合い、何時もの調子を取り戻しかけてきたところでウロボロスが服の裾を咥えてぐいぐいと俺を引っ張った。

 

 

そこに、一人の少年が倒れていた。白い髪に赤い目というどこか白兎を彷彿とさせる容姿。その身なりはシャツに長ズボン、茶色のコートに胸当てのプレートアーマー。腰には短剣…いや、ナイフと呼べる大きさの刃物の鞘があった。

先程のようなモンスターが跋扈するこの場所で、この軽装はどうなのだろうか、と一瞬不安になった。

 

つんつん、とウロボロスが少年の額をつつく。

 

そこにはこれまた派手な擦り傷がついていた。どうして…ってまさか。

 

「まさか、この少年とぶつかったのか?」

 

しゅん、とウロボロスが目に見えて項垂れる。その反応に元は尻尾を踏んだ俺のせいだと慌てて被りをふるといやいや私のせいで、とウロボロスが反応したのでこれはまたさっきの繰り返しになるだろうということで一旦考えるのはやめた。

 

ふむ、と。少年の顔を見ながらどうしようかと振り出しに戻って考えてみる。

 

 

その顔の造形もその体の特徴に似て草食系男子というべきか、優男?これは違うか。

 

ただ、なんとなく。そう、なんとなく。何気なく。

 

 

────こういう子をいじったら楽しいんだろうな。

 

 

と、考えてしまった。

 

だから、つい寝ている主人公にヒロインがよくやるような事を思いついて、実行しようとしたのはカリオストロになった自分は仕方がないだろう。

 

 

まあこの少年君の詫びとしては十分だろうさ。なにせ、この美少女な俺様にこんな事をさせるんだからな!!

 

 

 

 

…ちょっと謙虚な日本人思考な自分が美少女って自分で言うのは少し恥ずかしいかも……てへ☆

 

 

 

 

* * *

 

 

 

────あの美しい光を撒き散らす金色の髪が忘れられない。

 

 

アドバイザーであるエイナさんに彼女の事を聞いて"遠い"と思った。

 

彼女とはファミリアも、技術も、レベルも、何もかも違う。

だとしても、

 

────絶対に諦めてやるもんか!!

 

だって、僕は彼女に美しさを、魅力を、幼い頃から思い描いた憧憬を───抱いてしまったのだから。

 

 

だから、ただエイナさんの『ヴァレンシュタイン氏も、強くなったベル君に振り向いてくれるかもよ?』という言葉に従ってただ、突き進む。

 

 

突き進、めればよかったんだけど…。

 

 

ここは第一階層。つまり、ダンジョンの初歩の初歩。運の悪い事にコボルトが連続して産まれ、戦い、まだ半月前に冒険者となった身としては精神をかなりすり減らしただろう。

 

『冒険者は冒険してはいけない』

 

それはエイナさんに何度も口をすっぱくして言われた言葉だ。

ここで帰らなければまたお小言を言われてしまう。それに、急いでここで二階層に降りてしまえば死ぬかもしれない。特に一階層と二階層では出現するモンスターは同じだから大丈夫だろうという心の隙、それこそが冒険者にとっての最大の敵となる場合だってあるだろう。

 

僕はナイフをしまって、今日の冒険の終わりに安堵してふう、と息を吐いた。

 

 

そして、地面が揺れた。

 

 

明らかな異変。さらに続けて何かの音。それは徐々に近づいている。

 

まさか、と。どうしても嫌な思い出が蘇る。あの人の前で痴態を晒ししまった人の体に牛頭の推定レベル2のモンスター、僕の悪夢の化身”ミノタウロス”。自分の体が強張っていくのが分かった。その原因はきっと恐怖。

 

 

『ウオオオオオンッ!!』

 

 

ダンジョンの壁を割いてモンスターが現れた。それはさっきまで倒していた”コボルト”。自分でも倒せるモンスターだと分かって少しだけ体と心の緊張感が和らいでナイフを構えた。

 

そして、そのモンスターは自分が何もしていないにも関わらず、霧散した。

 

 

「え───」

 

 

呆けた声が出たが、そんなもの気にもならない。

 

だって、そのモンスターの体から鋭利な牙がこちらを覗きこんでいたのだから。

 

牙に貫かれたモンスターの霧が晴れたことでその牙の全貌が露わになる。

 

 

────ドラゴン

 

 

それはドラゴンにしか見えなかった。その身に纏う全てを飲み込む圧倒的な強者の風格。

 

僕が幼少から読み続けた英雄譚の中でもそれは最強の敵として書かれているもの。

 

 

動けない。またしても、僕は魅せられた。

 

それはあの人のような意味ではなく、いつか”倒してみたい敵”として。

 

しかし、それは叶わない。ただ僕目がけてドラゴンが突進してくるのだ。

 

 

ああ、悔しい。このドラゴンを倒せなかった事が。あの人に追いつけなかった事が。英雄となれなかった事が。

 

 

どれだけ僕は生にしがみついているのだろう。本当に情けない。

 

僕に突進したドラゴンが気絶していく僕を見てオロオロと動いている姿なんて、そんな幻想────あるわけないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、僕は出会ったんだ。

 

 

人をからかうのが好きで、神様にもその規格外さにため息を吐かれて、そして何度も助けられて。

 

 

瞳も、武器も、ファミリアも、性格も、従える僕さえも、何もかも違うのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

────あの人と同じ輝きを放つ金色の髪のあの子に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから僕は今なら胸を張って言えるだろう。

 

 

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていない、と。

 

 




うん、もうベル君視点の部分がプロローグでいいんじゃないかな。

カリオストロのステータスどうしましょ。グラブルとダンまちでステータス表記の仕方違うからなぁ。どう分類しようか迷い中です。

あと寝落ちって怖いね。予定が全部狂いましたよ。

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